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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第四章:ヘタレのジル、教会に殴り込む。
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天才少女

小さな女の子から手渡された大量の犬の絵に、僕たちは驚いた。


「こ…こんなに沢山…これ全部、あなたが描いたの?」


シルヴィが驚いたようにそう聞く。


「は…はい。あたし、昔から絵を描くの大好きで…。ヴィンには、いつもモデルになってもらってたんです…。でも、この村を抜けた先の森に入っていったきり、出てこなくなっちゃって…探しに行こうとしても、お母さんが森は狼とかが出るから入っちゃダメって…」

「それでギルドに依頼したんだねー…。大丈夫だよ、あなたのわんちゃんは、エリシアたちが探し出してあげるからね!」


エリシアがにこにこしながらそう女の子の手を両手で包み込んで言うと、その女の子は嬉しそうに目を輝かせた。


「は…はい! よろしくお願いします…! あ…あの、報酬の事なんですけど…」


シェリーという女の子は、思い出したかのように報酬の件について切り出した。


「これぐらいしか…お金集まらなくて…」


そう言いながら少女が鞄から取り出して僕たちに見せたのは、銀貨1枚と、銅貨6枚だった。

大体、金貨1枚は銀貨10枚と同等、銀貨1枚は銅貨30枚と同等だ。

こんな村に住んでいる幼い少女が銀貨を持っていること自体、凄いことなのだけど、少女は申し訳なさそうにうつむいた。


「これじゃ…ヴィンのこと…探してもらえませんか…」

「いいよ、お金なんて!」

「そうね、あなたみたいな幼い子からお金なんて取れないわ」

「あぁ、金なんか討伐依頼に行けばすぐ手に入るからな」


急に割り込んできた低い声に、その場に居た全員が振り返った。


「ぜ…ゼアスさん…!? いつの間に…」

「さっきからこの村には居たんだけどよ。人ごみに流されてなかなかここまで来れなかったんだよ。おいチビ」


ゼアスさんは、ぶっきらぼうに女の子に視線を向けて話しかけた。


「ひっ…」


その女の子は、案の定小さく悲鳴を上げて、今度はエリシアの後ろに隠れてしまった。


「わぁ、ゼアスおじさん酷い。ガキじゃなくてシェリーちゃんだよ」

「人の事毎回おじさん呼ばわりしてるやつに酷いなんて言われたくねぇな」

「だっておじさんでしょ?」

「まだ俺は22歳だ。それより…シェリーっつったか?」

「ひぇぇぇ…! ごめんなさい!」


ゼアスさんがそう屈みこんで女の子と視線を合わせようとすると、女の子はエリシアの背中にしがみついて震えた声をあげる。


「ちょっとゼアスさん! もっと優しく!」

「なんだよ皆して! 俺は普通に優しいだろ!」

「顔が怖いのよ!」

「そんなんどうしろってんだ!」

「笑顔笑顔!」


シルヴィとエリシアが、ゼアスさんに手厳しく注意している中、僕は少女が描いたという犬の絵を眺めていた。

殆どの毛は薄い茶色で…お腹と足の先だけ白いのか…。

それでピンと立っている耳に、真っ黒なつぶらな瞳…体の大きさは…。

殆どは真っ白な紙に、犬が一匹だけ描かれていたからわかりづらかったが、二、三枚、人間と遊んでいる様子も描かれていたため、大体の大きさはわかった。

後ろ足で立ち上がったら、大体僕の太もも辺りまでだろうか。


結構よくいそうな犬だから…なかなか見つけ出すのは難しそう…。


僕はそう思いながら紙の束をめくる。

その時、一枚の絵が僕の目についた。

これは…。


「ゼアスおじさん、その笑い方変態っぽい! 別の意味で怖い!」

「だぁぁおじさんじゃねぇぇ! じゃあどうしろってんだ!」

「もっと自然によ!」

「自然ってなんだよ!?」


半ば喧嘩のようになっている三人と、エリシアの後ろで震えている依頼人の少女を見て、僕はため息をつく。

僕が話しかけたら、また怖がられちゃうかな…。

でも…他の三人にも、いまは頼めなさそうだし…。


僕は覚悟を決めると、そっと女の子のすぐ横に屈みこんでから、なるだけ優しく声をかけた。


「あ…あの…シェリー…ちゃん?」


そう声をかけると、シェリーちゃんは少しびくっとしたが、隠れずに僕の方に視線を向けてくれた。

そんなシェリーちゃんに、僕は紙に描かれた一枚の犬の絵を見せながら問いかけた。


「このわんちゃんの…わき腹のハート形に見える模様って…実際にもあるんだよね?」


シェリーちゃんがヴィンと呼んでいる犬のわき腹には、茶色の毛と白い毛の境目がハート形のようになっているのがこの絵からは見てとれたのだ。


「は…はい…」


シェリーちゃんは、おどおどしながらそれだけ答えると、僕から距離を取るように後ずさった。

…やっぱりだめか…でも、話してくれただけでもマシかな…。


「それなら…」


僕はそう言いながら立ち上がって少し後ろに下がった。


「こんなに特徴的な模様があればきっと見つけられるよ」


僕がそういうと、シェリーちゃんは何も言わずに、だけど期待に瞳を輝かせた。


「ゼアスさん、エリシア、シルヴィ、行こう!」


ぎゃいぎゃい言い合っている三人の肩を叩いてそういうと、ハッとしたように三人の動きが止まった。


「はーい! 絶対見つけてくるから心配しないでね!」


エリシアはそう言いながら跳ねるように立ち上がってにっこりと笑う。

そんなエリシアの横で、シルヴィも立ち上がる。

心なしか、シルヴィは恥ずかしそうな表情だ。

いつもは下らない言い争いとかを止めに入るのはシルヴィの仕事だからな…。

今日はなんだか珍しいものを見た気がする…。


ゼアスさんはその場で大きなため息をつくと、立ち上がる前にシェリーちゃんに近付いて行って、何かを耳打ちした。

すると、シェリーちゃんは目を丸くしてゼアスさんを見上げた後、


「はい! 頑張ります!」


とだけ言って、市場を駆け抜けていってしまった。

そんなシェリーちゃんの後ろ姿を、僕達は驚いて見送った。


「何言ったの…?」

「内緒だ」

「内緒って…」

「さ、行くんだろ。向こうの森か?」

「う…うん」


ゼアスさんがシェリーちゃんに何を言ったのか気になるけど、話してはくれなさそうだ。

シェリーちゃんも、ゼアスに話しかけられていたのにその時はあまり怖がってなかったみたいだし…。

流石、ゼアスさんは人の心をつかむのが上手いみたいだ。


その後僕達は、シェリーちゃんが描いたという綺麗な犬の絵を手に、村を抜け、狼が出ると噂の森へと向かって歩き出した。

最後まで読んでくださりありがとうございます!

よければブックマークなど、よろしくお願い致します。

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