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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第二章:ヘタレのジル、ギルドに入る。
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謎のヤツ

マスターが待っているという部屋に入ってみると、そこにはマスターが椅子につき、先程僕を起こしに来ていた銀髪の毒舌少年がその側に立っていた。


「来たな。報告を聞こう。レゾリア大陸の現状を」


そんなマスターの言葉に、僕達は一瞬言葉を詰まらせた。

…壊滅…。

そんな言葉がふさわしいあの大陸のことを、なんと話したらいいんだろう…。

人と殆どまともに話したこともなかった僕には、到底上手く説明できる気がしなかった。

だが、そんな時、僕達の中で口を開いたのはゼアスさんだった。


「ご報告、申し上げます。マスター」


いつもよりもきちんとした立ち方で、いつもよりも

きちんとした話し方で、ゼアスさんはレゾリア大陸の現状を報告した。


…ちゃんとしようと思えば、ゼアスさんはここまで出来るんだ…。

それなのに、どうして普段はあぁなのか…。

自然にあぁなってしまっているのか、それとも意図しているのか…。

その答えは僕には分からないけど…。


…ただ、今のゼアスさんの姿は助けられなかったレゾリア大陸に住んでいた沢山の人間に対して弔いと敬意を示しているように見えた。


「そうか…。レゾリア大陸の復興にも人員を回したいが、それよりも先に、他の大陸を守りたい。S級の冒険者。それから、ジル、シルヴィ、エリシア。お前達に命ずる。」

「あの…どうして私たちにもそんな任務を任せてくれるのですか?」


マスターの言葉に、シルヴィはおずおずとそう聞いた。

確かに、僕達はまだギルドに登録して数日しか経っていない新米で、S級の冒険者と同じ任務につくなんて、普通はそんなことありえないはずだよね…。


「お主らはゼアスのパーティメンバーだろう。ゼアスが認めたということは、それなりの力があるということだ。実際のところ、レゾリア大陸に送っても死ななかったのだから」


マスターはそう言葉を紡ぐ。

確かに、今のレゾリア大陸は魔物だらけで危険な場所だった。

そもそも、登録して間もない冒険者が、そんな場所に行っていること自体がおかしいんだけど。


それに、シルヴィが納得したように引き下がると、マスターは話の続きをしようと口を開いた。


「各大陸の結界維持装置を死守せよ。レニア、ジル、エリシア。お前達は北東のリージェン大陸へ。」


…僕と、エリシアと…あの、銀髪の少年で…!?

僕とエリシアは、お互いに顔を見合わせた。

少年はこっちを見ることなく、マスターの言葉を聞くと片膝を地面につけ、頭を下げた。


「仰せのままに」


まだ幼いように見えるのに、その動作は流れるようで、とても綺麗だった。

…あれ、肥え太った豚とかって言ってたのって、気のせいだったんだっけ…?

今のあの礼儀正しい少年からは想像もできない…。


「…レニア、よい。そういう礼儀作法は慣れん」

「はい」


マスターの言葉で少年は立ち上がる。

その瞬間、少年と僕の目が合った。

少年は僕を見ると眉を寄せてから、ふいっと視線をそらした。

…あれ…。

どうやらレニアという少年の他人への対応は随分と差があるみたいだ。

…マスターが神だったら、僕はゴミクズって感じなんだろうな…あながち間違ってないけど。


「ゼアスはギルド本部に残れ」

「へいへい。どーせお迎え役だろ」

「そうだ」


…さっきまでのきちんとした態度はどこへやら。

ゼアスさんはもう腕を組み、部屋の壁に寄りかかっていた。

そんなゼアスさんのことを見る少年の表情はまさに…殺してやる…っていうような表情に見える…。

マスターに敬意を示してないのがそんなに気に食わないんだろうか…。

そんな少年に気づいたのか、ゼアスさんは少年を一瞥すると、口の片端を上げた。

それを見ると少年は嫌悪感でいっぱいというように眉間にシワを寄せた。


ふたりの間に、火花が散っているように見えるよ…。


「それからシルヴィ。お前はエマとエリンと一緒に南西のアストラス大陸へ行け」

「は…はいっ」

「パーティを組んでいるのを引き裂いて悪いが、死者はなるべく出したくないのでな」

「フォーティニ大陸はどうすんだ?」


ゼアスさんはそうマスターのことを見ずに、気だるそうな口調で聞く。


「レインの話だと、やつが明日には帰還するそうだからな。やつに頼む」

「…!」

「…へぇ?」


やつ…?

その「やつ」、という単語に、ゼアスさんとレニアという少年が反応した。


「よかったじゃねぇか、レニア。お前の大好きな兄貴分が…」

「うるさい」

「あ?」


ゼアスさんの言葉を、途中で少年が小さな声で遮る。

そして少年はマスターに向かって尋ねた。


「マスター。その任務の出立はすぐですか?」

「む、いや、明日の朝だ。レニアはもう下がれ」

「はい、ありがとうございます」


…あれ…。

僕の横を通り過ぎた少年の横顔を見ると、今まで冷たい色をしていた少年の赤紫の瞳が、少しだけ期待で輝いていたような…そんな気がする。

少年が出ていった後、マスターはゼアスさんに視線を向けた。


「ゼアス。レインを呼んでこい。他の者は下がれ」


そんなマスターの声に、僕、シルヴィ、エリシアは、声を揃えて、はい、と返事をしたが、ゼアスさんだけは何も言わず、マスターを一瞥してから部屋を出ていった。


その後とりあえず、今日はもうギルド本部の中でやることがなく、明日の朝までどこか宿屋に泊まろうということになったのだが…。


「ゼアスおじさん遅いねー?」

「本当ね。ずっとマスターとゼアスさんとレインさんで話しているのかしら…」


マスターに下がれと言われて、もう早一時間ほど、ゼアスさんとレインさんとマスターは部屋から出てこなかった。

正直僕達はまだギルドに馴染めていないと思うし、ずっとこの場に突っ立っているのは肩身が狭い…。

そう思ってるのは、気がミジンコほどに小さい僕だけなのだろうか。

エリシアはずっとにこにこキョロキョロ辺りを見回しているし、シルヴィも特に何も気にしている様子はない。


…僕も少しぐらい気が強くなりたい…。

ゼアスさんが出てきて、宿屋へ行ってひと段落ついたら、僕は過去のことを話さなくちゃならない。

僕が話すって決めたことで、きっと皆は僕の過去のことを知らなくても、僕と一緒にいてくれるだろう。

でも、話さなくちゃ…。

僕自身のためにも。

……気が重い…本当に。


「…ジル、大丈夫? 具合でも悪いの?」


そんなシルヴィの声に、僕はハッと顔を上げる。

気づいたら僕は随分と下を向いていて、最高の陰気臭さを醸し出している。


「いや…違うんだ。何でもない」

「…そう…?」


何でもないような表情をしていない、と突っ込まれたらそれまでだったんだけど、シルヴィは詮索してこないでくれた。


…もう一度、覚悟を決めよう。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

よければブックマークなど、よろしくお願い致します!

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