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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第二章:ヘタレのジル、ギルドに入る。
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ドラゴンたちの思惑

また…。

また、置いていかれちゃった…。

私が弱いからだわ。

だから、私の親代わりだったあのドラゴンも…そしてジルも、私を置いて、何処かに行ってしまった。


「…ジル…。一緒に旅をするって…約束したじゃない」


そう小さく呟いてみても、ジルが戻ってくる気配はない。


「…ジルの馬鹿…あんぽんたん…! わからず屋! ヘタレっ!! 人で無しーっ!!」


…そういえば、ジルって人じゃなかったんだっけ…。

そう、叫んだ後に気づいた。

ジルは、強くて綺麗で…優しいドラゴンだった。


叫んでも、喉が痛くなるだけってわかってる。

でも、こんな風に叫んでいないと、涙が出てきてしまいそうで怖かった。

私は…もう泣かないって決めたのに。


とにかく、ゼアスさんとエリシアの所に帰らないと…。

私じゃ、ジルを止められなかった…。

ぐるぐると頭の中を駆け巡るのはジルのことばかりだけれど、もうどうしようもない。


寂しさにかられながら、私は二人の元へと戻った。


「あ、シルヴィ! おかえり!」


そんなエリシアの元気な笑顔も、私の側に誰も居ないことがわかると、消えてしまった。

…あの時、強引に引き止めればよかった…?

でも、強引に引き留めようとしたって、ジルは…。


「シルヴィ、ジ…」

「本当にごめんなさい。私、ジルのことを引き止められなかった。ふたりとも、協力してくれたのに…」


エリシアの声を遮って、私はそうふたりに謝った。


「ま、逃がしちまったもんはしょうがねぇな」

「……。エリシア…ジルがいないのなんか嫌だよ」

「だからこれから、ジルの野郎を取っ捕まえるために作戦会議するんだろうがよ」

「え…?」


私とエリシアは、ゼアスさんの言葉に同時に声を発した。


「これから…? またジルを追いかけるの?」

「ジルは、私の手を振り払って行ったの…きっと、戻ってくる気はないと…」

「戻ってくる気があるかどうかなんざ、本人にしかわかんねぇけどよ。追いかけていくこたぁそれがわかんなくなって出来んだろ。」


ゼアスさんが焚き火に木をくべながらぶっきらぼうな口調で言ったその言葉に、私は目を見張った。


…私は…どうして、一度手を振り払われたぐらいでジルのことを諦めようとしたんだろう。


「うん! そうだね、エリシアも追っかけるよ!」


エリシアも、そう両手で拳を作りながら言う。


「…シルヴィはどうすんだ?」

「…私も、追いかけたい…。もっとジルと一緒に旅がしたい…!」

「よし、決まりだな。んで、ジルが行きそうなとこってどんな所だ?」


ジルが、行きそうなところ…。

きっと、人がいなさそうで、ドラゴンも居なくて…静かな場所で隠居したいなんて思ってそう。


そう考えると、ジルって冒険者に向いてないんだなって思ってしまう。

あんなにも強くて、そして誰にでも優しいのに…。

勿体無い限りだ。

…誰にでも、優しい…。

ってことはきっと…。


「やっぱり、静かなとこでしょ? 無人島とかかな?」

「ま、大陸外にある小さな島にゃ確かに人もドラゴンも居ねぇけど…魔物が大量発生してんぞ」

「ジルって魔物も嫌がりそうだもんね」

「そんな都合いいとこなんか殆どねぇぞ?」

「それもそうなんだけど…ジルは、この大陸の惨状を見てから、一匹で逃げて行っちゃうようなドラゴンかしら…」


私の口からついて出たのは、そんな言葉だった。


「きっとジルは、この大陸の人たちを助けようとすると思うの」

「まぁ…そうだろうな。」

「うん、そうだね! ジルはエリシアのことを助けてくれた、すっごく優しいドラゴンだもん!」

「なら、他の村の方をあたってみる必要があるな」

「そうね…ジルの故郷の村の人たちはどうしよう…?」


あの村には、一人しかいなかったけれど、きっとほかの人も何処かに隠れているはずだ。


「助けに行った方がいいよね? でも、何処にいるかわかんないね…」


そうエリシアが困ったように言う。


「自力で魔物から逃げて隠れたんだ。当面は心配ねぇだろ」


そう、ゼアスさんが言う。

その言葉にエリシアも小さく頷いた。


「じゃあ、ほかの村を先にあたろう!」

「よし、夜が開けたら出発すんぞ」

「うん、そうしましょう」


また、ジルに会えるかもしれない、そう思うだけで私には力が湧いてきた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なんて…なんて無様なんだ。

女の子の手を振り払って、あんな顔させて…挙句転んで泥だらけになって、こんな木の実だらけの場所に一人ぼっち…。


…でも、これでよかったんだ…。

これで、三人に悪いことが起こることは無い。

僕はもう、僕のせいで誰かが傷ついたりするのはごめんなんだ。


僕はすばやくドラゴンの姿になると、森から抜け出した。

…これからどこに行こう。

すぐにこの大陸から出て、静かなところに行くのもいい…けど…。

こんなふうに魔物に荒らされた土地を目の当たりにしてから、この土地に住んでいる人たちを見捨てて逃げてしまうのもどうなんだろう、と思ってしまう。


…僕に出来ることが、何かあるのかな…。

でも、何もやらずに出ていったら、罪悪感が募りそうだ。

とりあえず、何処かに近くの村を目指そう。


僕はそう決めて、翼を広げ、空へと飛び立った。



二時間ほど空を飛び、空も白み始めた頃、僕は村と思われる『場所』に、到着した。

この言い回しのわけは、その村と思われる場所には家がひとつも形を残しているものがなかったのだ。

あるのは燃え尽きた瓦礫や木材。

そして、大量の魔物だった。


…なにこれ…大陸の内部なら、被害は少しは少ないんじゃなかったの…?


ここの方が、ギルド支部があった場所よりもよっぽど酷い。

どうしよう…ここに降りて、魔物と戦う…?

でも、こんな惨状じゃ多分誰も生き残ってないだろう。

引き返そうと考え始めた時、僕は空から、信じられない光景を見た。


三匹の僕よりもかなり大きなドラゴンが、大量の魔物を引き連れて僕がもと来た方向に飛んでいってる…!?

…どうして…魔物を操ることが出来るんだ…?

魔物にはそんな知能は無いはずなのに…。


…いや、違う。

あのドラゴンたちは、魔物を操ってるんじゃない。

自分を囮に、魔物達を先導してるんだ。

…そして、村を襲わせている…?



…だとしたら…シルヴィたちが危ない…!!


僕はシルヴィの手を振り切って逃げてきたことも忘れて翼を羽ばたかせ、全速力で元来た道を戻り始めた。

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