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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第二章:ヘタレのジル、ギルドに入る。
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前世の故郷

ゼアスさんの転移魔法で移動してきた僕達の目の前には、廃墟と化した村が広がっていた。

人は一人も見当たらず、家も燃え尽き崩れ落ちている。


「…ここはこの前の町よりも酷いみてぇだな」


そんなゼアスさんの言葉を、僕は未だにずきずきと痛む頭を両手で抑えながら聞いていた。

結局ゼアスさんの怒りを買った僕は、ゼアスさんの魔法の弾丸をすべて避けきり、人間の姿になって謝ろうとしたところで、脳天に拳骨をくらったのだった。


「…本当ね、人もいないみたいだけど…みんな何処かに避難したのかしら…」

「普通の村人が、自力で魔物達から逃げられるとは思えねぇけどな」

「でも、魔物って頭悪いし、隠れてたら大抵見つからないよ?」


そんな風に考えている三人の後ろで、僕は頭をさする。

すると、いつもは出っ張ってい無いはずの頭の一部が膨らんでいる。

…あぁ、たんこぶが出来てる…。

本当にゼアスさん、容赦なく殴るんだもんなぁ…。

僕を殴る時のゼアスさんの表情と言ったら、餌を横取りされて怒ったゴリラのようだった。


そんな風に思い返していた僕の目に付いたのは崩れ落ちている民家の横にちらりと除く畑だった。


…あれって…。

よく見てみれば、似ている気がする…。

村の形も、家の配置も…全部。

まさか…。

まさかね…。


そう思いながら、気がついたら僕はシルヴィとゼアスさんを追い越して走り始めていた。


「おい、ジル!?」

「ジル! ひとりで先に行ったら危ないわ!」


そんな声が後ろから聞こえる。

けれど、足は止まらない。


崩れ落ちた民家のすぐ横にある畑…もし…もしも僕の記憶が正しければ…!

その民家の横には、踏み荒らされた畑。

そして、不自然に倒れた楕円形の大きな石があった。


「…!!」


…ここは…やっぱり…。


僕は畑を突っ切って、倒れた石を優しく起こした。

石の側には、枯れた花が一輪千切れた状態で落ちていた。

…やっぱり…そうだ。母さん…ただいま…。


「ジル! 急にどうしたの!?」


息を切らして、僕に追いついてきたシルヴィが、そんなふうに僕に声をかける。


「…シルヴィ…。ここは…前世の僕が、住んでいた村だ…」

「…え?」

「前世っつーのはどういうことだ? ジル」

「エリシアもその話知らない!」


そんな風に賑やかに話しかけてくるふたりに、僕は前世の記憶があること、そして、前世では人間で、この場所に住んでいたことを話した。

それを聞いたエリシアとゼアスさんは、驚いたような顔はしたが、信じてくれたようだ。


「…それでこれは…僕の母さんのお墓なんだ」

「…こんな、家の庭にか?」

「僕は…墓地に入らせてもらえなかった。本当の母さんの墓に会いに行くことが出来なかったから、こんな風にここにお墓を立てたんだ」

「どうして入らせてもらえないの? ジルのお母さんなんでしょ?」


エリシアの問いかけに、僕が答えようとした瞬間、村の崩壊した建物の影から、一人の青年が出てきた。

穀物の入った袋を沢山抱えているようだ。


…あの男の人…見たことがある…。

やっぱり僕は、死んでから一瞬で生まれ変わったみたいだ。

母さんの墓にお供えとして置いた花は枯れていたが風化してはいなかったし、あの青年も、最後に見た時とあまり姿は変わってない。


その青年は、僕の姿に気づくと、驚いて目を見開き、恐怖に顔をひきつらせた。


「なんだ、生き残りか? 俺達は…」

「なんで…! なんでだ! なんでお前が生きてんだよ!?」


青年に気づき、声をかけたゼアスさんの言葉を無視し、その青年は僕を指さしてそう叫ぶ。


「あ…ぼ…僕は…」

「実の母親を呪い殺しても飽き足らず、お前は大量の村人を呪って死に至らしめた!!」


…!?

僕が、村人を…殺した…?

そんなことをした覚えはないし、僕にそんな力があるとも思えない…。


「死んだフリして生きながらえてたのか! 悪魔の手先が!!」


青年は持っていた袋を捨て、一直線に僕に向かってくる。

そして、僕の顔を殴りつけた。


…いたっ…いけど…。

ゼアスさんの拳骨の方が痛かったな…。

たんこぶできてたし…。


僕が地面に倒れても、その青年の攻撃は止むことがない。

腹や足を蹴られ、頭を踏みつけられる。


…やっぱり、こうなるのか…。

僕は何も出来なくて、誰からも嫌われる。

ドラゴンになって、何か変わったと思ってた。

けど、結局自分じゃ何もできない。

駄目な奴のままだ…。


「やめて!」


そんな声とともに、僕の頭を踏みつけていた足が退けられる。


「し…シルヴィ…」

「急に何するのよ! ジルを傷つけるのは、許さない…!」

「お前らはこいつが何者か知らないからそんな風に肩を持てるんだ! こいつが村の人間に何をしたか…!」

「…僕は…」


ゆらゆらと、立ち上がる。

頭がクラクラするが、そんなこと、気にしてられない。


「僕は確かに…母さんを殺した。僕のせいで母さんは死んだんだ…。でも、村の人を殺したっていうのは…わからない…」

「…ジル…?」


困惑した表情で、シルヴィが僕の顔を見た。


「あくまでしらを切るつもりか!」


そんな声とともに、青年は僕の首を掴む。


「お前が死んだ直後、村の者の多くが不治の病に倒れた! お前が…! 俺たちを呪ったんだろう!!」


…く…苦しい…。

ドラゴンの姿に変われば、逃れられるけど…でも…。


「死ね! お前なんかがこの世にいるから…!! 俺達が不幸になるんだ!!」


…!!

昔…母さんが死んだ時、僕が思ったことと、同じだ…。

僕がこの世にいるから…母さんが不幸になった。

前世の僕は…生まれてきちゃいけなかった。

…同じ姿の人化を持つ僕も…同じか…。

僕は、生まれてきちゃいけなかったんだ。


「えい!」


そんな声とともに、僕の首を掴む青年の肘のあたりを、突然エリシアがチョップした。

青年の腕が曲がり、力が抜ける。

その瞬間、僕の肺に酸素が流れ込み、咳き込んだ。


「ジルは人を呪ったりしないよ。エリシアのことを助けてくれた、命の恩人だもん」

「…っ! お前らは騙されてる!! そいつは…!」

「…僕…は…。居るだけで…周りの人を不幸にする害虫だ…」

「…こいつ…俺の予想を超えて卑屈になりやがった…」


そんな村人の青年の声を無視して、僕は地面に這いつくばる。

前世では、何度村人に頭を踏みつけられながら、『生まれてきてごめんなさい』と謝らせられたのかしれない。


「ちょっと、ジル」


そんなシルヴィの声にも、顔が上げられない。

上げるのが怖い。

昔は、誰に、どんな視線を向けられても平気だった。

どんなに蔑まれても、迷惑がられても…。

僕が悪いからと、そう割り切って生きていけた。

…けど…今は……エリシアに、ゼアスさんに、そしてシルヴィに、侮蔑の目で見られたらと思うと…。


「ジル! どうして顔を上げないの? あなたは、本当にこの男が言うように村の人を呪ったの?」

「…僕……僕は…!」

「違うでしょ! あなたは前に私が、どうして死んだのか問いかけた時、村の人を恨んでなかった! ほら、顔を上げて!」


シルヴィの言葉に、僕は恐る恐る、顔を上げてみる。

そこで待っていたのは…。

侮蔑の表情じゃない。

シルヴィの強気な笑顔と、エリシアの優しげな眼差し。

ゼアスさんに限っては、呆れたような顔で僕の土まみれの顔を見ていた。


「お前ら…そいつは災いを呼ぶんだ! 生かしておいちゃいけない!」

「まぁ、確かにこいつは俺を落としやがったしなぁ。それ相応の報いを受けさせるべきだが…」


こんな時になんだけど…報いなら、さっきの拳骨でチャラじゃないのか…。


「死んじまったんじゃつまんねぇ。折角パーティを組んだんだからよ」

「…なんなんだよ、お前ら…! そいつの何を知ってるっていうんだ!!」

「何も知らないわ。私達は、昔のジルのことは、何も知らない。でも…」

「一緒に旅してれば、ジルが優しいってこと、エリシアたちには伝わるよ」


エリシアの方に視線を向けると、エリシアは僕に向かって可愛らしい満面の笑顔を向けた。

…誰も…僕に何も聞かない…。

嫌わない…。


「おーし。何が何だかわかんなかったが、とりあえず引き上げんぞ!」


そんな声とともに、僕の体がひょいっと持ち上げられる。

…え…?


「ぜ…ゼアスさん…!」

「ま…待て!! そいつは…!!」


慌てて追いかけてこようとする村人の足元に、ゼアスさんが一発、魔法を打ち込んだ。

地面はえぐれ、その村人の表情は固まった。

それからはもう、追いかけてこなかった。


「派手に泥沼に突っ込んだ鼠みたいな面だなー。ジル」


それは…どういう面かわからないけど…。

とりあえず僕は、怒ったゴリラにも勝る、相当ひどい顔をしてるみたいだ。


「ほんとだね、お風呂お風呂! エリシアが洗ってあげるよー!」

「エリシア、それじゃジルの気が休まらないわよ」


僕は…。

僕は…どうしようもなく駄目駄目な…誰からも忌み嫌われる…そんな存在で…。

なのに…どうしてそんな害虫のような僕のそばに笑顔の花が咲くんだろう…。


「……。おいジル。てめぇがしけた面してんのはまぁいつものことっちゃそうなんだが、その思いつめたような面は癪に障る」

「…え?」

「笑え」

「…そんな…無茶な…」

「えーい、こちょこちょこちょー!」


そんなエリシアの声とともに、僕の脇腹に、脇の下に、エリシアがくすぐるように素早く手を動かした。


「わっ…ちょっ…やめ、あ…あははは!」


息できない…!

死ぬんだけど…!!

新手の拷問かなにかかと思い始めた頃、エリシアはやっと手を止めてくれた。

もはや息切れでゼーゼー言っている僕に、他の三人は優しく笑いかけた。


…みんな…村人が僕にあんな態度をとった理由を聞かないで…それでも…側に居てくれる。

僕はそんな三人に小さく多少不格好に笑い返した。

最後まで読んでくださってありがとうございます!

気になることや指摘などございましたら、感想欄に書いて頂けると嬉しいです。

これからもよろしくお願い致します。

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