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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第二章:ヘタレのジル、ギルドに入る。
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ヘタレドラゴンの使命

あれ…

また…僕はあの真っ白い空間の中に人間の姿で立っていた。

連続でこんなよくわからない夢を見るなんて…。

まぁ、いつももナメクジになる夢とか、雑草になる夢とか、僕は後ろ向きな、そしてワンパターンな夢しかあんまり見ないんだけどね…。


「……く……はじ……」


また…声が聞こえる。

前回よりも、聞き取れない気がする。

…この声の主は何者なんだろう?

お化け…にしてはやっぱり声が可愛いし…。

僕に恨みがあるお化けなんだとしても…こんな可愛い声の女の人は前世でもあったことがない。


「………勢………突…る…を……ろ」


…本当に、今回は全然聞き取れない。


聞くこともほとんど諦めた僕の目の前に、光の塊が現れる。

高さも横幅も、僕と変わらないような、大きな光の塊だった。


なに…これ…。

火の玉…とは、違うみたいだし…。


そんな風に考えていたと時、僕の目の前でその光がはじけた。

そして、はじけた光の中から、美しい女の人が出てきた。

美しい茶色のウェーブのかかった長い髪をなびかせ、白く柔らかそうな布を纏っている。


「…君は、誰…?」


なぜだか、この人に前にあったことがある気がしてならない…。

でも、どこで会ったのか、全然思い出せない。

だって前世では、母以外の女性と話したこともないはずなのに。


考え込む僕に向かって、その女性は口を開く。

けれど、その女性が口を開閉しても、声は聞こえてこなかった。

僕は必死に、その女性の口の動きから、何を言っているか予想しようとした。


「お…もい…た…せ? しめ…い…お…?」


…思い出せ、氏名を?


「えっと…僕、ジル=オルドランドです…」


僕の返答を聞いて、その女の人は勢いよく首を横に振る。


「え…?」


そして、またしめい、という部分を強調するように口を開閉させた。

もしかして…


「名前の方じゃなくて…やらなきゃいけないことってこと…?」


僕の言葉に、女性は頷いた。


「…僕の…やらなきゃいけないことって…? 僕は…君に会ったことがあるの…?」


いくら質問をしても、もうその女性は答えてくれなかった。

その女性が僕に背を向けると、真っ白な空間も遠ざかっていく。



そして僕は柔らかな光に包まれながら、目を覚ました。


…なんだったんだろう、あの夢は…。

使命…ってなんなんだろう。

あの途切れ途切れの声と…何か関係してるのかな…。

でも…僕の平凡な頭でいくら考えても、わかりそうにないや…。


僕はそのまま、考えるのを中断して、自分の姿を見る。

今僕は白い鱗に包まれたドラゴンの姿だった。


…そっか、いつ魔物に襲われてもいいように、ドラゴンの姿で眠ったんだっけ…。


僕のすぐ横にはエリシアがドラゴンの姿で丸くなって眠っていて、そんなエリシアに寄りかかるようにシルヴィが眠っていた。


あれ?

ゼアスさんは…?

ボロボロになったギルド支部の中を見回しても、ゼアスさんの姿は見えない。

昨日は一緒にこの中で眠ったのに…。


僕はエリシアとシルヴィを起こさないように人間の姿になると、ギルドの支部から出てみることにした。

するとギルドから出てすぐに、巨大な魔物が三体、こちらに向かってきているのがわかった。


昨日一掃したはずなのに、町の方にもまた魔物がなだれ込んでいるみたいだ…。

でも、それならどうしてギルドの方へは来てないんだ?


そう思いながら僕はドラゴンの姿になろうとした。

だが、次の瞬間こちらに向かってきていた魔物が三体とも一気に弾け飛んだ。


「…え…?」


確か今、あの辺から何かが魔物に向かって飛んでいった…?

ギルド支部の入口から真っ直ぐ歩いていくと下り坂になっていて、その坂の下の方から、何かが飛び出したのが見えた気がするんだけど。

僕が小走りでそっちを見に行くと、そこにはあぐらをかいて猫背で座り魔法陣に包まれた、紺色の髪の男が一人。

その男は、こっちには気づかずに、町の方にいる魔物に強力な魔法を飛ばしていた。


「…くっそねみぃ……」


そんな呟きが聞こえてくる。

…ゼアスさん…?

まさか、ずっとここで魔物を倒してくれてたの…?


僕がそんなゼアスさんに近づいていこうとすると、僕の足元で小枝がパキッという音を立てる。

それを気にせずに進んでいこうとした次の瞬間、僕の目の前に、魔法の弾丸が迫っていた。


「うわっ!?」


僕は驚いて声を上げながら仰け反り、ギリギリのところでそれを避けて尻もちをついた。

一方で、飛んでいった弾丸はギルド支部の横に生えていた木を消し飛ばした。

…いっ…いきなり魔法を飛ばすなんて…!


「なんだ、ジルか」

「じ…ジルか、じゃないよ…。あれ、当たってたら僕死んでたよ…」

「てめぇが後ろから近づいてくんのが悪ぃんだろうが。っつーか、何避けてやがる。後ろの建物に当たってたらどーすんだよ」


後ろから近づいたことは謝るけど、避けたことに関して怒られるのは少し納得が行かない…。

避けるな=死ねって意味だよね、それ…。


「ジル、ちょっと来い」

「…? なに?」


僕がゼアスさんに近づいていくと、ゼアスさんは片手をあげ、僕に手のひらを向けた。

よく意味がわからず、僕もとりあえず同じように手をあげてみる。

すると、ゼアスさんは自分の手のひらを僕の手のひらにぶつけ、そのまま寝転がった。


「バトンタッチだジル。俺はちょっと寝る」

「…ここで?」

「…あぁ…」


あぁ、という返事の最後の方はもうもはや寝息だった気がする。

多分、夜通し眠らずにここで魔物を倒し続けてくれたんだと思う。


…いい加減な人だって思ってたけど…実はすごく面倒見がいい人なのかな…?

…相変わらず掴めない人だ…。


「とりあえずは…ありがとう、ゼアスさん。…バトンタッチされたら、仕方ないよね…。やろう」


僕は小さな声でそう自分を奮い立たせ、ドラゴンの姿となって空へと飛び立った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕が魔物を粗方倒し終わり、ギルド支部の建物へ戻って、そのあとシルヴィとエリシアと朝食を済ませても、ゼアスさんは目を覚まさなかった。

とりあえず、無理やり起こすのもかわいそうだということになり、僕がドラゴンの姿となってゼアスさんを背中に乗せて運びながら次の村があるはずの北を目指しているんだけど…。

正直、どこもかしこも魔物だらけで、移動しづら過ぎる。

ゼアスさんが起きていれば、転移魔法一発で目的地まで行けるのに…。


「ねぇ、ジル。エリシアがゼアスさん運ぶから、ジルがシルヴィのこと乗せて、飛んで行こうよ」


そう、人間の姿のエリシアが言った。

…そういえば…僕飛べたんだっけ…。

なんで歩いて移動してたのか、不思議なぐらいだ。

ナメクジ野郎なだけあって、ナメクジに塩をかけた時みたいに、僕の脳みそは溶けかかっていたのかもしれない。


『その方が速いとは思うけど…エリシア大丈夫…? ゼアスさんを落としたりしない…?』

「頑張る!」


頑張る!じゃない…!

もし落としたりしたら、普通の人間のゼアスさんの命はない……はずだけど、何となくあの人は死ななさそうな気すらする。

けど、万が一死んでしまって、化けて出られたら絶対嫌だ…。


「ジルよりもエリシアの方が体も大きいし、落ちにくいと思うんだ!」

『…確かにそうだね…。空なら魔物も襲ってこないだろうし…』

「そう! だから空からいってみようよ!」

「それがいいかもしれないわね…。さっきからこの森からなかなか抜けられないし、木が高いから方角があってるのか分かりづらいし…道に迷わないためにも」

『そうだね』


三人の意見が一致し、ゼアスさんを僕の背中からエリシアの背中に移そうと、僕は体を振ったりよじったりしてみる。


…あと、ちょっと…。


ゼアスさんの体がエリシアの上に乗りかけた時、足元にあまり気を配っていなかった僕の足が盛大に滑った。


『あ…!』

『わぁぁ!?』


そんなエリシアと僕の声が響いた後、滑った拍子に僕はバランスを取れなくなりその場でべしゃっと転んでしまう。


…う''…お腹強打した…。

一瞬息ができなかったよ…。


「…ジル…てめぇ…」


地面に這いつくばっている、まさにナメクジ野郎というあだ名がお似合いな僕に、そんな低い声が飛んでくる。


…や…やらかした…。

エリシアに乗りかけてたゼアスさんの体は、僕が転んだことによって半分ぐらい土台を失い、地面に落っこちてしまったみたいだ…。

僕はエリシアにどうこう言える立場じゃ無かったみたいだ。

僕の横で、ゼアスさんが頭に片手を当てながら起き上がった。


『ご…ごめん…! わざとじゃないんだ…!』


そう、必死そうなドラゴンの声が森に響く。


「…何言ってるかわかんねぇが…言い訳なんて男らしくねぇ真似してんじゃねぇぞ…? 俺の眠りを妨げやがったからには、その報いを受ける覚悟はあるんだろうな」

『…ひっ…!』


そんな言葉を聞いて、僕の顔はドラゴンであるにも関わらず盛大に引きつっていたことだろう。

逃げようと起き上がる僕に、ゼアスさんは容赦なく魔法の詠唱を始めた。


そしてその日、いつもは静かなはずの森の中に、巨大な破壊音とドラゴンの悲鳴が響いた。

それはもう、魔物も逃げて行ってしまうぐらいに、恐ろしい悲鳴であった。



最後まで読んでくださってありがとうございます!

よければブックマークよろしくお願い致します。

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