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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第二章:ヘタレのジル、ギルドに入る。
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不可解な夢

僕は気がつくと、真っ白な空間に突っ立っていた。


…あれ…?

ここは、どこだ?

確か僕は転送装置で転送してもらったはずじゃ…?


他のみんなの姿はどこにも見当たらず、何処までも続く真っ白な空間に少し怖くなってくる。

ここは何なんだ?


「ぎゃ…襲が……まる」

「誰っ!?」


聞いたこともない、鈴を転がしたかのような綺麗な声が、途切れ途切れに聞こえてきた。

けれど何処にも、僕以外の生き物の姿は見えない。


…お…お化け…?


そう思った瞬間、背筋が寒くなる。

いやでも、お化けがあんなに可愛い声してるのか…?

可愛い声の人が死んでお化けになったら可愛い声のままなのかな…?


とにかく、ここから出たい。

けど…どうしたら…。


「二つの…力が衝…す…の…止め…」

「ぎゃあぁぁ!!!???」


また!

また、声が!!!

途切れすぎて、それから僕の悲鳴でほとんど聞こえなかったけど、そんなのどうでもいい。

僕はこんな不気味なところから早くおさらばしたいんだ!


「…る……ジル…!」


また、声が聞こえる…!

でも…この声は…シルヴィ…?

何度も聞いたことのある、優しげな響きを持った声だ。


「シル…ヴィ…?」


そう声を出すと、真っ白な空間が遠くなっていく。

シルヴィは…何処に…?

真っ白空間が遠くなって、僕は暗闇に包まれた。

暗闇の中、僕は必死に手を伸ばした。

心無しか、手も持ち上げづらい。

精一杯腕を伸ばすと、手に温かく、柔らかいものが触れた。


…なんだ…これ…?


「きゃあ!?」


というシルヴィの声で、僕は暗闇から引き戻された。

…あれは…夢…だったのか…。

にしてもなんの夢だったんだろう。

いつもはナメクジとか雑草とかゴミとかに転生するような夢しか見ないのに…今回はちゃんと僕だった。


目を覚ました僕は見たことのない建物の中に寝転がり、目の前には頬を真っ赤に染めたシルヴィの顔。

そして僕の伸ばした右手が掴んでいるのは…。

し…シルヴィの…?


「…え……?」

「ジルの変態!!!」


そんな声とともに、強烈なビンタが僕の右頬を強襲する。

バチンっという大きな音が室内に響く。

だが、その痛みよりも僕は手の感触に困惑していた。


ぼ…僕はシルヴィに…何を…!?

手に残る、温かく柔らかい感触。


僕は…僕は…シルヴィの胸を…!!


「すっ…すいませんでした!!!」


状況を把握した途端に、僕の顔に熱が集中した。

僕はなんてことを…!!

命の恩人の胸を鷲掴みにするなんて…!!

…嫌われた…!

絶対に嫌われた!!


僕はとにかく謝ろうと最高速度で仰向けで寝ていた状態から土下座へと体制を変える。


「おいジル。お前なに女の胸触ったぐらいで顔真っ赤にしてんだ」

「は…!?」


僕の完璧な土下座を崩したのは、ゼアスさんのその一声だった。

ばっと顔を上げると、ゼアスさんがにやにやしながらこっちを見ている。


「お前もしかしてど…」

「わぁぁぁぁぁ!?」

「止めに入るのが早ぇよ」


ゼアスさんが言いかけた言葉どころか前世では母以外の女性と話したこともないって何度も言ってるじゃないか!

そんな事よりも…!

僕から随分と離れた場所で縮こまりながらこっちを睨んでいるシルヴィに、土下座の体制を崩さず四つん這いで近づく。

正直こっちのほうが、走るよりも速いんじゃないかというような速度で。


「ひっ…」

「ほっ…本当にごめん!! さっきの本当にわざとじゃ無いんだ!! でも、シルヴィが死ねって言うならクズらしく死ぬから…!」

「…もう…」


シルヴィのそんな声が聞こえるけど、僕は顔をあげない。

きっとこのすぐあと死刑宣告だ…。

どうやって死のうか…。


「もう、いいわよジル」


そんな声とともに、僕の頭を何かがポンっと優しく叩いた。


「わかりました! 死にます!! って…え?」

「わざとじゃないっていうのは、わかってたから…。ゼアスさんだったら死ねって言ってたかもしれないけど」

「何でだよ!?」

「え…え? 僕、死ななくていいの? 海に沈んで魔物達に食い殺されようかと思ったんだけど…」

「なんて悲惨な死に方しようとしてるのよ!」

「お詫びの印に悲惨の方がいいかと思って…」

「エリシア、ジルが死んじゃったら嫌だ!」


そんな声と共に、エリシアが僕に抱きついてくる。


「え…エリシア…」

「それに、エリシアのなら触ってもいいよ!」

「……へ…?」


エリシアは笑顔で僕の目の前で両手を広げる。


「い…いいわけないでしょ…!」


と言いながら顔に熱が集中するのも、視線が下降するのも正直のところ仕方ないと思う…。


「って言いながら何顔赤くしてんのよ、変態!!」

「ぶっ…」


シルヴィの変態という一声とともに、今度は左頬にビンタが飛んでくる。


い…今のは僕悪くないと思うんだけど…。

脳みそが揺れて目の前がぐらぐらする…。


「おいおめぇら、いつまで遊んでんだ。そろそろこの転送されて来た小屋から出るぞ」


そんなゼアスさんの一声で僕達はハッと我に返る。

急に全員真面目な面持ちになるが、僕の両頬は赤く腫れ、ふざけているのかと言われても仕方ない顔である。

そして、この時点で僕は、あの不可解な夢のことを忘れてしまっていた。

絶対に忘れてはいけない、夢のことを。


ゼアスさんが小屋の一つしかない扉を押し開ける。

すると目の前に広がっていたのは、真っ赤に燃え上がる町並みだった。

横にあるギルド支部も、無事とは言えない佇まいだ。

そして大きな火柱が立っている町に、いくつもの魔物の頭が蠢いているのが見える。


……想像以上に酷い…。


「行くぞおめぇら。あれを止める」


そんなゼアスさんの声に僕はちらりとゼアスに視線を向けた。

すると、ゼアスさんは今までに無いほど真剣で、険しい表情をしていた。



最後まで読んでくださってありがとうございます!

よければ、ブックマーク、感想、評価など、よろしくお願い致します。

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