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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第六章:ヘタレのジル、神の本拠地へ。
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不死のバケモノ

神が手を振り下ろした瞬間に天井が崩れ落ち、僕は慌ててシルヴィの方へ飛び出すとシルヴィを抱き抱えて瓦礫から逃れた。

瓦礫の上に立ち、天井があった場所を見上げる。

すると上は天井がなくなり外に繋がったわけではなく、更にもう一枚、上方に天井があるようだった。


そしてその天井より少し下の方では、ふわふわと無数の武器が浮き上がっていた。

大剣、片手剣、槍や鈍器など、物騒なものばかりだ。


「…あれは…なに…?」

「……とりあえず、穏やかなものではないよね」


もう色んなことがありすぎて、段々と何があっても僕は驚かなくなってきている。

げんに今、武器がふわふわと浮き上がっているにも関わらず別に不思議だとも怖いとも思わなかった。

慣れとは、怖いものだ。


ふわふわと浮いている武器は、案の定僕とシルヴィの方にひゅんっと音を立てて飛んでくる。

まるで、武器自体が意志を持って、僕達に攻撃してきているみたいだった。


僕は一本目の武器を軽々と避ける。

けれど、今度は上空に浮き上がっていた武器が一気に全て僕達に襲いかかってきた。


「ジル…!」

「シルヴィ、しっかり掴まってて!」


僕のその言葉に、シルヴィはコクリと頷く。

それを確認した直後、僕は飛び上がったり伏せたりしながら、飛び交う武器を避けていく。

シルヴィを抱き抱えているため、あまり体の外に魔力を放出して冷気を出さないように…。

そう気をつけながら、僕は武器を避け続ける。


しかし、それでは力の半分位しか出せなかった。

何度かは鋭い刃物が僕の体をかすめ、痛みが走る。


…これくらいなら、全然大丈夫だけど…。

このままじゃ反撃ができない。

でもシルヴィを離したら、シルヴィの方を攻撃するに決まってる。


僕はシルヴィを下ろすに下ろせず、神に反撃もできず、防戦一方になってしまっていた。


そんな僕の胸を、シルヴィがとんっと叩く。

一瞬だけシルヴィに視線を向けると、シルヴィは力強く頷いた。

恐らく、離せという合図だ。


こんな風に決意したシルヴィを止めることはほぼ不可能だ。

僕は仕方なく、神の攻撃がやんだ瞬間を見計らって、シルヴィを地面に下ろした。


下ろされたシルヴィは、すぐに神の方に向き直って杖を構える。


僕は今、シルヴィがどこを怪我しているのか、把握出来ていなかった。

そこまで、ひどい怪我をしてないといいんだけど…。


シルヴィの腹のあたりの服に滲んでいる血が気になって仕方がない。

傷口が見えないからなんとも言えないが、付着している血の量から見ると、結構深手なのではないかとも思える。

早くここを片付けて、マアヤさんに見せないと…。


僕はシルヴィを守るように前に立ち、抑えていた魔力を解放した。

力を取り戻してから、僕はほとんど寒さを感じなくなっていた。

そのせいで、今この場所の気温がどれほど下がったのかは分からなかったが、神の吐く息が白くなったのを見て、僕は後ろを振り返った。


「シルヴィ! 元来た道を戻れる? 皆と合流してほしいんだ!」


僕の言葉に、シルヴィは頑固に首を横に振った。


「いや! ジルを一人で置いてはいけないわ!」


そう言いながらシルヴィは杖を構える。

そのシルヴィの息は白く、腕は震えているように見える。


「私も一緒に戦う!」

「…絶対、無理しないで」


僕はそれしか言えなかった。

シルヴィが自分の意見を曲げない性格なのはもうわかっている。

一度大きく下がってしまった気温は、日も当たっていないこの場所では簡単には戻らない。


なら、全力で、最速で倒すしかない。


僕は飛び回る武器に手を向けると、瞬時に全てを氷で包み込んだ。

そして、一気に神との間合いを詰めて、氷の剣を作り出す。

そして、なおも武器を操って攻撃してこようとしている神の腕に、シルヴィの的確な雷魔法が落ちる。

そして僕は神の胸に、氷の剣を突き刺した。


確かに感じた手応え。

僕の目の前で、神はその場に崩れ落ちた。


…終わった…のか……?


「ジルっ!」


後ろから、シルヴィの嬉しそうな声が聞こえて、振り返ると、随分と顔色の悪いシルヴィが、それでも嬉しそうにこちらに駆けて来ていた。

左手で脇腹を抑えながら、杖は腰紐に引っ掛けている。


…やっぱり、怪我がひどいのかもしれない。

すぐにみんなの所に…。


そう思った瞬間だった。

僕の左肩が何かに掴まれたかと思うと、鋭い痛みが走る。

驚いて視線を向けると、もはや人間というよりはバケモノの姿に近い神が、僕の肩に噛み付いていた。

ぎりぎりと噛む力を強くされるせいで、どんどんと痛みが増していく。

それを僕は振り払い、肩を抑えながらよろよろと数歩後に下がった。


「ジル…!! 大丈夫!?」


シルヴィも神が起き上がるだなんて予想外だったみたいだ。

驚いたように声を上げながら駆け寄ってくると、呪文を唱え、僕の怪我を治そうとする。

しかし、僕の怪我をした部分が緑色の光に包まれても、一向に怪我が治る気配はなかった。


「どうして治らないの…!?」

「……ヴィッタさんの怪我と同じだ……。バケモノに噛まれたら、治癒の魔法が効かない…」

「あいつもバケモノってこと…?」


シルヴィは、恐怖に表情を歪めながら、神の方を一瞥する。


「…心臓を貫かれても死なないんだから、立派にバケモノだよね…」


…さて…どうしたらいい…?

僕はまだ一応戦える。

けど、シルヴィは限界だ。

早くマアヤさんの所に連れていかないと…。


「心臓を…貫かれても…?」


シルヴィは、小さくそう呟く。

そして、僕の方に視線を向けると、青白い顔色で言う。


「私、一度来た道を戻るわ!」

「…え……?」

「必ず突破口を見つけてみせるから、少しの間だけ待ってて!」


そう言い捨てると、シルヴィは元来た道を引き返そうと踵を返した。

僕はそんなシルヴィの腕を掴む。


「し…シルヴィ! 無茶だよその怪我で…!」

「大丈夫よ。約束する、私は死なないから」

「…っ…」

「だからジルも、死んじゃダメよ! 人の心配より、自分の心配をしてよね!」


シルヴィはそういたずらっぽく笑いながら言うと、シルヴィの腕を掴んでいる僕の手に、反対側の手を乗せた。


「…」


シルヴィは無言で僕の目を見る。

その真っ直ぐな瞳に、僕はシルヴィの意思を尊重するしかなかった。


シルヴィは、元きた方へと走って戻っていく。

そして僕は、もはやバケモノと化した神に向き直った。

最後まで読んでくださりありがとうございます!

ブックマークなど、よろしくお願い致します。

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