ジルの怒り
やっと…見つけた……!!
神がギルドに襲撃をかけてきてから半日くらい経ってしまったが、やっと神を見つけることが出来た。
ここまで来るのに、神は本気で殺しに来てはいない気がする。
…ここからが本番ってことかな…。
僕とシルヴィはぐっと体に力を込めて、警戒した目で神を見つめた。
「…よくここまで来られたね。ま、君たちには存分に泳いでもらったわけだけど、どうだった?」
神はにやにやしながら立ち上がり、こちらに向かって一歩を踏み出した。
神の見た目は完全に、青年の姿だ。
千年以上も生き続け、この人間の世界をおさめてきたとは思えないほどに若い。
そもそも、人間がどうやって千年以上も生きるのか、不思議でならなかった。
「答えはなしか。寂しいねぇ」
そう言いながら、神は一歩、また一歩と僕達に近づいてくる。
その笑顔が、声が、不気味すぎて僕達はじりじりと距離を取ろうと後ずさった。
だが次の瞬間、神は不可解な行動に走った。
持っていた短剣で、自分の腕を切りつけたのだ。
迸る血に、僕は目を見張った。
なにをしてるんだ…?
自分の腕を斬ることに、なんのメリットがある…?
神の行動の意図は読めないが、神の表情は何かを企んでいるように含みのある笑みを浮かべている。
まさか…。
ゼアスさんの時みたいに、僕達を操ろうと…。
そこまで考えた時、僕の目に信じられない光景が映った。
神のほとばしった血液がグニャグニャと形を変え、槍のような形になると、すごい勢いでこちらに伸びてきて、僕の横をさっと通り過ぎた。
驚いて僕は横を見る。
その時僕の目が捉えたのは、赤黒い槍がシルヴィの胸に突き刺さった瞬間だった。
「…え…?」
僕のすぐ横で、シルヴィは力なく倒れ伏す。
そんな光景を、僕はただただ呆然と見ていた。
…今、何が起こった…?
そう必死に頭を動かさないと状況を理解できないくらいに頭が混乱してしまっている。
血を流して地面に倒れたシルヴィのすぐ横にかがみ込んで、僕はシルヴィの体を抱き起こした。
「シル…ヴィ…?」
声が震える。
どうしたらいいのか、もうよくわからない。
僕の呼びかけにシルヴィは薄らと目を開いた。
そして、掠れた小さな声で
「ジル…ごめん…ね…」
と呟くと、急にシルヴィの体から力が抜けた。
「……」
状況が、理解できない。
僕の腕の中で、シルヴィは動かない。
息もしていなければ、心臓も動いていない。
シルヴィが、死んだ…?
そう思った瞬間、僕の頭の中に一瞬でシルヴィに出会ってから今までの、楽しかったこと、辛かったこと、嬉しかったこと、驚いたことに、落ち込んだこと…。
色々な思い出がフラッシュバックした。
生まれ変わった、と言っていいのかわからないけど、僕が女神に器を貰ってから、ずっと僕のそばにはシルヴィが居てくれた。
シルヴィがこの世から居なくなるなんてそんなこと、考えられなかった。
もう二度と、シルヴィと話すことが出来ないなんて…。
もう二度と、一緒にギルドの依頼をこなすことが出来ないなんて…。
どうして…こんなことに…?
そう考えた時、僕のすぐ横で神がニヤリと笑った。
…こいつの…せいか。
この時ばかりは、いつものように自分のせいだと割り切ることが出来なかった。
怒りが湧き上がってくる。
胸が痛くなるほどに、燃え上がるような怒り。
僕は怒りに任せて、体に冷気を纏い、神に向かって攻撃を始めた。
不気味な含み笑いを続ける神に、攻撃をし続けた。
けど、いくら攻撃をしても神は防戦と後退一方だった。
なぜ攻撃してこないのか?
僕にはそんなことを考える余裕はなかった。
ただ、必ず殺してやる。
必ずシルヴィの仇を取ってやる。
と、それだけを考えていた。
シルヴィが死んだだなんてそんなこと、全然信じられなくて、現実だと思いたくなかった。
こいつを、この忌々しい神をころせば、シルヴィは帰ってきてくれるんじゃないか…。
ありえないことだけど、僕はそんな希望にすがるしか無かった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
今回は短くて申し訳ありません。
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