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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第六章:ヘタレのジル、神の本拠地へ。
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道は開けた

マスターの居るはずの、崩れた石の柱がいくつもあった広場に、僕達は戻っていこうとしていた。

エリシアが元気よく先頭を歩き、その後ろをシルヴィとエリンさん、そのさらに後ろにマアヤさんとレニア、その後ろに僕、そして僕の後ろにヴィッタさんだ。


ヴィッタさんは例によって歩くこと自体に慣れておらず、歩み自体が相当遅かった。

いつもならマアヤさんがいつもヴィッタさんのそばに居るのだが、今はレニアと話しているようで、ヴィッタさんを助けようとはしていないみたいだ。


…まぁ、放っておいても大丈夫だろうと思っているのかもしれないけど。


とりあえず、ソフィアさんをおぶって運んでいる僕と、歩きに慣れていないヴィッタさんは、前の五人に置いていかれているような状態だった。


「ヴィッタさん、大丈夫ですか?」


そう僕は小さく振り返ってヴィッタさんに聞いてみる。

すると、ヴィッタさんは静かな声で、


「どうして歩くのってこんなに面倒なんだろうね?」


と、至って真面目にいう。

どうしてと言われても、毎日普通に歩いている僕としては、その面倒さすらよくわからない。


「そういえば、今ってどうして歩いてるんでしたっけ…? 今まではヴィッタさんの空間魔法で移動してたのに…」

「私が運べるのは自分を含めて五人までだよ。往復してせっかく集まったメンバーが離れ離れになるというのも危険かと思ってね…。 それに、往復するなんて疲れるし」

「…そう…なんですか…」


多分後者の方が本音だ。

でも、ヴィッタさんだったら歩いて戻るよりも往復した方が疲れないんじゃ…。

とか思ったけど、僕はとりあえず口に出さないでおいた。


僕とヴィッタさんがくだらないやり取りを交わし、更にほかの五人に遅れをとったとき、急に耳に、ここにいないはずの人物の声が入ってきた。


「皆、聞こえるか?」


と。

その声は、このギルドを統べる、マスターのものだった。


「…マスターの魔法だね。語りかけてきてる」


ヴィッタさんはそう言いながら、相当ノロノロとした歩みを止めた。

前方を歩いている五人もその声に気づいたらしく、歩みを止めていた。


「今しがた、ゼアスたちから連絡が入った。東の通路には、続いて行っている道は無かったようだ」


…そういえば…北の通路の報告って…。

してない気がする…。

そう思いながら、僕はヴィッタさんの方を向いた。

すると、ヴィッタさんは僕が聞きたいことを読み取ったのか、ニッコリと笑った。


「報告なら、私がしておいたから安心して」

「…い…いつの間に…」

「誰にも気付かれずに報告を終えることが出来るものこそ真の冒険者だよ」

「…はぁ…」

「ま、そんなのは冗談だけどね。マスターの話を聞こうか」


ヴィッタさんはにこにこといつもの調子でこちらをおちょくっているように笑いながら、そんなふうに言った。

ヴィッタさんの真の冒険者の定義はよくわからないけど、とりあえず、マスターの話を聞いた方がいいみたいだ。


「…これで、進むべき道は南側の通路に絞られた。皆、心して進んでくれ。わしもこの場所の位置調査を終えたらあとを追う」


マスターの声はそれきり聞こえなくなった。

…確かに、南側の通路は分かれ道のようなものがあったし、その進んだ先には道が一度無くなっていたりもした。

そんなのがあったのは、南の通路だけだ。

ほかの通路は、全て一本道だった。

あそこが、重要な場所へと続いてる可能性が一番高い気がする。


僕は振り返ってこちらを見ている五人の方へ慌てて歩き出した。


「ヴィッタさん? 置いていきますよ!」


僕がそう声をかけた瞬間、ヴィッタさんは空間を歪めて空間の中へ姿を隠した。

そして次の瞬間には、ほかの五人のすぐ側に姿を現した。


「え、ちょっ…」

「さぁ、みんな行こうか」


ヴィッタさんが声をかけると、みんな楽しそうに笑って先に歩いていってしまう。


「ちょ……ちょっと…待ってよぉ…」


そんな情けない僕の声が、暗い通路の中に響いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


やっとの事で僕は前を歩くみんなに追いついた。

追いついた位置は南の通路に入った後のことで、丁度分かれ道のところで皆は止まっていた。


「み…皆容赦ないよね……全然止まってくれないなんて…」

「ごめんねジル、必死についてきてるの見るの、面白かったよ!」


エリシアはにこにことそんな言葉を投げつけてくる。

面白かったって…完全におちょくられてる。

僕が恨めしげな視線をヴィッタさんに向けると、ヴィッタさんはにこりと爽やかな笑顔を僕に向けた。


…そんな表情を向けられると、講義する気も起きなくなってしまう。

それが狙いなんだろうってわかってても。


…まぁ…村で受けてた嫌がらせよりは各段にマシだよね。

蹴られたり殴られたりした訳でもなく、ただちょっと無視されて置いていかれただけだ。

ナメクジ野郎には丁度いいくらいかもしれない。

…というかそうか、ナメクジ野郎が人間様と並んで歩こうとしていること自体間違ってるのかも…。

…これからはみんなの後ろを歩こう…。


「…ヴィッタさん、きっと今ジルの思考が自己嫌悪でいっぱいよ」

「…なんで自己嫌悪になるのか疑問なんだけど…」

「ジルは大抵の事は自分が悪いって割り切っちゃうような性格だからね〜。で、割り切ってから自分はあれもダメこれもダメって考え出すの!」

「なんてネガティブな…。本当、ジルくんって面白いね」


そんな会話が僕の前方で繰り広げられていたのを、僕はほとんど聞いていなかった。


「ジルくん!」


そんなエリンさんの声で、僕はやっと無限にループされる自己嫌悪の輪から抜け出すことが出来た。


「な…なんですか…!?」


いつの間にかエリンさんは僕のそばに来ていて、今の呼び方からするに、何度か呼ばれていたのに僕は反応しなかったみたいだ。


「ここの分かれ道、どっちに行こうか迷ってるです…。さっき来た時は、ソフィアさんが左側の通路と言ったので左に行きましたが…左は通路が一度途切れたあと、その先にも繋がってたです。けど、その先には行けてなくて、右の方はまだ入ったことすらないです」

「皆は、どっちに行こうとしてるんですか?」

「それがですね…六人で右にも左にも三票ずつ入っていて、それで決めかねてるですよ」

「…え……?」


それって、僕が選んだ方に行くってこと…?

…そ…そんな責任重大な役目を僕なんかに任せちゃダメじゃないのか…!?

僕みたいな運がないやつが道を選んだりしたら、一直線に破滅まで行ってしまいそうだ。


「さ、ジルくんはどっちがいいと思う?」


そんなヴィッタさんの声に、僕はうろたえる。


「そ…そんなの…僕には……」

「決められない? じゃあ、私とシルヴィちゃん、どっちがいい?」

「どんな質問ですか!?」

「まぁまぁ、素直な気持ちで」


…質問の意図が全くわからないけど…。

素直に…素直に。

シルヴィは、ヴィッタさんみたいに僕をからかったりしない、置き去りにしたりしないし、ナメクジ扱いもしない。

…いや、正直内心どう思ってるかわからないけど、シルヴィはそんな裏表のある女の子じゃない…。


「じゃあ…シルヴィで…」


僕がそう言った瞬間、ヴィッタさんはにこっと笑う。


「へぇ…」

「…なんですか?」

「へぇー…私よりシルヴィちゃんがいいと…へぇー…?」

「だ…だってシルヴィはヴィッタさんみたく意地悪しないですし…」

「じゃあとりあえず左に行こう」


ヴィッタさんはそう言いながら、僕から離れていく。


「な…なんなんですか!!」


という僕の声がその場に虚しく響いた。

最後まで読んでくださりありがとうございます!

よければブックマークなど、よろしくお願い致します!

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