絞られる道筋
エリシアはじっとソフィアさんのことを見つめるてから、僕達の方を向いた。
「…ソフィアが、裏切ったの?」
エリシアは、直球でそう僕達に聞いた。
…エリシアは、ソフィアさんのことを何か知っていたんだろうか。
「えぇ…酷く人間を恨んでいるみたいだったわ」
シルヴィの言葉に、エリシアは困ったように肩をすくめた。
「ソフィアには子供がいたんだけどね、その子が人里に興味を持って1匹で竜の里から出ていっちゃったんだって。ソフィアもすぐにあとを追いかけたらしいんだけど、その時には手遅れだったって…」
…自分の子供か…。
それは確かに、許せないというのもわかる気がする。
きっとソフィアさんにとっては、一番大切な存在だったんだと思うから。
「ま、エリシアもその子と同じような感じで里を飛び出して人間が住んでるところまで飛んできちゃったんだけどね〜。最初に会えたのがジルとシルヴィで良かったよ」
エリシアのその言葉に、先程までの重苦しい空気が吹き飛んでしまう。
「エリシアなら誰と初めに会ったんだとしても大丈夫な気がしちゃうけど…」
「そうだね、エリシアもそんな気がする〜」
エリシアはシルヴィの言葉ににこにこと答えた後に、マアヤさんが支えているソフィアさんのことを見てから言った。
「最近は、ソフィアも穏やかになってきてて、きっと大丈夫だって思ってたんだけど…憎しみとか恨みとかを隠してただけで、本当はずっと苦しんでたんだね…エリシアは気づいてあげられなかった…。皆にも、迷惑かけちゃってごめんね」
エリシアはそう言いながら僕達に頭を下げた。
…エリシアが謝ることじゃないはずなのに、エリシアはいつもとは違う、しっかりとした口調でそう僕達に謝った。
…まだ、エリシアはドラゴンの中では幼いはずなのに、この時のエリシアからは幼さなんて微塵も感じられなかった。
ただ、エリシアはきっと仲間思いな、良い竜王になるんだろうと僕は思っていた。
「もしも次にソフィアが暴れだした時は、絶対にエリシアが止めるから任せておいて!」
エリシアはそう言いながら自分の胸をトンっと叩く。
エリシアが自信を持ってそう言うものだから、僕達も何となく安心した。
けど僕は同時に、エリシアだけに任せちゃいけないような気もした。
「じゃあ行こうー! とりあえず、この通路の一番奥まで行ってみればいいんだよね?」
エリシアのその言葉に、みんなが頷いた。
そして、先に続いて行っている通路の方へと歩き出す。
僕はマアヤさんからソフィアさんの体を受け取り、ソフィアをおぶった。
そして、エリシアの方に視線を向けてみる。
エリシアは、通路に進んでいく人達のことを後ろの方から見ていた。
僕はそんなエリシアに小さく声をかけた。
「…エリシア、大丈夫?」
「んー? なにが?」
エリシアはいつも通りににこにこと笑っている。
でも、いつもより楽しそうではない気がする。
大丈夫かと聞いて何が?と返されたら、心配している理由が直感的すぎて説明はできないけど…。
なにか、エリシアの励みになるような言葉を言ってあげておきたかった。
「なにか、僕に出来る事があったら言ってね…僕も一緒に頑張るから…」
そんなに口が上手くない僕が、必死に言葉を選んで言ってみたところで、そんなに効果があるとも思えないんだけどね…。
僕みたいなやつの、酷くしどろもどろな言葉を聞いて、エリシアは嬉しそうに笑った。
そしていつもの調子で、
「ありがとうー! ジル大好き!」
と言いながら抱きついてくる。
…若干慣れてきたとはいえ、やっぱり女の子に抱きつかれるのってやっぱりちょっと緊張するというか…。
相手がエリシアだと何となく悪いことしてるような気がするというか…。
好意を向けられるのは嬉しいが、なんだか複雑な気分だった。
その後、エリシアが進んでいっていた西側の通路をどんどんと進んで行ってみたが、五度ほどのバケモノとの戦闘のあと、続く通路がなくなってしまった。
「ここもはずれって事かしら…」
未だにバチバチと雷を発している杖を自らの横について、シルヴィがため息をつく。
その言葉に、エリンさんもこくりと頷いた。
「そうみたいですね、残念です…」
そんな二人の会話の最中、ヴィッタさん空間魔法を使うのも面倒だというようにその場に座り込んでしまっている。
僕はソフィアさんの体を降ろすことなく、そして魔法もほとんど使うことなく、ここまで来ることが出来た。
殆どの敵をなぎ倒してくれたのは、シルヴィとエリンさんで、エリシアとヴィッタさんに至っては全く何もしていなかった。
「ここも違うということは、ゼアスたちが進んでいった通路か、私たちが引き返してきた通路、ということかな」
「…もしも本当にあたり…神の居場所に続いている道があるのなら、そういうことになりますです…」
「もし、神様の居場所に続いてなかったら…どうしたらいいんだろう…」
僕の言葉に、エリシアがにこにことしながら元気よく言った。
「その時はその時だよ! 今考えてもしょうがないからね、進め進め!」
そう言いながらエリシアは元来た道を戻り出す。
進めと言っているわりに戻って行ってるじゃないか、などと突っ込みをする気力は、誰にも残っていなかった。
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