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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第六章:ヘタレのジル、神の本拠地へ。
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ヘタレはカッコつけてみたい

僕はソフィアさんを冷静に見据えながら、シルヴィやヴィッタさんたちよりも一歩前に出た状態で止まった。

ソフィアさんの言っていた言葉の意味は大方理解ができた。

ソフィアさんにとって大切なドラゴンが、人間によって殺されてしまった…というところだろう。

人間がドラゴンの怒りを買う理由は、大体の場合が同じである。


僕としては、ソフィアさんのこの暴挙は、さほど驚くことでもなかった。

ドラゴンのみんながみんな、不満もなく今は不確かな地位のエリシアに突き従っているとは、どうにも思えなかったのだ。

もちろん、ランディットさんみたいな変態は除くけど…。



つい数刻前…ヴィッタさんが、エリシアの居る通路に向かっていたはずが急に進路を変えるから何かと思ったら、シルヴィが向かった通路で神にとって好都合な事件が起こっていた。

それが、このソフィアさんの裏切りだった。


裏切り…いや、元々仲間ではなかった、ということなのかもしれないが。

なんにしても、こちらに害があるようなことであれば見逃すわけにはいかないと、僕はシルヴィとソフィアさんとの間に割って入ったのはいいものの、無様に吹っ飛ばされるわ、頭はぶつけるわで、もう結構散々である。


正直なところ、どうせ危ないところを助けるのなら、もっとカッコよく登場したかったというのが本音だけどね…。


そんなことは置いておいて…ともかく、今はドラゴンと人間が争っている場合ではないってことは確かなんだ。

こんなところで仲間割れしていたら、神の思うつぼだ。


どんな理由であれ、ソフィアさんがまだ襲ってくるようなら、多少手荒な真似をしてでも、この場を通してもらうしかない…けど、なぜだかソフィアさんは僕に対してだけはそこまでの敵意を持っていないように感じた。


「ソフィアさん…今は、争ってるときじゃないんです…。引いてはくれませんか…?」


僕は、一か八か、ソフィアさんにそう話しかけてみた。


すると、ソフィアさんは動きを止めて僕を見つめた。


『…私はもとより…あなたを傷つけたいとは思っていない。どうかそこを退いて』


…僕を、傷つける気はない…?

僕が今は人間ではないなにかだからか…。


「…でも、僕がここを退いたら、シルヴィたちを傷つけようとしますよね?」

『…当たり前。そいつらは人間だから…』

「僕だって、元々は人間です。今は…自分がなんなのかって、よくわからないですけど…」

『…でも、あなたは、今はドラゴンで、きっとドラゴンのことを殺したりしない』

「ここに居る皆だって、むやみにドラゴンを殺そうとはしません」

『信用ならない』


ソフィアさんはそこまで言うと、体に力を込めてこちらを睨みつけた。


『…ここにきている人間たちが、人類の希望…なのだとしたら、ここに居る人間を全員殺せば、人類は滅ぶ…。私はあの子にやっと、顔向けができる』


…。

なにを言っても、ソフィアさんは聞いてくれない気がする。


人間を絶滅させる…。

自分の大切な存在のためにと思いこんで、おかしな方向に思想がねじ曲がってしまっている。

僕に、何かできることがあるとも思えなかったけれど、この場に居る僕以外の人たちではソフィアさんを止めるどころか余計に刺激してしまいそうだ。


僕は視線を一瞬だけシルヴィたちの方に向けて目くばせをする。

『先に行け』

と。


僕もだけど、他のみんなも、こんなところで足止めを食っている場合ではないのだ。

今、ゼアスさんとエリシアは他の道で頑張ってくれている。

もしかしたら、二人とももう通路の最深部に近いかもしれない。

どの通路があたりで、神の居場所に続いているのかはわからない。

もはや、神の居場所にどこかの通路がきちんと続いているのかもわからないが。


もし神の居場所にエリシアの一団、もしくはゼアスさんの一団が着いたのだとしたら、この通路から離れてそちらに向かわなければならない。


そうなる前に、この不毛そうな戦いには決着をつけておかなくては…。



僕の目くばせの意味を瞬時に理解したのか、ヴィッタさんはシルヴィとエリンさんを抱え、空間魔法を使おうとした。

しかし、ソフィアさんが一声唸るような鳴き声を上げると、一瞬空間の狭間に消えそうになったヴィッタさんたちの姿がすぐにあらわになった。


「なっ…!?」

『私が用があるのは、あなたたちだけ。 …逃がさない』


ソフィアさんはそんな声と共に、僕の横を一瞬で駆け抜ける。

そして前足を地面に叩きつけると、地面から突き出た光の柱がシルヴィたちを襲った。


ヴィッタさんはおぼつかない足取りながらもその光の柱を何とか避け、シルヴィとエリンさんのことを守る。

しかし、その後の行動は、ソフィアさんの方が格段に速かった。

ソフィアさんは、ヴィッタさんが体制を立て直す前に大きな前足をヴィッタさんに叩きつけた。


「…!」


僕はばらばらに吹き飛んだ三人を助けようと駆けだす。

ここが神の本拠地だからかなんなのか、僕は女神から貰った器であるドラゴンの姿になれなかった。

だから、人間の姿で走るのが、今の僕の最速の移動手段だ。


けど、これじゃソフィアさんの方が格段に速い…!

ソフィアさんはあっと言う間に倒れているシルヴィに間合いを詰めると、冷たい瞳でシルヴィを見下ろす。

そして息を大きく吸うと、光のブレスをシルヴィに向けて放った。


僕自身は、ブレスが放たれるまでにシルヴィに近付いて抱き上げて逃げる、ということは間に合わなかった。

しかし、僕が創造した氷の柱がシルヴィを上に持ち上げ、そしてソフィアさんのブレスによって砕け散ると、シルヴィの体は宙に投げ出された。


「シルヴィ…!」


そう僕が受け止めようとすると、シルヴィは空中で一回転して綺麗に地面に着地した。


「ジル、ありがとう」


そういうシルヴィの瞳は、僕には向けられておらず、じっと真剣にソフィアさんの方を見つめている。

一方で僕は、シルヴィを受け止めようと出した行き場のない両手を、誰かにからかわれる前にひっこめることが精いっぱいだった。


あぁぁ…僕って本当にかっこつかないんだよね…。

こんなんだからいろんな人に馬鹿にされたりしちゃうんだろうなぁ…。


僕は落胆しながらも、前を向いた。


そして、僕は冷気を纏った手を前に突き出す。

ソフィアさんは、シルヴィを本気で殺そうとしてた。

もし僕の助けが間に合わなくて、シルヴィが本当に殺されてしまっていたら。

そう思うと、背筋が寒くなる。


僕はそんな時、冷静にソフィアさんを殺さずに倒すことができるのだろうか。


だって、今さっきソフィアさんがシルヴィに向かって至近距離からブレスを放とうとしたとき、僕は一瞬胸がざわついた。

ソフィアさんがシルヴィや、僕の大切な仲間達を傷つけるなら…僕達の邪魔をするのなら、僕が…。


そんなふうな言葉が、頭をよぎったのだ。


…僕は。

誰のことも殺したくない。

だから…。

ごめん、ソフィアさん。

少しの間だけ、眠っていてもらう。


僕は冷気を集中させた腕を突き出して冷気を飛ばし、ソフィアさんを氷の中に閉じ込めた。

ソフィアさんを氷漬けにしてしまったわけじゃない。

今は、分厚い氷で閉じ込めてるだけだ。

その氷の内側の範囲をどんどん狭めていき、ドラゴンの体を締め付ける。

ソフィアさんはブレスを吐いて脱出しようとするが、一部分に穴を開けられたところで分厚い氷の全体が崩れるはずもない。

僕はすぐにその穴を修復し、氷の中の空間の狭め続ける。


するとそれに耐えかねたのか、ソフィアさんは一瞬人化をした。

そして再びドラゴンの姿に戻ることで氷を砕こうとしたのだろうが、僕が待っていたのはソフィアさんが人化をする瞬間だった。

僕は一瞬で分厚い氷を蒸発させ、ソフィアさんとの間合いを詰めようとする。


…けど、その必要は無かったみたいだ。

僕の意図を綺麗に汲み取っていたシルヴィが、一瞬でソフィアさんとの間合いを詰めていき、鳩尾を殴った。


ソフィアさんはその場に崩れ落ち、シルヴィがそれを受け止める。

その一連の動作が流れるようで、シルヴィが鳩尾を殴り相手を気絶させることに慣れているようで、ちょっとだけ怖かった。

勿論、口が裂けてもそんなことシルヴィには言わない。

最後まで読んでくださりありがとうございます!

ブックマークなど、よろしくお願い致します!

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