光竜族長
しばらく通路の中を進んでいくと、前方から風が吹き荒れるような音が聞こえてきて、エリンさんと私は顔を見合わせた。
「もしかしてこの先は、外に繋がっているんじゃないですか…?」
私がそう言うと、ソフィアさんは首を横に振った。
「…この風の音が、外じゃないです…? なら、壁の一部が欠損してて風が吹き抜けてるってことですかね…」
エリンさんがそう言うと、ソフィアさんはコクリと頷いた。
ソフィアさんがこの地形を把握してるのは、さっき光で照らして見たからなのかしら…?
…光竜のことは、私も、勿論エリンさんもよく知らない。
だけど、ソフィアさんに質問しても何も返してくれなさそうだし…。
ソフィアさんの詳しい能力は、何もわからなかった。
でも、もしこの先の道がすべて見えてるのなら、それほど頼もしいことはないわね。
そう思いながら、私達は歩みを進めた。
少し先の方まで進んでいけば、案の定道は一度途切れ、壁は無く外と繋がっていた。
しかし、一度途切れたその先に、まだ通路は続いていた。
…あそこまで、どうやって行けばいいのかしら…。
でも、ソフィアさんが居るんだし、飛んでもらえれば…。
私がソフィアさんに声をかけようとした時、前方の通路が途切れている場所の淵でエリンさんが声を上げた。
いつの間にかピンで前髪をあげていたエリンさんは、驚いたように目を見開きながら私たちに手招きをした。
私とソフィアさんも、そちらの方に向かう。
すると、通路は途切れてるわけじゃなく、ただ大きく凹んでいるだけなのだということがわかった。
大きく凹んだその場所には、針が大量に敷き詰められていて、落ちたらひとたまりもなさそうだった。
「どうにか、ここに落ちないように先を進まなくちゃですけど…」
「ソフィアさん、飛んでいただけませんか?」
私がソフィアさんにそう言うと、ソフィアさんは首を横に振った。
そして、前方の上の方を指さす。
「え…?」
そちらに視線を向けると、特に何かあるわけじゃない。
けれど、強い風が吹き荒れているようだった。
「もしかして、風が強すぎるです?」
エリンさんの言葉に、ソフィアさんは頷いた。
確かに、これだけ風が強かったら飛びづらいのかもしれない。
でも…。
「じゃあどうやって、ここから先に進めばいいのかしら…」
私が困ってそう零すと、ソフィアさんは首を横に振って、指を針の山の方に向けた。
「……目的地は…そこ…」
静かな声で、ソフィアさんはそう言った。
話したことに驚いて、私は一瞬、言葉の意味が理解出来なかった。
そしてその一瞬の間にソフィアさんは、私とエリンさんの背中を押した。
「…え…?」
気がついたら、私とエリンさんの体は宙を舞っていた。
慌ててエリンさんは私の体を掴み、持っていた短剣を落ちていく途中で壁に突き刺した。
エリンさんのおかげで体が串刺しになることを免れているものの…。
エリンさんは片手で私を抱え、片手だけで二人分の体重を支えている。
そう長くは持たなさそうだった。
「…っ…」
ソフィアさんに押されたのは何かの間違えだとも思ったけれど、こちらを冷たい瞳で見下ろしているのを見た限りでは、意図的に私たちをここへ突き落として殺そうとしたとしか思えない。
「エリンさん、私を離して、脚力強化の魔法を使ってください!」
私がそう言うと、エリンさんは首を横に振った。
「そんなことしたら、シルヴィちゃんが死んじゃうですよ!」
「大丈夫です! 私は私で何とかしますから!!」
見た所、下の針は石を削りあげてできているみたいだった。
だったら、やりようがある…!!
「でもっ…!!」
そんな風に言うエリンさんの手を振りきって、私は落下を始めた。
そして杖を振り、巨大な雷魔法を発生させると針の山に向かって思い切りぶつけた。
石でできた尖った針はすべて粉々に砕け散り、私が着地できそうな場所が出来た…と思ったけれど、次の瞬間、その針が生えていた地面さえも崩れさり、私は神の本拠地である場所から外に放り出されそうになった。
放り出される直前で、私は突き出した壁の部分をつかみ、体を支える。
そして杖を腰の紐に下げると、壁の出っ張っている場所を見つけては掴み、足を引っ掛けながら上へと登り始めた。
まさかこんな所で、力の強さが役に立つとは思ってなかったわ…。
私はあっという間に壁を登りきり、ソフィアさんがたっている場所まで舞い戻った。
エリンさんも脚力強化の魔法を使ったのか、元いた場所に戻っており、私の姿を見るとホッとした様な表情をした。
ソフィアさんはその場で何も言わず、こちらの方も向かずに俯いている。
そんなソフィアさんの体からは殺気のようなものがほとばしっていた。
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