分かれ道
私は、長い通路を歩きながら、お義父さんが私にくれた杖を握りしめた。
この通路は、どこに続いているのかしら…。
最初の円形の広場から、東西南北に伸びていた通路…。
普通に考えて、どこかの通路が神のいる場所に繋がっているんだと思うけど…。
正直、通路を進んでいるだけで真っ直ぐに神のいる場所に行けるとは思えない。
きっと、何かしらの罠を仕掛けてあったり、敵を配置してあるはずだわ。
気を抜かず、慎重に進んでいくしかなさそうね。
私は一歩一歩、慎重に通路の中を進んでいった。
少し進んでいくと、狭い通路から若干開けた場所に出る。
そこには、白い外套のバケモノが何体か立っていた。
私は向こうがこちらに気がつく前に容赦なく杖を振り、雷を放って敵を一掃した。
…なんだか、こうもあっさりと行くと、変な気分だわ…。
私はそう思いながら、開けた場所を通過し、そこからまた細く続く通路に入ろうとする。
けれど、通路はそこから二本に分かれていた。
…どっちに行くべき…なのかしら…。
どちらも同じような細さの通路だし、ここは勘で行くしかないかしら。
エリシアがここにいたら、すぐにこっちー!って言って決めてくれそうなのに…。
それでしばらく進んだ後、やっぱりこっちじゃなかったかも〜って言いそうだわ。
って…エリシアのことを考えてる場合じゃなくて…。
…まぁ、どっちに行くにしろ、間違えていたなら戻ってくればいいものね。
先に左の道に行ってみよう。
そう思って一歩を踏み出した時、後ろから小さく足音が聞こえて振り返った。
今まで私が通ってきた細くて暗い通路から、誰かが近づいてきてるみたい。
「…」
私は静かに杖を構え、その人物が姿を現すのを待つ。
呼吸も忘れ、ギュッと杖を握りしめた時、通路から二人の女の人が現れた。
現れた瞬間、私は雷の魔法を放った。
通路から現れた二人の女の人は、雷の光に包まれる。
その時、私の耳に聞き覚えるあるような声が届いた。
「ひえぇぇぇぇ!?」
「…!?」
え……今の声ってエリンさん…?
私は驚いて通路から来た人の方へ近づいて行った。
すると、そこには尻もちをついた、目が隠れるほど長い前髪を垂らしたエリンさんと、美しい金髪の女の人が立っていた。
「エリンさん…と、ソフィアさん…?」
ソフィアさんは、光竜の族長だったはず...。
あまりに口数が少ないから、今まで話す機会もなかった。
「し…シルヴィちゃん……ちょっと見ない間に、強くなったですね…」
尻餅をついた状態で、エリンさんがそんなふうに言う。
どれだけ驚いているのか、目が見えなくてもわかった。
「すみません、お怪我はありませんか?」
私が差し伸べた手に、エリンさんは掴まって立ち上がった。
そし、困ったようににこっと笑う。
「だ…大丈夫です、ちょっと腰が抜けただけですから」
「ソフィアさんは、大丈夫でしたか?」
私の問いかけに、ソフィアさんはコクリと頷いた。
頷くだけで、特に何も、言葉は発さない。
「良かった…それで、お二人はどうしてここに?」
「マスターの命令でシルヴィちゃんの手助けをしに来たですよ」
「…!」
この先ずっと一人で進んでいくものだと思っていたから、エリンさんの発言がとても嬉しかった。
正直に、一人だけでは少し不安だったから。
「それで…ここにいる敵は、全部シルヴィちゃんが倒したです?」
「あ、はい」
「恐ろしい速さで倒したですね…あたいとソフィアさん、マスターの命を受けてからいち早く広場を飛び出してきたのに…」
「ここの敵は、そんなに強くなかったですから。それより、この先なんですけど…」
私はエリンさんから視線を外して、行く手にある二つの通路を指さした。
「二つに通路がわかれてるんです…。どっちに行ったらいいのかわからなくて」
「本当ですね…。なんの目印もなさそうですし…ここは当てずっぽうで行くしかないんじゃないです…?」
「やっぱりそうですよね」
そんな私とエリンさんとの会話に、珍しくソフィアさんが割り込んできた。
言葉で割り込んできたというわけではなく、そのままの意味での割り込んできたという意味だけど。
ソフィアさんは、私とエリンさんとの間を突っ切って歩いていくと、二つの通路を見比べた。
そして、美しい金色の鱗を持ったドラゴンの姿になると、ソフィアさんの両方の前足の先から美しい光が二本の通路を照らした。
はじめの方は二つとも同じくらいの強さで輝いていた通路だったが、だんだんと右の方の通路の輝きが消えていく。
それを見たソフィアさんは人化をして、こちらを振り向いてから左の通路を指さした。
「…そっちに行くべき…なんですか…?」
私がそう問いかけると、ソフィアさんはコクリと頷いた。
今のは、光竜の能力なのかしら…。
よくわからないけれど、ソフィアさんがそんなふうに言うのなら、左の方に行ったほうがよさそう…。
エリンさんの方を見ると、エリンさんもこちらを見ていて、小さく頷いた。
「…じゃあ、行きましょう。左側の通路へ」
私がそうソフィアさんに声をかけると、ソフィアさんは小さく、にこりと笑った。
ソフィアさんの笑顔なんて、初めて見た…。
光竜の族長だからか、人間の姿でも恐ろしく美しく、その笑顔が、私には怖くすら感じた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
よければブックマーク、評価、感想など、よろしくお願い致します。




