エリシア、頑張る
ランディットさんから魔法道具を受け取ってから、エリシアとレニアとマアヤお姉さんは歩き続けた。
細くて暗い廊下の中を抜けていくと、少し開けた場所に出る。
その開けた場所には誰も居なくて…でもエリシアは、何となく嫌な予感がした。
レニアも武器を構え、マアヤお姉さんは少し緊張したような面持ちで先を見据えている。
二人とも、何かありそうだって感じ取ってるみたい…。
エリシアは、二人に目くばせすると、一歩、開けた場所に踏み込んだ。
その瞬間、その開けた部屋のような場所の床が赤く光り始め、そして通路との出入り口をふさいだ。
レニアとマアヤお姉さんはまだ部屋の中には入っていなくて、透明な壁に阻まれてしまって入ってこられなくなっちゃったみたいだった。
「……」
罠…。
エリシアの頭の中にそんな言葉がよぎったとき、誰も居なかった部屋の中に、三人の白い外套を羽織ったお化けが姿を現した。
…この魔法って、ヴィッタお兄さんと同じ魔法…。
これは油断してたら、死んじゃうかもね。
でも…意外と怖くはない。
だって、ゼアスさんもシルヴィも、そしてジルも、見えないところでだけど頑張ってるのがわかるから。
エリシアも頑張って、絶対に生きてもう一度、あの三人に会うんだ。
そう考えていた時、何処からともなく、不気味な声が聞こえた。
「大当たりー。君には早く死んでもらわないと困るからね。さぁ、何分持つかな…?」
「ちょっと、高みの見物~? 趣味悪いなぁ…」
突っかかっていくような返しをしたけど、エリシアのその言葉に神様は何の反応もしなかった。
ただ、その神様の声が終わった瞬間、白い外套のお化けが全員姿を消した。
居なくなったんじゃない。
必ず、エリシアを仕留めに来るってことはわかってる。
エリシアは、通路とこの部屋との出入り口の方で透明な壁に攻撃を加えて、破ろうとしているレニアとマアヤお姉さんの方を向いた。
そして、にっこりと、心配ないよというように笑いかけた。
だってエリシアは、絶対に生きて皆に会うって決めたからね!
もう一度会えたその時は、絶対ジルにぎゅーってさせてもらうんだから!
もう窒息しちゃうくらいに!
エリシアはそんな風に思いながら、目を閉じた。
空間をゆがめて近付いてくるなら…空気の流れも乱れるはず…。
それを…感じて…!!
空気の流れが一瞬変わったのを感じて、拳を突き出した。
「えいっ!」
その拳は、何かに当たって、エリシアは目を開ける。
すると、一人の白い外套のお化けがエリシアの拳を受けて吹き飛んでいた。
「…軽かったなぁ…。ちゃんと食べてるのかな? あれ…食べるも何も…もう死んじゃってるんだっけ…?」
エリシアがそんな独り言をこぼしたとき、エリシアの今度は背後の空気の流れが変わった。
…一人目は囮だったってことかな。
でも…エリシアは何人相手だろうと、負けない!
瞬時にエリシアはドラゴンの姿に戻って、空間をゆがめて姿を現した白い外套のお化けたちに尻尾の一撃を食らわせた。
はじけ飛んだお化けたちは、腕や足をぐにゃぐにゃ曲げながら起き上がった。
「…あんな風に操られて、使われて…あの人たちが可哀そう…。同じ人間なのに、なんで神様はそんな酷いことするんだろう…」
また姿を消して、向かってきているであろう白い外套のお化けたちの気配を感じ取ろうとする。
でも、その気配を感じる前に、エリシアは体に違和感を感じた。
まるで、何かに圧迫されているような感覚に襲われる。
その圧迫感は、段々と強くなっていって、痛みすら感じ始めるようになった。
空間を捻じ曲げて、エリシアを潰そうとしてる…?
確かに、エリシアの周りの空気の流れがおかしくなっている気がする。
…これはちょっと、まずいかな。
そう思ったエリシアは、人化をして空気の流れがおかしくなっている場所から飛び退いた。
飛び退く直前、一瞬足に痛みが走ったけど、傷にはなってないみたいだった。
そして、無防備にその場に立ちつくす。
…もしも、あのお化けたちがおバカさんなら…。
エリシアは密かに、体に力を入れてお化けが飛び出してくるのを待った。
透明な壁に囲まれた部屋の中に、一瞬の静寂が訪れる。
そして次の瞬間、エリシアの目の前と、両斜め後ろの三方向の空間が歪んだ。
そしてお化けたちの顔が姿を現した瞬間、エリシアは金色の瞳は金色の光を強く放ち、お化け三人の動きを止めた。
竜王に受け継がれるという力を受けた三人は、成すすべもなくその場でただ動きを止めている。
エリシアはそれをドラゴンの姿に戻って薙ぎ払った。
壁に打ち付けられて、頭部を破壊されたお化けたちは、エリシアの力がなくても動かなくなる。
そしてエリシアは、人間の姿になると、どこかで見ているだろう神様に話しかけた。
「神様が、人間の世界での王様のような存在だったとしたら、エリシアはドラゴンの世界での王様のような存在なんだよ。そう簡単に、エリシアを殺せると思わないでね!」
そんなエリシアの声を、神様は聞いたのか聞いていないのか、部屋の入口についていた透明な壁を取り払った。
駆け込んできたマアヤお姉さんとレニアに、どこも怪我をしていないことを伝えると、この部屋から更に続いている通路の方をじっと見つめた。
死体を操って、弄んで、それで王様気取りなんて…。
そんなの絶対、許しちゃいけない。
絶対エリシアたちが、王座から引きずり下ろしてやるんだから!
そんなふうに思っているエリシアの横で転がっていたはずの白い外套のお化けたちは、忽然と姿を消していた。
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