第107話 公表の準備
王家の罪を公表する準備は、二度目の方が難しかった。
一度目は、王が眠りに落ちた。
真実を出すことはできた。
だが、それによって記憶が降る夜を招いた。
二度目は、真実だけでなく、その後の道を示さなければならない。
王宮書庫には、各地から届いた記憶保留花の報告が積まれていた。
失われたもの。
戻ったもの。
戻らないもの。
代わりに誰かが覚えているもの。
フロレアでは、無花者の市内滞在制限が正式に停止された。
商都では、商業奉公花の追加条件監査が始まった。
北方では、泣けない氷晶花を持つ子どもたちの相談窓口が作られた。
神殿では、清めの儀式前に記録の儀式を置く試みが始まった。
まだ小さい。
でも、動いている。
アシュレイ陛下は、公表文の冒頭をこう変えた。
私は、罪を告げるだけでは足りなかった。
その一文に、私は胸を押さえた。
王が失敗を公表する。
それは強い。
でも、簡単ではない。
ノア様が言う。
「反発は大きいでしょう」
「当然だ」
陛下は答える。
「記憶を失った者からすれば、私が眠ったことで被害が出た」
「でも眠らなければ、核は」
「それも事実だ。どちらか一つで済ませない」
混ぜて逃がさない。
彼はその言葉を、本当に自分へ向けている。
公表文には、補償案も添えられた。
記憶保留花の正式制度化。
失われた記憶の共同記録所。
無花者の法的保護。
花冠院の再編。
王妃選定の本人意思確認義務。
眠り分有研究の公開監査。
どれも、一度で完成しない。
だから公表文の最後には、こう書かれた。
この改革は完成ではなく、開始である。
セレスティア様はそれを読んで言った。
「ようやく王宮の文章らしくなくなりましたね」
褒めているのか分からない。
でも陛下は少し笑った。
「褒め言葉として受け取る」
候補者たちも公表準備に加わった。
すでに辞退した者も、継続を保留している者も、候補者本人宣言の証人として発言することになった。
王妃選定は、王妃を決める前に王国の制度を変え始めている。
不思議なことだった。
夜、私は書庫で記録の整理をしていた。
アシュレイ陛下は少し休むと約束して、隣室にいる。
眠ることは、まだ簡単ではない。
でも彼は目を閉じる練習をしている。
私も、母の痛みが少し鈍いことに慣れる練習をしている。
失った痛みを惜しむ日もある。
楽になったことを後ろめたく思う日もある。
その両方を記録する。
白い誓約花は、机の上で静かに咲いていた。
そこへ、陛下が戻ってきた。
「休むと言ったのに」
私が言うと、彼は少し気まずそうにする。
「五分眠った」
「五分」
「進歩だ」
確かに進歩だ。
私は笑った。
陛下も笑う。
その穏やかな時間が、何よりも改革の理由だと思った。
人が眠り、起き、笑える国にする。
大きな言葉ではなく、そのために。
公表の日は近づいている。
今度は、真実と道を一緒に持って、人々の前へ立つ。




