4.日常
朝方、会社へ歩いていたところ、夜の暗い川に人影が落ちる映像が浮かぶ。想像が間違っていなければ、時間的にも、場所的にもおかしくはない所。あそこは、薄暗く、川の距離、深さ、暗さが気分によっては誘われるような場所。
今日は迂回するかと、足取りも呼吸も変わらないまま、会社へ向かった。
仕事は順調。可もなく不可もなく、適度に幸せで、適度に文句がある、ちょうどいい感じだ。
『申すなら、少し周りを見てみるの良いかと。ただし…まあそんなところですね』
占いで『もっと周りを見た方が……』と言われ、小さなことにも気を配ってみたとき、働いている年数も関係あるのだろう。感謝や細やかさ、雑、見落とし……とがあり、反省と感謝をした。__さまさまである。
会社以外の関係の人にも助かる言葉で、度々思い出しながら、気をつける日々である。が、失礼ながら占いをしっかり出来る人なんだなと、当時は思わずにはいられなかった。すまないと、空に謝罪し、仕事を進める。
「ああ、その資料はここに……」
「ありがとうございます。__いえいえ、こちらこそで」
「まあ、可愛らしいですね。おいくつですか?」
疲れながら、帰る頃には朝のことは忘れていた。自慢と紹介とで、今日拝見した猫の写真を思い出していた。
あの子、可愛かったなぁ……。猫かぁ__。
まあ、自分のことに、裕晴のこととか、重なると……手が足りないよなー。責任とか……まぁ色々……。
気付くと偶に通る道で、目の前の影がさっと闇に溶け、ばしゃんと音がした。
予想通りであってほしく、そうであってほしくない。そんな思いと共に、欄杆に両手を触れ、下に顔を向けた。出ていきそうな息を呼吸に遏め、携帯電話を取り出した。
「事件ですか?事故ですか?」そんな言葉を聞いて、答える。
「飛び降りかと思うのですが……」
家に帰るのが、遅くなってしまった。一人で暗い部屋に入り、電気を点ける。ひたひたと一人分の足音。まざまざと静かさを見せつけるようで、ありありと思い出す。足元からどろりどろりと、またさっぱりと、迫る暗さから目を背ける。
ありきたりな日常に「お疲れ様、おやすみ」と最近始まった、割かし新しい日常。それは気遣いを感じる連絡で__。
「いつ、返そうかな……」
寒いソファで、ぐでっとその電子な文字を見ていた。
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