2.香り
あのカフェの日に、「こちらに」と用意よく手渡された紙を見ながら、目的地へ足を動かす。場所の導きは住所だけで、こういうのが苦手だったらどうするのかと、いらぬ誰かへの心を胸に眼前に見えた建物と照らし合わせる。如何にもな外観を映し、また紙に目を落とす。それには合言葉まで記されており、暇なのかと。いや、そうだろうなぁ、この間の食事の日も別の席から視線を感じた、何人かいたのだろう。選択はどうなっているのだろうか。浮かぶ映像からも合っているだろうと、扉に軽く丸めた右手を近づけ、二回音を鳴らす。
「甘井先竭、空の青さを知る」
と声に出し、この合言葉……考えるのはやめるかと旅から戻り、扉が開く。
「時間通りですね。……すみません、その合言葉」
と決まりが悪そうだ。甘党の彼だ。
背の高い男が近づく。表情や先の言葉から察するに、彼の悪ノリのようだ、悪ノリしすぎやしないだろうか。
「いや、お久しぶりですねえ。何よりです」ではない。朗らかそうにするでない。後、若干近くないか。
彼には旅を勧めて、「おや」と返される。
ひょこっと身軽そうな女性が瞳を動かし、「仲良いんだねぇ」と、気立てが良そうな人だ、弓は苦手そうだが。
奥を見ると、壁際にこちらを見る二人。ぬいぐるみを抱える優しいそうな少女と、こちらも優しそうな青年。
内装は暗いバーの様な、倉庫のような建物だ、何故こんな処が。
正鵠の女性は軽やかに名乗る、彼女は双葉檀。壁際の二人は、鶯梅、鈴風夏哉。先日、食事をしたのは、藤沢楽斗、蜜井裕晴だと紹介をされる。
期待の星が双葉檀から届き、「私は柏紫月と申します」と応えた。
彼女は「よろしく」と言った後に能力者の共通点について聞いてきた。どう思うかと首を傾げている、可愛らしい方だ。
少し作為的な風を感じたとて、どういうこともない。もしどうでも良くなくなったら、どうでも良くなくなっただと私は思う。
「……えぇー。ねぇ。皆、興味ないのよ?これ」と傾く人差し指に目が行く。
私達の誕生はミステリを解き明かすためだと、落ち込んでいる。すまないな同志でなくて。
檀さんはミステリー好きだと藤沢が言い、ミステリーとミステリではバトミントンとバドミントンくらい違うと双葉は返す。それ変わらなくないですかと鈴風、そしてバドミントン好きの知り合いがいるいない__と、何やら話が盛り上がりだした。
「楽しいところでしょう」
蜜井裕晴が横に居た。「貴方もそう思うのですか」と返せば、「なら二人きりで話しましょうか」と返される。「こちらでどうぞ」「冗談ですよ」と返し、彼は彼らの能力の説明をしだした。どうやら、双葉檀は動物と会話、鈴風夏哉は幽霊の視認と会話、藤沢楽斗は身体能力が人並み外れており、鶯梅のみ特殊な能力はなく、この話をする蜜井裕晴は占いが出来るらしい。
「そうなのですか」
「……気に入りませんか?」
「いえ、軽い口が好きではないだけですよ」
「まさか、戸の鍵は貰いましたよ」
「いえ、そちらでなくです」
「それは失礼。貴方がとても魅力的ですので」
「本心も使い時ですよ」
「はは。自信家ですね」
「私、見る目はある方ですから、それにこれは貴方が言った事ですよ、軽口さん」
「褒め言葉でしょうか。転がるのがお上手だ」
「あら」
静かに重なる声と佳境も過ぎ、
「…………それなら、やっぱりミステリーなのでは……」
「いいではないですか……。双葉さんは言いたいんですよ。ミステリって」
「譬えに出すなら、書籍と文庫本とかの方がって」
との鶯や幽霊も加わった話も終わる。「あの二人相性いいね」の声と静かに重なる笑い声に福が来るのはここか、何処か。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
宜しければ、ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いいたします。




