いくら怒っているからと言って、終焉の惡魔の奴隷になることはないじゃない!!
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サクリファイスの王宮はすんなりと入ることができた。
前庭には芝生が端正に整えられていて、金を基調としたバロック風の素晴らしい建築様式だった。
ダメだ、なぎさは気絶したままで全くもって起き上がる気配がない。
一人で行くしかないんだろうか?
なぎさを背負ったまま、シマエナガを助けるためにサクリファイスと戦うことなんてできるのだろうか?
どうしよう。
ここまで来たけれど、迷っていた。
しかしすぐに思ったことは、ここまで来たらもう行くしかないということだった。
一番最悪なのはシマエナガを取り逃がして、助けるチャンスをなくして、一生後悔することだろう。
それに比べれば傷つくことなんて大したことじゃない。
なぜなら傷はいつか治るからだ。
王宮の中に侵入して走り回っていたのだけど、全くもって敵がいる気配がない。
ただ自分の足音がコツコツと鳴り響くだけで、何ら敵意を感じないのだ。
なんでこんなにキラーズとかがいないんだろう?
普通は見張らせているはずだろう。
いや違う、そうじゃないんだ。
多分、普段からサクリファイスを襲うような人なんていないんだ。
そんな自殺行為みたいなことをする愚かな存在は冥土にはいないのかもしれない。
そう考えると楽になったので、走ることをやめた。
「うぅぅ...」
なんだこの声は?
王宮の奥からそんな声が耳に届いた。
当然、サクリファイスがどこにいるかなんていうあてはないので、その声につられてうかはそっちに向かっていく。
ザクッ!!ザクッ!!ザクッ!!
この音は何だろう?
何かを切っている音。
ドアノブの隙間から音の鳴る部屋をチラリと覗いてみたら、なんと中でサクリファイスが自傷行為をしていたのだった。
まさかあのサクリファイスが!!何でそんなことをするわけ!?
自分の目を疑った。
そして動揺あまり、背負っているなぎさをその場に落としそうになったのだけど、間一髪落とさずに済んだ。
ここで物音をさせればまず間違いなくばれるから、すぐさま戦闘が始まるだろう。
その前にちょっとした心の準備をする時間が必要だ。
「何をやっているんだろう?」
「なんで私の顔にアイロンを当てて窒息させたの?」
「どういうこと?何でサクリファイスらしくないことを言ってるの?あんなやつだったっけ?」
いやそんなはずはない。
そして次の瞬間、衝撃的な行動に出た。
なんとガラスの破片を喉に突き刺して、わざと出血させたのだった。
「何やってんの...?」
ポタポタポタポタ........。
血液が地面に垂れて、その光景に思わずゾッとしてしまった。
一体何をやっているというのだろう?
「すまなかった...貴様を助けられなかったのは、我々の落ち度だ。だが怒りを鎮めて欲しい」
そうすると、私と呼んでいたサクリファイスの中にいたその人は、ブルブルと体を震わせていたのを落ち着かせて、少しずつ普通の状態に戻って行ったのだった。
「サクリファイスは何をやっているの!?まさか自分の中にいる人格か何かを傷つけているんじゃないでしょうね!?そうだったとしたら許せないわ!!いくら怒りを鎮めさせるためだからと言って、そんなことやっていいはずないじゃない!!そんなのは正義に反した行動だわ!!やっぱりこいつ惡魔だわ!!大丈夫!?そんな奴に負けないで!!」
気づいたら完全に声を出していた。
自分が今大切な人を背負っていて、この状態で戦えばどうなるかわからないというのにも関わらず。
「セイ!」
するとどこからやってきたのか、キラーズが王宮の中からワラワラと湧いてきて、あっという間にうかを取り囲んだのだった。
「あんたたち、どこにいたのよ!?さっきまで気配すら感じさせなかったじゃない!!」
「オメー、よくもサクリファイス様の王宮にやってこれたな!!生きて帰れると思うな!!ランスキル!!キル・スキルアップ!!」
フォーク型のピアスピアをこっちに向けてきたその時だった。
「やめるのだ、キラーズ」
部屋の中で自傷行為を繰り返していたサクリファイスがこのことに気づいて、部屋の中から出てきて一言でキラーズたちを止めた。
うかはあと一歩で攻撃されるところだった。
「セイ!サクリファイス様!!」
このサクリファイスの気まぐれな行動によって、確かにうかは助かった。
しかしいまだキラーズに囲まれたままで、状況は何も変わっていない。
どうしよう?
そう考えていたら、サクリファイスが話しかけてきた。
「ピンク髪、久しぶりではないか」
「うん、久しぶり」
「何をしに来たのだ?」
「わかってるんでしょ!?シマエナガを取り返しに来たに決まってるじゃない!!」
そうするとなんと、サクリファイスは意外なことを言い出したのだった。
「...ピンク髪よ、我々の奴隷になるのだ。そして不幸になれ。己の罪を知れ!!」
「人間狩りをしようとした終焉の惡魔の奴隷になれですって!?そんなのまっぴらごめんよ!!」
「貴様はどうだ?我々の奴隷にならないか?」
「貴様って誰のことよ?あんたの仲間になる人なんていないわよ!!」
うかがそう言うと、肩越しに声がした。
「なります。今日からよろしくお願いします。サクリファイス様」
なんとなぎさは目を覚ましていて、あろうことかサクリファイスの提案に乗ったのだった。
「何を考えているのよ!?こんな奴らの奴隷になるだなんて!!正気を失ったの!?」
まさかなぎさはうかのことを恨んでいるのだろうか?
おかしくない話だ。
だってうかが強く言ったせいで、気絶したのだから。
愛想を尽かされてもおかしくない。
「怒ってるなら言ってよ、なぎさ!!いくら怒っているからと言って、終焉の惡魔の奴隷になることはないじゃない!!」
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