表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定スキルで全てを最適化したら、最弱の村が国家になりました  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/68

23話:黒幕発覚

――静まり返った戦場。

朝日が昇り始め、凄惨な一夜の跡を白日の下にさらけ出していく。

大地に横たわるのは、かつて略奪を夢見た千の盗賊たちの残骸。

オルシェの「浄化ピュリフィケーション」によって肥料へと変えられるのを待つ肉の塊だ。


「……やはり、妙だな」


オルシェは、血に濡れた泥を踏みしめながら呟いた。

その視線の先には、捕縛された盗賊たちの遺留品が、一箇所に集められている。


「何がだ。圧倒的な勝利だったではないか」


リーヴが剣を鞘に納め、額の汗を拭いながら問いかける。

しかしオルシェは、遺棄された剣の一本を拾い上げ、その刃紋をじっと見つめていた。


「統率が良すぎるんだよ。ただの食い詰め者の集まりにしちゃ、逃げ際も、攻める時の連携も揃いすぎていた。……それに、こいつだ」


《鑑定スキル:装備解析モード起動》

・武具規格:軍用統一規格を確認。

・刻印:ヒルト内部に偽装された所属紋章を検知。

・供給元:ヴァルディン領・正規軍用工房。


「……やっぱりな。ただの残党じゃねぇよ」


オルシェの言葉に、隣にいたセレスが鋭く反応し、一歩前に出た。


「貴族ね。……この規模の武装を横流しできるのは、限られた特権階級だけだわ」


「……来たか。セレスの予測通りだな」


リーヴの声が低く、怒りに震える。

オルシェは無言で、死体の一人の指からくすんだ銀の指輪を引き抜いた。


《鑑定》

・所属:ヴァルディン領。

・階級:伯爵家直属私兵。

・役割:潜入および暴動の煽動。


「確定だ。……ヴァルディン領。この街を『盗賊』という名目で蹂躙し、その後に『治安維持』を口実に乗り込んでくるつもりだったんだろうな」


セレスが冷徹に状況を整理する。

「この街は、すでに奴らの欲望の射程圏内に入っていた。理由は単純よ」


「奪えるから、だろ。自分たちの努力じゃなく、他人の成果を吸い上げるのが奴らの仕事だからな」


沈黙。

その場にいた全員の胸に、静かな、しかし決して消えることのない怒りの火が灯った。

自分たちが汗水流して耕した畑、血を流して守った壁、そしてようやく手にした笑顔。

それらすべてを「貴族」という看板一つで奪い取ろうとした者たちへの、根源的な拒絶。


「……どうする。オルシェ、命令を」


リーヴが短く問う。オルシェは、朝日を背にして不敵に笑った。


「叩く。……当然だろ。ただし、正面から戦ってやる義理はねぇ。相手が汚い手を使うなら、こっちはもっと『合理的』に潰してやる」


セレスが、わずかに口角を上げた。

「裏から根こそぎね。……合理的だわ」


夜襲:代官拠点の沈黙

――その日の夜。

ヴァルディン領の境界付近にある、代官の駐屯砦。

高く聳える石造りの壁、巡回する私兵たち。彼らは、自分たちが差し向けた「盗賊」が壊滅したことさえ、まだ知らずにいた。


「一人で行く。……お前らは街の守りを固めておけ」


「……任せる。無茶はするなよ」


リーヴが短く答える。

次の瞬間、オルシェの姿は夜の帳の中へ、溶けるように消えた。


――砦。

音もなく、影が動く。


一人の衛兵が、声を出す暇もなく崩れ落ちる。

二人、三人――。

オルシェの「アクセル」と「鑑定」による精密な一撃は、暗闇を支配していた。

私兵たちは、抵抗どころか、何が起きているのかを認識することすらできなかった。


「……遅ぇよ。そんなに眠いなら、永遠に寝てろ」


すべてが終わるまで、十分もかからなかった。


《砦内私兵:32名。全個体の無力化を確認》


オルシェは返り血を拭うこともせず、奥の贅を尽くした部屋の扉を蹴破った。


「な、何者だッ!? 貴様、不法侵入――」


代官が椅子から転げ落ち、叫び声を上げる。

肥え太ったその姿は、街で必死に働く住民たちとは対極の存在だった。


《鑑定》

・対象:ヴァルディン領代官。

・状態:極度の動揺、および保身による虚偽の構え。


「……お前が盗賊を動かしたな。命令書を出せ」


「し、知らん! 私が何をしたというのだ! 貴様のような平民が――」


「嘘だな。心拍数が上がってる。お前の脳内の魔力反応が、思い切り『恐怖』に偏ってるぞ」


オルシェは机の上に積まれた書類を一瞥した。

そこには、盗賊への武器供給、奪い取った後の領地分割案、そして「街の主」であるオルシェの暗殺計画までもが記されていた。


「街が、欲しかったか」


「当たり前だ!!」


代官が狂ったように叫ぶ。

「たかが平民の溜まり場が、これほどの富を産むなど許されん! 貴族が税を取り、資源を吸い上げ、贅沢をする……それがこの世界の理だ! 特権だ!!」


オルシェは、その歪んだ欲望を冷めた目で見下ろしていた。


「……だから、お前らは潰すんだ。この街には、お前みたいな不純物ノイズはいらねぇ」


一瞬。

部屋に静寂が戻る。代官の絶叫は、二度と響くことはなかった。


《対象:代官、排除完了》


オルシェは、死体を見下ろしながら小さく呟いた。


「……ここで消してやる慈悲はねぇ。全部、持ち帰ってやるよ」


手をかざす。

空間収納アイテムボックス最大展開》


空間が歪み、死体を、武器を、そして全ての証拠書類を吸い込んでいく。

砦にいた私兵たちの骸も、一体残らずだ。

痕跡は一切残さない。だが、そこに存在した「命」という名の資源は、余さず回収する。


循環:命の再定義

――街。夜明け前。

畑の端、朝日が射し込む直前の薄暗がりの中で、オルシェは帰還した。


「集めろ。今日から、この街の土はもっと豊かになる」


オルシェが「空間収納」から、砦で回収した骸を吐き出させた。

整然と並べられた死体。それを見る村人たちの目は、もはや恐怖に怯えるものではなかった。

彼らは知っている。これが、自分たちを奪おうとした「悪意」の残骸であることを。


「……本当に、やるのか」


リーヴが、その光景を眺めながら呟いた。


「全部、使う。……敵意も、命も、肉体もだ。この街に仇なす者は、死してなお、俺たちのパンを育てる肥やしになってもらう」


オルシェが、山をなす骸に手をかざした。


「ピュリフィケーションバレット・極大展開」


光の奔流が、一瞬にして広場を白く塗り潰した。

不快な臭いも、生々しい傷跡も、すべてが純粋な魔力の輝きに溶けていく。

分解、浄化、再構成。

そこに横たわっていたものは、数分後には黒々とした、生命の匂いを放つ土へと姿を変えていた。


「……土だ。信じられないほど、温かくて肥えた土になっている」


ロイが、その土を掌に乗せて震える声で言った。


「畑に撒け。ヴァルディン領の私兵どもが、ようやくこの街の役に立つ時が来たぞ」


村人たちが一斉に動き出した。

自分たちを殺そうとした者たちの残骸を、自分たちの命を育むための糧として土に混ぜ込んでいく。

それは、究極の「復讐」であり、究極の「救済」でもあった。


「……回るわね。すべてが、あなたの掌の上で」


セレスが、新しく完成した「資源循環表」にチェックを入れながら言った。


「命も富も、奪わせない。循環させ、この街の血肉にする。……完璧だわ」


「ああ。無駄は一つもねぇ」


オルシェは、昇り始めた太陽を真っ直ぐに見据えた。

空が赤く染まり、新しい一日が始まる。

街は、外からの敵意を飲み込み、それを力に変えて、さらに強靭な「生命体」へと進化した。


「……これで終わりじゃねぇな。ヴァルディン伯爵本人が、お出ましになるのも時間の問題だ」


その言葉に、誰も否定する者はいなかった。

むしろ、全員の目が「来いよ、肥やしにしてやるから」と言わんばかりの闘志に燃えていた。


異世界の片隅、名もなき街は、今や一つの「摂理」となった。

奪う者は奪われ、土へと還る。

オルシェの統治は、ついに世界のことわりそのものへと手を伸ばし始めたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ