349 乙女達の休息と甘美なるひと時
華やかな祝宴に沸く「玉座の間」を抜け、カリナは心地良い疲労感と共に特記戦力の居住区へと向かっていた。
右隣にはカグラ、左隣にはサティア。二人の柔らかな掌の温もりを両手に感じ、背中にはエヴリーヌがぴったりと張り付いている。エヴリーヌの両手はカリナの華奢な肩に置かれ、歩くたびに彼女の豊かな胸の感触がカリナの背中に伝わってきた。居住区へと続く回廊では、城仕えの文官やメイド隊と何度もすれ違う。
「特記戦力の皆様、お疲れ様です! 休憩に向かわれるのですか?」「祝宴は夜通し続きますものね。今のうちに、ごゆっくりお休みくださいね」
にこやかに声を掛けてくる彼女達に、カリナは「ああ、ありがとう」と短く、しかしどこか晴れやかな笑顔で応じ、ようやく自室の前に辿り着いた。
やがて辿り着いたカリナの自室。カードキーをスリットに通し、電子音と共に扉が開かれる。室内には、主を待つ静寂だけが満ちていた。ルナフレアはまだ会場で側付き仲間と賑やかに過ごしている。今、この広い空間にはカリナ達四人しかいない。
寝室へと足を踏み入れたカリナは、締め付けのあったサンダルを脱ぎ捨て、そのまま広大なベッドへとダイヴした。シーツの冷たさが火照った肌に心地良い。
「あー……。賑やかなのはいいんだけど、さすがに人が多過ぎるのはどうしても疲れるな」
カリナが枕に顔を埋めて息を吐き出すと、その隣へエヴリーヌが同じように身を投げ出そうとした。
「こら、エヴリーヌ。そのまま横になったらドレスが痛むでしょ。先に脱ぎなさい」
カグラがエヴリーヌの襟首をひょいと掴んで制止する。
「ん、そうだった。このドレスは繊細。……カリナのためにも、型崩れは厳禁」
エヴリーヌは素直に立ち上がると、カグラに背を向けた。カグラはその慣れた手つきで、金色の装飾が施された赤いベロアドレスの背中にあるファスナーを滑らかに降ろしてやる。エヴリーヌはドレスを丁寧にハンガーに掛け、シワにならないよう吊るした。元々ノーブラで着用する設計のドレスだった彼女の身体に残ったのは、水色のショーツが一枚のみ。掌からは溢れるほどの、形の良い美乳を惜しげもなく露わにした彼女は、そのままカリナの右隣に滑り込んだ。
「ん……カリナ」
エヴリーヌは、睡魔に襲われ始めたカリナの顔を、自身の素肌の胸へと優しく抱き寄せた。柔らかな双丘に包まれ、カリナは「エヴリーヌか……。少し、眠いんだ」と、重くなった瞼を閉じかける。その横では、カグラとサティアも互いのドレスを脱がせ合っていた。カグラが手際良くドレスを吊るしたのに対し、ものぐさなサティアは、脱いだばかりのドレスをベッドの上にそのまま脱ぎ捨ててしまう。
「ん、はあ……。残念過ぎるものぐさ聖女。カリナの嫁失格」
エヴリーヌが胸元から冷ややかな毒を吐くと、サティアは「はっ!」と肩を揺らした。
「しまった……! あはは、直すと決めたんです。今度こそ、直さないとですね!」
サティアは慌ててドレスを拾い上げ、ハンガーへと掛け直した。カグラは黒いレースの紐パンに黒いブラジャー。サティアは彼女の白い肌を艶やかに引き立てる、セクシーな紺色のショーツとブラジャーという姿になった。午後の陽光がカーテンの隙間から差し込み、女性達の下着姿と素肌を黄金色に照らし出している。その肢体は、途轍もなくセクシーで、同時にどこか神々しさすら感じさせた。
「ん……、おのれ、肉め……。その無駄な重みが、カリナとの距離を広げる」
エヴリーヌが二人の豊かな肉感を見据えて忌々しげに呟いたが、カグラは慣れた様子でさらりと受け流した。
「はいはい、肉で悪かったわね。アンタも相変わらずね」
「ふふ、肉が多くてすみませんねー」
サティアもまた、エヴリーヌの毒舌を慈愛の微笑みで意に介さない。
「このままじゃあカリナちゃんが寝ちゃうわね。起こして浴場に行きましょうか」
カグラの提案に、エヴリーヌが頷いた。
「ん、カリナ、まだ寝たらダメ。先にお風呂。……汗を流して、さっぱりしてから」
エヴリーヌに身体を起こされ、カリナは「ああ、危ない、寝てしまうところだった……」と、意識を浮上させて立ち上がった。
「ん、先にカリナを脱がせる」
エヴリーヌは甲斐甲斐しくカリナのドレスを脱がせ、下着姿にすると、手際良くドレスを吊るした。そしてカリナの細い手を引き、脱衣所へと導き、下着を脱がせる。カグラとサティアも後を追って、それぞれ脱いだ下着を洗濯籠へと入れた。
浴場へ足を踏み入れると、しっとりとした湯気が四人の素肌を包み込んだ。
「ん、カリナ、座って」
目を擦るカリナをシャワーの前の椅子に座らせると、エヴリーヌはシャンプーをたっぷりと泡立てた。カリナの燃えるような赤い髪を、慈愛を込めて丁寧に洗っていく。その隣では、カグラがサティアを座らせ、その長い黒髪に指を這わせていた。
エヴリーヌはシャワーで泡を洗い流し、トリートメントを施すと、今度はボディソープをスポンジで細かく泡立てた。カリナの透き通るような白い身体。エヴリーヌは、その細い肢体を丁寧に、這わせるように洗っていく。背中から腰へ、そして丸みを帯びたお尻、しなやかな脚や腕、艶やかな首筋まで。
「ん、カリナの肌はどこもすべすべ。この至宝を傷つける相手は、私が決して許さない」
「物騒なことを言うなよ。戦っていたら、傷つくことだってあるさ」
カリナが苦笑混じりに応じる。
「でも、サティアが神聖術で回復させてくれるし、お前達が傷ついても同じだ。私はみんなにも傷ついて欲しくはないよ」
その言葉に、エヴリーヌの瞳が潤んだ。彼女はカリナの正面に回ると、自身の美乳を押し当てるようにして、カリナの胸元を洗い始めた。カリナのそこそこの大きさの、形の良いバスト。エヴリーヌは指先を滑らせ、敏感な先端を丁寧に、焦らすように洗っていく。
「ん……あ……」
カリナの口から、無自覚に甘い声が漏れた。
「ん、カリナは優しい。だから、私も丁寧に洗う」
エヴリーヌの手は止まらない。平坦なお腹から内股、そして股間のひだの間まで、愛しむように指が動く。カリナは漏れそうになる声を堪えようと口を抑えた。
「ん、カリナの声は可愛い。もっと、私に聞かせて」
耳元で囁かれ、カリナは溜息を吐いた。
「好きで出してるわけじゃないんだ。……勝手に出るから、困ってるんだよ」
「ん、それが女性の身体。理屈では止められない。……私も、カリナに褒められると、こうして、ぬめぬめになってしまう」
エヴリーヌが平然と言い放った直後、隣のカグラから石鹸が飛んできて、彼女の頭にゴンッと当たった。
「ん、痛い。肉が……私がカリナを独占しているからって、醜い嫉妬心を燃やしてきた」
「違うわよ! アンタが意味不明なことをカリナちゃんに言うからでしょうが!」
「ん、真実。だってカグラもサティアも、褒められてぬめぬめした」
カグラのツッコミに、エヴリーヌは即答する。
「エヴリーヌさん、恥ずかしいからそういうことを言うのはやめてくださいね……?」
サティアが笑顔ながらも逃げ場のない圧をかけてきた。
「ん、肉の反撃は死に至る。気を付ける」
エヴリーヌはカリナをシャワーで綺麗に洗い流してやった。
「ふぅ、さっぱりしたな。じゃあ交代しようか、エヴリーヌ」
「ん、カリナに洗ってもらえる。……これより、至福の時間が始まる」
椅子に座ったエヴリーヌは、期待に満ちた表情で目を閉じた。
「そんなに言うほどのことじゃないだろ。このくらいいつでもしてやるよ」
カリナはシャワーを手に取り、エヴリーヌのエメラルドグリーンのボブに指を差し入れた。シャンプーを泡立て、丁寧に、慈しむように洗っていく。
「グリーンの髪の毛とか、現実じゃあまずいないもんな。この世界でしか触れないようなものだ。そう考えたら、本当に貴重だよな」
カリナがしみじみと呟くと、エヴリーヌの肩が震えた。
「ん、カリナ……。あんまり褒めたら、またぬめってしまう……っ」
その瞬間、再びカグラから二つ目の石鹸がエヴリーヌにぶつかった。
「ん……扇子よりも重さがある分、こっちの方が効く」
「カグラはお前がそういう失言をするから注意してるんだと思うぞ」
カリナはシャンプーを洗い流しながら、苦笑いした。
「ん、カリナに言われたら、全力で注意する。気を付ける」
「そうだぞ。エヴリーヌも現実でも可愛らしい女の子なんだから、普段から気を付けないとな」
「ん……。また褒められた。……ぬめる。確実にぬめる」
「アンタはわざと言ってんの!? ぬめるとかカリナちゃんの前で言うんじゃないわよ!」
カグラの怒号が響くが、エヴリーヌはどこ吹く風だ。
「ん、でも、これは避けがたい事実」
「事実でも、女性ならそういうのは恥じらう気持ちを持たないと。何でもあけすけに喋るのは品がないですよ」
洗い終えたサティアが、カグラと場所を代わりながら、優雅に、しかし厳しく釘を刺した。
「はあ……。エヴリーヌは現実でもそんな感じなのか? オフ会の時は既にそうだったけどさ、プライベートでもそうなのか?」
カリナはボディソープで、エヴリーヌのスレンダーながら柔らかな肢体を、背中からお尻にかけて洗いながら尋ねた。
「ん、どうだろう? ……普段の自分。100年も寝ていたから、もう忘れてしまったかもしれない」
エヴリーヌのその一言に、カリナは小柄な身体を密着させた。カリナの形の良い胸が、エヴリーヌの背中でむにゅりと形を変える。
「そうか……。まあ、それだけ寝てたら、ある意味仕方ないかもな。でも普段の会話は気を付けた方がいいぞ。相手がヤバい奴だったらどうするんだ」
カリナはエヴリーヌの小さな手からは溢れるほどの美乳を、後ろから包み込むようにして揉み洗いした。先端まで丁寧に刺激されると、敏感なエヴリーヌの口から甘い鳴き声が漏れる。お腹や内股を洗われるたび、彼女の身体は微かに震えた。
「ん、ヤバい奴とは喋らない。……でも、カリナと触れ合うと、どうしてもぬめってしまう。……なぜ?」
「それは、私に聞かれてもよく分からないなあ」
カリナの相変わらずの鈍感さに、カグラが笑い声を上げた。
「あはは! カリナちゃんは本当に鈍感なんだから。そんな際どい話をしても、全部躱されちゃうわよ」
「ふふふっ。でも、最近はその鈍感さがかえって愛おしく感じることがありますよ」
サティアの微笑みに、エヴリーヌが悔しげに唇を噛む。
「ん、おのれ肉コンビ。私に高度なマウントを取ってくるとは」
「そうか? マウントには思えなかったけどなあ」
カリナはシャワーで泡を流すと、洗顔を終えたエヴリーヌの手を引いて起こした。
「ん、カリナは純真。あれは女同士の、高度な情報戦」
「はあ……。まあいいや、洗ったぞ。湯船に入ろう」
大きな浴槽。温かな湯が、二人の肢体を優しく包み込む。
「ん、カリナに洗ってもらう至福が終わってしまった。……でも、肉コンビはまだ洗い場。私の独占ターンは続く」
エヴリーヌは、湯船に浸かったカリナの背後に回り込み、その細い身体を後ろからぎゅっと抱き締めた。カリナの顔を自身の素肌の胸へと乗せ、密着する。
「ん、湯船に入っても、カリナの香りと温もり……至福」
カリナはエヴリーヌの柔らかな身体の温もりと、規則正しい心音、そして鼻腔をくすぐる甘い香りに包まれ、祝宴の疲れが一気に回ってきた。
「ふぅ……」
やがて、小さな寝息が漏れ始める。エヴリーヌは、自身の胸に顔を埋めて眠り始めたカリナを愛おしそうに見つめ、その頭に優しく口づけを落とした。
そこへ、洗い終えたカグラとサティアも合流し、左右からカリナを包み込むように抱き締めた。
「ん、肉が……左右から圧迫してくる。私の独占タイムが……」
「アンタねえ。あんまり口が酷くなり過ぎると、さすがのカリナちゃんでもいつか愛想を尽かされちゃうわよ?」
「そうですよ、私達はカリナさんのために協力しているんですから。エヴリーヌさんがいつまでも同じ態度なら……まあ、カリナさんは優しいから突き放したりはしないでしょうけど、そんな彼女に甘えて、自分を変えようとは思わないんですか?」
サティアの真っ直ぐな言葉に、エヴリーヌは僅かに視線を落とした。
「ん、……それは良くない。ごめん、肉コンビ」
「はあ……。全く謝罪になってないわね。これは重症だわ。サティアのものぐさの方が、意識してるだけまだマシに見えてきたわ」
カグラが頭を抱えると、腕の中で眠るカリナが、ふと唇を動かした。
「……なかよく、な……」
その幼い寝言に、サティアは胸を突かれたような表情をした。
「カリナさん……。ご自身の症状が一番苦しいはずなのに、眠っていても私達のことを心配してくれています」
「カリナちゃんは、誰かのために行動できる人だからね。……エヴリーヌ、こんな姿を見てまで、まだ人に悪態を吐き続けるつもり?」
カグラの問いに、エヴリーヌはカリナの頬を優しく撫でた。
「ん、気を付ける……。……一番辛いのはカリナ。そんなカリナに、これ以上心配をかけるのは……良くない」
「まあ、すぐに治るなんて思ってないわよ。徐々に減らしていきなさいよね」
「そうですね。私も、『ものぐさ』は必死で直しますから!」
サティアがぐっと拳を握ると、エヴリーヌも静かに頷いた。
「ん、カリナを救うためにも、早くこの世界から脱出しないといけない」
「そうね。そのためにも、私達がしょうもない小競り合いをしてる場合じゃないのよ」
「はい。カリナさんは辛くても泣き言は言わないですからね。私達にしか、カリナさんは救えないんです。……これからも、彼女のために協力しましょう」
三人の女性達は、湯気の中で静かに頷き合った。エヴリーヌの胸に顔を埋めて幸せそうに眠るカリナ。その頬へ、三人は代わる代わる愛おしそうに口づけを落とした。午後の穏やかな陽光が照らす中。エデンの乙女達の絆は、熱い湯船の温もりと共に、より深く、より強固に結ばれていくのであった。




