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聖衣の召喚魔法剣士  作者: KAZUDONA


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348  昼下がりと賑やかなる乙女達

 エデンでの国を挙げての祝宴は、午後の穏やかな陽光が玉座の間に差し込む時間になっても、その熱気を微塵も失うことなく続いていた。


 各国の軍人や冒険者達がジョッキを片手に語り合い、至る所で笑い声が弾ける中、カリナは右腕にアーシェラの王子シリュウを、左腕にフィンの王女レナを抱き抱え、悠然とした足取りで広大な会場を歩いていた。その背後には、いつものようにカグラ、サティア、エヴリーヌの三人が護衛のように、しかしどこか楽しげな足取りで付き従っている。


 元々カリナ達が寛いでいたソファ席からは、フィンの王妃レイラが、カリナに「ここの席を取っておいて欲しい」と頼まれたため、微笑ましい眼差しで彼らの様子を眺めていた。


「わあーっ! すごーい、お肉がいっぱいあるー!」


 カリナの左腕の中で、白とグレーのドレスを着たレナがきゃっきゃとはしゃぎながら、大テーブルに並ぶ料理の数々を指差す。


「ふふっ、エデンのごちそうは美味しいね、レナちゃん」


 右腕に抱かれたシリュウが、そんなレナの元気な様子を見て嬉しそうに笑い声を上げた。両腕に伝わる子供達の温もりと無邪気な声に、カリナは自然と表情を和らげる。


「レナ、シリュウ。これから私の仲間達を紹介してやるよ」


「うん! やったー!」


「だれだろう? 強い騎士の人かな?」


 瞳を輝かせる二人に向け、カリナは歩みを止めずに後ろを振り返った。


「まずは、いつも私と一緒にいる、カグラとサティアとエヴリーヌだ」


「ふふ、よろしくね、お二人さん」


 鮮やかなグリーンのドレスを纏ったカグラが、優雅に扇子を揺らしながら小首を傾げる。


「私のことは、もう知ってますよねー」


 サティアが、ベージュのレースドレスの裾を軽くつまみ、柔和な笑みを浮かべた。そして、深紅のベロアドレスを着たエヴリーヌが一歩前に出る。


「ん、カリナの未来の妻。しっかり覚えておいて」


 すぱーんっ!!


 間髪入れず、カグラの扇子がエヴリーヌの頭頂部にクリーンヒットし、乾いた音を響かせた。


「アンタは子供相手に一体何言ってんのよ!」


「ん、痛い。……でも、まごうことなき事実」


 エヴリーヌが頭をさすりながら真顔で主張すると、レナが不思議そうに首を傾げた。


「あのね、おんなのこどうしだと、けっこんできないんだよ?」


「うん、あのお姉ちゃんは変なこと言うね」


 シリュウもレナに同意するように頷く。純真無垢な子供達からの容赦のない正論に、カリナは堪えきれずに吹き出した。


「あははっ! エヴリーヌはいつもあんな感じでおもしろいやつなんだぞ」


 カリナの笑い声につられ、カグラとサティアも腹を抱えて爆笑し始めた。


「あーはははっ! ちょっとエヴリーヌ、子供に真正面から正論言われてるじゃないの!」


「ふふふっ……私達の、いえ、カリナさんの中身の性別なんて、この子達には到底わからないですからね」


 サティアが堪えきれない笑いでお腹を押さえながら、うっかり口を滑らせる。


「ん、そうだった。NPCだし、現実の性別はわからない仕様」


 エヴリーヌがぽつりと呟いた瞬間、カグラがピシャリと嗜めた。


「ちょっと、そういうメタなことを子供の前で言うんじゃないわよ」


「ええ、この子達にとっては今ここにある私達の見た姿が全てですからね」


 サティアが深く頷き、エヴリーヌは「ん……」と少しだけ困ったように眉を寄せた。


「じゃあ、次に行こう」


 カリナが歩みを再開し、一行が向かったのは、特記戦力達を支える代行達が集まり、賑やかに飲み食いしている一角だった。真っ先にカリナ達の姿に気づいたのは、明るいオレンジ色のセミロングヘアを揺らすエルフの召喚術士代行、リーサだった。


「あれ、カリナ様! それにカグラ様にサティア様にエヴリーヌ様、お疲れ様です。……あら? その可愛らしい子達は?」


「ああ、フィンの王女レナとアーシェラの王子のシリュウだ」


「「こんにちはー!」」


 レナとシリュウが声を揃えて元気良く挨拶をする。


「こんにちは。はあ、可愛いですね……。でも、カリナ様がお相手しているんですか?」


 リーサが意外そうに瞬きをする。


「ああ、なぜか好かれてな。たまにしか会えないし、せっかくだから一緒に過ごしてるんだ。……ほらレナ、シリュウ。こいつは私の代行で、召喚術士代行のリーサだ」


 カリナの紹介を受け、リーサは背筋を伸ばして丁寧な一礼をした。


「初めまして、お二人共」


「「はじめましてー!」」


 子供達とリーサの微笑ましいやり取りの横から、豪快な声が割り込んできた。


「おう! あたしはクリスだ、よろしくな!」


 片手に大きなジョッキを持ったまま、水色の長いツインテールを揺らす小柄な魔人族の女性、格闘術士代行のクリスがニカッと笑う。


「「ちょっと、こわそう……」」


 レナとシリュウが、クリスの男勝りな迫力に少しだけ身を縮めた。


「なにーっ!? ちっとも怖くないだろ!」


 クリスが慌ててジョッキを置くと、リーサがすかさず間に入って宥める。


「まあまあクリスさん。子供の言うことですから落ち着いて」


「あの黒髪のエルフが、弓術士代行のエリアスだ」


 カリナが視線を向けると、黒髪のエルフの青年が片手を上げて近づいてきた。


「おう、エリアスだ、よろしくな! ……あれ、エヴリーヌ様も御一緒だったんですか?」


 エリアスがカリナの後ろに立つエヴリーヌの姿に気づき、少しだけ姿勢を正す。


「「かるそう……」」


 子供達の直感的な評価が、見事にエリアスの本質を射抜いた。


「ん、エリアスは私の前では真面目。でも子供にはしっかり見抜かれる。……なるほど、エリアスは内面が軽いのかな? かな?」


 エヴリーヌが翠眼にじっとりとした圧を込めてエリアスを見据える。


「い、いえ! 俺いつでも真面目です!!」


 エリアスはジョッキを持ったまま、びしっと姿勢を正した。


「今だけそんなことしても無駄だよなー」


 クリスが意地悪く揶揄い、隣にいたセミロングの茶髪を持つ魔人族の女性が、静かに同意した。


「そうですね。エリアスはまだ、代行としての自覚が足りませんね」


 彼女は茶髪を上品に掻き上げながら、レナとシリュウの視線に合わせてしゃがみ込む。


「こんにちは、レナ王女にシリュウ王子。私はレミリアと申します」


「「こんにちは。優しそう!」」


「ふふ、子供にはわかるのですよ」


 レミリアが誇らしげに胸を張る。カリナは子供達に説明を加えた。


「今のが魔法使い代行のレミリアだ。代行のリーダーみたいな感じで、一番しっかりしてるぞ」


 その直後、昼間に『モード・ド・エデン・セレスト』で購入したばかりの豪華なドレスに身を包んだ二人の女性が、優雅な足取りで進み出てきた。


「相克術士代行のユズリハです」


「神聖術士代行のジュネです」


 浅黄色のロングヘアを持つハーフエルフのユズリハと、亜麻色の髪を束ねた知的な眼鏡のエルフ、ジュネが、完璧な礼儀作法で一礼する。


「レナです!」「シリュウです!」


 子供達もつられて、ピンと背筋を伸ばして挨拶を返した。


「ふふっ、ユズリハ、ボロが出る前に自分から綺麗に言ったわね」


 カグラが扇子で口元を隠しながら、意地悪く笑う。


「カグラ様、そういうつもりじゃないですよ! カリナ様に全員の紹介をさせてしまうのは悪いと思ったからです」


 ユズリハは頬を染めて慌てて否定する。


「ジュネもすっかり猫を被りましたね」


 サティアも柔和な笑みを浮かべたまま、自身の代行にチクリと刺す。


「サティア様まで……。子供でも相手は他国の王族ですからね、自分からきちんと挨拶しないといけないでしょう」


 ジュネは眼鏡の位置を指で押し上げながら、理路整然と弁解した。


「ふふ、そうですね」


 サティアは満足そうに頷いた。カリナは代行達のテーブルの上に置かれた酒の量を見て、少し不思議そうに首を傾げた。


「お前達は今日はリーサに飲ませて、飲み比べをしていないんだな」


「いやー、今日は祝宴が長いですからね。最初に飲ませ過ぎると、リーサがすぐ潰れちゃうんですよね」


 クリスが肩をすくめる。


「そうですね。だからまあ、夜の部になったらガッツリやるでしょうけど」


 エリアスが悪戯っぽく笑う。


「カリナ様、毎回こうやってリーサさんに無理やり飲ませるんですよ、あの二人は……」


 レミリアが深い溜息を吐き、ユズリハとジュネも同情するように深く頷いた。


「リーサ、そこまで飲めないのなら無理はするなよ。急性アルコール中毒になったら大変だからな。治癒の術で治るのかもしれないが、自分の身体を律するのも立派な仕事だからな」


 カリナが真面目な顔で諭すと、リーサは申し訳なさそうに頭を下げた。


「はい、無茶はしません。ありがとうございます」


「リーサちゃんは、カリナちゃんの言葉には本当に素直ね」


 カグラは微笑ましそうに二人を見守る。


「ん、エリアス、リーサは良い子。無理に飲ませ続けたら、地獄の弓引きコースね」


 エヴリーヌが一切の感情を排した声で恐ろしい宣告を下す。


「ええっ!? あ、あれだけは勘弁して下さい!」


 エリアスは血相を変えて頭を下げた。


「ん、わかればいい」


 エヴリーヌが短く許可を出すと、今度はサティアがクリスへと視線を向けた。


「クリスさんは……グラザさんに報告ですかね」


「サティア様、そ、それだけは勘弁して下さい!」


 クリスもまた、上司の名前を出されて慌てふためく。


「ふふ、どうしましょうかねえ」


「ん、出た。ドS聖女」


「どどどど、ドSじゃないですから!! もう、レナちゃん達の前でそんなこと言わないで下さい!」


 サティアが顔を真っ赤にして両手を振る姿に、レナとシリュウは意味もわからぬまま、楽しそうな一行の雰囲気に釣られて「キャッキャ」と笑い声を上げた。


「クリス、多分グラザは今エリック達と激しい飲み比べをしてるぞ。お前はあれを反面教師にして、無茶しない方がいいな」


「はい、カリナ様。適度に飲むようにします」


 カリナの的確な助言に、クリスは素直に頷く。


「ああー……、クリスやレミリアは魔人族だもんな。種族的に、酒に強いのか……?」


「はい、そうなんです」


 クリスが自慢気に胸を張ると、レミリアは呆れたように付け加えた。


「魔人族は相当な量を飲まないと酔わないですからね。それなのに、エルフのリーサさんにバカみたいに飲ませるのは本当に良くないですよねー」


「そうだな。酒は飲んでも飲まれるなっていうからな。各自が気持ちいいと思えるペースで飲むのが一番だと思うぞ」


 カリナは至極真っ当な持論を展開した。


「カリナ様はまだ飲めませんもんね。でも、飲めるようになったらすげー飲むかもですよ!」


 エリアスが気安く笑いかけた、その瞬間だった。


「ん、エリアス。地獄の弓引き決定」


 カリナの中身を知っているエヴリーヌは、有無を言わさぬ死刑宣告を下した。


「ええっ!? マジで勘弁して下さいよ!!」


 エリアスが本気で悲鳴を上げる中、カリナは周囲に聞こえないほどの小声で呟いた。


「私は本当はカーズだから、年齢的には飲めるんだけどな……。この少女のアバターの見た目じゃ、さすがに酒には手を出せないか」


「カリナおねえちゃん、なにかいった?」


 レナが不思議そうに見上げてくる。


「いや、何でもないよ。……エリアス、お前は飲みたいなら、グラザ達が男冒険者達で飲み比べしてるみたいだからそこに合流したらいいと思うぞ」


「そうですね。じゃあここは男女比のバランスも悪いんで、俺もそっちに行ってみます!」


 エリアスは逃げるような早足で、グラザやエリック達が酒盛りをしている一角へと姿を消した。


「じゃあ、私達も次に行こうか。……レナ、シリュウ、この人達が私達特記戦力を裏から支えてくれている、優秀な代行達だぞ」


 カリナが子供達に説明すると、リーサ達は一斉に姿勢を正した。


「カリナ様、みなさま、また後ほど」


「じゃあな」


 カグラ達も代行達に手を振り、一行はその場を後にした。次に向かったのは、シルバーウイングのセリスをはじめとする、女性冒険者達が集まっている華やかな一角だった。ふかふかのソファ席で寛ぎながら、彩り豊かなデザートや果実酒を楽しんでいる彼女達の元へ近づく。昼間に購入した気品あるドレスで着飾ったセリスが、カリナ達の接近にいち早く気づいた。


「これはカリナさん。……と、可愛らしいお連れ様ですね」


「ああ、フィンの王女のレナと、アーシェラの王子のシリュウだ。……ほら、ちゃんと挨拶しないとダメだぞ」


「「こんにちはー!」」


「ふふ、こんにちは。シルバーウイングの団長、セリスです」


 セリスは上品に微笑むと、しゃがみ込んで子供達二人と優しく握手を交わした。


「「やさしそう!」」


「ん、セリスは常識人。でも、あの肉はけしからん」


 エヴリーヌがセリスの豊かな胸元を見据えて不満を漏らす。


「いい加減にしときなさいよ」


 カグラが即座にツッコミを入れる。


「はい……、大浴場でのアレは、さすがにマズかったですからね」


 サティアも過去の騒動を思い出し、困ったように肩を落とす。


「カグラさん達もお疲れ様です。こちらは女性陣だけで、気兼ねなく楽しんでますよ」


 セリスが優雅にグラスを傾けると、横から元気な声が飛び出してきた。


「カリナちゃんお疲れー!」


 シルバーウイングの副団長、エリアである。そしてその後ろから、魔法使いのセレナが、何やら怪しい息遣いでフラフラと近づいてきた。


「はあ……はあ……っ。カリナちゃんが、幼児を両腕に抱いている……っ! 何て背徳的なシチュエーション……!」


「はい、黙ってー」


 エリアは笑顔のまま、容赦のない手刀でセレナの頭をどついた。


「はあ……相変わらずブレない子ね、あの魔法使いは」


 カグラが呆れ果ててこめかみを押さえる。


「ん、あの女は危険。ここで始末しておく」


 エヴリーヌも真顔で言い放ち、アイテムボックスから愛弓『アルテミス』を取り出そうとした瞬間、カグラの扇子が炸裂した。


「アンタはすぐ物騒な真似をしようとするんじゃないわよ!」


「エヴリーヌさん、誰でもそうやって暗殺しようとしてはダメですよ」


 サティアが嗜めると、エヴリーヌは神妙な顔つきになった。


「ん、カリナのことになると、どうにも頭に血が上り易い。反省する」


「……あの黒髪のエルフがエリアで、もう一人の魔法使いがセレナだ」


 カリナは騒ぎをスルーして紹介を続ける。


「こんにちは、初めまして」


「「はじめましてー!」」


 エリア達と子供達が挨拶を交わす中、今度はルミナスアークナイツの陰陽術士ユナと、神聖術士テレサが手を振ってきた。ユナの腕の中には、もはや抵抗を諦めたケット・シー隊員がだらんと抱えられている。


「あのピンクの髪の毛がユナで、紫の髪がテレサだ」


「初めまして、よろしくね!」「こんにちは」


「「よろしくー!」」


「ふふ、可愛いね」


 ユナが隊員の頭を撫でながら微笑む。


「はい、子供は純真なので見ているだけで心が洗われていいですね」


 テレサも聖職者らしい穏やかな表情で頷いた。さらに同じテーブルには、ドラゴンベイン・オーダーの氷の魔法剣士テレジア、連節剣使いのディード、そして魔人族の相克術士シャオリンも同席していた。


「ほら、あいつらがテレジアとディードとシャオリンだ。あっちのテーブルで飲んでるエリックの仲間で、凄腕の冒険者だぞ」


「「こんにちは」」「カリナさん達もお疲れ様です」


「「こんにちはー!」」


 一通りの紹介を終えたカリナは、ふう、と小さく息を吐いた。


「後は、各国の騎士団に軍団長達がいるけど……みんな会場のあちこちにバラバラにいるな。どこにいるかわからないや」


 そう言って、カリナはずっと両腕に抱き続けていた二人の子供を、そっと床に降ろした。


「カリナさん、疲れてませんか?」


 サティアが心配そうにカリナの顔を覗き込む。


「今日は以前みたいにセラに引っ張り回されたわけじゃないから、体力は大丈夫だよ。でもずっと抱きっぱなしだったし、腕は少し疲れたかな」


 カリナが腕を回して軽く笑うと、サティアは真剣な表情でドレスの袖を揺らした。


「では、少し楽にしましょうか、『ブレッシング・オブ・ザ・セイントレス』」


 サティアが詠唱した瞬間、淡い神聖な光がカリナの身体を優しく包み込んだ。それは、サティアのみが使える特殊神聖術。神聖力によって仲間の生命力と魔力を大きく回復させ、さらに一定時間、回復力・精神安定・魔力回復速度を上昇させるという、仲間を支える聖女専用の極位支援術である。光が収まると、カリナの腕の疲労は完全に消え去り、精神安定の効果によって心身共に深い安らぎを得ていた。


「ありがとうサティア。すごく軽くなったよ」


「「おおーっ! すごい!」」


 二人の子供達が、聖女の術を目の当たりにして目を輝かせ、パチパチと拍手喝采を送る。


「カリナちゃん、祝宴は深夜まで続くから、一度自室に戻って休みましょう。私達もこのままずっと大広間にいるのはさすがに気疲れするわ」


 カグラが気遣わしげに提案する。


「ん、それならカリナの部屋のベッドで一緒に昼寝する」


 エヴリーヌは即座に便乗した。


「そうだな……、もう開始から結構経ったし、このまま夜中まではさすがに体力が持たないよな。一度戻るか」


 カリナは同意し、まずはレイラが待つ席へと向かった。


「レイラ、祝宴はまだまだ長いから、私達は一度部屋に戻って休んで来るよ。レイラも今のうちにゆっくりして来るといい」


 カリナが声をかけると、ちょうど限界が来たのか、レナが眠そうに目を擦り始めていた。


「わざわざありがとうカリナさん。じゃあ、私達も少し休んできますね」


 レイラがレナを優しく抱き上げると、レナは夢うつつのまま小さな手を振った。


「ばいばいー……」


 レイラはカリナ達に会釈をし、静かに貴賓室へと向かっていった。続いてカリナ達は、テラスで談笑している国王達の元へと足を運んだ。カリナ達に気付いたサキラが席を立ち、近づいて来る。


「サキラ陛下、夜遅くまで長丁場になりますので、私達は一度部屋で休んできます。シリュウ殿下をお返ししますね」


 カリナがシリュウの手を引いて渡すと、アーシェラの女王サキラは感謝を口にした。


「迷惑を掛けたのう。ありがとう、カリナ」


「ありがとう、カリナお姉ちゃん!」


 シリュウが元気にお礼を言うと、サキラは他の国王達に向けて軽く手を挙げた。


「少々、シリュウを部屋で休ませてくる」


 サキラがその場を去っていくのを見届けた後。カリナは大いに飲み食いして盛り上がっている国王達の輪に視線を向けた。そこではマギナの女王シャーロットが、エデンの王カシューの腕にべったりとくっつき、甘い声を上げている。


「……あれは大丈夫なのか、カシュー……」


 カリナは肩をすくめ、そっとその場から離れた。


「じゃあ、ルナフレアは側付き同士で楽しんでいるみたいだから邪魔するのは悪いし、私達はこのまま戻るか」


「そうね、人が多いから埃っぽくなるし、部屋に戻ったらまずはお風呂にも入りたいわね」


 カグラがドレスの埃を払う仕草をする。


「ああ、それもいいな。その後少し仮眠でもしてのんびりしてから、また夜の部に顔を出そう」


 カリナが歩き出すと、左右からカグラとサティアがすっと手を差し出してきた。カリナは何の抵抗もなくその両手を握る。一歩出遅れたエヴリーヌは、カリナの背後に回り込み、その華奢な肩に両手を置いて後ろからぴったりと密着した。四人の女性達は、長い祝宴の合間のひと時の安らぎを求め、カリナの自室へと連れ立って戻っていくのであった。


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