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聖衣の召喚魔法剣士  作者: KAZUDONA


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341  湯上がりの乙女達と王達の夜

 湯船ではしゃぐレナの幼児の柔らかな身体を抱きながら、カリナは後ろからレイラに抱き締められていた。


「ふふ、こうしているとカリナさんもまるで私の娘のように感じますね」


 レイラはカリナの赤と金色の混じった濡れた髪に頬を寄せながら優しく微笑んだ。


「ははっ、私みたいなのが娘だったら、レナみたいに可愛げはないよ」


 カリナは照れ隠しに苦笑いを浮かべる。


「そんなことはないわよ。カリナちゃんはとっても可愛いわ」


 カグラは右からカリナの肩を抱き寄せ、白く滑らかな頬を艶やかな指先でつんとつついた。


「ええ、そうですね。今のカリナさんは本当に、とても可愛いですよ」


 サティアも左からそっと寄り添い、慈愛に満ちた聖女の微笑みを向ける。


 両脇を二人の圧倒的な豊満さに挟まれ、完全にカリナの左右の特等席を奪われてしまったエヴリーヌは、仕方なく正面からレナごとカリナにぎゅっと抱き着いた。


「ん、今のカリナは本当に可愛い。まさに女神」


 エヴリーヌは至近距離でカリナの瞳を真っ直ぐに見つめながら真顔で断言する。


「……中身は違うからなあ。でも、最近はそういう言葉にも抵抗がなくなってきているな……」


 カリナは四人の美しい女性達に密着されながらも、どこか諦めたような、それでいて心地良さそうな複雑な表情で小さく独り言ちた。そんなカリナ達の微笑ましい様子を、少し離れた湯船から眺めていた他の女性陣から、くすくすと楽し気な声が漏れる。


「やっぱり、カリナ様の人気はすごいですね」


 リーサ達代行の面々は、憧れの眼差しでその光景を見つめる。


「カリナちゃんは、相変わらずどこに行っても誰かに囲まれてるね」


 エリア達冒険者達も微笑ましく頷き合った。


「カリナさんには、自然と人を惹き付ける何かがあるのでしょうね」


 他国の軍の者達もその温かな光景に心を和ませて噂し合う。


「うにゃー……。隊長はどこに行っても人気者なのにゃー。誇らしいのにゃー……」


 ユナの豊かな胸にがっちりとホールドされ、いい加減に抵抗を諦めて観念したケット・シー隊員は、すっかり湯船でふやけた顔になりながら、幸せそうに目を細めていた。やがて、カリナの首に細い腕を巻き付けていたレナは、こくりこくりとうとうとし始めた。


「おっと、これ以上はレナがのぼせるし、眠たそうだからそろそろ上がろうか」


 カリナはレナの背中を優しくポンポンと叩きながら言う。


「そうですね。わざわざ手間をかけさせてしまってごめんなさいね、カリナさん」


 レイラは申し訳なさと感謝の入り混じった笑顔を向ける。


「大丈夫だよ。こんなに可愛いんだ、苦じゃないさ」


 カリナは眠るレナを落とさないようにしっかりと抱え上げ、ゆっくりと立ち上がった。レイラもそれに続いて立ち上がる。たっぷりとお湯に浸かり、ほんのりと桜色に染まったその白い肌は、母親としての優しさと大人の女性としての艶めかしさを併せ持ち、ひどく煽情的に見えた。


「じゃあ、私達も上がりましょうか」


 カグラは豊かな胸からお湯を滴らせながら立ち上がる。


「そうですね。この後には夕飯もありますから」


 サティアも同意し、その規格外のプロポーションを湯船から顕にした。


「ん、私も一緒に上がる」


 エヴリーヌも名残惜しそうにカリナの後を追い、一行は賑やかな湯船を後にした。脱衣所へと運ぶ途中で目を覚ましたレナを、カリナは足拭きマットの上にそっと立たせた。


「ほらレナ、万歳だ」


「ばんざーい!」


 レナが元気よく両手を上げると、カリナはバスタオルでそのピンクのふわふわの髪の毛や、幼児特有の柔らかな身体を優しく丁寧に拭いてやる。そして、レイラから渡された可愛らしい着替えを手際よく着せてやった。その間に素早く自身の身体を拭き終えたエヴリーヌは、大きなバスタオルを手にカリナの背後へと回る。


「ん、じっとしてて」


 エヴリーヌは、カリナの赤と金色の髪の毛や、湯船でほんのりと桜色に染まった美しい肢体を、まるで壊れ物を扱うかのように優しく拭き始めた。


「ん、カリナの肌は本当に綺麗で、透き通るよう。……この美しい身体を傷つけるものは、私が絶対に許さない」


 エヴリーヌがカリナの滑らかな背中に頬を寄せながら、静かな、しかし強烈な決意を込めて呟く。


「ははっ、ありがとうエヴリーヌ。じゃあ、代わりにお前も拭いてやるよ」


 カリナは苦笑しながらバスタオルを受け取ると、今度はエヴリーヌの明るいエメラルドグリーンの髪の毛や、後ろだけ長く伸ばした特徴的な毛先を優しく拭いていく。さらに、スレンダーでありながらもしっかりとしたボリュームを持つ美乳の下乳、引き締まった細い腰、滑らかな曲線を描くお尻、そしてスラリと伸びた足から背中に至るまで、その全身を丁寧に拭き上げた。


「ん……カリナに拭いてもらえるのは、至福の時間……」


 エヴリーヌは目を細め、完全にほくほく顔で至上の喜びに浸っている。


「大袈裟だな。このくらいいつでもしてやるよ」


 カリナは呆れたように笑いながら言った。


 一方、その隣では、カグラとサティアはお互いの身体を拭き合っていた。お湯で極上の桜色に上気した、二人の圧倒的で暴力的なまでの豊満な肢体。バスタオルが滑るたびに、素肌の巨乳が重力に抗うように艶かしく揺れる。同じ女性の目から見ても、そのセクシー過ぎる肢体からは、触れずともマシュマロのような柔らかさがはっきりと伝わってきた。


「おのれ、肉め……」


 エヴリーヌが自分にはないその圧倒的な質量を横目で睨みつけ、ギリッと歯噛みする。カリナは、ルナフレアから渡されていた薄い黄緑色の清楚なショーツを穿き、その上から黒いシンプルなワンピースを着た。


「エヴリーヌ、他人のことをそんなに気にしても仕方ないぞ。お前にはお前の魅力があるだろ?」


 カリナがワンピースの裾を整えながら、全く悪気のない、無自覚な殺し文句をさらりと言い放った。


「ん……確かにそう。カリナの言う通り、私にはあの『肉饅頭コンビ』にはない、スレンダーな魅力がある」


 エヴリーヌはカリナの言葉にすっかり機嫌を良くし、真っ白なショーツに水色の可愛らしいナイトドレスを着ると、城内を移動する際に透けないようにと、ベージュのカーディガンを羽織った。


「エヴリーヌの魅力ねー。他人を『肉饅頭』呼ばわりする、その口の悪さかしらねー?」


 カグラはセクシーな黒い紐パンを穿き、腰の紐をきゅっと艶っぽく結びながら、赤い浴衣を羽織り、帯を締めつつ鋭い視線を送る。先程の失言は、しっかりと聞かれていた。


「ええ、エヴリーヌさんはその口の悪さを直さないと、魅力も何もないような気がしますね」


 サティアもレースのあしらわれた大人な紺色のショーツを穿き、薄手のブラウンのナイトドレスの上に、さらに透けないようにピンクのカーディガンを羽織りながら、肉饅頭呼ばわりされたことに静かな怒りを込めて言い返す。カリナが備え付けの魔導ドライヤーで、気持ちよさそうにしているレナの髪の毛を乾かしていると、エヴリーヌはすかさずカリナの背中に隠れた。


「ん、肉コンビにいじめられる。カリナ助けて」


 エヴリーヌはカリナを盾にしながら、別の魔導ドライヤーを手に取り、カリナの髪の毛を乾かし始める。


「まあ、その口の悪さをどうにかしないとな。その内本当に嫌われるぞ」


 カリナはレナの髪の毛を撫でながら、エヴリーヌを軽く窘める。


「ん、それはいけない。嫌われたくないから、注意する」


 エヴリーヌは素直に頷き、今度は自分のエメラルドグリーンの髪の毛を乾かし始めた。


「あの強烈な毒舌が直るとは、到底思えないんだけどね」


 カグラが明るい茶髪のミディアムヘアを乾かしながら、呆れたように笑う。


「そうですね……。まあ、あれがエヴリーヌさんの味と言えば、味ですしね」


 サティアも苦笑しながら同意する。


「んっ」


 エヴリーヌはこれ以上口を滑らさないようにと、自身の口にチャックをするジェスチャーをして見せた。髪を乾かし終え、脱衣所を元気に走りまわるレナを、カリナは「こら待て」と笑いながら抱き上げる。その時、代行達や冒険者達、他国の軍の者達も次々と湯から上がって来た。


「カリナちゃん!」


 エリアはタオルで髪を拭きながら、カリナの元へ駆け寄って来た。


「明日の午前中に、またエクリアさんの行きつけのブティック『モード・ド・エデン・セレスト』に行く予定なんだけど、今度はテレジアとディードとシャオリンも連れて行くんだけどさ、カリナちゃんも一緒に行かない?」


「そうだな……。レイラ、そこはエデンで一番流行っているファッションの店なんだ。レナに似合う可愛い服があるかもしれないから、一緒に行ってみようか?」


 カリナは抱き上げているレナと側にいるレイラに尋ねた。


「いくー!」


 レナは目を輝かせて元気に応えた。


「明日の祝宴前に、わざわざすみませんね。では、お言葉に甘えてお願いします」


 レイラは嬉しそうに頭を下げた。


「カリナちゃんが行くなら、私も明日の祝宴用の新しいドレスを買いに行こうかしらね」


 カグラが扇子を広げながら楽しそうに言う。


「いいですね。以前あそこで買ったものも、中々良い品質でしたから」


 サティアも微笑んで同意する。


「ん、カリナの行くところには、私は必ず現れる」


 エヴリーヌはストーカーのような謎の言い回しで力強く同伴を宣言した。


「私達は前回行きましたし、祝宴の準備に遅れそうになりそうなので、今回はやめておきますね」


 レミリアとリーサ、クリスは、前回のドタバタを思い出して苦笑しながら辞退する。


「今回は私とジュネが一緒に行きます。エクリア様がご一緒なのかはわからないですけどね」


 ユズリハはジュネと顔を見合わせて微笑む。


「私達の一番の目的は軍の強化なので、またお休みの日にでもゆっくり伺いますね。明日の祝宴は、手持ちの物で何とかします」


 エルザとウィンディは真面目な顔で言った。


「ああ、わかった。じゃあ、明日の祝宴前、朝の9時には城門前のホールに集まろうか。じゃあ、おやすみみんな」


 カリナが皆に向けて手を振った。


「おやすみなさい」


 カグラ、サティア、エヴリーヌ、レイラもそれぞれに挨拶を交わす。残った女性陣達からも「おやすみなさい」と温かい声が返り、カリナはレナを抱いたまま、賑やかな大浴場を後にした。


 その時、脱衣所の入り口で、迷って城内をさまよっていたサキラ女王とシャーロット女王の二人がひょっこりと現れた。


「おお、カリナか。実はすっかり迷ってしまってな。これからようやく湯浴みじゃ」


 サキラはほっとしたように息を吐いた。


「はあ……。わたくしはどうも方向音痴のようでして……お恥ずかしいですわ」


 シャーロットは頬を染めて恥ずかしそうに俯く。


 カリナは即座に表情を引き締め、完璧な臣下のロールプレイへと切り替えた。


「初めての場所ですから、迷われるのも仕方ありませんよ。ちょうど今は皆様が上がられた頃ですから、今からならあの大浴場を広くのんびりと独占できますよ」


 カリナは優雅に微笑んで案内する。


「そうか……。じゃが、皆との裸の付き合いの機会を逸してしまったのは、少し残念じゃのう」


 サキラはがっくりと肩を落とした。


「ええ、本当に残念ですわ」


 シャーロットも同意する。


「明日も祝宴は遅くまでありますから、その後でみんなで入る機会はいくらでもありますよ」


 カリナは優しくフォローを入れた。


「そうじゃな。では参ろうか、シャーロット殿」


「はい。ではみなさま、ごきげんよう」


 シャーロットは優雅に扇を扇ぎながら、サキラと共に浴場へと入っていった。


「あのお二人は結構早めに部屋を出て行ったはずなのですけど、一体どこをどう迷っていたのかしらね?」


 レイラは二人の後ろ姿を見送りながら、不思議そうに首を傾げる。


「ん、あのマギナの女王は中々にポンコツ。カシューに大いにひゃっほいさせて、しっかりさせよう」


 エヴリーヌはまたしても真顔でとんでもない提案をする。


「そうね。カシューと付き合えば、少しはしっかりするんじゃない?」


 カグラはエヴリーヌの言葉に乗っかり、声を上げて大爆笑する。


「もう、二人共勝手なことを言って。カシューさんに怒られますよ」


 サティアが困ったように二人を窘めた。


「お前らは、一体カシューをどうしたいんだよ……」


 カリナは呆れたようにツッコミを入れる。


「それはあれよ、あれ……」


 カグラが言葉を探していると、エヴリーヌが謎の合いの手を入れ始める。


「ひゃっほい、ひゃっほい」


「そうそれ、ひゃっほいよ!」


 カグラとエヴリーヌが肩を組んで大笑いする。


「はあ……」


 サティアは二人のテンションとカシューの今後を思って頭を抱えた。


「お前ら、普段はしばきあいしてるくせに、変なところですごく仲良いよな……」


 肩を組んで「ひゃっほい」と盛り上がるカグラとエヴリーヌを見て、カリナは心底呆れ果てた。


 一行は城内の長い廊下を進み、レイラ達が宿泊している貴賓室の前に到着した。すると、そこでは一足先に男湯から上がった男性陣の国王達が、廊下で立ち話をして大いに盛り上がっていた。シリュウはレオンに肩車されている。


「おお、お前達も大浴場へ行っていたのか。エデンの特記戦力は、自室に専用の風呂があるのだろう?」


 ジラルドがカリナ達の姿を認めて尋ねた。カリナ達は瞬時に気を引き締め、再び完璧な臣下のロールプレイへと切り替えた。


「ええ、今日はこのレナと一緒に入浴する約束をしておりましたので」


 カリナは、抱いているレナの柔らかな髪の毛を撫でながら静かに答える。そのカリナの、幼子を慈しむような母性に溢れた姿を見たソウガの脳内で、突如として危険な妄想が爆発した。


「おお……カリナ殿が幼子を抱いている……。将来は、私との間にあのような可愛い子を―――」


 ソウガがうっとりとした表情で口走った瞬間だった。


「ん、それ以上の妄想は、さすがにヨルシカの国王だとしても危険です。排除します」


 エヴリーヌは微笑みながら音もなくカリナの前に立ちはだかり、冷酷な目でソウガを見上げた。


「ソウガ君……。カリナちゃんとあんまり話せていないからって、ちょっと妄想が進みすぎているのね……。でも、今のは流石にキモいわよ」


 カグラは冷ややかな笑みを浮かべ、ソウガの鼻先にピタリと扇子を突き付けた。


「き、キモい……だと……!?」


 五大国の王に向かって放たれた容赦のない直球の罵倒に、ソウガは完全に心が折れ、廊下に膝から崩れ落ちて真っ白に燃え尽きた。


「ハッハッハ! ソウガ殿のあの熱い想いは、果たしていつになれば成就するのかのう!」


 レオンは撃沈したヨルシカ王を見て腹を抱えて豪快に笑い飛ばす。


「なるほど……」


 ドルガンは何となくこの場の力関係と事情を察知し、乾いた苦笑いを浮かべた。


「そう言えば、サキラ殿とシャーロット殿は見なかったか?」


 ジラルドは燃え尽きたソウガを華麗に放置して尋ねた。


「はい。どうやら道に迷われていたみたいで、先程ようやく大浴場に来られましたよ」


 サティアが微笑みながら答えた。


「なんと、そうなのか。道理で急に姿が見えなくなったはずだ。仕方ない、彼女達が戻るまでは、私達男だけで酒盛りといくか!」


 ジラルドは楽しそうに提案する。


「ソウガ殿、大丈夫ですか? さあ、行きましょう」


 ドルガンは真っ白になったソウガに優しく肩を貸し、ジラルドの部屋へと向かう。


「レイラ、お前達は部屋でゆっくりとのんびりしておいてくれ」


 ドルガンはレイラに声を掛け、王達は連れ立って部屋の中へと入っていった。


「さて、じゃあ私達も自室に戻るよ。レナ、ご飯をしっかり食べて、よく寝るんだぞ」


 カリナはレイラにレナをそっと渡す。


「うん! またあしたね、カリナおねえちゃん! おやすみなさい!」


 レナは満面の笑みで手を振る。


「おやすみ、レナ」


 カリナ達も優しく手を振り返す。


「レイラもおやすみ、また明日」


 レイラにも別れを告げ、カリナ達は貴賓室の区画を出て、特記戦力の居住区へと向かって歩き出した。今回は事前にルナフレアが用意してくれた厚手の寝間着をしっかりと着込んでいたため、すれ違うメイド達に『羞恥心がない』と叱られることもなく、丁寧な挨拶を受けながらそれぞれの自室の前へと到着する。


「エヴリーヌ、お前ずっと自室に戻ってないよな。今日はちゃんと戻れよ。エミリに心配を掛けたらダメだぞ」


 カリナは、当然のように自分の部屋へ入ろうとするエヴリーヌを立ち止まらせて諭した。


「ん……カリナにそう言われたら仕方ない。今日はエミリのご飯を食べる。おやすみ」


 エヴリーヌは少し不満そうにしながらも、カリナの言葉には素直に従い、自身の部屋へと向かった。


「ん、何かあったらすぐに通信して」


 エヴリーヌは微笑みながら、すぐ側の自身の部屋へと入っていく。


「目と鼻の距離なのにねえ、大袈裟な……」


 カグラはエヴリーヌの過保護ぶりに呆れたように肩をすくめた。


「まあ、それだけカリナさんのことが好きなんですよ」


 サティアは自身の部屋のドアの隙間から顔を出してふわりと笑う。


「アンタもでしょうが」


 カグラはすかさずツッコミを入れる。


「なななな、何てことを言うんですか! カリナさんの前で!」


 サティアは顔を真っ赤にして慌てふためき、顔を手で覆った。カリナはそんな彼女達のやり取りを全く気にする様子もなく、専用のカードキーで自室のドアを開け、中へと入った。すると、室内にいたルナフレアは弾かれたようにすぐに駆けつけてきた。


「お帰りなさいませ、カリナ様!」


 ルナフレアは寝間着姿のカリナの身体をぎゅっと力強く抱き締めた。


「ああ、ただいま。すぐに戻るって言ったのに、大袈裟だな」


 カリナは苦笑しながら、ルナフレアの柔らかな温かい身体を優しく抱き締め返した。


「カグラ様、サティア様もお帰りなさいませ。どうぞお入り下さい」


 ルナフレアは後ろから付いてきた二人に気付いて丁寧に頭を下げる。カグラとサティアも、すっかり慣れた様子でカリナの部屋へと入室する。


「ルナフレア、お腹が空いたよ。夕食の準備はできてるか?」


 カリナが尋ねた。


「はい! すぐにお出し出来ますよ」


 ルナフレアは嬉しそうに頷き、一行は広々としたダイニングキッチンへと向かった。


「あら? エヴリーヌ様はいらっしゃらないのですね?」


 ルナフレアは、いつもぴったりとくっついているエヴリーヌの姿がないことに気付いて不思議そうに聞いた。


「あいつはずっと帰ってないから、今日は自室に帰らせた。エミリも心配するだろうしな。まあ、どうせすぐ側だし、その内勝手に来るだろ」


 カリナは肩をすくめて言った。


「ふふ、それもそうですね」


 ルナフレアは納得したように微笑んだ。


「ええ、まあそうでしょうね」


 カグラも同意して笑う。


「就寝時間には、間違いなく来そうですよね」


 サティアも、エヴリーヌの行動パターンを完全に読み切ってクスクスと笑った。


 気心の知れた仲間達との、温かく、そして賑やかな夕食の時間が始まる。こうして、世界を巻き込む歴史的な会談と、明日の壮大な祝宴を前にした慌ただしい一日は、静かに更けていくのだった。

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