340 乙女の園と肉の撲滅
カリナ達はメイド隊から聞いたレイラ達が宿泊している貴賓室の前に到着した。
「ここだな」
カリナがドアのインターホンを鳴らした。
「カリナだ。来たぞ。レイラ、レナ、いるか?」
声を掛けると、中からレイラとレナがドアを開けて現れた。
「わざわざありがとうございます、カリナさんに、サティアさん。それにその術士の衣装はカグラさんに、その髪色に特徴的な髪型は弓術士のエヴリーヌさんですね。過去のVAOのPvPでは何度も煮え湯を飲まされましたから、覚えていますよ」
レイラはかつてのPCとしての記憶を辿りながら微笑む。
「先程ぶりですね、レイラさんにレナちゃん」
サティアがにこやかに微笑んだ。
「カリナおねえちゃん!」
レナがカリナの脚にぎゅっとしがみつく。
「待たせたなレナ。じゃあ、お風呂に行こうか」
カリナはひょいっとレナを抱き上げると、レナは「うん!」と元気に応えた。
「なるほど、フィンね。確かに過去にPvPで何回かやったわね」
カグラもVAO時代の記憶を思い出す。
「ん、中々高レベルのPCが多かったイメージ」
エヴリーヌも真顔で評価した。
「ふふ、でもエデンには全く歯が立ちませんでしたけどね」
レイラは苦笑交じりに微笑む。
「あの頃のエデンは負けなしだったからねえ」
カグラが扇子で口元を隠しながら誇らしげに言う。
「ん、前線にカーズとカシューがいたから、私達は的を射るだけみたいなものだった」
エヴリーヌは当時の無双ぶりを淡々と語った。
「ふふ、そうですね。でも、もうフィンには戦えるPCはあの襲撃事件で失っていません。今は生産職のPCが数人いるだけですよ」
レイラは少しだけ悲しそうに伏し目がちになる。
「私達もいつ現実世界に戻れるかわからないので、こうして家庭をもったんです」
「そうなのね……」
カグラは優しく相槌を打った。
「ん、誰でも戦えるわけじゃない。それも一つの道」
エヴリーヌはレイラの選択を肯定するように静かに頷いた。
「おい、早く来いよ。夕食には戻るんだからな」
レナを抱いたまま先を歩いていたカリナが、立ち止まって振り返る。一行はカリナの後を追い、女湯へと向かった。
そこには以前ここを利用したときのように、リーサ達代行達や、シルバーウイングのセリスにエリア、セレナ、ルミナスアークナイツのテレサに女湯を嫌がる隊員を抱いたユナ、ドラゴンベイン・オーダーのテレジアにディード、シャオリン、ルミナス神聖術士軍団長のウィンディにヨルシカの術士ハルカ、マギナの魔法使い軍団長のエルザもいるという、この城にいる主要な女性陣が勢揃いしていた。
広大な大浴場は、むせ返るような熱気と甘い石鹸の香りに包まれている。湯気で白く煙る視界の奥には、美しく磨き上げられた色とりどりの女性達の肢体がひしめき合い、水面を打つ柔らかな音と、華やかで弾むような笑い声が心地よく反響していた。まさに、ここは選ばれた者だけが立ち入ることを許される、秘密の女性の園のようだった。
だがカリナは精神の侵食が進んでいるため、彼女達の艶めかしく火照った瑞々しい肌を見ても、以前のような動揺や羞恥心を全く感じていなかった。
「これはカリナ様にカグラ様、サティア様にエヴリーヌ様まで! 珍しいですね」
リーサ達代行の者達、ユズリハ、ジュネ、クリス、レミリアが揃って一礼し、挨拶をする。
「ああ、このレナと一緒に風呂に入るからな」
カリナはそう言うと、脱衣所に入った。女性陣がその美しい肢体を隠すこともなく晒しているのにも関わらず、カリナは平然と足を踏み入れる。カグラ達も後に続いた。
「ほらレナ、万歳しろ」
カリナはレナの前にしゃがみ込み、「ばんざーい!」と無邪気に手を上げるレナの可愛いドレスを優しく丁寧に脱がしてやった。
「ん、カリナのお世話は私がする」
エヴリーヌが自身の服を素早く脱ぎ捨て、全裸のまま脱衣所を走り回るレナを見ているカリナの背後に回った。そして、手際良くカリナの衣装を脱がしていく。
上着が滑り落ち、カリナの隠された素肌が露わになる。彼女が身に着けていたのは、可愛らしい少女のような外見とは裏腹な、ひどく大人びた落ち着いた清楚なグレーのブラジャーとショーツ。繊細なレースがあしらわれたそのシックな下着は、カリナの抜けるように白い透き通った肌をさらに際立たせ、えも言われぬ色気を放っている。
「やはりカリナ様は、お召し物を脱がれると意外と……いえ、素晴らしいプロポーションをしていらっしゃいますね。これから成長したら凄いことになりそうです」
ユズリハが、グレーのブラジャーにきつく押し上げられた、普段の姿からは想像もつかないほど豊かな胸の膨らみをまじまじと見つめて感嘆の声を漏らす。
「ええ、あの落ち着いた下着も、カリナ様の凛とした雰囲気にとてもよく似合っておいでです。少女の愛らしさと大人の艶やかさが同居していますね」
ジュネも知的な眼鏡の奥の翡翠色の瞳を細め、冷静に、しかし感心したように頷く。
「前も言ったけど……カリナ様はあたしとそんなに背が変わらないのに、なんであんなに胸があるんだ。あの下着も、大人っぽくてすげー似合ってるし……羨ましいぜ、全く」
クリスは自身の控えめな胸とカリナの豊かな双丘を交互に見比べ、少しだけ悔しそうに本音を漏らした。
「クリス、私達魔人族は成長が遅いのでまだこれからですよ。しかし、やはり脱いでも凄いのは、どのエデンの特記戦力の方々に共通する特徴なのでしょうね。エクリア様は途轍もないスタイルをお持ちですし……。カグラ様サティア様もですし、エヴリーヌ様も均整の取れた手足の長いスタイルですね。カリナ様も同じ領域にいらっしゃいますよ」
レミリアは自らの師であるエクリアのダイナマイトボディを思い出しながら、エデンの自慢の特記戦力のスタイルを誇らしげに語った。
周囲の熱い視線と代行達の会話をよそに、エヴリーヌがカリナのグレーの下着をスルスルと脱がしていく。ついに一糸まとわぬ姿となったカリナの肢体は、華奢な骨格でありながらも要所にはしっかりとセクシーな女性らしい肉付きが宿っており、まさに奇跡のような造形美だった。その時、セリスはカリナの様子が以前と違うことにいつもの鋭い観察眼で気付いた。
「カグラさん、サティアさん。カリナさんの様子が以前と違う様な感じがしますけど、何かありましたか?」
セリスが自身の衣服を脱ぎながら、小声で二人に尋ねる。
「実は、少女のアバターの精神の侵食が……」
サティアもセクシーな法衣の衣装を脱ぎながら、声を潜めて説明を始めた。
「そうね。だからこういう女性同士の触れ合いにも抵抗がなくなってきているのよ。しかも夜や朝、疲労するとその侵食の症状が強く出て、誰かに甘えたくなるような症状が出るの」
カグラがカリナの無防備な背中を見つめながら静かに言う。
「なるほど……」
セリスが納得して頷いている時だった。
「ん、だから私達はカリナの症状を鎮めるために母乳を出せる」
エヴリーヌがセリスの耳元で、なぜかドヤ顔で小声で言い放った。
「ちょっと! 言葉を選んでいるのにアンタは何言ってんの!」
カグラがすかさず扇子ですぱーんとエヴリーヌの頭をひっぱたく。
「そうなんですか……。確かにあのアバターはまだ幼いですからね。甘えたい症状が出てもおかしくないですね……」
セリスはエヴリーヌの爆弾発言にも動じず、冷静に状況を察した。
「はい、少女のアバターの精神状態に侵食されて行くような感じなのです。彼女は現実でも早くに両親を亡くしていますから、そういう甘えたい、母性を求める症状がアバターの幼さに引っ張られて発作のように出るんですよ」
サティアは悲しそうに伏し目がちになった。
「女神アリアに進行を緩めてはもらったけど、完全にそれまでの侵食が消えたわけじゃない。今後も私達のケアが必要になるのよ。私達だけの秘密だから内密にお願いね」
カグラは真剣な眼差しでセリスにお願いした。
「ええ、承知しました。私で力になれることがあれば言ってください」
セリスが深く頷く。
「ん、セリスも母乳出るかもね。その肉は中々に凄い」
エヴリーヌは、衣服を脱いだセリスのまるで芸術品のように美しいスレンダーな体躯に不釣り合いなほど豊満に実った巨乳を見て、真顔で評価を下した。
「ふふ、彼女にはあなた方のような心強い仲間がいるのですから、私の出る幕はないですよ」
セリスは大人の余裕でエヴリーヌの言葉をさらりと躱した。
「ん、確かにこれ以上母乳係が増えても過多になる。私達で何とかする」
エヴリーヌは全裸になって、そのそれなりの大きさの形の良い美乳を揺らし、誇らしげに張った。
カリナはレナを連れて湯気の立ち込める浴場に入り、シャワーの前に座る。そして、レナのピンクの髪の毛や子供の柔らかな身体を、きめ細かな泡を立てたボディソープで丁寧に洗っていた。
「ん、出遅れた。カリナを洗わないと」
エヴリーヌがカリナの後を追い、カリナの後ろに陣取った。そして、カリナの赤く金色の毛先の美しい髪の毛や、お湯を弾く滑らかな白い背中を愛情を込めてゆっくりと洗い始める。右隣で洗い終えたレイラに、カリナは洗い終えたレナを渡した。
「先にお母さんと湯船に入ってろ、レナ」
「うん!」
「ありがとう、カリナさん」
レイラは優しく微笑み、レナを連れて広い湯船へと向かった。カリナの左隣では、カグラの豊満ながらも引き締まった艶やかな肢体をサティアが丁寧に洗っていた。ボディソープの泡が滑るたびに、サティアとカグラの規格外の巨乳が重力に逆らうようにプルンプルンと艶かしく揺れ、白い泡が谷間を伝って滑り落ちていく。熱気でほんのりと桜色に染まった肌が、視覚的な刺激をさらに高めていた。
「おのれ、肉め……」
エヴリーヌがそのあまりにも暴力的な光景を横目で睨みつけ、ギリッと歯噛みする。
「はいはい、肉が豊満で悪かったわねー」
カグラはそのやっかみを聞き流し、余裕の笑みを浮かべて豊かな胸を張った。カリナの身体も、エヴリーヌは慈愛をこめて丁寧に洗い上げた。
「さっぱりしたよ、ありがとうエヴリーヌ。じゃあ、私はレナが待ってるから行くよ」
カリナは立ち上がり、豊かな曲線を描く腰つきを揺らしながら湯船へと向かった。
「ん、大丈夫。私は肉を撲滅する」
エヴリーヌは泡立てたスポンジを手に、カグラを洗うサティアの後ろへ音もなく回り込んだ。そして、その無防備なサティアの背後から、たわわに実った巨大な果実のような胸を泡だらけの手で大胆にむにゅむにゅと揉みしだく。更に手を前へと伸ばし、前に座るカグラのこれまた見事な胸をも同時に激しく揉みしだいた。
「あ、んっ……!」「ひゃあっ……!」
突然の刺激の奇襲に、サティアとカグラの口から、抑えきれない甘く艶やかな嬌声が浴場に響き渡る。
「ちょっと! アンタは何がしたいのよ!」
カグラが顔を真っ赤にして振り向きざまに、手でエヴリーヌの頭をすぱーんとひっぱたいた。
「ん、肉の反撃は痛い。だが、肉の撲滅が私の使命」
エヴリーヌは頭をさすりながら、謎の使命感を燃やして真顔で答えた。
「はあ、はあ……。そうまで言うなら、あの規格外のプロポーションのセリスさんにも同じことをしたらどうですか?」
サティアは息を乱しながら、潤んだ瞳で少し意地悪く提案した。
「ん、あれはいい肉。常識人のセリスにそんな無礼なことはできない」
エヴリーヌが真顔で謎の線引きをした。
「へー、アンタは貧乳チキンね」
カグラがニヤニヤと笑いながら煽る。
「なるほど、相手を見てやってるんですか。確かにチキンですね」
サティアもカグラに乗っかって、ふわりと微笑みながら挑発した。
「おのれ、肉め……。なら、セリスの肉を洗って来る」
完全に火をつけられたエヴリーヌは、決意に満ちた足取りでセリスの座っている後ろへ向かった。
「おや、エヴリーヌさん。どうかしましたか?」
セリスが自身の身体を洗いながら、不思議そうに振り返った。
「ん、セリスを洗ってあげよう」
「あら、それはありがとうございます」
エヴリーヌはそう言うと、ボディソープでセリスの身体を洗い始める。銀色の濡れた髪が張り付く美しい背中を撫でるように洗いながら、後ろからセリスの張りのある巨乳を鷲掴みにし、揉みしだくように洗い、ピンクの先端も指先で摘みこりこりと刺激する。
「あっ……んっ……」
セリスの口から、予想外の刺激に甘い声が漏れる。さらにエヴリーヌは身体の前に手を伸ばし、引き締まったウエストから下へと滑らせ、股間やひだの間も執拗に、かつねっとりと丁寧に洗い上げる。
「あぁっ……! エヴリーヌさん……や、まっ……ひぁっ……!」
敏感な部分を執拗に攻められ、セリスの口からは抑えきれない感じた声が漏れる。彼女は顔を朱に染め、「はあ、はあ……」と熱い息を荒げながらたまらずエヴリーヌの腕にしがみついた。
「これは……、一体、どういうことでしょうか……?」
セリスは快感に身体を震わせながらも、必死に理性を保とうと不思議そうな顔でエヴリーヌを見上げる。
「ん、これでセリスの肉も私が攻略した」
エヴリーヌが自慢気に言い放った瞬間だった。
「いい加減にしなさい!!」
洗い終えたカグラに頭をすぱーんとひっぱたかれ、エヴリーヌはずるずると引き摺られて行った。
「ごめんなさいセリスさん、ちょっと変な子なんですよ……」
サティアは全身を赤く染めたまま平謝りした。
「はあ……よくわかりませんが、驚きましたよ……」
セリスは大きく波打つ胸を抑えて息を整えながら、あくまで大人な反応を崩さなかった。
一方、広い湯船の中では、カリナがレナを大事そうに抱きながら、後ろからレイラの豊かな胸に背中を優しく抱き締められていた。カグラ達のドタバタ劇を見て、カリナは深い溜め息を吐く。
「あいつらは、一体何をやってるんだ……」
カリナが頭を抱える。しかし、レナは終始ご機嫌で「きゃっきゃっ」と楽しそうに笑い、カリナに抱き着いている。カリナもその愛らしさに絆され、レナの柔らかな身体を愛おしそうに抱き締めてやった。
「ふふふ……カリナちゃんが幼女と戯れているわ……。尊い……」
そこへ、目を血走らせたセレナが怪しい息遣いで迫ろうとするが、当然背後からエリアに思い切りどつかれ、そのまま湯船に沈められた。
「カリナちゃん、ごめんね。いつもウチの汚物が」
エリアが申し訳なさそうに謝りながら、浮かんできたセレナの首根っこを掴んで去っていく。少し離れた場所では、ユナが暴れる隊員をようやく洗い終え、湯船でしっかりと隊員を抱き締めながら、ディードやテレジア、シャオリン、テレサと一緒にアレキサンドでの剣術大会の話や、術の話しで盛り上がっていた。
「私達もエデンの鍛錬に参加するのよ。カグラさんから直接術を学べるなんて、本当に光栄だわ」
ユナは目を輝かせて言った。
「はい、それは楽しみです」
シャオリンも静かに頷く。
「私はサティア様の軍の訓練に参加です。きっと厳しいのでしょうね」
テレサが少しだけ不安そうに言うと、近くで聞いていたウィンディが真顔で答えた。
「地獄ですよ」
「カグラ様の鍛錬も、相当厳しいですよ」
ハルカも横から優雅に微笑みながら恐ろしい事実を告げる。
「望むところよ!」「絶対について行きましょう!」
ユナとシャオリンが力強く誓い合った。
「騎士団の稽古は相当厳しいと聞いていますが、私達も頑張りますよ」
テレジアとディードも真剣な顔で頷き合う。
「鍛錬の厳しさは聞いていたので、私達マギナの魔法使いも必死に頑張ります」
エルザがレミリアに向かって決意を語る。
「はい! エクリア様の指導を受けられるなんて、魔法使いとして夢のようです!」
セレナも鼻息を荒くして言う。
「地獄を見ますよ……」
レミリアは哀れむような笑みを浮かべ、二人の背筋に冷たい戦慄が走る。
「私も騎士団の稽古に参加するから、テレジア、ディード、一緒に頑張ろうね!」
エリアが気合いを入れると、三人は固く頷き合った。
「はは、みんなエデンの鍛錬の厳しさを経験すれば、かなりの実力が付くだろうな」
カリナがレナをあやしながら、楽しそうに笑う。リーサ達代行達も祝宴への期待や、その後の鍛錬の話で盛り上がっていた。そこへ、ドタバタを終えたカグラ、サティア、エヴリーヌがカリナの側の湯船に入って来た。セリスもエリア達の側に入り、今後の話に加わっていた。
「全く、エヴリーヌには困ったものね」
カグラがやれやれと首を振る。
「本当ですよ。セリスさんにまでご迷惑を掛けて」
サティアも苦笑する。
「ん、肉の撲滅は私の使命。妥協はない」
エヴリーヌは一切の反省の色を見せずに胸を張った。
「はあ……」
カリナはエヴリーヌの奇行に再び深く頭を抱えた。
「ふふ、エデンは賑やかでいいですね」
レイラがそんな彼女達のやり取りを見て、心底楽しそうに微笑んだ。熱気と艶やかな色香に満ちた女性の園では、代行達や各国の精鋭達が、これから始まる祝宴やその後の地獄の鍛錬に果たして耐えられるのかと、楽しくも恐ろしい話題で夜が更けていくのだった。




