表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖衣の召喚魔法剣士  作者: KAZUDONA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

340/366

339  王達の背中

 玉座の間での謁見を終え、メイド隊の案内で貴賓室へと向かった五大国の王達と、フィン王国のドルガン達。彼らはそれぞれ自身の宿泊する部屋の前でメイドから一枚の薄いカードキーを受け取った。


「皆様、こちらがこのお部屋の鍵となるカードキーでございます」


 案内役のメイドがにこやかに説明を始める。


「これをドアの横にある機械の隙間に通して頂ければ、扉が自動的に開きます。中に入って扉が閉まると自動的に施錠されますので、外に出られるときは必ずこのカードキーを持ち出すのをお忘れなきようお願い致します。もし置き忘れて外に出てしまった時は、お近くの私達メイド隊に言って頂ければすぐに対応致しますので、ご安心下さいませ」


 メイドの丁寧な説明に王達は感心したように頷く。


「では、夕食は後ほど各お部屋へお運び致しますので、まずは大浴場で先に旅の汗を流されると良いでしょう。ごゆっくりお寛ぎ下さいませ。失礼致します」


 メイド隊は一糸乱れぬ美しい所作で一礼すると静かにその場を去っていった。


「ほう……。カシューは、このようなカードキーまで作っていたのか。全く、凄まじい国だな」


 ドルガンが渡されたカードキーをまじまじと見つめながら感嘆の声を漏らす。言われた通りにカードキーを機械に通すと、ピピッ! という電子音と共に重厚な扉が静かに開いた。レイラとレナを連れて部屋の中に入ると、そこは小国の王城の玉座の間よりも遥かに豪華で、かつ近代的な設備が整った素晴らしい空間だった。


「中も信じられないほど豪華な造りだな……」


 ドルガンは窓から見えるエデンの街並みと部屋の設備を見比べながら深く舌を巻いた。一方、以前の三カ国連合の祝宴の際にもこの貴賓室に宿泊した経験があるジラルド、ソウガ、レオンの三人はすっかり慣れた手つきで扉を開けていた。


「おお、これだこれだ! 何度見ても、このエデンの技術は本当に素晴らしいな!」


 ジラルドが興奮気味に部屋の中を見回して笑う。


「うむ。我がヨルシカの城もいつかこれくらい快適な造りにしたいものだ」


 ソウガも扇子を鳴らしながら満足げに頷いた。


「ハッハッハ! 全く、カシュー殿の頭の中はどうなっているのか、一度覗いてみたいものよな!」


 レオンも豪快に笑う。


 しかし今回が初めてのエデン訪問となるサキラとシャーロットの二人の女王にとっては、見るもの全てが驚きの連続だった。


「これで扉が勝手に開くとは……。エデンの技術は一体どうなっておるのじゃ?」


 サキラはシリュウの手を引きながら半信半疑で機械にキーを翳す。すると同じようにピピッ! と音が鳴り、扉が自動でスライドして開いた。


「おおっ……!?」「まあ……!」


 サキラとシャーロットが揃って驚愕の声を上げる。シャーロットも恐る恐る自分の部屋の機械にキーを翳し、ドアを開けた。


「まあ……。こんな魔法のような仕掛けまで……。エデンの科学力、そしてそれを統べるカシュー様は何て素晴らしいお方なのでしょう……」


 シャーロットはカードキーを胸に抱き締めながら、完全に恋する乙女の顔でうっとりと頬を染めた。その様子を見た他の国王達は「あー、これは完全にダメだな」という顔で無言で顔を見合わせた。


「最初は私達も驚いたものだが、エデンのこの圧倒的な技術は到底他国には真似できんな」


 ジラルドが苦笑いを浮かべながら言う。


「うむ。技術者を派遣してもらって城の造りを根底から一から作り直さねばならんレベルだ。それに、もしこの機械が故障した時に我々では全く対処ができんからな」


 ソウガも現実的な問題点を挙げながら舌を巻く。


「ハッハッハ! まあ我等の国には我等の国が築き上げてきた歴史と言うものがある。何でもかんでもエデンの真似をすればよいというものではないさ!」


 レオンは己の国への誇りを胸に豪快に笑い飛ばした。


「それもそうじゃのう。……さて、では早速大浴場へ行って旅の汗を流すとするかの」


 サキラがシリュウの頭を撫でながら言う。


「サキラ殿、よろしければわたくしがお背中をお流ししますわ」


 シャーロットは嬉しそうに提案した。


「おお、それはありがたい。……シリュウよ、お主は一人で男湯にちゃんと入れるか?」


 サキラは少し心配そうに息子の顔を覗き込んだ。


「はい、お母さま!」


 シリュウは元気よく力強く頷いた。


「我々がシリュウ王子の面倒は見よう。女王同士、女湯でゆっくりと親睦を深めるがいいだろう」


 ソウガが優しく微笑みながら提案する。


「そうか、それは恩に着る。……シリュウよ、彼ら偉大な国王達の背中から男として色々と学ぶのじゃぞ」


 サキラがシリュウの背中を押す。


「はい!」


 シリュウは大きな声で返事をした。


「うむ、元気でよろしい!」


 ジラルドが優しくシリュウの頭を撫でた。


「では行こうかシリュウよ! 男同士の裸の付き合いだ!」


 レオンがその丸太のように太い腕でシリュウを軽々と抱え上げ、自身の高い肩の上に肩車をした。


 レイラとレナは後から来るというカリナを待つために自室で待機することになり、一行はそれぞれ、サキラとシャーロットは女湯へ、そして三人の国王とドルガン、シリュウを含めた男達は連れ立って男湯へと向かうのだった。



 ◆◆◆



 城内にある男湯の大浴場。


 天井が高く湯気で白く煙る広大な空間には男達の低い笑い声と、湯を汲む音が心地良く響いていた。石造りの巨大な浴槽からはこんこんと熱い湯が溢れ出し、床の石畳を濡らしている。


 浴場にジラルド、ソウガ、レオンの三人の国王とフィンの国王ドルガン、そしてシリュウが姿を現すと、先に中に入って身体を洗っていた『ルミナスアークナイツ』のカーセルとカイン、『シルバーウイング』のロックとアベルといった冒険者達が一斉に立ち上がった。


「これは国王の方々。よろしければお背中をお流ししますよ」


 カーセルが爽やかな笑顔で申し出ると、カインとロックもそれに続いた。三人の若い冒険者達はそれぞれジラルド、ソウガ、レオンが座るシャワーの前の椅子の後ろへと回り込む。そして備え付けのボディソープをたっぷりと泡立て、タオルとスポンジを使って偉大な王達の広く分厚い背中を丁寧に擦り始めた。


「陛下、私がお背中をお流しします」


 ドルガンの背中には共に男湯へ来ていたフィンの騎士団長リギルが付き、主君の背中を丁寧に洗い始める。


 彼ら王族の身体は、以前の連合の祝宴でもそうだったように、日々過酷な公務に追われているとは到底思えないほど筋骨隆々として引き締まっていた。


「ジラルド陛下は相変わらず見事な筋肉ですね……。本当に驚かされます」


 カーセルはジラルドの年齢を感じさせないほど分厚く張り詰めた広背筋と歴戦の古傷が刻まれた逞しい肉体を流しながら、心からの感嘆の声を漏らした。王冠を脱ぎ捨てたその姿は国を統べる王であると同時に一人の完成された武人そのものだった。


「ソウガ陛下もお忙しい公務の合間にこれだけの身体を維持するのは大変でしょう。無駄な脂肪が一切ありませんね」


 カインもソウガの若々しくしなやかな筋肉に覆われた背中を流しながら率直な感想を述べる。その洗練された肉体はヨルシカ王の日頃の鍛錬がいかに厳しいものであるかを雄弁に物語っていた。


「レオン陛下、この圧倒的な筋肉はいつ見ても凄いですね! 丸太みたいな腕だ」


 ロックがレオンの老境にあるとは思えないほど隆々とした大胸筋と全身に刻まれた無数の傷跡を見つめながら興奮気味に言う。彼が生涯現役の最強の戦士であることがその肉体からひしひしと伝わってくる。


「ハッハッハ! 一国の王として国と民の命を背負っているのだ! この程度身体を鍛え抜くことなど決して苦ではないわ!」


 レオンは剛腕を見せつけるようにポーズをとり、三人の王達は顔を見合わせて豪快に笑い合った。レオンは自身の目の前に座らせた小さなシリュウの頭を大きな手で優しく洗ってやりながらふと真面目な顔つきになる。


「うむ、シリュウのような立派な跡継ぎを見ると……そろそろ我がアレキサンドも本格的に後任を決めねばならんな」


 レオンが自身の跡継ぎ問題について少しだけ寂しそうに、しかし頼もしそうにシリュウを見つめながら言った。一方、少し離れた場所でドルガンの背中を流していたリギルが王達の和やかなやり取りを見て微笑む。


「あちらは随分と盛り上がってますね」


「ああ、彼らは五大国を統べる偉大な国王だ。小国の王である私とは背負うものの大きさが根本的に違うな。あの鍛え抜かれた肉体がその証だ」


 ドルガンは自身のアバターの細い身体と三人の王の身体を見比べながら少しだけ自嘲気味に言った。


「いえ、そんなことはありません。ドルガン陛下も立派にフィンの国のことを思っておられます。現にフィンの国民達が陛下の治世に不満を言うところなど、私は一度も見たことがありません」


 リギルは主君を励ますように力強くきっぱりと言い切った。


「そうか……。お前がそう言ってくれるなら良いのだがな」


 ドルガンが忠臣の言葉に救われたように優しく微笑む。


「これからのエデンの騎士団との合同鍛錬、必ずや我等フィンの騎士も大きな成果を挙げ、強くなってフィンの未来のために尽くします!」


 リギルは背中を流す手に力を込めて熱く誓う。


「そうか、頼もしいな。だがまあ……エデンの特記戦力や騎士団の戦力は我々の常識を遥かに超えた異常なレベルだ。無茶をして身体が壊れないようにだけは気を付けろよ」


 ドルガンはエデンの規格外の強さを思い、苦笑しながら忠告するのだった。


 さらに奥の広い湯船では既に身体を洗い終えた者達が肩までお湯に浸かり、賑やかに談笑していた。エデンの弓術士代行エリアス、ドラゴンベイン・オーダーのエリック、アレキサンドの騎士団長ガレス、ルミナスの聖騎士団長セオドア、そしてヨルシカの術士マサムネといった各国の実力者達である。


「いやー、エデンの特記戦力もそうですけど、俺達代行も男女比がデカいっつーか完全に女の方が多くてバランスが悪いんですよね。だから俺はいつもこうして騎士団の連中とかと一緒に風呂に入ってるんですよ」


 エリアスが湯船の縁に腕を乗せて少しだけ寂しそうに笑う。


「はー、そいつはちょっと寂しいな。まあ俺もウチのギルド『ドラゴンベイン・オーダー』の一番の精鋭パーティはテレジア達女ばっかりだ。だから宿とかに泊まったら俺はいつも男一人だぜ。似た様なもんだな!」


 エリックは豪快に笑い飛ばして湯をすくった。


「せっかく前衛職のグラザと熱く語り合えるかと思ってたんだがな。アイツは特記戦力だから専用の超豪華な自室に自分専用の風呂があるんだとよ。さっきメイド達が言ってたぜ。全く、エデンの特記戦力はとんでもない贅沢だよな!」


 エリックは少しだけ羨ましそうに笑った。


「私は敬愛するレオン陛下がいらっしゃったのに冒険者の若者達に先を越されて、お背中を流しに行くタイミングを完全に失ってしまった……。騎士団長として一生の不覚だ……」


 ガレスが湯船の底を見つめながら深く落ち込んでいる。


「私もジラルド陛下のお背中をお流ししたかったが……まあ今日は活きのいい若い冒険者達に任せよう。最近は陛下も大浴場をよく利用されるからな。背中を流す機会はルミナスに戻ってからいくらでもあるさ」


 セオドアも微笑ましく洗い場の様子を眺めながら言う。


「そうなのか、実は我がヨルシカのソウガ様もだ。何でも以前ここのエデンの大浴場で他国の王達と裸の付き合いをして以来、『臣下とのコミュニケーションが大事だ』と言って、我々ともよく大浴場で共に湯に浸かって下さるようになったのだ」


 マサムネが嬉しそうに語り、王の側近という同じ境遇にある者達は顔を見合わせて温かく笑い合った。やがて身体を洗い終えた三人の王達とドルガン、そして冒険者達が次々と巨大な湯船へと身を沈めてきた。


「「「はあぁぁ~~~~……」」」


 国境も身分も超えた男達の満足気な深い溜め息が完全にシンクロし、湯気で白く煙る浴室内に心地良く反響する。


「いやあ、やはりこうして大勢での裸の付き合いは実に良いものだな!」


 ジラルドが首までお湯に浸かりながら極楽そうな顔で言う。


「うむ。私もジラルド殿を見習ってヨルシカで大浴場での触れ合いを始めてから、臣下の思っていることや本音なども気兼ねなく話せるようになり格段に公務がはかどり出したぞ」


 ソウガは自身の政策の成果を嬉しそうに語って笑った。


「その通りだ! なあガレスよ、お主もそう思うだろう?」


 レオンは湯船の向こう側にいる自国の騎士団長に向かって大きな声で呼び掛けた。


「はっ! 陛下と同じ湯に浸かりこうして腹を割って話せるのは、騎士としてこの上ない光栄の極みです!」


 ガレスは先程までの落ち込みから一転し、湯船の中でビシッと敬礼して答える。


「我々も全くその通りですね」


 セオドアやマサムネも深く頷いて同意した。


「はー、羨ましいっすね。ウチのエデンのカシュー陛下はほぼ執務室の隣にある自分専用の風呂に一人で入っているから、俺らは全くそういう裸の付き合いみたいなのがないんですよねー」


 エリアスが少しだけ羨ましそうに苦笑いする。


「僕達はこういう祝宴のような特別な機会でもなければ、他国の偉大な国王様達と同じ浴場に入るなんて絶対にできないのですごく新鮮で光栄ですよ」


 カーセルは本当に嬉しそうに爽やかに言った。


「はい! こうして王族の方々から直接話される言葉を聞けることも我々冒険者にとって大変な勉強になります!」


 カインもいつもの軽い態度は鳴りを潜め真面目な顔で深く頷く。


「国を背負う王族の方々の我々には計り知れない苦労を知れて、本当に学びが多いですね」


 ロックも尊敬の眼差しで王達を見つめて言う。


「彼らは私のような小国フィンと違い、世界の頂点に立つ大国の王だ。君達若い冒険者にとってはきっと彼らの言葉の全てが良い学びになるだろうな」


 ドルガンが若い彼らの姿勢に感心した。


「いえ、ドルガン陛下も我々フィン王国を立派に治めていらっしゃいます! 決して大国に引けを取るものではありません!」


 リギルはすかさず主君を庇うように強く主張する。


「そうだな。国王の持つ重い責務に国の規模の大小など一切関係ない。ドルガン殿も我々と同じように日々民を思い必死に公務に励んでいるはずだ」


 ジラルドがドルガンに向かって真っ直ぐな尊敬の視線を向ける。


「その通りだ。国王と言う肩書に国の規模は関係ない。背負う覚悟の問題だ」


 ソウガも力強く同意する。


「うむ! 民一人一人を愛し守り抜こうとする心は、大国も小国も決して変わらんからな!」


 レオンは豪快に笑い、三人の五大国の王達は小国の王に対して決して驕ることのないさすがの器の大きさを見せつけた。


「皆様……。身に余るお言葉、ありがとうございます」


 ドルガンは三人の王の懐の深さに胸を打たれ、湯船の中で深く頭を下げた。


「さすがは世界を統べる五大国の国王様達は言うことのスケールが違うぜ!」


 エリックが心からの称賛を送る。


「エリックよ、お主のその誰に対しても物怖じしない口の軽さも相変わらずよな!」


 レオンはエリックに向かって楽しそうに豪快に笑い飛ばした。


「ハハッ、まあ俺は昔からこういう性格ですからね! 今更変わらないですよ!」


 エリックも全く悪びれることなく快活に笑い返した。


「セオドアよ。エデンの騎士団の鍛錬はやはり噂通り厳しいのか?」


 ジラルドが少し真面目な顔つきになって自国の騎士団長に尋ねる。


「はい……。最初は本当に地獄のようでした。ですが今は皆必死に食らいつきようやく慣れて来ました。ですがそれでも我々の常識を覆すほどの強烈な強度ですね。カシュー陛下やカリナ殿が直々に鍛錬に立ち合って下さることもあるのですが……今の我々ではお二人に触れることすらできません」


 セオドアはエデンの特記戦力の底知れぬ強さを思い出し、悔しさと尊敬の入り混じった表情で語った。


「そうですね。彼らは同じ人間の次元にいないというか……別の生き物のように感じます」


 ガレスも深く同意して溜め息を吐く。


「エデンの特記戦力は本当に誰も彼もがとんでもない化け物揃いですからね」


 マサムネがしみじみと頷く。


「へっ、俺達『ドラゴンベイン・オーダー』も明日の祝宴が終わったら魔大陸に乗り込むまでの間はこのエデンの騎士団に混ざって徹底的に鍛錬をするつもりだぜ! お前ら他国の騎士団には絶対に負けねーからな!」


 エリックが闘争心を剥き出しにして不敵に笑う。


「はい! 僕達『ルミナスアークナイツ』と『シルバーウイング』も合同鍛錬に参加する予定ですよ! 皆様の足手まといにならないよう精一杯頑張ります!」


 カーセルも負けじと気合いを入れる。


「ははっ、マジでエデンの騎士団と格闘術士軍、そして神聖術士軍の鍛練はヤバいですよ。覚悟しておいた方がいいっすね」


 エリアスはこれから地獄を見るであろう彼らに向けて笑い掛けた。


「……いや、エデンはどの部隊も規格外にヤバいのは一緒か……」


 エリアスはすぐに自分の言葉を訂正し、エデンの異常な戦力を思い出して一人で苦笑いした。


 その時、浴場の入り口の扉が開き、アーシェラの格闘術士軍団長のコウマと騎士団長のショウキ、そしてマギナの魔法騎士団長のブレイズが揃って入って来た。


「これは皆様、随分と楽しそうにお話しされていますね」


 ショウキは湯船の賑やかな様子を見て声を掛けた。


「ははっ、これからエデンの合同鍛錬で『地獄』を見る連中がまた来ましたよ」


 エリアスが新手の参加者達を見てニヤニヤと笑う。


「……俺は、その地獄の鍛錬に本当についていけるんだろうか……」


 ロックがこれからの厳し過ぎる日々を想像して少しだけ不安そうに呟く。


「やるだけのことはやろう。限界まで自分を追い込むだけだ」


 アベルは短い言葉で力強く決意を込める。


「俺は槍術士だからな。確か特記戦力のグラザさんは槍も使えたよな……。よし、直接教えを乞うか!」


 カインもやる気に満ちた顔で自身の目標を定めた。後から入ってきたコウマ達は、なぜか悲壮な決意を固めている冒険者達との温度差に思わず「?」と首を傾げるのだった。シリュウも話の難しい意味は分からずともレオンの太い太腿の上に座り、男達の楽し気で熱い会話を聞きながらニコニコと笑っていた。


 広い湯船の中で三人の王と小国の王、二つのギルド、そして各国の側近やエデンの代行が肩までお湯に浸かり、戦いの話、国の話、そしてこれからの厳しい鍛錬の話に熱く花を咲かせる。男湯でのむさいながらも熱く、そして温かい男同士の談笑はエデンの静かな夜にいつまでも心地良く響き渡るのだった。


 その頃、カリナ達特記戦力の女性陣はレナに会うためにレイラが待つ貴賓室へと向かって城内の廊下を歩いているところであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ