333 泡沫の夢を侵す影、慈愛と魂の帰還
湯気と石鹸の甘い香りが立ち込めるカリナの自室の浴場。
死闘の疲れを癒やすべく、サティアの背後から抱き締められ、その圧倒的な質量を誇る柔らかな双丘に顔を埋めているカリナは、心からの安堵と共に深くリラックスしていた。
そこへ、わいわいと賑やかに身体を洗い終えたカグラとエヴリーヌが湯船に入って来る。エヴリーヌはカリナの右側に陣取ってぴたりと身を寄せ、その細い腕でカリナを抱き締めた。カグラは左側へと入り、同じくカリナの身体を優しく抱き寄せる。
「全く、エヴリーヌの悪戯には困ったものだわ」
カグラが先程の洗い場での攻防を思い出したのか、呆れたように溜め息を吐く。
「ん、肉の撲滅は私の使命。堕肉は駆逐する」
エヴリーヌは形の良い美乳をツンと張りながら、どこか誇らしげに言い放つ。
「相変わらずですね、エヴリーヌさん。そこまで言うなら、最初からアバターの胸の設定をアバターボックスでいじれば良かったのでは?」
サティアは不思議そうに小首を傾げて正論を突きつけた。
「ん、それは一生の不覚」
エヴリーヌがぐぬぬと唸り、その悔しそうな表情にカグラがくすくすと笑い声を上げる。三人の美女に囲まれ、温かなお湯と他愛のない会話に包まれる長閑な時間。誰もが、この平和なひとときが続くと思っていた。
しかし、突如としてカリナの身体に異変が起きた。
「……っ!」
サティアの身体に回されていたカリナの細い腕に、不自然なほど強い力が籠る。その腕は徐々に痙攣するように震え始め、サティアの柔らかな胸に顔を埋めていたカリナの美しい碧眼から、大粒の涙がぼろぼろと溢れ出した。
カリナは奥歯を食い縛り、必死に『それ』に抵抗しようとするが、サティアの素肌の胸元に熱い涙がとめどなく零れ落ち、カリナの全身がまるで酷い悪寒に当てられたかのように激しく震え始めた。
――幼い少女のアバターによる精神への侵食。
この世界における、カリナにとっての最も恐るべき脅威が、こんな無防備な状況で襲いかかったのだ。
「はっ……! カ、カリナさんっ!?」
胸元に落ちる熱い涙と異常な震えに、サティアがいち早くその症状に気付いた。
「カリナちゃん!? 嘘、こんなところで症状が出るなんて……!」
カグラが顔色を変え、すぐさまカリナの精神を落ち着かせようと、濡れた赤い髪の毛や頭、そして華奢な背中を懸命に撫でる。しかし、カリナの震えは一向に治まる気配がない。
「ん、これはマズイ。母乳係の任をサティアに譲る。すぐにカリナに飲ませて!」
エヴリーヌが鋭い声で指示を飛ばす。彼女自身も同じ役割を担っているからこそ、今のカリナに何が必要かを即座に理解していた。
「は、はいっ! カリナさん、大丈夫です。好きなだけ飲んで下さい……っ!」
サティアは覚悟を決めたように頷いた。彼女は右を向いて震えているカリナの口元へと、自身の零れ落ちんばかりの右の巨乳を右手で優しく持ち上げ、ぷっくりとしたピンクの蕾を、震えるカリナの唇へとそっと咥えさせた。
「あっ……んんっ……!」
その瞬間、カリナは本能のままにサティアの蕾に吸い付いた。ちゅむ、ちゅむという水音が浴場に響き、カリナはサティアの巨乳から溢れ出す甘い母乳を、飢えたように喉を鳴らして飲んでいく。サティアはカリナが湯船の中で溺れないように、その華奢な身体をしっかりと支え続ける。
「カリナちゃん、こっちもよ……」
カグラがカリナの左手をそっと自身の右胸へと導く。カリナはサティアの右胸から母乳を貪るように吸いながら、空いた左手でカグラの右の巨乳に指を食い込ませ、己を繋ぎ止めるアンカーを求めるように、激しく、そして切実に揉みしだいた。
「ああっ……! んっ……ぁあっ……!」
吸い付かれた蕾からの強烈な刺激に、敏感なサティアの口から甘く艶めかしい嬌声が響き渡る。
「んんっ……! はぁっ……カリナ、ちゃんっ……!」
同時に、豊満な果実を力強く揉みしだかれるカグラの口からも、快感に震える色っぽい嬌声が漏れ出した。二人の美女が上げる艶やかな声と、カリナの切実な水音。エヴリーヌはカリナの身体を左側からしっかりと支えながら、震える背中や赤い髪の毛を、まるで慈しむように何度も何度も撫で続けた。
「はぁっ……はぁっ……カリナさん、遠慮しなくていいんですよ……っ。好きなだけ、吸って下さい……っ!」
サティアは荒い息を吐きながら、快感に溺れそうになる意識を必死に保ち、母性に満ちた声でカリナに語りかける。
「んっ……カリナちゃん、私達が、ちゃんと受け止めてあげるからね……っ」
カグラもまた、胸を揉まれる刺激に身を捩りながら、慈愛の籠った声で懸命にカリナを励まし続ける。
「カリナ、大丈夫。私達が傍にいるから。安心して……」
エヴリーヌはカリナの耳元で祈るように声を掛けながら、必死に彼女の身体を撫で続けた。サティアは絶え間ない快感に翻弄されながらも、決してカリナの身体を離すまいと支え続ける。カグラもまた、揉まれ続ける胸の先からツンと甘い母乳が溢れ出し、それがカリナの白い指やカグラの豊かな双丘を伝い落ち、湯船の水面へとぽたぽたと白い雫となって零れ落ちていく。
「くっ……んぅっ……!」
エヴリーヌは快感と疲労で力が抜けかけていくサティアの身体を自分の腕でしっかりと支え、カリナの身体ごと抱き締めるようにして支え続けた。
「カリナ、大丈夫。私達はどこにも行かない。ずっと側にいるから……!」
必死に声を掛け、抱き締めながら撫で続けるエヴリーヌ。その懸命な姿に呼応するかのように、ただ見守り支えるだけだったエヴリーヌの秀麗な双丘からも、母性を強く刺激されたかのようにふわりと母乳が溢れ出し、彼女のスレンダーな素肌をつーっと白く伝い落ちていった。
やがて、サティアの左の薄紅の蕾からも母乳が滲み出し始めた。カリナは空いた右手で、そのサティアの左の柔らかな巨乳に指を深く沈み込ませ、強く食い込ませるようにして揉みしだいた。
「ああっ……!! んあっ、カリナ、さんっ……!」
不意の強い刺激にサティアが激しく感じた声を上げ、大きく背中を反らせて荒い息を吐く。
「カリナ! カリナっ!」
エヴリーヌは必死に名前を呼び続け、サティアとカグラの艷やかな嬌声が、静かな浴場に木霊する。三人の献身的な愛情と母性に包まれ、やがて徐々に、カリナの異常な震えは治まっていき、サティアの素肌を濡らしていた熱い涙もゆっくりと枯れていった。
そして、カリナがサティアの窒息しそうなほど柔らかな巨乳に顔を埋め、その先端を吸い付いていた口をぷはっと離した、まさにその瞬間だった。
「――今ですっ!」
サティアがキッと瞳に強い光を宿し、精神を極限まで集中させる。彼女はカリナの身体を自身の胸元へとしっかりと抱き寄せ、上位聖女神聖術の詠唱を開始した。
「『セイントレス・エンブレイス』!!!」
サティアの聖女としての力を最大限に発動する、仲間の精神を守護するための専用神聖術。優しく温かい神聖な光がカリナの魂を包み込み、アバターによる精神崩壊や魔力侵食を完全に浄化していく。その効果でカリナの侵食の波が完全に鎮まったことを確認すると、すぐさまカグラが動いた。サティアの胸元から、今度は自身の豊かな胸元へとカリナを抱き寄せ、流れるような動作で印を結ぶ。
「荒ぶるは陰、
昂ぶるは陽。
乱れは相克にあらず、
均衡の忘却なり」
カグラの凜とした詠唱が響く。彼女の足元の水面、そして湯船の底に、白銀に輝く陰陽の円陣が浮かび上がった。
「我が掌にて調えよ。
我が息にて還せ。
精神安定系奥義
――『相生帰魂・天静輪』!」
鈴の音のような清らかな霊響と共に、カリナの周囲に淡い光の輪が生まれ、ゆっくりと回転を始める。相克ではなく『相生』を極限まで高め、陰と陽の力を衝突させずに完全調律させる救済の奥義。その光の輪がカリナの魂の振動数を強制的に整えると、彼女の乱れていた呼吸は自然と深く穏やかなものになり、微かな震えすらも完全におさまった。
「はぁっ……はぁっ……っ」
母乳を吸われながら胸を激しく揉まれ続けたサティアと、胸を揉まれ続けた上に高度な奥義を行使したカグラの二人は、術の反動と絶え間ない快感による疲労で完全に脱力し、荒い息を吐いてぐったりと肩を落とした。
「ん、カグラ、貸して!」
このままでは二人がカリナを支えきれないと察知したエヴリーヌが、素早くカグラからカリナを受け取り、自身の胸元へと抱き寄せる。エヴリーヌはすぐさま立ち上がり、浴槽の縁に腰掛けると、カリナが湯船に沈まないようにその身体をしっかりと抱き締めた。症状の余韻でまだ意識が朦朧としているカリナの頭を自身の肩に乗せ、エヴリーヌは必死に彼女の身体を支え続ける。
「はぁっ……はぁっ……!」
サティアとカグラも大きな術を連続で行使した反動により、このままでは湯船で溺れてしまうと本能で悟った。二人は重い身体を引きずるようにして湯船から抜け出すと、浴場の大理石の床の上に仰向けのままぐったりと横たわり、豊満な双丘を大きく上下させながら荒い息を吐き続けた。
「二人共、大丈夫? カリナは無事。私がちゃんと支えてる」
エヴリーヌが浴槽の縁から床に倒れ伏す二人に声を掛ける。
「はい……。何とか……、危なかったですね……」
サティアは額の汗を拭いながら消え入るような声で答えた。
「はぁっ……はぁっ……! こんな場所で症状が起きるなんてね。私達も、溺れるところだったわ……」
カグラも床の冷たさに火照った身体を預けながら、荒い息の合間に言葉を紡いだ。
「このままでは……二人共、暫く動けませんね……」
サティアが力を振り絞り、仰向けのまま自身とカグラに向けて聖女専用の支援術を詠唱する。
「『ブレッシング・オブ・ザ・セイントレス』……!」
神聖力によって生命力と魔力を大きく回復させ、精神の安定を促す淡い光が二人を包み込む。その効果により、カグラとサティアの消費しきった魔力と体力が、ゆっくりと、しかし確実に回復し始めた。
「はぁっ……はぁっ……」
二人は呼吸を整えながら、その重力に逆らうかのような豊かな巨乳を揺らし、ゆっくりと上半身を起こした。
「ありがとうサティア。徐々に楽になって来たわ」
カグラがほっとしたように息を吐く。
「はい……、徐々にですが、体力も魔力も回復します。ですが、溺れないように、このままこうしてしばらく横になっていましょう……」
「そうね……、いきなり動いたら卒倒しそうだわ……」
二人は再び大理石の床に力なく横たわった。
「ん、二人は大丈夫そう。……カリナ? カリナ、大丈夫?」
エヴリーヌは胸元に抱くカリナの頬を優しく叩きながら声を掛けた。
「ん……? ああ……、もう、大丈夫だ……」
カリナの意識が徐々にはっきりとし始め、ゆっくりと碧眼が開かれた。状況を理解した彼女の瞳から、ポロポロと後悔の涙が零れ落ちる。
「すまない……。お前達に、また無理をさせたみたいだ……」
己の弱さを責めるような、痛切な自己嫌悪の表情。それを見たエヴリーヌは、カリナの身体をさらにきつく抱き締めた。
「ん、カリナが自分を責める必要はない。私達は、カリナの力になれるのが嬉しい。だから、自己嫌悪だけはしないで……っ」
エヴリーヌの声が震え、彼女の瞳からも大粒の涙が溢れ出す。
「うぅ……っ、カリナが、無事で良かった……っ!」
エヴリーヌはカリナの頬に自身の顔をすり寄せ、子供のようにぼろぼろと涙を流して泣きじゃくった。
「ありがとう……。もう大丈夫だから……、泣くなエヴリーヌ。泣かれたら、私は余計に自己嫌悪に苛まれてしまうからな……。だから、笑顔でいてくれ……」
カリナが優しく微笑み、エヴリーヌの涙で濡れた顔や、特徴的なエメラルドグリーンの髪の毛を愛おしむように撫でてやる。そこへ、体力がある程度回復したサティアとカグラが立ち上がり、カリナを抱くエヴリーヌの左右の縁に腰掛けた。二人は泣きじゃくるエヴリーヌの頭を優しく撫でた。
「お前達にも、迷惑を掛けたな……。……今回は、かなりきつかった……。自分の自我が、真っ黒な何かに塗りつぶされていくようだった。カグラ、サティア、引き戻してくれてありがとうな……」
カリナは二人の頭やその美しい顔を撫でながら心からの感謝を伝えた。
「無事で良かったわ、カリナちゃん……っ!」
カグラが目尻に涙を浮かべながらカリナの顔に頬を擦り寄せる。
「はい……良かったです。症状が激しかったですから……もう戻ってこないかもしれないかと、思いました……っ!」
サティアも聖女の微笑みを崩してぽろぽろと大粒の涙を流した。
「心配を掛けてすまなかった……。でも、今はもう落ち着いてるよ。お前達の御陰だ、ありがとう……」
カリナは三人の優しさに包まれながら、しかしその声には微かな震えが混じっていた。
「でも、これ以上症状が進むのは危険だな……。次は戻って来れるのか、不安になる。それくらい、今回は自我が完全に塗り潰されていくかのような恐ろしい感覚だったからな……。疲労も完全に回復していたはずなのに、困ったものだな……」
カリナが自嘲気味に言う。しかし、すぐに前を向いて力強く言った。
「でも、お前達の御陰でもう大丈夫だ。だから、もう泣くな」
カリナは自分の腕で涙を乱暴に拭い、三人に向けて屈託のない笑顔を見せた。
「ん、一番辛いはずのカリナが笑っているのに、私達が泣いてはいけない」
エヴリーヌはカリナの笑顔を見てハッとし、乱暴に自分の涙を拭う。
「そうね、私達が絶対に諦めずにカリナちゃんの侵食を必ず止めてみせるわ」
カグラも決意を新たに涙を拭った。
「これからは、カリナさんが居眠りしてしまう時には、それが前兆なのだと思ってすぐに回復させますね」
サティアも涙を拭い、聖女としての頼もしい笑顔を取り戻す。
「ああ、いつもすまない。お前達がいないと、私はもうアバターの精神に完全に飲まれていたかもしれない。これからも嫌じゃなければ、支えてくれるとありがたいよ」
カリナが少し照れくさそうに言うと、三人は一斉に首を横に振った。
「当たり前よ!」
「ええ、必ず私達が何とかして見せます!」
「ん、カリナを救うのは、この世界を救うよりも大切なこと」
彼女達は、互いの瞳を見つめ合い、絶対にカリナを守り抜くという強固な絆を確かめ合った。
「ああ、でも仲良くな」
カリナが、最高の仲間達に囲まれて心底嬉しそうに笑った。その時、ガラッと浴場の引き戸が開く音がした。
「大きな声が聞えましたけど、何かありましたか?」
昼食の準備を終えたルナフレアが、心配そうに浴場の中を覗き込む。彼女の視線の先には、エヴリーヌに抱かれているカリナと、揃って浴槽の縁に腰掛けている全裸の三人の美女の姿があった。ルナフレアは不思議そうに小首を傾げる。
「いつもの症状が、こんなところで出たんだ。でも、みんなが鎮めてくれた。もう大丈夫だよ。そろそろ上がるから、昼食を頼むよ」
カリナはルナフレアを安心させるように言った。
「はあ……、そうでしたか……。でも、皆様ご無事そうで何よりです。昼食の準備は既にできておりますから、湯冷めしないうちにそろそろ上がって下さいね」
ルナフレアがほっと息を吐き、脱衣場へと戻っていく。
「さて、行こうか」
カリナの言葉に、エヴリーヌが「ん」と頷き、カリナをお姫様抱っこしたまま立ち上がる。サティアとカグラもそれに続き、四人の美女美少女達は、ルナフレアが用意してくれた温かい昼食を楽しむため、賑やかだった浴場を後にするのだった。




