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聖衣の召喚魔法剣士  作者: KAZUDONA


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328  重力との死闘と最強の連携

 ガレオスの卓越した運転技術によって、魔導装甲車は荒野を爆速で駆け抜け、砂塵を巻き上げながら南西の砦へと到着した。車輪が止まるか止まらないかの瞬間、ガレオスが叫ぶ。


「到着です! 皆様、御武運を!」


「ああ、感謝するぞ!」


 助手席からカシューとグラザが、後部座席からはカリナ、カグラ、サティア、エヴリーヌ、エクリアの五人が弾かれたように飛び出した。砦を守護していた兵士達は、目の前に現れたエデンの最高戦力の集結、そして何より国王自らが最前線に立った姿を見て、驚愕に目を見開いた。


「へ、陛下!? まさか陛下自らが最前線に……!」「特記戦力が全員揃っている……! これなら勝てるぞ!」


 カシューは動揺する兵士達に向け、王の威厳をもって告げた。


「よく砦を守護してくれた。後は私達に任せて、下がっていろ」


 カリナ達も無言で頷き、闘気を放つ。兵士達はその圧倒的な威圧感に気圧されながらも、希望に満ちた声で応じた。


「はっ! エデンの最高戦力の到着だ!」「全員後退! 射線を空けろ!」


 兵士達が砦の奥へと下がるのと入れ替わりに、カシュー達は最前線へと立つ。目前に広がるのは、数千にも及ぶ悍ましい魔界兵団の大軍。カシューはそれを鼻で笑った。


「へえ、単独で来たって言ってたけど、どうやら小賢しくも雑魚を召喚したみたいだね」


「あれが魔界兵団だ。私達にとっては雑魚に過ぎないが、並の騎士や兵士には脅威だな。油断はできない」


 カリナが女神刀の柄に手をかけ、冷静に分析する。


「にしし、まあいいぜ。雑魚共は俺がまとめて蹴散らしてやるよ」


 エクリアが不敵に笑い、魔力を高める。


「ん、雑魚に限って数だけは多い。……蹴散らす」


 後衛に立つエヴリーヌも愛弓アルテミスを握り、冷酷な狩人の瞳で宣言した。


「所詮は前座よ。さっさと蹴散らすわよ」


 カグラは扇子の『画龍点睛』を右手に、左手には護符や呪符を扇状に構え、余裕の笑みを浮かべる。


「みなさまの安全は私が完全に確保します。後ろは気にせず、存分に暴れて下さい」


 サティアが『メイデンロッド』を握り締め、慈愛に満ちた、しかし力強い声で仲間達を鼓舞した。


「さて、カシュー。久々に暴れるか」


 カリナはカシューの肩にポンと手を置き、悪戯っぽく笑った。


「ああ、遠慮なくやらせてもらうよ」


 カシューもレーヴァテインとエクスカリバーの柄を叩き、笑顔を返した。カリナは千里眼を発動し、敵陣の奥からゆっくりと、しかし確実に重圧を撒き散らしながら歩いて来る悪魔を確認した。


「なるほど……アイツが敵将だな。千里眼で見る限り、一筋縄ではいかなさそうだ」


「はい。魔力探知でも、確かにあの悪魔からは災禍六公や他の四天王レベルの、ドス黒い魔力を感じます。ですが……敵陣のド真ん中にいる以上、まとめて薙ぎ払えます!」


 サティアの言葉に、グラザが動いた。


「アイツは槍持ちか。なら……俺も久々にこいつを使うぜ」


 グラザはアイテムボックスから最高ランクのレア武器の槍である『青龍偃月刀』を取り出した。濃緑色の長い柄の先には、黄金に輝く青龍の頭部が精緻に彫り込まれており、その龍の口から吐き出されるように、黒と金の豪奢な紋様が刻まれた白銀の湾曲刃が伸びている。刃の根元には鮮やかな赤い房が揺れ、主の莫大な闘気に呼応してヴンッ! と重低音を響かせた。


「じゃあ……やるぞ!」


 カリナの号令と共に、四人が叫んだ。


「「「「真眼解放!!!」」」」


 カリナ、グラザ、カシュー、エヴリーヌの瞳が瞬時に真紅に染まり、身体能力のリミッターが強制的に解除される。


 ズゴゴゴゴゴッ!


 爆発的な闘気が砦を揺らした。その直後、カリナが全身に魔力を集中させ、短く叫んだ。


「換装!」


 眩い光と共に、着ていた紫のコートと冒険者ドレスがアイテムボックスへと収納され、瞬時に最早彼女のトレードマークである真紅のバトルドレスが装着される。


「いくぞ!」


 カシューの声を合図に、全員が砦から飛び降り、空歩を駆使して敵陣へと真っ直ぐに突っ込んだ。


 前衛で敵将を迎え撃つのはカリナ、カシュー、グラザ。中距離からはカグラが相克と陰陽術で、後衛からはエクリアの魔法とエヴリーヌの弓が魔界兵団を殲滅しつつ援護し、そして最後列からサティアが神聖術で全員を守護するという完璧なコンビネーション。突撃してくるエデンの最高戦力を前に、敵将アスヴァルは超重量の魔槍グラビトンを構え、地の底から響くような声で名乗った。


「俺はネグラトゥス様が臣、四天王が最後の一柱。破界将アスヴァル・ドレッドハウル。……抗うな。沈め」


「四天王の最後の一柱か。ここで討ち取らせてもらう!」


 カシューはエクスカリバーを右手に、レーヴァテインを左手に二刀流の構えを取り、グラザも青龍偃月刀を、カリナは女神刀を抜いて構えた。その瞬間、後衛陣の攻撃が炸裂した。


「『ファイア・ボール』! 『フレイム・ランス』! 『サンダー・ゲイル』!」


 エクリアが詠唱破棄で放った火球と高熱の炎槍が、空中を漂う『幽影兵』の群れを次々と消し炭に変え、雷を孕んだ突風が、遠距離から霊矢をつがえようとしていた『影霧弓兵』の陣形をズタズタに切り刻み、吹き飛ばす。


沸衝(ふっしょう)! 焔狐火(えんこび)! 雷切符(らいきりふ)!」


 カグラの扇子から放たれた水と火の相克術が、剣と槍を構えて突撃してくる『影狼兵』と『影霊騎士』の大軍の足元で瞬間沸騰し、凄まじい衝撃波となって黒鎧の兵士達を粉砕する。さらに陰陽術の妖焔を象った狐火が駆け抜け、同じく雷を帯びた護符が、気配を消して肉薄してきていた狩猟魔獣『影喰犬』の群れに張り付き、鼓膜を劈く爆音と共に光の届かない漆黒の焔ごと塵に還元した。


「アロウ・ショット! ラピッド・ファイア! ハリケーン・ボレー!」


 エヴリーヌの愛弓アルテミスから放たれた無数の矢が、雨のように降り注ぐ。凄まじい貫通力を持った暴風の矢の雨は、打撃や斬撃を通さないはずの中身のない巨兵『影霊甲冑』の頭上から降り注ぎ、その内部にある影の核を正確に射抜き、ガシャアアアンッ! とけたたましい金属音を立てて次々と崩れ落ちさせていく。特記戦力の後衛陣による怒涛の範囲攻撃により、数千の魔界兵団は一瞬にして壊滅した。


「ちっ……所詮は雑兵か。盾にもならん」


 アスヴァルは周囲の灰となった配下を一瞥し、忌々しげに吐き捨てた。そして、己の身体を包む精霊王の加護と聖女の浄化の波動に気づく。


「これが精霊王の加護に聖女の浄化か……。確かに、俺の力を奪われる感触があるが……ククク、いいハンデだ。この程度で俺が止まると思ったか?」


 アスヴァルが舐めきった態度で笑う。その挑発に、カリナの女神刀が鋭く鳴いた。


「舐めるなよ! その加護や浄化によって、お前達は全て斃されてきたんだ!」


「カリナ、グラザ、離れろ! 灰に帰せ! 『ヘルフレア』!」


 エクリアの叫びと共に、彼女の赤い瞳が魔力の全力解放によって黄金色へと輝きを変える。カリナとグラザが瞬時にアスヴァルから距離を取った直後、アスヴァルの頭上に太陽のような極大の火球が出現した。


 ズゴオオオオォンッ!!


 周囲の空間ごと溶かすような超高温の爆炎が彼を飲み込んだ。しかし、爆炎が晴れた後、アスヴァルは魔槍グラビトンを地面に突き立て、岩盤のような皮膚から僅かに煙を上げながらも無傷で立っていた。


「マジかよ……あんなモンまともに食らって無傷だっていうのか!?」


 エクリアが信じられないものを見るように、驚愕に目を見開く。


「抗うなと言ったはずだ。……沈め。地ではなく――深淵へ。――『奈落(アビス・)重圧陣(グラヴィトロン)』!!!」


 アスヴァルが槍を地に突き立てた瞬間、半径数百メートルを支配する強烈な重力結界が展開された。


 ブォンッ!


 空気が異様な密度に圧縮される音が響く。近づくだけで空気が沈み込み、立っているだけで地面がすり鉢状に陥没していく。妖精の加護を持たないカシューの身体に、骨格をきしませ、魔力循環を阻害するほどの圧倒的な重圧が圧し掛かる。


「カシューさん! カノン・オブ・ザ・ディヴァイン・ブライド! セイントリー・ミラクル・アマリア!」


 サティアが即座に究極儀式を発動し、エデン全土に浄化の光を降らせてアスヴァルの瘴気を祓う。さらに最後尾から瞬歩で一気にカシューの背後へ近づき、その背に触れ、瞬時に重力による強烈な物理的負荷を完治させると、すぐさま瞬歩で安全な後方へと下がる。


 カリナ、エクリア、カグラ、サティア、エヴリーヌ、グラザは側付きの妖精の加護により、この重力場による精神干渉や魔力循環阻害などの状態異常は無効化されているが、それでもアスヴァルが放つ物理的な重圧の圧迫感までは消せない。


「なるほど……。この重力結界は、肉体と魔力の両方に負荷をかけるタイプか。厄介だな」


 カシューが即座に分析する。


「ああ、並の相手ならこれだけで圧殺されるレベルだな。カシュー、アイツの動きは遅い。だが槍の間合いに入れば、あの破壊力だ。接近戦は危険過ぎる」


 カリナは女神刀を構え直し、カシューと情報交換をする。


「グラザ、離れろ! 天よ、裁け! 『ディヴァイン・ジャッジ』!」


 エクリアが再び叫び、黄金の瞳を輝かせながら天から無数の巨大な白雷の柱をアスヴァルへと降らせる。


 バリバリィ! ヴィシャアアアンッ!!


 戦場を真昼のように照らす雷撃が殺到するが、アスヴァルは魔槍グラビトンを一振りし、その圧倒的な重力波だけで雷柱を軌道ごと捻じ曲げ、弾き飛ばした。


「くそっ、力業で軌道ごと曲げやがった!」


 自身の極大魔法を無造作に弾かれ、エクリアが忌々しげに舌打ちをする。


「その程度の魔法、無意味だ。……貫くのではない。潰す。――『断層(クレイドル)穿槍(・ブレイカー)』!!!」


 アスヴァルが槍の穂先に重圧を一点圧縮し、恐るべき踏み込みで突進してきた。その槍が空気を切り裂くのではなく、空間そのものを押し潰す。


 バゴオオオオオッ!


 そのターゲットはカシューだったが、即座にレーヴァテインとエクスカリバーを交差させ、柄を軸にして剣を高速回転させる防御奥義『スピニング・ソードシールド』を発動した。


 ギャリイイイイイィンッ!!!


 激しい火花が散り、剣の回転がアスヴァルの槍から放たれた致死の重圧と衝撃波をギリギリで相殺し、周囲へと弾き飛ばした。


「ふふっ、やるじゃないのカシュー! ならこれはどうかしら! 雷火衝(らいかしょう)! 感知・六陰視(かんち・ろくいんし)!」


 カグラがエクリアの魔法による焦土を利用し、相克術で雷撃を走らせて火炎を強制爆発させる。さらに陰陽術の瞳で、土煙の奥にいるアスヴァルの岩盤の如き皮膚の継ぎ目、つまり急所を瞬時に感知した。


「カシュー! 右脇腹の装甲の隙間、装甲と皮膚の継ぎ目が僅かに薄いわ! そこを狙って!」


 カグラが瞬時に急所の情報を共有する。


「任せろ!」


 爆発の煙に紛れ、カシューが突っ込む。二刀流の特性を活かした、最高ランクの剣による一撃が二撃になる高速連撃。


「ツインカッター! フラッシュチェイン! ソニックセイバーダンス!」


 目にも止まらぬ速さで繰り出されるカシューの剣閃が、アスヴァルの巨躯を包み込む。


 ザヴアアアアアアァッ!!!


 連続する刃の軌跡が、カグラの指示した右脇腹の装甲の隙間を縫い、浅黒い硬質な皮膚を無慈悲に切り裂く。飛び散るルビー色の赤身の肉。エクスカリバーの聖なる光が邪気を断ち、レーヴァテインの紅蓮の炎がアスヴァルの傷口を灼く。


 ゴオオオウッ!


「グアァッ! 貴様ァッ!」


 アスヴァルが苦悶の声を上げ、大木のような腕で魔槍を薙ぎ払う。凄まじい風圧が地面を抉るが、カシューはそれを『ブレードラッシュ』で地を滑るように回避し、アスヴァルの死角へと回り込む。


「今だ! グラザ、カリナ!」


「おうよ! ドラゴンスレイヤー! サウザンド・レイン!」


 グラザが青龍偃月刀を振るい、踏み込みと共に一点集中の貫通撃を放つ。重い手応えと共に白銀の刃がアスヴァルの重装鎧を貫き、さらに無数の突きが雨の如く巨体の各所を穿つ。


 ズドシュッ! ズガガガガガアッ!!!


「追撃だ! 龍牙閃(りゅうがせん)! 迅風返(じんぷうがえし)! 瞬刃(しゅんじん)!」


 カリナの女神刀が、龍の牙を振り下ろすような重斬撃となってアスヴァルの肩口に食い込む。


 ギャリィィィンッ! ザヴァアア!! ドシュウッ!!!


 金属と骨を削る音を響かせ、アスヴァルが反撃に繰り出した拳を、カリナは刃で滑らせるように受け流す。直後に気配すら残さぬ最短距離の速斬りでその腹部を横一文字に切り裂いた。洗練されたカリナの剣技が、アスヴァルの分厚い皮膜翼の根元から黒い鮮血を噴き出させる。


「ぐおおおおッ!!! お前達……舐めるなよ! 俺はネグラトゥス様の深淵を体現する者! この程度の傷、痛くも痒くもない! ――『零距離重界崩』!!!」


 アスヴァルは血走った瞳を剥き出しにし、カリナの女神刀の刀身を素手で強引に掴み取った。


 ガシィッ!


 その瞬間、カリナは真紅のバトルドレスの魔力を刀身に集中させ、掴まれた女神刀を力任せにアスヴァルから引きはがした。


 ギヂヂヂヂィッ!!!


 接触による呪縛と体内重力の逆転暴走が、カリナのバトルドレスが展開する魔力のヴェールを貫き、内側から細胞を千切りにかかる。防御無視の超接近限定技だ。


「カリナさん! セイントリー・ミラクル・アマリア!」


 サティアは即座に瞬歩で駆け寄り、奇跡の神聖術を発動した。純白の光がカリナを包み込み、引き裂かれそうになった損傷を瞬時に完全回復させると、再び瞬歩で後方へと素早く下がった。


「すまないサティア、助かった!」


「いえ、ご無事で何よりです!」


 後衛からカリナの窮地を冷静に見定めていたエヴリーヌが、弓を構えながら射線上にいたカグラに指示を出す。


「カグラ、離れて! 蒼嵐雷天矢(そうらんらいてんし)!」


 カグラがアスヴァルから空歩で飛び退いた瞬間、愛弓アルテミスから、嵐そのものを矢にした三属性融合弓技が放たれた。


 ズゴゴゴゴゴオッ!! ズドドドドオンッ!!!


 巨大な雷嵐がアスヴァルを覆い尽くし、無数の雷光の矢が彼の巨体を容赦なく貫く。


「ん、カリナに触れるな! ……ハチの巣にする!」


 エヴリーヌの、真眼解放によって真紅に染まった瞳に冷酷な狩人の光が宿り、さらに連続で弓を引き絞る。


聖炎天罰矢(せいえんてんばつし)!」


 ドシュゥゥゥッ!! ドズンッ!!!


 放たれた聖炎と雷撃の神罰矢が、嵐の中で体勢を崩したアスヴァルの胸板に深々と突き刺さり、眩い閃光と共に彼の肉体を内側から激しく灼き焦がした。


「私の神聖術も甘く見ないで下さい! 『ランス・オブ・ザ・セイクリッド・メイデン』! 『セインツ・ディヴァイン・ヴァーディクト』!」


 後方からサティアがメイデンロッドを掲げ、攻撃神聖術を連続で放つ。悪魔を貫くためだけに生まれた純白の光槍がアスヴァルの巨体に深々と突き刺さり、さらに悪のみを焼く審判の光が、畳み掛けるように嵐の中で炸裂した。


「にしし、さっきのお返しだ! 火、雷、風……三属性合成・収束! 『カタストロフ・テンペスト』!」


 エクリアが魔力全開放で黄金に染まった瞳を爛々と輝かせながら、炎と雷と暴風の三属性を極限まで圧縮し、極太の光線のレーザーとして放った。


 ギュイィィィィィンッ!!!


 圧倒的な破壊力を秘めた三属性の光線が、アスヴァルの重装鎧ごと肩口を正確に撃ち抜き、その分厚い巨体を貫通して背後の大地を一直線に消し飛ばした。


「これでも喰らえ! 四大元素創世魔法剣! 烈焔迅雷嵐(れつえんじんらいらん)!」


 サティアの治癒で完全に態勢を立て直したカリナが、女神刀に火・風・雷の三属性を合成させ、炎の竜巻に雷を走らせながら猛然と踏み込んだ。


 バチバチバリィッ!


 大気を焦がす速度特化の合成魔法剣技が、防御を固めようとしたアスヴァルの巨躯を切り刻みながら駆け抜けた。


 ズドオオオンッ!!!


 遅れて弾けた三重の属性爆発が、アスヴァルの黒鋼の装甲を粉々に粉砕する。カリナの爆発的な一撃で体勢を崩したアスヴァルに向かって、カシューが地を蹴った。


「オーロラ・ジャッジメント!」


 最高ランクの聖剣エクスカリバーと炎の魔剣レーヴァテインの二振りに、オーロラの如き七色の光を纏わせ、二刀流による断罪の一閃を放つ。


 ザヴァアアアアアァッ!!!


 空間すらも両断するかのような聖属性の奥義が、アスヴァルの巨躯の胸から腹にかけて、致命的とも言える巨大な斬層を刻み込んだ。


「グアオォォォォォォォォォッ!!!」


 アスヴァルが天を仰ぎ、絶叫を上げる。


 特記戦力とカシューによる流れるような連携。カグラの的確な急所共有からのカシューの二刀流の剣技、カリナの洗練された一撃、グラザの重厚な槍捌き。そして完璧なタイミングで畳み掛けるサティアの神聖術とエクリアの貫通魔法、エヴリーヌの神罰の弓術。


 VAO時代から培われてきた完璧なコンビネーションにより、四天王最後の一柱であるアスヴァルは、全身からドス黒い血を噴き出し、息を荒らげ、ついにその片膝を大地に突いた。


「おのれ……! だが……俺は敗けん。深淵に底は無いと言ったはずだ。……主の前に立つ資格は、潰れぬ者のみ。俺がここで潰れて、どうするッ! ネグラトゥス様ッ!!! 俺に力をッ!!!」


 アスヴァルの全身から、これまでとは比較にならないほど、おぞましい漆黒の魔力がドクンッ、ドクンッと脈打ちながら爆発的に放出された。


 ズゴゴゴゴゴゴ……!


 その魔力の奔流は南西の砦全体をさらに深く沈下させ、周囲の空間をピキピキと音を立てて歪ませていく。


「へっ、ついにやる気になったみたいだぜ。アイツ、真魔解放するつもりだ」


 エクリアが、『マジック・シールド』を前衛陣の前に展開しながら、燃え滾るような楽しげな笑みを浮かべた。


 アスヴァルの巨躯がメキメキと音を立ててさらに2.5mほどにまで肥大化し、体表には不気味な赤い重力紋様が血走るように浮かび上がっていく。分厚い翼は二対へと増え、頭部の角は獲物を串刺しにするべく前方へと鋭く伸びた。


 真魔解放・震界(しんかい)戦皇形態(せんおうけいたい)


 理不尽なまでの重力と暴力をその身に宿した、最後の四天王との死闘は、ここからが本当の地獄となる。

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