303 乙女達の裸の付き合い
五大国合同訓練の過酷な二日目を終え、夕暮れに染まる王城へと帰還するカリナ達。
「リーサ、お前も今日は私の部屋でルナフレアの栄養のある食事を取れ。あの激しい立ち合いで、かなり消耗しただろう」
カリナが、隣を歩く愛弟子を気遣って声をかける。
「はい! ルナフレアさんの美味しい手料理は久々なので、とても楽しみです」
リーサが嬉しそうに微笑む。
「魔導列車の開通の御陰で、ヨルシカやルミナスからとても新鮮な海の幸が手に入るようになりましたからね。料理のバリエーションがぐっと広がりましたよ」
ルナフレアが、夕食の献立を考えながら優しく微笑む。その後ろを歩いていたサティアとジュネが、立ち止まって一礼した。
「では、私はまた後でカリナさんの疲労の治療に伺いますね。……ジュネ、行きましょう」
「はい。ではカリナ様、ルナフレアさん、リーサさん、失礼します」
ジュネは各部隊の代行達が集まる代行室へ、サティアは自身の身支度と休息のために自室へと戻っていった。
特記戦力居住区に到着し、カリナ達は自室の扉の前に立つ。カリナがカードキーをかざすと、電子音と共に重厚な扉が開いた。
「ふぅ……。まずは先に、鍛錬の埃や汗を浴場で落としましょう」
ルナフレアが部屋に入るなり、手際よくタオルや着替えの準備を始める。
「ああ、そうだな。演習場は土だし、みんなの動きが激しいから埃も凄かったからな。……リーサも一緒に入るか」
カリナの言葉に促され、三人は広々とした脱衣所へと向かった。
「リーサさんの汚れものも、私が一緒に洗濯しておきますから、そこの籠に入れておいて下さいね」
「はい、お手数をおかけしてすみません。ありがとうございます」
リーサはルナフレアに礼を言うと、演習場で砂まみれになった黒いコートや緑のチュニック、黄色の短めのスカートパンツを次々と脱いでいく。最後に、ニーハイソックスと、薄い緑色のブラジャーとショーツという質素な下着も脱ぎ捨て、籠に入れた。エルフ特有の、無駄な肉が一切ないスレンダーな肢体と、小ぶりながらも形の良い胸が露わになる。
カリナもまた、鍛錬用の黒いコートに紺色の冒険者風戦闘ドレス、ガーターベルトに白いニーハイを、ルナフレアの手を借りて脱いでいく。清楚な白いブラとショーツも脱がされ、籠へと放り込まれた。ルナフレアも、埃っぽくなったメイド服を脱ぎ、その下に隠されていた彼女の豊かな肉体を包む、大きな黒のブラジャーとショーツを脱いで籠に入れた。
三人は全裸になると、ルナフレアがカリナの手を優しく引き、湯気が立ち込める広い浴場の洗い場へと案内した。
「私がカリナ様の髪の毛を洗いますよ」
リーサがカリナの背後に回り込み、シャワーでお湯をかけて汚れを流す。そして、良い香りのするシャンプーをたっぷりと泡立て、カリナの赤い絹のような極上の手触りの髪の毛を、指の腹で頭皮をマッサージするように丁寧に洗っていく。
「ん……気持ちいいな、リーサ」
「ふふっ、カリナ様はいつも私達を鍛えて下さっていますから、これくらいは恩返しです」
リーサはシャワーで綺麗に泡を洗い流し、トリートメントを馴染ませる。次に、柔らかいスポンジをボディソープで泡立て、細くしなやかな手とスポンジで、カリナの小さな背中や華奢な首筋、そして激しい動きに耐えた腰や小さなお尻などを、丁寧に優しく擦り洗いしていく。
ルナフレアはカリナの前に膝立ちで座り、ボディソープの泡で、カリナのそれなりの大きさの形の良い胸や、平らなお腹、滑らかな腕や脚を慈愛を込めて洗う。さらに、内股から股間へと手を伸ばし、デリケートなひだの間も「汗をかいていますからね」と優しく丁寧に洗い上げる。
最後に、フェイス用の高級な石鹸をきめ細かく泡立て、カリナの美しい小顔をふんわりと包み込むようにして洗い、全てを温かいシャワーで綺麗に洗い流した。
その時。
ガラガラッ!
浴場の引き戸が、遠慮のかけらもなく勢いよく開け放たれた。
「やっほー! カリナちゃーん!」
「ん! 来たよ!」
そこに立っていたのは、一糸纏わぬ全裸の姿で堂々と突撃して来たカグラとエヴリーヌであった。
「えっ!?」
リーサが一瞬驚いて目を丸くするが、すぐに状況を理解して溜め息を吐いた。
「ああ……、カグラ様にエヴリーヌ様ですか。また、スペアキーを使ったんですね」
「当たりー! 過酷な鍛錬の疲れは、可愛いカリナちゃんで癒さないとね!」
カグラが悪びれる様子もなく、ウインクをして見せる。
「ん、カリナのお世話は私の仕事。お世話に休みはない」
エヴリーヌも胸を張り、真剣な顔で言い放つ。
二人は、互いの魅力的な肢体を惜しげもなく披露しながら浴場へと入って来た。カグラの、引き締まりながらも零れ落ちそうなほどの豊満な巨乳。そしてエヴリーヌの、スレンダーでありながらもそれなりの大きさを保つ、形の良い胸。それぞれの極上の裸体が、湯気の中で艶めかしく揺れる。
「はあ……。もういい加減慣れたけどさ。普通にインターホン鳴らして入って来いよな。いきなり開けられたら、誰だってびっくりするだろ」
カリナが呆れたようにツッコミを入れる。
「ふふふっ。私のカリナちゃんへの燃え上がるような愛とパッションは、誰にも止められないのよ」
カグラが扇子を持っているかのような優雅な手つきで笑う。
「ん、カグラが勝手にカリナの部屋に入ろうとしてたから、コソコソ後をつけた。……まさか、お風呂の中にまで全裸で突撃するとは思わなかったけど、どうせ私もお風呂には入る予定だったから丁度良かった」
エヴリーヌが、マイペースに自分の行動を正当化する。
「……まあいいけど。私はもうルナフレアとリーサに洗ってもらったぞ。これから湯船に入るところだ」
カリナが立ち上がり、湯船へと向かおうとする。
「カグラ様。良ければ、私がお体を洗いますよ?」
ルナフレアが気遣ってカグラに声をかける。
「マジ? ありがとうルナフレア! 背中とか、自分じゃ洗いにくいのよね」
カグラは嬉しそうに、先程までカリナが座っていた椅子に腰掛けた。ルナフレアがその後ろに回り、カグラの豊満で色気のある肢体を丁寧に洗い始める。
「では、エヴリーヌ様は私が洗いますよ」
リーサも気を利かせてエヴリーヌに声をかける。
「ん、リーサはとても良い子。ウチのエリアスも、それくらい気が利けばもっと役に立つのに」
エヴリーヌはカグラの隣のシャワーの前に座り、嬉しそうに微笑んだ。
リーサはシャンプーを泡立て、エヴリーヌの明るいエメラルドグリーンのボブヘアと、後ろ髪だけお下げのようにしている長い部分も丁寧に洗っていく。
「本当に変わった髪型ですよね。でも、エヴリーヌ様にとてもよく似合っていて、お洒落ですね」
リーサが感心したように言いながら洗う。
「んっ」
エヴリーヌは突然振り向くと、濡れた身体のままリーサの腰に抱き着いた。
「リーサは本当に良い子。さすが、カリナの代行だけある」
「えっ? いえ……何も大したことはしていませんよ。じゃあ、身体を洗いますね」
リーサは少し戸惑いながらも、ボディソープを含ませたスポンジで、エヴリーヌの無駄のない引き締まったスレンダーな肢体を、背中から胸元にかけて丁寧に洗い始めた。
「ん、極楽。ウチのエリアスは男だから、いくら代行でも一緒にお風呂に入れないからね。こういう、可愛い代行との裸の付き合いは新鮮でいいね」
エヴリーヌが気持ちよさそうに目を閉じる。
「ああー、エリアスさんだけ、特記戦力の中で唯一男性の代行ですもんね。確かに、異性との裸の付き合いは難しいですね」
リーサが納得して笑う。
「ん、だから、こういう女子だけの付き合いは、とても新鮮でいい」
エヴリーヌは完全にリラックスし、身体を洗われる心地良さに身を委ねた。
「はーっ、極楽だわー……」
隣では、カグラもルナフレアに身体や髪の毛を丁寧に洗ってもらい、まるでおっさんのような台詞を吐いて寛いでいた。
「はは、不法侵入は困るけど、賑やかなのは悪くないな」
先に広い湯船に浸かっていたカリナは、その様子を見てクスリと笑い、独り言ちた。湯船の縁に頭を乗せ、手足を思い切り伸ばして、温かいお湯の中で完全にリラックスする。
やがて、洗い終えたカグラとエヴリーヌが湯船に入って来た。
いつもならカグラが陣取るカリナの後ろのポジションに、今日はエヴリーヌが滑り込んで来た。エヴリーヌは後ろからカリナを抱き締め、自らの程よい大きさの素肌の胸に、カリナの横顔を優しく乗せた。
「ん……」
カリナはエヴリーヌの柔らかな肌の感触と温もり、そして甘い香り、トクトクと鳴る心地良い心音に包まれ、さらに深くリラックスしていく。
「まあ、今日はエヴリーヌに特等席は譲ってあげるわ。生理の間、ずっと母乳係を頑張ってくれたもんね」
カグラはそう微笑むと、カリナの左側から身を寄せ、カリナの顔の前に自らの巨乳を押し付けるようにして抱き締めて来た。
「……っ、おいカグラ。リーサがいる前で、そういうデリケートなこと言うなよ……」
カリナが恥ずかしそうに目を閉じながら抗議する。
「ん、これは、特記戦力だけの内緒」
エヴリーヌがカリナの赤い髪の毛や頭、背中などを愛おしそうに撫でる。極上の柔らかさと甘い香りと温もりに挟まれ、さらに日中の激しい合同鍛錬の疲労が押し寄せたカリナは、うとうとと心地良い眠気へと誘われ始めた。
ルナフレアとリーサも自分の身体を洗い終え、湯船に浸かって来る。右側からはルナフレアがカリナの腕を優しく抱き締め、前からはリーサがカリナの脚を抱き締めるようにして身を寄せる。
「カリナ様、疲れが出たのでしょうか……。すっかり眠ってしまわれましたね」
ルナフレアが、規則正しい寝息を立て始めたカリナの寝顔を見て、愛おしそうに言う。
「そうね。体力はあっても疲労は溜まりやすいみたいだからね。……折角気持ちよく寝てるんだし、このまま少し寝かしておいてあげましょうか」
カグラが小声で提案する。
「確かに、こんな小さな少女の身体で、誰よりも演習場を走り回って、何百人という騎士を相手に立ち合いもこなしているんですからね。疲れるのも無理はないと思います」
リーサが、師の偉大さと過酷な負担に思いを馳せる。
「ん、カリナは、本当に頑張り屋だからね。私を救ってくれた時にも、あの綺麗な黄金の聖衣で助けてくれた」
エヴリーヌが、以前自分を救い出してくれた時のカリナの勇姿を思い出し、愛おしそうに胸元にカリナを抱き直した。そして、赤い頭にチュッと優しい口づけを落とす。四人の乙女達は、大事な宝物を扱うように、カリナの華奢な身体を抱き寄せ、頬や頭、髪の毛を代わる代わる撫で続けた。
「……さて。そろそろ、カリナちゃんがのぼせちゃうから、上がりましょうか」
カグラが頃合いを見て声をかける。
「ん、わかった」
エヴリーヌはカリナの身体を上手く湯船の中で浮力を使って動かすと、「よっと」という掛け声と共に、眠ったままのカリナをお姫様抱っこで軽々と抱き上げた。
一行は湯船から上がり、脱衣所へ。
エヴリーヌは脱衣所のベンチにカリナを優しく寝かせると、自ら進んで世話を焼き、大きなバスタオルでカリナの濡れた髪の毛や身体の水分を丁寧に拭き取ってやる。
「ん……? 私、寝てたのか……」
冷たい空気に触れ、カリナがゆっくりと目を覚まして身体を起こす。そして、自分の身体を拭いてくれているエヴリーヌを見て状況を察した。
「お前が湯船から運んでくれたのか。ありがとう、エヴリーヌ」
「ん、大丈夫。カリナは、とてもお疲れみたいだね」
エヴリーヌは自分の髪の毛をタオルで拭きながら、優しく微笑む。
「そうだな……。以前、剣術大会の後のエデンでの祝宴の後に過労で倒れてから、どうも疲れが出やすくなってるんだよな。持久力や体力そのものは、全く問題ないのにな……」
カリナは着替えのグレーのシンプルなショーツを穿きながら、自身の身体の不調を分析するように首をひねる。そして、肩を回してぐいぐいと身体を動かすと、ルナフレアが用意してくれていた、少し透け感のある大人びた黒いワンピースの寝間着を頭からかぶった。
エヴリーヌも、可愛らしいレースの黄色のショーツに、黄緑色の薄手のナイトドレスを着込む。カグラはセクシーな白いショーツを穿き、その上から妖艶なピンクの浴衣を着て、帯をキュッと締めた。
ルナフレアは黒いショーツに、新しいメイド服を着て、居住まいを正した。
「では、私は夕食の準備をしますね。カグラ様とエヴリーヌ様も、御一緒に食べていかれますか?」
ルナフレアが二人に尋ねる。
「ええ、お願いね。ルナフレアの料理は絶品だから」
カグラが嬉しそうに頷く。
「ん、ルナフレアの料理は、本当に美味しい」
エヴリーヌも目を輝かせる。
リーサも自身の身体を拭き終え、爽やかな水色のショーツに、黒の半袖の上下のパジャマを着込んだ。
「私はルナフレアさんの手料理しか、側付きの方の料理は知りませんけど……他の方々と、そんなに味が違うんですか?」
リーサが純粋な疑問を口にする。
「そうね、ウチのリタも中々料理上手だけどね……。ルナフレアの料理は、やっぱり素材の活かし方とか味付けが、一段階違うわね」
カグラが腕を組んで評価する。
「ん、ルナフレアの料理は、カリナへの『愛情』がしっかり込められてるのが分かる味。これ、料理には一番重要」
エヴリーヌが、得意気にリーサに教える。
「ふふっ、愛情は、最高のスパイスですからね」
ルナフレアが少し照れたように微笑み、夕食の準備のためにキッチンへと向かっていった。
「さて、料理ができるまでは、リビングの広いソファーで寛ぐか。……今ベッドに横になったら、夕食も食べずにそのまま朝まで寝てしまいそうだからな」
カリナが大きなあくびをしながら提案する。
「そうね。風呂上がりって、体温が下がってきて無性に眠くなるのよねー」
カグラも同意し、一行はリビングの大きなテーブルを囲むように、ふかふかのソファーに深く沈み込んだ。
他愛のない世間話をしながらも、日中の激しい合同鍛錬の心地良い疲労感と、入浴によるリラックス効果が相まって、カリナ、カグラ、エヴリーヌ、リーサの四人は、言葉少なになり、やがてソファーにもたれかかったまま、うとうとと居眠りを始めてしまった。
キッチンから漂う美味しそうな匂いに包まれながら、やがてルナフレアが、夕食の準備が済んだことを知らせに来るその時まで、彼女達は、過酷な戦いと訓練の合間に訪れた、風呂上がりのまったりと長閑な仮眠の時間を貪るのだった。
こうして、エデンの賑やかで温かい夜は更けていく。明日にはまた、限界を超える合同訓練が待ち受けている。だが、この束の間の休息と絆こそが、彼女達を悪魔との最終決戦へと向かわせる何よりの原動力となるのだった。




