表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖衣の召喚魔法剣士  作者: KAZUDONA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

303/372

302  特記戦力の剣閃と新たなる刃の伝授

 翌日。


 エデン軍と他国の精鋭達による五大国合同訓練の、過酷な二日目が始まった。早朝の第一演習場。まずはいつものように、ウォーミングアップとして演習場の外周を百周する地獄の長距離走り込みが行われた。


 騎士団はもちろん、神聖術士軍も等しく参加するこの基礎鍛錬が終わる頃には、ルミナスの術士達は完全にバテバテになり、足を引きずるようにして見学席へと倒れ込んでいた。


「はぁっ……はぁっ……」


「ウィンディ、今日は、病み上がりのカリナさんが直接立ち合いに参加します。昨日よりも怪我人が増えてさらに激しくなりますから、しっかり準備をしておいて下さい」


 涼しい顔のサティアが、肩で息をするルミナス神聖術士軍団長のウィンディに声をかける。


「は、はい……っ」


 ウィンディは荒い息を吐きながらも、すぐに魔力を循環させて治療の準備を整える。


 演習場の中央では、カリナがエデン、アレキサンド、ルミナスの騎士団全員の前に立っていた。


「今日からは、私も直接立ち合いに参加する。……そろそろ、私から『一本』取れる者が出て来て欲しいものだがな……。まずは、ライアンにクラウス、ガレスとセオドア。お前達四人で同時にかかってこい」


 カリナが木剣を片手に、四人の団長格を指名する。指名された四人は、ゴクリと唾を飲み込むと、刃を潰したずっしりと重い真剣をそれぞれの上段や正眼に構えた。


「行きますぞ、カリナ様!」「おおっ!」「せやああ!!!」「はあっ!」


 ライアンとクラウスが正面から、ガレスとセオドアが左右に回り込んで、同時にカリナへと斬りかかる。歴戦の猛者四人による、逃げ場のない完璧な包囲攻撃。


 しかし、カリナの姿がふっと霞んだかと思うと、四人の放った必殺の剣閃はすべて空を切り、カリナの身体には微塵も掠りもしなかった。


「なっ!?」


 驚愕した隙を突き、カリナは純粋な剣の技量と足捌きだけで四人の死角に滑り込むと、手にした木剣で次々に手首や膝裏、鳩尾といった急所を的確に叩き伏せていった。


「ぐはっ!」「がはぁっ!」


 あっという間に、四人の団長格が砂の上に転がった。


「さ、さすがカリナ様だ……!」「四人がかりの攻撃でも、隙がまるでない……!」「なんて流れるような動きと剣捌きだ……!」「全く見えなかったぞ……!」


 周囲を取り囲んでいた騎士団の面々から、驚愕と感嘆のどよめきが上がる。


「まだまだだな。相手の動きをよく見ろ。動く瞬間や攻撃の際には、どんな達人でも必ず僅かな『隙』ができる。そこをよく観察して、己の好機に変えろ」


 カリナが、倒れた四人を見下ろしながら指導する。


「さ、さすがです……。くっ、我等四人がかりでも、まだまだ足りぬとは……」


「凄まじい剣技だ……。これが、エデンの特記戦力の剣技か……」


 ライアン達は痛む手首を押さえながら、カリナの圧倒的な実力に改めて舌を巻いた。


「よし、じゃあ次は騎士団全員でこい。何人がかりでもいい、私に一撃でも入れてみろ」


 カリナが木剣を肩に担ぎ、不敵に笑う。その言葉を合図に、エデン、ルミナス、アレキサンドの三カ国の騎士団が怒涛の波のようにカリナを取り囲み、次々と四方八方から攻撃を仕掛けた。


 演習場に、凄まじい剣戟の音と怒号が響き渡る。だが、カリナはまるで舞を踊るように軽やかに敵の刃を躱し、流し、いなしていく。多勢に無勢の状況下でありながら、数百の騎士達は誰一人としてカリナの着ている衣服の裾にすら触れることができず、次々と木剣の一撃を浴びて叩き伏せられていった。


「ウィンディ、早く回復させますよ!」


 サティアの指示が飛ぶ。


 ジュネとエデン、ルミナスの神聖術士軍は、次々と倒れていく騎士達の元へ駆け寄り、休む間もなく神聖術で打撲や骨折を回復させていく。


「カリナ様は、凄まじい使い手ですね……。あれだけの数の精鋭を相手に、一撃ももらわないどころか、触れることさえ敵わないとは……」


 ウィンディが、治療の手を休めることなく戦慄の声を漏らす。


「ふふっ、そうですね。あの伝説の聖騎士カーズの妹ですから、伊達ではないですよ」


 サティアが、カリナの秘密を守りつつ誇らしげに微笑む。


「しかし、カリナ様は数々の強敵との激戦を潜り抜けて、さらに数段強さが増したかのように思いますね」


 ジュネが、カリナの無駄のない洗練された動きを見て感心したように言う。


「これが、エデンの特記戦力……。人間が到達できるレベルを、遥かに超えている様に感じますね……」


 ウィンディが畏敬の念を込めて呟く。


「ふふっ、そうですね。……でも、あれでもカリナさんは、まるで本気は出していないですよ」


 サティアが微笑みながら、さらに恐ろしい事実を告げた。


「まだまだ、全員甘いぞ! 強力な悪魔と相対したら、気が付けば死んでいるということにならないように、さらに強度と集中力を上げろ!」


 カリナが、立ち上がった騎士達に厳しく檄を飛ばす。


「ライアン、クラウス! 鍛錬の続きは任せる。私はリーサと、四属性の魔法剣技の仕上げに入る」


「「はっ! お任せ下さい!」」


 カリナの指示で、騎士団はライアン達の指揮の下、さらに激しい実戦形式の訓練を再開した。


「リーサ、待たせたな。……病み上がりだが、身体のキレは悪くない」


 カリナは木剣を捨て、刃を潰した剣を手に取ってリーサの元へと歩み寄った。


「さすがカリナ様ですね。各国の団長格四人を相手に、全く寄せ付けないとは」


 リーサが尊敬の眼差しを向ける。


「彼らはまだまだ伸びしろがあるからな。特記戦力という上のレベルを肌で見せてやるのも、良い稽古になる」


「はい、その通りですね。……今日は、私と立ち合いをしますか?」


「ああ、昨日お前が完璧な型を見せてくれたから、私もかなり案山子に打ち込んで、ある程度の感覚はモノにできたはずだ。……今日はお前と実際に立ち合いながら、四属性を完全に仕上げる」


 二人は、激しい稽古を続ける騎士団から少し離れた演習場の端へと場所を移した。


「じゃあいくぞ、リーサ」


「はいっ! お願いします!」


 二人は互いに刃を潰した剣を構え、鋭い踏み込みと共に激突した。カリナの刀身に四つの属性が宿る。


「『エレメンタル・ジェネシス・ブレード』!」


 カリナが放った、四属性の元素流が交差し、爆炎・水圧・真空刃・岩砕衝撃が同時に発生する全方位破壊技。リーサはそれを、自身も全く同じ技を放つことで正面から相殺した。激しい衝撃波が周囲の砂を吹き飛ばす。


「『ソーラー・サンダーストーム・ブレード』!」


 リーサが高く跳躍し、光の刃を雷と炎が包み、風の渦となって敵を貫く空中型魔法剣奥義でカリナに襲い掛かる。カリナは冷静に剣を薙ぎ払い、迎撃する。


「『グレイシャル・テンペスト・ブレイク』!」


 氷結嵐がリーサを巻き込み、大地の裂断衝撃で砕く極寒破壊技が炸裂する。リーサは空中で姿勢を捻り、辛くもこれを回避して着地する。


「ならこれでどうだ! 『ヴォルカニック・ストーム・ブレイカー』!」


 カリナが剣を振り上げ、爆炎と雷撃が嵐となり、巨大衝撃波で敵陣を吹き飛ばす広域破壊剣を放つ。リーサもそれに呼応し、四属性の魔力を極限まで高めて剣戟を交える。


 互いに、編み出したばかりの大技を惜しげもなくぶつけ合い、演習場には爆炎と氷結、雷鳴と衝撃波が絶え間なく吹き荒れた。


「いいぞ……。四属性の魔力制御が、完全に剣の軌道と一体化している……!」


 カリナは激しい立ち合いの中で、確かな手応えを感じていた。


 長い立ち合いを終え、それを見学席から見ていたウィンディは、信じられないものを見るような目をしていた。


「サティア様……。あの二人は、あれほどの破壊的な魔法剣技を至近距離で撃ち合いながら、全くの無傷ですね……。信じられません」


「あの二人の剣のレベルは、普通ではないですからね。体捌きも完璧です。互いに大技を撃ち合いながらも、紙一重で回避行動や防御行動をしっかり取っているので、あれ程の剣技をぶつけ合っても、装備の服が少し傷つく程度でしょうね」


 サティアが冷静に分析する。


「カリナ様はともかく、リーサさんは日に日にどんどん化け物になっていきますね……」


 ジュネが、代行仲間の異常な成長速度に苦笑する。


「あの二人は余程のことがなければ大丈夫です。ウィンディ、騎士団の怪我人の治療のために、魔力の循環を常に行う様にして下さい」


「はい。こちらの方が、怪我人がかなり出ますからね」


 ウィンディは気を引き締め、怪我人が続出する騎士団の激しい立ち合いへと集中して視線を向けた。



 ◆◆◆



 激しい午前の部が終わり、メイド隊が栄養満点の昼食を演習場へと運んで来た。一同は国の垣根を越えて談笑しながら、演習場の土の上で車座になって食事を取る。


「ははは、エデンの鍛錬は、やはり凄まじいですな。今まで自国で行っていた激しい訓練が、まるでぬるま湯に感じられる程の厳しさです」


 ガレスやセオドアが、汗を拭いながら笑う。


「最初は、我々エデン軍も毎日ふらふらになっていましたよ」


 ライアンが懐かしそうに笑う。


「そうだな。だが、今やこれが普通になっている。カリナ様の鍛錬は確かに激しく、怪我人も多く出るが、すぐに神聖術士軍が完璧に回復してくれる。前衛と後衛、互いの鍛錬にもなるという、激しいながらも極めて理にかなった鍛錬だ」


 クラウスがサンドイッチを齧りながら言う。


「お前達がもっと練度が上がって、攻撃を完璧に見切れるようになれば、怪我人も出ないぞ」


 カリナが食事を取りながら、悪戯っぽく笑う。


「そうですね。私はこの地獄の鍛錬のおかげで今の自分があるので、カリナ様の厳しい鍛錬は、必ず確実に実になりますよ」


 リーサが真剣な顔で頷く。


「ふふっ、怪我人が出なくなったら私達神聖術士の仕事がなくなりますから、もっと激しくやってもいいんですよ?」


 サティアが微笑みながら恐ろしいことを言う。


「こ、これがエデン軍の感覚……。ふ、普通ではありませんね……」


 ウィンディが顔を引きつらせる。


「慣れですよ、慣れ」


 ジュネが楽しそうに笑う。


 見学席の端で待機していたルナフレアも、カリナ達の輪に加わって食事を取りながら、カリナとリーサの汗を冷たいタオルで優しく拭き、冷えた飲み物を差し出す。


「カリナ様、お体の調子はいかがですか? 無理はされていませんか?」


「昨日、一週間分十分休んだからな。もう大丈夫だ。気遣いありがとう、ルナフレア」


 カリナがタオルを受け取りながら微笑む。


 こうして和やかなひと時の休憩が終わり、午後の部へと突入する。


 騎士団は相変わらず、ライアン達の指揮の下で激しい立ち合いや走り込みなどをこなし、カリナはリーサと共に、再び鍛錬のため演習場の端へと移動した。


 カリナはアイテムボックスから、演習用の刃を潰した鞘に入った『刀』を二本取り出し、そのうちの一本をリーサに渡した。


「四属性のソードでの魔法剣技は、ほぼ完成した。……これからは、『刀技』の魔法剣技も習得しないといけない。私は状況に合わせて、ソードと刀の両方を使い分ける。リーサ、お前にもこれからは『刀』の扱いを教える」


「刀……ですか」


 リーサが、渡された見慣れぬ反りのある片刃の武器を珍しそうに見つめる。


 カリナはさらにアイテムボックスを探り、一振りの真剣を取り出した。それは、カリナがかつて愛用し、アリアとの戦いで折られた『天羽々斬(あまのはばきり)』の前に使っていた、業物であるかなりの高レアな刀だった。


「これは『布都御魂(ふつのみたま)』。私が以前使っていた刀だ。今の私にはもう必要ないからな、お前にやる。しっかり使いこなせるようになれ」


「聖剣ジュノワーズに続いて、こんな素晴らしい刀まで……! ありがとうございます、カリナ様! 必ず使いこなせるようになってみせます!」


 リーサは深く頭を下げて刀を受け取ると、ジュノワーズを佩いている左腰のベルトに、丁寧に『布都御魂』を差した。右利きのリーサにとって、左腰は抜刀しやすい位置である。


「ソードと刀、そこまでの決定的な違いはない。ただ、刀は片刃だからな、峰打ちや斬撃の軌道など、そういう点が少し違う。……それと、刀身が反っているからこそ、『抜刀術』という特殊な技術が使用可能になる。これを覚えれば、お前の戦術の幅はさらに広がるはずだ」


 カリナが刀の特性を簡潔に説明する。


「さて、まずは私が『刀技』の手本を見せよう。しっかり見とり稽古をした後は、すぐに立ち合いをして、実戦で使えるレベルにまで一気に昇華させていくぞ」


「はい! 必ずモノにしてみせます!」


 リーサが真剣な眼差しでカリナを見つめる。カリナは演習用の持たせた刀を構え、流れるような動きで基本技から順に披露し、解説を始めた。


「まずは基本技だ。……『霞斬(かすみぎり)』。霞のように揺らぐ軌道で相手を惑わせる斬撃だ。次、『影走(かげばしり)』。一歩踏み込み、影が伸びるように素早く斬る。そして『風裂(ふうれつ)』。横一文字に風を裂く鋭い切り払いだ。……よく見ておけ」


 カリナの洗練された刀捌きに、リーサは瞬きも忘れて見入る。


「『雫落とし』。上段から雫が落ちるように静かに振り下ろす。そして『月影突(つきかげづき)』。月光のごとく細く鋭い直突きだ」


 カリナは基本技を終えると、さらに実戦的な中級技へと移行する。


「ここからが中級技だ。『龍牙閃(りゅうがせん)』。龍の牙を振り下ろすような重斬撃。『迅風返(じんぷうがえし)』。相手の攻撃を受け流しつつ返す素早い反撃だ。これは立ち合いでよく使うぞ」


 カリナの刀が風を切り、鋭い音を立てる。


「『波紋断(はもんだん)』。波紋のように揺れるフェイントからの連撃。『無影斬(むえいざん)』。影すら残さぬ高速の横斬り。『朧流(おぼろながし)』。軌道を曖昧にし、見切りづらくした斬撃。……そして『風車乱舞(かざぐるまらんぶ)』。回転しながらの連続斬りで、多方向からの攻撃に対応可能だ」


 次にカリナは、刀を鞘に納め、腰を深く落とした。


「ここからが、刀特有の『居合・抜刀術』だ。『一瞬一刃(いっしゅんいちじん)』。抜刀と同時に勝負が決まる正統派居合。『電迅抜(でんじんばつ)』。雷のように一閃する斬り上げ。……『虚空一閃(こくういっせん)』。宙を切り裂く一太刀で、間合いの外から当てる技術だ」


 カリナの抜刀の速度は凄まじく、リーサの動体視力をもってしても刃の軌跡を追うのが困難なほどであった。


「『残心の太刀(ざんしんのたち)』。切り終えても気を切らぬ、静の極意だ。そして……『薄氷抜(はくひょうばつ)』。氷が割れるような静音の抜刀。速過ぎて音が遅れて聞こえてくる」


 カリナは再び刀を構え直し、奥義・必殺技の領域へと踏み込む。


「奥義だ。『天照一刀破(あまてらすいっとうは)』。天を照らすような強光の一撃、全力の破断技だ。『黒曜天断(こくようてんだん)』。黒曜石のように鋭い斬線で天をも断つ奥義。『鳳凰輪斬(ほうおうりんざん)』。自身を中心に輪を描く連続大斬撃」


 カリナの刀から放たれる気迫が、周囲の空気を震わせる。


「『零ノ太刀(れいのたち)』。技の気配を完全に殺し、無音で斬る究極剣。『獄炎葬刃(ごくえんそうじん)』。炎の気を纏わせ、一気に敵を焼き斬る奥義。『月輪天衝(がちりんてんしょう)』。大きく円を描きながら天へ跳び上がり、落下と共に斬り下ろす。……そして、ソードでも使った『落陽閃(らくようせん)』と『翔陽閃(しょうようせん)』だ。頭上から斬り下ろす一閃と、地面ごと両断する斬り上げだな」


 さらにカリナは、技巧や極技の型を次々とリーサに叩き込んでいく。


「技巧や変化技として、『雨落多重(さめらいたじゅう)』。細かい連撃を雨のように浴びせる。『凪落(なぎおとし)』。相手の攻撃を静かにそらしてからの一撃。『影連斬(かげれんざん)』。残像込みの三連撃で方向を読みづらくする」


「そして、最後の極技だ。『蒼天剣(そうてんけん)』。蒼空を切り裂く意志を込めた大技。『紅蓮剣舞(ぐれんけんぶ)』。炎のように舞う連続斬り。『白刃流星(はくじんりゅうせい)』。流星のごとく疾い斬撃。『空閃一刀(くうせんいっとう)』。空を裂く刃速を象徴する剣。……そして『絶華断(ぜっかだん)』。美しくも切れ味が鋭い、一瞬で散る花のような技だ」


 全ての型を見せ終えたカリナは、軽く息を吐いてリーサを見た。


「……大体こんなところだ。覚えたか?」


「はい、完璧に脳裏に焼き付けました」


「よし。なら、実戦で身体に覚え込ませるぞ!」


 その後は、刃を潰した刀を用いて、互いに立ち合いを繰り返しながら実戦レベルにまで鍛錬を重ねた。


「そこだ! その時はこう刀を動かして『迅風返し』で反撃するんだ!」


「はいっ!」


 カリナが的確な指示を出しながら、二人は演習場の端で、刀と刀がぶつかり合う甲高い音を延々と響かせながら、激しい立ち合いを続けた。


 そして、夕刻。最後に全員で再び地獄の長距離走り込みを終え、本日の全メニューが終了した。


 カリナ、リーサ、サティア、ジュネの四人が、砂まみれになった全軍の前に立つ。


「今日も一日、よく頑張った。この日々の過酷な積み重ねが、必ず来たるべき決戦でのお前達の力になる。……身体に不調があるときは無理をせず、すぐに神聖術士軍に報告し、治療をしてもらうことを忘れるなよ。……では、本日は解散!」


「「「はっ!! ありがとうございました!!」」」


 演習場に割れんばかりの感謝の言葉が響く。


 アレキサンドやルミナスの一行は、昨日と同じようにフラフラになりながらも、どこか充実した表情で王城のゲストルームへと戻って行く。


「昨日よりは、多少は慣れたかな?」


 カリナが、彼らの背中を見送りながら笑う。


「一日では、さすがにあの地獄のメニューには慣れませんよ」


 ライアンが苦笑交じりに答える。


「ふふっ、それもそうですね」


 サティアも同意して微笑む。


「はは、そりゃそうか」


 カリナが肩をすくめて笑うと、残ったクラウスやガレス、セオドアといった団長格の一同も、「はははっ!」と大きな声で笑い合った。


「じゃあ、また明日だな。しっかり休んでおけよ」


 カリナはそう言い残し、ルナフレア、サティア、リーサ、ジュネ達と共に、特記戦力居住区がある王城の奥へと帰還していく。こうして、日に日に激しさと熱気を増していくエデンの合同鍛錬の二日目は、静かに終わりを告げるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ