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『ラストシーンは神アングルで。』〜死んだら契約終了、遺品はスタッフが美味しく回収します〜  作者: うちの猫
宇佐美 紬編

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シーン20:お揃いの夜、湯煙に溶ける本心

「じゃあ、行ってくるわね」


 二階のコントロールルーム。着替えの入った小さなポーチを手にした薫は、椅子に深く腰掛けている栂野と千早へフッと微笑んだ。


 そのまま一階への階段を下りながら、頭につけたウサギの髪留めへ指先を伸ばし、カメラと集音器の電源を静かにオフにする。


 そして、紬が待つ屋外へと続く鉄の扉を開けた。


 外の道では、紬が自分のウサギの髪留めをそっと触りながら待っていた。薫の姿を見つけた瞬間、紬の顔がパッと華やかに綻ぶ。


「お待たせ、紬ちゃん! 機材重かったからスッキリしちゃった。さあ、大きなお風呂に行こう!」


「うん! 薫ちゃん、行こう!」


 二人が並んで向かったのは、路地裏にひっそりと佇む、年季の入った昔ながらの銭湯だった。


 暖簾をくぐり、脱衣所へと入る。服を一枚ずつ脱いでいくなかで、薫はふと、紬の身にまとっている淡いピンク色の下着に目を留めた。丁寧にあしらわれたレースが、紬の引き締まった身体にとてもよく映えている。


「あ、紬ちゃんの下着、すっごく可愛いね! 都会っぽくて、紬ちゃんの雰囲気にすごく似合ってるよ」


「えっ!? ……や、やだ、薫ちゃん見ないでよぉ! これ、こっちに出てくるときに、ちょっと無理して買ったやつだから……恥ずかしいよ」


 顔を真っ赤にして胸元を隠す紬を見て、薫はお腹を抱えて笑った。カゴの中に、二人のお揃いのウサギの髪留めが並んで置かれる。ガラガラとガラス扉を開けると、目の前には真っ白な湯煙と、どこか懐かしい木と石鹸の香りが広がっていた。


 掛け湯をしてから、二人は並んで洗い場の椅子に腰掛ける。薫は大きなプラスチックの桶にたっぷりとお湯を汲むと、紬の背後へと回り込んだ。


「ねえ、私が紬ちゃんの背中洗ってあげる!」


「えっ、いいよいいよ、申し訳ないよ薫ちゃん!」


「いいの! ほら、大人しく力を抜いてて?」


 薫は手拭いによく泡立てた石鹸を馴染ませると、紬の白くなめらかな背中へとそっと滑らせた。円を描くように優しく、丁寧に、今日の戦闘の疲れを解きほぐすように泡のクッションを転がしていく。


 心地よい刺激に紬が「ふぇぇ……気持ちいい……」


と小さく吐息をもらすのを聞きながら、薫は手元の動きを少しだけ緩め、ぽつりと呟いた。


「……私ね、本当に紬ちゃんと会えて良かった。今、すっごく楽しいの」


 紬が薫の言葉の温かさにハッとしたように肩を揺らす。少しだけ空気が真面目になったのを感じて、薫は急に気恥ずかしさが込み上げてきた。


「なーんてね! 湿っぽいのは終わり! ……それにしてもさぁ!」


 薫は泡だらけの手をそのまま前へと回し、紬の豊かな胸を後ろからガシッと掴んで揉みしだいた。


「ひゃあぁっ!? ちょっと薫ちゃん、どこ触ってるの!?」


「何この胸! もちもちで形も良くてすっごく羨ましいんだけど! ちょっと分けてよー!」


「や、やめてよぉ、薫ちゃんくすぐったいってばあ!」


 湯気の中に、二人の無邪気な高い笑い声が弾けるように響き渡る。お互いに泡を掛け合いながらいちゃつく時間は、どこからどう見ても、ただの仲の良い親友同士の姿そのかった。


 身体を綺麗に洗い流した後、二人は並んで大きなお風呂の湯船へと身体を沈めた。


 並々と注がれた熱いお湯が、じんわりと芯まで身体を温めていく。ふう、と深く息を吐きながら足を伸ばし、紬は少し潤んだ瞳で、隣にいる薫の横顔をじっと見つめた。


「あのね、薫ちゃん。さっき薫ちゃんが言ってくれたこと、私、すっごく嬉しかったな……」


「え? なにが?」


「私と会えて良かったって、楽しいって言ってくれたこと。……私ね、東京に出てきてから、本当に毎日が怖くて寂しくて、自分の居場所なんてどこにもないって思ってたの。でも、薫ちゃんが隣にいてくれたなら、今の時間が、私、本当にすっごく楽しいよ。薫ちゃん、ありがとう」


 湯煙の向こうで、紬は本当に幸せそうな、心からの感謝を込めて微笑んだ。薫は優しい笑顔を紬へと返した。


「うん……。私もだよ、紬ちゃん」


 銭湯を出た頃には、夜の帳がすっかりと下りていた。お風呂上がりの心地よい余韻のなか、お腹の虫を小さく鳴らした紬を見て、薫はクスクスと笑った。


「ちょっとお腹空いちゃったね。近くに少しオシャレな居酒屋があるから、寄っていこ?」


「うん、お腹ペコペコ!」


 木目調の落ち着いた雰囲気の居酒屋に入り、二人は可愛らしいフルーツカクテルで乾杯した。


 アルコールが少しだけ入り、お風呂上がりの火照りも手伝って、二人のトークはさらに熱を帯びていく。


「ねえねえ、紬ちゃんってどんな男性がタイプなの? 今まで付き合ったりした人とかいる?」


「ええっ!? そ、そんなのいないよー! 地元の田舎じゃ、毎日ダンジョンに潜ってナイフ振り回してばっかりだったし……」


「えー、そんなに可愛いのに!? もったいない! 胸もいいの持ってるのに」


 薫がニヤニヤしながら笑うと、紬はさらに顔を赤くしてグラスを両手で包み込んだ。


「薫ちゃんは? 薫ちゃんは都会のオシャレな人と付き合ったりしたことあるの?」


「私? 私はね、うーん……結構、男の子を見る目は厳しいかも!」


 そんな会話に花を咲かせ、お互いに笑い合う。


 会話が一段落したところで、薫は自分の私物バッグの中から、リボンのついた小さなガラス瓶のハンドクリームを取り出した。


 手だけでなく、乾燥した唇にも使える低刺激の保湿クリームだった。


 キャップを外し、手の甲に少しだけ乗せて、優しく塗り広げていく。カクテルやカラオケの夜を超えて少し乾燥していた肌に、どこか懐かしい甘い香りがふわりと広がった。


「あ、そのハンドクリーム、小瓶にリボンがついててすっごく可愛いね」


 グラスを傾けていた紬が、薫の手元を見て声を弾ませた。薫は自分の手の甲に広がるクリームを見つめ、一瞬だけ動きを止めた。


「……これね、昔私が好きだった人がくれたの」


 薫は細い指先でリボンにそっと触れながら、悲しげに、静かに呟いた。


「えっ……そうなんだ。その人は、今はどうしてるの?」


「………。」


 紬が心配そうに覗き込んでくる。薫は切なく、だけどどこか諦めたような笑みを唇の端に浮かべて、紬の瞳を見つめ返した。


「……遠くに行っちゃった。もう、会えないところ」


「あ……ごめんね、薫ちゃん。私、変なこと聞いちゃって……」


「ううん、大丈夫! ごめん、今の忘れて! この後カラオケでもどう?」


「いいね、行こう!」


 紬が嬉しそうに立ち上がり、二人はお会計を済ませて夜の街へと飛び出した。


 21時過ぎ。賑やかなカラオケボックスに入り、二人は肩を並べてソファに座りながら、交互にマイクを握り締めた。


 テレビの音楽番組でよく流れる流行りのポップスをデュエットし、タンバリンを叩きながら全力で盛り上がる曲を歌って大爆笑する。


薫は紬を真っ直ぐ見つめながら、これからの彼女の配信を応援するような、前向きで力強い歌詞の曲を感情を込めて歌い上げた。


紬は感動して目を潤ませ、お返しとばかりに、少し甘くて気恥ずかしくなるようなラブソングを、薫に向けて一生懸命に歌ってみせる。


 夜が更けていくのも、時間が流れるのも忘れて、二人は部屋の中でいっぱいいっぱい歌い、笑い転げていた。


 気がつけば、壁の時計は午前0時を回っており、スマートフォンの画面には終電が完全に無くなったことを知らせる通知が表示されていた。


「あちゃー……やっちゃったね、完全に終電なくなっちゃった」


「あ、うそ……! どうしよう、私、タクシーなんて乗るお金ないよぉ……」


 青ざめる紬の手を、薫は優しくぎゅっと握りしめた。


「今日は良かったら、私の家に泊まっていかない?」


「えっ、いいの……!? ありがとう、薫ちゃん……!」


 薫の自宅のマンションは、都会の一等地にある綺麗で静かな部屋だった。薫から借りた、少し大きくてダボついた柔らかいシルクのパジャマに着替えた紬は、一日の心地よい疲れと、大好きな友達が隣にいるという絶対的な安心感から、同じ大きなベッドに入ると、すぐに小さな健やかな寝息を立てて深い眠りに落ちていった。


 深夜。カーテンの隙間から、冷たい月光が静かに差し込む部屋。

枕元には、二人の「お揃いのウサギの髪留め」が静かに並べて置かれている。


 薫はベッドの中でゆっくりと寝返りを打ち、隣で無防備に眠っている紬の寝顔を見つめた。

 規則正しい愛らしい寝息。自分を完全に信頼しきって眠る少女の姿。


 薫の手が、そっと伸びた。


 紬の黒い髪の毛に触れ、そのすぐ横に置かれている、ウサギの髪留めへと指先を滑らせる。シンプルな木彫りのウサギの輪郭を、優しく優しく撫でていく。

 暗闇のなか、薫はしんみりとした、今にも消え入りそうな声で、ポツリと呟いた。


「本当……楽しいな」

「配信(シーン20)を見てくれてありがとう! カメラマンの千歳薫よ。


配信が終わった後、二人で行った銭湯。紬ちゃんの背中を洗って、あの子の胸を揉んで揶揄ったり、居酒屋で少しお酒を飲みながらガールズトークしたり……カラオケで夜が更けるまで、いっぱいいっぱい歌い明かしたあの時間。


終電を逃して、私の家に泊めてあげることにしたのも、もちろん全部計算通り。一晩中べったり一緒にいれば、それだけあの子の依存度もぐぐーっと上がるものね。うふふ、我ながら完璧な『お泊まり営業』だったと思わない?


私の貸してあげた大きめのパジャマを着て、隣で本当に安心しきって、健やかな寝息を立てて眠っている紬ちゃん。


枕元に並んだお揃いのウサギの髪留め……ふふ、片方はただの飾りで、片方は隠しカメラだなんて、本当に笑えるくらい滑稽よね。あの子は今頃、私のことを本物の親友だなんて信じ切って夢を見てるんだろうな……。


……あ、ごめんなさい。今のは、忘れて。


……なんでもないの。うふふ、続き話すわね。


『二人の過ごした夜の余韻を、もっと見守りたい』『これからの二人の行く末が気になる』


そう思ってくれた画面の前の、そう、そこのあなた。その熱い気持ちを、ぜひ【ブックマーク】登録で私に直接届けてちょうだい。


『面白かった』『薫の抜かりない仕込み、相変わらずエグくて最高』


と思ってくれたら、下にある評価の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、贅沢な満点で染めて届けてほしいの。もちろん、フェイク抜きの本物の星5個でお願いね?


君たちの一票(星)が、私のカメラワークと、この物語をもっと強く、もっと輝かせるエネルギーになるの。みんなからの熱いコメント(感想)も、いつも通り楽しみに待っているわ。


さあ、お揃いの夜を超えた私たちが、これからどんな激闘へ向かっていくのか――次の配信(シーン21)を楽しみにしててね♡」

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