1-9
居間でお茶を飲んでるとニャーが来た。
ジュン子が拾ったネコだ。
フンスフンスと僕の匂いを嗅ぐとあぐらの上に乗り込んできた。
もともと慣れてる風な感じでジュン子が拾った時も抵抗されなかったけどここまで懐くとは思わなかった。
膝の上でゴロゴロするので撫でる。
ゴロゴロしてたネコが喉までゴロゴロ鳴らす。
撫でり撫でり。
すると「ニャー」と鳴きながら仰向けになり伸びをした。
後ろから抱きかかえるようにしてフカフカのお腹も撫でる。
気持ちよさそうな時間を過ごす。
ひとしきりのんびりした時間を過ごすと、視線を感じた。
障子の陰からタマちゃんが覗いていた。
袖の裾を噛みながら恨めしそうにこちらを見る。
えっと…なにかな?
タマちゃんは言う。
「悔しいのじゃ…」
「タマちゃんどうしたの?」
こっちに来る? と誘うと入ってきて言う。
「濃密な時間なのじゃ…」
「ごめんごめん、気づかなかったよ」
ニャーがタマちゃんに懐いてるかは分からないけど、まあ喧嘩してたりしないしね。
タマちゃんも撫でたいのだろう。
そう思い、「タマちゃんも撫でてみる?」と声を掛けようとしたら言われた。
「儂も撫でられたいのじゃ!」
「そっち!?」
うわ~ん! と転がりながら駄々をこねるタマちゃん。
「ニャーばかりズルいのじゃ!」
そんなに?
「もうずいぶん経つのじゃ! 撫でられすぎなのじゃ!」
ネコとの時間はこんなもんだと思うけど。
でもタマちゃんは食い下がる。
「これは怪異やもしれんのじゃ!」
うん?
「撫座頭と言うのが居るのじゃ」
「撫座頭?」
「昔の怪異でな。罪や厄災を撫でつける、擦り付ける怪異じゃ」
本当に? 撫でられたいから嘘ついてない?
「健太はその怪異に取りつかれてる可能性があるのじゃ!」
大変だ!
「これを払うには儂を思う存分撫でて可愛がる以外ないのじゃ!」
「怪異じゃしょうがないよね…じゃあタマちゃんも」
ニャーを優しくどかして膝を空ける。
タマちゃんは言う。
「いいのか!?」
「うん」
タマちゃんは「そ、それでは…」なんてかしこまって僕の前に正座して座った。
それで頭を撫でてあげた。
撫でり撫でり。
タマちゃんは至福の声を上げる。
こや~ん。
今度はアゴの下も撫でる。
撫でり撫でり。
こや~ん。
気持ちよさそうだ。
ひとしきり撫でて感想を聞く。
「どうかな?」
「気持ちいいのじゃ…」
「満足した?」
「まだじゃ! まだ終わってないのじゃ!」
「結構撫でたよ?」
「抱っこ! 抱っこじゃ!」
「ええ!?」
撫でるだけじゃなかったの?
そう聞くもタマちゃんは言う。
「ニャーは抱っこして撫でてもらってたのじゃ! 儂もあれがいいのじゃ!」
「し、仕方ないなぁ、じゃあ…」
少しだけだよ? そう言いながら迎え入れる。
と言っても、僕の胸にタマちゃんの背中が当たるように、座ってる僕に体を預けるようにタマちゃんが座ってきた。
そして頭を撫でる。
こや~ん。
「気持ちいいのじゃ~」
とろけちゃった。
しばらく撫でる。
「耳の付け根と後ろが気持ちいいのじゃ」
指示通りお耳の付け根の表側を撫でて後ろ側も耳元からうなじへ流すように撫でる。
最後に頭頂部をいい子いい子。
こや~~ん。
「満足なのじゃ~」
だけどジュン子とケイコに見つかった。
「タマちゃんだけズルい!」
「ウチもしてほしいけえ!」
僕は弁明する。
「一応撫座頭っていう怪異のお祓いらしいけど」
でもケイコは言う。
「そんなもん憑いておらんけえの」
ケイコは凝視して魔の気配を確認するも、何も居ないと。
「災厄どころか、自分が撫でられたい欲求を撫座頭のせいになすりつけとるけえ!」
タマちゃん嘘ついた? そう問い詰める。
するとタマちゃんは招き猫のポーズで言うのだ。
「ゆ、許してほしいニャーン…」
ジュン子が言う。
「猫撫で声で謝罪してる!」
ケイコも「健太、騙されてはならんけえの!」と。
タマちゃんは折檻されてしまった。
結局僕は日替わり当番でみんなを撫でる事になった。
ある日タマちゃんは撫でられながら言う。
こや~ん。
「気持ちいいのじゃ~。妖力が戻ったら儂の本来の姿で今度は儂が健太を撫でてやるから期待して待つのじゃ」
「楽しみにしてるね」




