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僕は聞く。
「そう言えばお狐様の名前は?」
「タマモじゃ! 前も言ったのじゃ!」
「綺麗な名前だね」
そう言うとお狐様は胸を張る。
「そうじゃ! 由緒ある名前じゃ」
「そうだよね、狐の長だもんね」
「我が狐族は昔から人々の信仰を集めてたのじゃ」
「さすが!」
「ふふふ、尊敬するがいいぞ!」
「かっこいい!」
「そうじゃろそうじゃろ」
「凛々しい!」
「もっと称えよ!」
「神様お狐様お稲荷様!」
「うはははは」
「それじゃよろしくねタマちゃん」
「タマちゃん言うな!」
怒られた。
「親しみを込めたのに」
「親しみすぎじゃろ」
「みんな仲良く」
「狐は神聖なモノじゃぞ? 分かっておるか?」
理解してます、そう言うとタマちゃんは言う。
「古来より狐はその力を発揮し、人間と動物をつなぎ止め、伝承も数々ある」
「色々有名だよね」
「知っておるのか」
そう聞いてくるから答える。
「狐は有名だよね。お稲荷様とか」
「各地にあるでな」
「中国にも居たり」
「九尾じゃな」
「人間でも居るよね狐目の男とか」
「偏っとるわ!」
憤慨された。
「とにかく敬うのじゃ!」
「神社の再興じゃないの?」
「徳も積めば信仰も高まるのじゃ」
という事で徳を積むことにした。
ちょうどジュン子が起きてきて言う。
「お兄ちゃんおはよう…」
「おはよう。珍しく遅いね」
「うん…昨日少し怖い事があって…」
なんだか変な事を言うジュン子。
「なんじゃ言うてみい。儂が解決してやろうぞ」
「あのね、夜、喉が乾いて台所に行こうとしたんだけど」
様子を聞くとこうだ。
僕の家は日本家屋なんだけど、廊下で声がする、と。
ジュン子は言う。
「なんだかすすり泣くような声がしたの。それから痛い、痛いって聞こえたような気がして。聞き違いかもしれないけど」
「それは奇妙だね」
「少し怖くて、寝不足になっちゃったの」
タマちゃんは宣言する。
「それではさっそく確認しようではないか」
廊下に面した客間。
それを障子の戸が隔てている。
「お兄ちゃんここら辺だよ」
どうやら声はこの辺りかららしい。
戸を開けて中を確認。
でも机と座椅子の客間は静かだ。
「何もないね」
だけどタマちゃんは否定した。
「いや、気配を感じるのじゃ」
「なにか居るの?」
「おるぞ! こいつはもくもくれんじゃ。隠れてないで出てこい!」
すると障子の目にまさしく目が浮かんだ。たくさん。
でも現れた怪異はなんだか涙ぐんでいた。
「うう…」
「こいつはもくもくれん。障子に住みつく目の怪異じゃ。悪さは許さんぞ!」
「悪さをする気はないです」
もくもくれんは泣きながら言う。
僕は「どうしたの?」と聞くと彼らは言う。
「花粉が…」
あ、なるほど。
「染みるんだね。それだけ目がたくさんあると辛いよね」
ジュン子も「昼間換気するのに縁側の窓を開けちゃうからかな」と。
もくもくれんは言う。
「驚かせるつもりはなかったんだ」
タマちゃんは言う。
「ふむ。障子ごと捨てれば解決なのじゃ」
「ひどい!」
抗議するもくもくれんにジュン子が言う。
「可愛そう。別に悪いことしなければいいよ」
僕も同意する。
「物は大切にした方がいいよね」
するとタマちゃんはもくもくれんに言うのだ。
「よし、ならば洗い流せばよかろう!」
「やめてやめて! 障子が破れちゃうよ!」
僕はもくもくれんに聞く。
「破れるとやっぱりまずいの?」
「当然痛いし困ります。破れた目には居たくないので隣の場所に映るとそこに二つの目が入ると狭いですし」
「よかろう! まずは風を起こしてやる。それで花粉を飛ばしてやる。目を瞑るがいい」
窓を開け、もくもくれんは目を瞑るとタマちゃんは術を使い風を起こした。
ビュウビュウ…
それからなにやら難しい呪文を唱えて叫ぶ。
「狐結界!」
ピカー!
光が辺りを包む。
収まるとタマちゃんは言う。
「これで完璧なのじゃ」
もくもくれんが「ホントですか?」と聞くと元気一杯に答える。
「不純なモノを防ぐ結界じゃ! 花粉も防いでくれる」
「目が痛くない! ありがとうございます!」
こうして事件は解決した。
あれからもくもくれんは静かだ。
タマちゃんは自慢げに僕に指示する。
「障子を大切にするがいい。まあ儂の結界もあるし、もくもくれんの住処である障子を傷つけなければ大丈夫じゃろ」
もくもくれんもニコニコしてる。
でもそこでジュン子が帰ってきた。
そして言うのだ。
「ただいま、お兄ちゃんあのね」
動物を抱えながら。
「ネコ拾っちゃった…」
ネコは障子を破いた。
あ~
もくもくれんの悲鳴が響いた。




