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セミが鳴く。
ミーンミンミン。
筒姫のおかげですっかり夏だ。
家で夕飯の支度を手伝う。
っていうか何を作ろう。
そんな事を考えてるとタマちゃんを見かけたので声を掛ける。
「タマちゃん何か食べたいものある?」
「夕飯かや? ちょっと今日は遅くなるかもしれんのじゃ」
遅くなる?
「出かけるのじゃ」
何か用事かな?
「神様のお仕事?」
「神として、ではないのじゃが」
事情を聞く。
するとタマちゃんは言うのだ。
「怪異なのじゃ」
「怪異?」
「怪しい火の玉が目撃されたのじゃ」
タマちゃん曰く、その怪しい炎はユラユラと揺らめく怪異として、少し噂が出ているらしい。
僕は言う。
「また鷺とかじゃないの?」
「違うのじゃ。どうやら儂の神社のトコらしいのじゃ」
ジュン子が聞きつけて声を上げた。
「タマちゃん神社で狐火使った? それが噂になっちゃった?」
「違うのじゃ! 最近夜は行ってないのじゃ」
そうだよね。
「クーラーの効いたここでアイス食べるのが最高なのじゃ」
ジュン子は「狐火じゃないのかぁ」とアテが外れたようだ。
ケイコも顔を出してきて言う。
「これは確認が必要じゃけえの」
みんなで行く事にした。
夜の稲荷神社。
暗闇の森を進むのは少し怖かった。
懐中電灯の明かりを頼りに鳥居に近づくと、ぼんやりと浮かぶ火。
なにやらユラユラしてる。
タマちゃんは言う。
「気を付けるのじゃ」
警戒しながら用心深く近づくと、はっきりと炎だと分かる。
だがあまり動くような素振りは見せない。
炎自体もあまり大きくなく、そもそも怪しい物でもなさそうだ。
そこには参道を挟むように二本でワンセットの灯篭があった。
「こやつじゃったか」
タマちゃんがそう言うと、右側の灯篭の火がユラッと動いた。
風に揺られたのかと思ったが違う。
「見てお兄ちゃん!」
灯篭自体が動いた。
タマちゃんは言う。
「こいつは化け灯篭なのじゃ」
「あ、はじめまして。化け灯篭と言います」
「紹介するのが遅れてたのじゃ」
ケイコも「けったいなもんが住みついてたもんじゃけえ」と言った。
ジュン子が尋ねる。
「妖怪さんなの?」
化け灯篭が答える。
「はい。よろしくお願いします」
タマちゃんが説明してくれる。
「灯篭の怪異じゃ。中の油に火を灯して明かりになり、参道や建物を照らしてくれる灯篭の
「取り壊された古い寺社から逃げ出してここに来たんです。あなた方がお掃除や補修で来てたので怪異としての本分が刺激されて
僕は聞く。
「人を驚かそうとしたの?」
「いえ、嬉しくて鼻歌を歌いながら身を捩ってたら火も揺れて、それが住民に目撃されてですね」
そんな理由なんだ。
僕は追加で質問してみる。
「そもそもなんで化けたの?」
「はて、なぜだったか。遠い昔に人を弔う寺社の灯篭をやってたので、怨念、とまではいかないまでも、そういう想いが私に宿ったのか」
ジュン子が「じゃあ鎮めてあげないとね」と言う。
でも思案する。
鎮める、と言っても。
「どうすれば鎮まるんだろうね」
そう言うとケイコが言う。
「灯篭流しというのがあるけえ」
ジュン子が叫ぶ。
「それだよ!」
タマちゃん曰く、「灯篭を川に流して鎮魂とする祭事じゃな」と説明した。
そしてケイコは化け灯篭を担ぎ上げ走り出した。
みんなであとを追う。
化け灯篭は抗議する。
「待ってください! 灯篭流しは紙で出来た灯篭を流すもので…」
タマちゃんはハッパを掛ける。
「頑張るのじゃ!」
ケイコも化け灯篭を叱咤激励する。
「成せば成るけえ!」
ボチャーン!
石造りの灯篭を川に投げ込んだ。
「た、助け…」
「ファイト! なのじゃ!」
「気合いじゃけえ!」
みんなで応援する。
ジュン子も言う。
「できると思えばえきるんだよ!」
みんなまだシュウゾ●ウを引きづってるようだった。
でも気合いでなんとかなるものかな…
化け灯篭は言う。
「むり…」
ブクブク…
みんなで見守る。
ジュン子が言う。
「これで大丈夫かな」
「魂の浄化を祈るのじゃ」
「天の身元で安らかに眠るけえ」
化け灯篭は救助を要請してるように見えるけどみんなは気付かない。
ジュン子は涙を浮かべながら言う。
「これで安らかな時間に帰るんだね…」
みんなで平和を願った。
ホントにこれでいいのかな?
化け灯篭は下流でなんとか自力で河原に上がった。
そして言う。
「あいつら頭おかしいのか…?」
翌日。
神社で元の場所に戻ってきてた化け灯篭からすごい抗議された。




