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ケイコは説明する。
「実は箒は掃除以外も司っておるけえの」
掃除以外…
なんだろう?
ジュン子も不思議そうにしている。
「箒に何か関連性があるのかな?」
ほどなく、タマちゃんは戻ってくると箒を持ってる。
そしてそれを振りかざす。
はんにゃら~ほんにゃら~
そしてなんだかグルグル回したり、八の字を切ったり。
しまいにはマーチングバンドみたいに箒で踊りだす。
ケイコは「なるほど」と納得したみたいだけど僕は分からない。
「ええと…」
何をしてるんだろう。
僕の疑問におかまいなくタマちゃんは祝詞のようなものを紡ぐ。
召しませ召しませ箒神よ~ 穏やかな出産の瞬間を司りたまへ~
ビカー!
ジュン子が言う。
「ネコさん、少し楽になったみたい!」
ネコの顔が少し穏やかになっていた。
ケイコは解説をする。
「箒神は出産も司るのじゃ」
初耳だ。ケイコは続ける。
「掃除と掛けて、古来より汚れや穢れを払う、すなわち魔を払う、とされておる箒じゃが、新しい魂を掃き集める、という道具でもあるけえの」
産道を清める、産道を開く、という事に繋がるのだと。
そう説明してくれる。
タマちゃんは最後に言う。
「親子を導きたまえ~ 命の誕生に幸あれ~!」
そうして箒を逆さにして、ネコの近くに立てかけた。
ほどなく。
小さな命が生まれた。
「可愛い!」
四匹の子猫。
まだ目は開いてないけど、母猫に舐められ、守られている。
数日後。
僕らは神社を掃除しながらネコを見守った。
すると、ネコは僕らに懐いた。
「子猫が居ると警戒するもんじゃがのう」
ジュン子は言う。
「タマちゃんが助けたのを分かってるんだよ」
ケイコは言う。
「タマもたまには良い事するけえの」
「たまにはってなんじゃ!」
まあまあ。
今はネコの姿に癒されておこう。
僕らは神社を訪れては掃除を繰り返す。
そして合間合間に猫の様子を確認した。
本殿にある品物を家に運び込んだ。
土蔵は満杯に近かったから。
部屋で品物を広げる。
「ずいぶんたくさんあるね」
タマちゃんは「ここに入らなんだものもあるしのう」と。
ジュン子は「へ~ 当時のお供え物とかなんだ」と興味津々だ。
「まだ一部だけじゃがの」
ゆくゆくはあの土蔵の中の物もまだまだあるんだろう。
食器みたいな物や壺を手に取りながらジュン子は言う。
「価値とかあるのかな」
ケイコは言う。
「残念ながら値打ちのあるものは見当たらんけえ」
手に取った品物はみなヒビが入ったり割れたりしている。
僕は言う。
「心苦しいけど、少し整理しないといけないね」
ケイコは言う。
「断捨離、というやつじゃの」
「知ってる! 時々やってるよね。テレビで物を整理したり捨てたりする特集!」
タマちゃんは「名残惜しいが、仕方ないのじゃ」と漏らした。
ちょっと悲しげだ。
やっぱり神社に人が多かった時代の思い出だからかな。
そう思っているとジュン子が声を上げた。
「待って! 安易な整理は禁物だよ!」
そうなの?
「日本は整理整頓しすぎたんだよ!」
ケイコは言う。
「手放しちゃいけない物とかあったかもしれないけえの」
ジュン子は叫ぶ。
「売っちゃいけない事業を売っちゃったり!」
失われた二十年とかかな。
「人を整理しちゃったり!」
人員削減もね。
タマちゃんは言う。
「しかし、必要な整理はせねばいかんぞ」
「最終的には整理してた経営者が整理されちゃうんだよ!? 追い出される経営陣やCEОとかたまにニュースになってたりするもん!」
海外に逃げた自動車メーカーの取締役かな。
タマちゃんも唸る。
「うぬぅっ!」
「タマちゃんも神社のCEОみたいなものでしょ!? 整理されちゃうよ!?」
「それは困るのじゃ!」
僕は言う。
「壊れた物とかは処分するのは仕方ないとして、奉納品とかは一旦うちの物置に置いておこうか。あとで考えればいいよ」
こうして鏡やら壺やら、綺麗に拭いて、箱にしまい、整理整頓した。
神社の作業も終わりを迎えつつあった。
草は狩り払われ、参道は綺麗になりつつあった。
デコボコだった境内は少し整地され、平らになった。
「これで躓いて転んだりはしなくなるかな」
「まだ社殿はボロボロじゃけどな」
腰に手を当て、額の汗を拭う。
そしてみんなでコンビニで買ったお茶やジュースを飲んだ。
数日掛けて、作業は終了。
「まずはひと段落じゃ!」
僕も言う。
「とりあえず、大きな汚れは落ちたかな」
ケイコは本殿の中を見ながら言う。
「中も大方片付いたの。あとは本格的な補修をすれば作業終了じゃけえ」
まだまだ先は長い。
でもなんだか心が軽い。みんなの作業で協力できた、なんだかそれが嬉しかった。
後日。
猫は僕らに慣れたので保護した。
そして里親探しを開始した。
ほどなく。
ジュン子は言う。
「貰い手が見つかったって。親子五匹全部見てくれるって」
うちにはすでに一匹居るので、貰い手を探してたけど、どうやらこれで解決したようだ。
よかったよかった。




