1-11
今日もどうしたら徳が貯まるか考えてるタマちゃん。
でも僕は言う。
「神社の方はいいの?」
「少し荒れておるのじゃ。人通りが途絶えて久しいからの」
「じゃあ整備した方がいいんじゃないの」
お寺や神社はお参りする人が居てこそ。
祈りと信仰が人を呼び、更なる徳に繋がりそうだと思う。
そう伝えるとタマちゃんは言う。
「では少し綺麗にしに行くか」
「手伝うよ」
「健太はいい奴じゃな」
支度をするとジュン子とケイコに声を掛けられる。
神社の整備と伝えると二人も行くと言う。
こうして四人でタマちゃんの神社に向かう事にした。
ちなみにジュン子は巫女姿だ。
神前に出るにはこの恰好が一番、との事だが、気に入ってるのかいつも着ている。
巫女のバイトは期間限定だったらしいけど巫女服は貰ったのだろうか?
普段着の僕と古風な恰好の三人組が町で話題にならないか心配だ。
外に出て少し歩く。
市街地を抜け田畑が増え、自然が多くなる。
小高い丘へ入りやがて傾斜が増え山の中へ。
日差しは柔らかだけどそれも木々に遮られ始める。
獣道みたいになってきて進むのが難しくなろうかという先。
やや開けた光景が視界に入る。
「着いたのじゃ」
荒れた敷地。
寂れた社。
古い神社がそこにはあった。
「こんな所があったなんて」
「人は来なくなって久しい」
「年季が入ってるね」
「昔は栄えてたんじゃぞ?」
僕は鳥居前で聞く。
「入っても大丈夫?」
頷くタマちゃんを確認して恐る恐る鳥居をくぐる。
異界に入るような、なんだか奇妙な間隔に囚われるのは気のせいだろうか。
境内の中は草が伸び放題。
そして社殿も…
ジュン子が言う。
「穴だらけだあ…」
ケイコも本殿の階段の床を見ながら言う。
「これ、大丈夫かの?」
タマちゃんは軽快に戸を開け、中に入り言う。
「大丈夫じゃ、意外に造りは頑丈じゃぞ。気にするでな…」
ミシッ!
…
音がしたね。
タマちゃんは言う。
「ま、まあ平気じゃろ…」
抜き足差し足で本殿内部を確認。
僕は「コホッ」と咳ばらいをした。
ジュン子も「埃が貯まってるね」と。
でもなんだか妙な気分だ。
訪問者もなく、埃っぽいのに本殿の奥はなんだか荘厳で、厳かな雰囲気を感じる。
長い間、人の世を見守った風格だろうか?
そんな縁を感じさせる場所だった。
僕が言葉に詰まっていると、タマちゃんは「一旦外に出るのじゃ」と促した。
さて、作業の確認だ。
「まずは埃を落とさないとね」
ジュン子も「それから補修だね」と。
参道も土まみれなのでまずは道具を探す。
タマちゃんが土蔵があると言うのでそこに入る。
薄暗い土蔵には箱やら巻物やらが所狭しと置かれている。
そして道具箱のような物を見つける。
中には鎌などが入っていて壁には鋤が立てかけてあった。
僕は手に取り言う。
「これで草を狩り払えるね」
そしてタマちゃんはもう一つ、道具を見つけて言う。
「むう、こんな物もここにあったのか…」
どうしたの?
そう尋ねるとタマちゃんは箒を持っていた。
それは?
「これは箒神じゃ」
単なる箒に見えたそれはなんと神様だった。
「箒の神様なんているんだ」
「いわゆる付喪神の一種じゃな」
振り回しながらタマちゃんは説明する。
「これで本殿の中の床を掃除できるのじゃ」
色々持ち出して、さっそく作業開始。
僕は草を狩り、ジュン子は鋤でまとめる。
タマちゃんは箒で本殿の中を掃除している。
ケイコは貴重品などの整理だ。
結構な時間を費やしたけど、中々に大変だ。
僕らは数日間に分けて作業を進める事にした。
ある日。
雑草の処分がひと段落して、土蔵の中を確認していると、何やら物音がした。
ガサゴソ。
なんだろう?
僕は静かに足音を殺して音のする方に行ってみた。
すると。
置かれた箱の裏から気配がする。
覗き込んでみると、一匹の猫が居た。
でも様子がおかしい。
こちらを見るけど動こうとしない。
それに、気のせいかもしれないけど、なんだか息が荒そうに見える。
僕はタマちゃんたちを呼ぶ事にした。
全員集まり、確認する。
猫がみんなを見て鳴いた。
「ニャー…」
「お兄ちゃん…」
「うん、弱ってるように見える」
「なんだか少し苦しそう」
猫はお腹が張ってる。
タマちゃんは言う。
「なんじゃ、病気か?」
でもケイコがそれを否定する。
「いや、そうではないようじゃけえ」
近づくと猫は警戒する素振りを見せるけど、すぐに息を荒くして再び体を横たえる。
ケイコは言う。
「これはお産じゃけえ」
ジュン子は言う。
「リュックにまだ使ってない綺麗なタオルがあった筈!」
周囲を整え、見守る事にした。
しかし。
ジュン子が聞く。
「どう?」
ケイコが答える。
「難しいようじゃ。痩せてて体力も無さそうじゃけえの、難産になろうよ」
大丈夫なの?
そう尋ねるとケイコは難しい顔をして言う。
「難しいの。このままでは…」
「な、なんとかならないの…?」
ジュン子が悲しそうな顔で聞く。
なんとかしてあげたいけど、僕たちじゃ…
いくらタマちゃんたち神様でも、お産を助けるなんて…
そんな事を思ってると、タマちゃんが叫んだ。
「そうじゃ! 箒じゃ!」




