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アイ コンタクト  作者: チャウチャウ坂
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第四十七話

「ん……ここは空港だ。よくやった。あいつら俺を空港に問題なく連れて来たんだな。あまり忠誠心とか器量とか無さそうだったが、役に立つじゃないか。」

玖波jrが目を覚ます。


側にいた父親はあまりの出来事に放心状態だった。


「父よ、空港だ。彼に会いに行くぞ。ここからそう遠くない。」

玖波jrが玖波氏の肩を揺する。


玖波氏は息子の言う事が最も重要だと判断して、立ち上がる。

「空港に話は通してある。スタッフを呼びつけろ。ここから逃げて空港の警備員に保護してもらう。」


「何言ってるんだ?父よ、空港だぞ。確かに会社では酷い目にあったが、ここは……」


「我々は誘拐されたのだ。目の前、そこに犯人がいる。」

玖波氏は斧を指差した。 

その斧はこちらに向かって走って来ている。


「もう一度拘束しろ。逃げられたら面倒だ。」


「ちくしょう。俺の車はここにないぜ。」

ミニ四駆男が周りの搭乗客がことごとく振り返るほどの大声で嘆いた。


「なら走るんだよ!」

カツ丼男は床に膝をつくミニ四駆男を服を引っ張って立たせた。


「おい!我々はここだ。誰か助けてくれ!」

玖波氏が周りの空港スタッフを集めた。

空港のスタッフは被る帽子の金の紋様を光らせながら駆けつける。


「後ろを追っている、あのスーツの男とゴーグルをしている男、不審者だ。誘拐犯だ。捕まえてくれ!」


「落ち着いてください。あなたは…ここでお待ちください。すぐにこちらの責任者を伺わせて参ります。」


玖波氏に声をかけたスタッフ以外の周りのスタッフは、玖波氏が指差した斧とミニ四駆男を捕まえようと動き出す。


"本日!ハロウィン!ケルト文化を知る祭"

斧の追いかけた先のブースで開催されていたイベントの看板だ。アイルランドの国旗と日本の国旗がクロスして飾られていた。


今は陽気なケルト音楽に合わせて現地の人と輪になって踊るところらしい。

独特のパイプ楽器に金属の打楽器のカンカンという乾いた音、真珠貝のような形で、古代ローマ調の柱と同じ型の立派なハーブの音色。


陽気にも、もの寂しくしっとりとした雰囲気も作り出す音楽。集まっている人々もダンスの種類を変えながら楽しんでいた。


「斧よ、あいつらこっちに向かってくるぞ。」


「俺もほとんど無力だしよ、こりゃ捕まったらやばいぜ。」


「そうか。そうだな……」

斧はそう言いながら下を向き、顔を上げてまた走りだした。


「追え!あいつら、イベントブースに紛れてやり過ごすつもりだぞ。」

警備員たちは一斉にイベントブースに雪崩れ込む。

急な乱入に参加者たちは気を悪くした。


「日本人の下手なダンスを見させられた挙句に、ダンスを途中で切り上げさせられるなんて!」

現地から招かれた人が小言を誰にも分からなくて、気づかれないように、外国語で小声で小言を吐いた。


「ま、しょうがないよね、まともな複数人でやるダンスをする文化がないのだから。まぁ"舞"は素晴らしいと思うけど、こんな素人ばっかじゃ見てられないわ。」


斧は自身のぷるウォのアイコンに触れながら、生のケルト音楽を演奏しているステージに上がっていって、その楽器に触れた。


楽器はたちまち和楽器へと姿を変える。

パイプ楽器は尺八に、ハープは琴に、金属の楽器はあまり変化しなかった。


ダンスをする広場その真ん中に大きなキャンプファイヤーの形だけの寄木が作られていた。

学校行事のような時にしかお目にかかれないであろう。


斧はそこにも触れる、たちまち、寄木はやぐらとなる。

ミニ四駆男が袖を捲り、ゴーグルのまま鉢巻を巻いてそのやぐらに登っていった。

やぐらの頂上には和太鼓が用意されていた。

ミニ四駆男が叩き始める。演奏家たちも、和太鼓のリズムに合わせて演奏を始めた。


イベントに来ていた人たちはそのまま盆踊りを始めた。ケルト音楽を踊ったときの小規模の輪から、やぐらを取り囲む大きな輪に進化した。

やぐらをしばらく回った後に、イベントの参加者たちは一列になりながら、空港の中を一列で徘徊しだした。


「あ!見つけたぞ。楽器のあるステージのところだ。もう1人は和太鼓を叩いてる?」

空港スタッフは自分でも自分の言っていることが分からなかった。


「とにかく、捕まえるんだ。」

スタッフたちはそのまま斧の方へと進行したが、盆踊りの列に衝突して、完全に行手を阻まれた。


列の中からはこんな声が聞こえてきた。


「何よ。これ。楽しいじゃない。知らなかったわ。単調な踊りだけれども、心が弾んで……。」


「盆の時に、みんなで集まって輪になってこの踊りをするんです。盆も死者と再会する日本の行事なんですよ。」

通訳が体を動かして後ろから話した。


「あら、サウィンと近いのね。」

不機嫌から一変、笑顔のその人は、服が着物に変化していた。


斧とカツ丼男は空港スタッフと盆踊りの列が衝突して揉み合いになっている隙に、ブースを抜けて先程の通路に戻ってきた。

そこには、玖波氏と玖波jr、空港の責任者らしい男の3人が並んで歩き去る景色があった。


「カツ丼はまだ胃の中か?」


「ああ。どういうわけか瞬間移動したらしいが、俺の胃の中の満腹感は変わってないし、大丈夫だ。」


走りながら、斧の頭の中にキツネの顔が浮かんでいた。



鈿音は必死にキツネを探す。

「あんた出てきてよ。何が何だか。美琴を無事に返さないと。」


『今、あなたは戦いの最中でしょ。戦いが終わったらまた話しましょ。』

ぷるウォから声がした。


鞠雄はその声を聞き逃さない。

「……亀…ブミつける……」


鈿音を見つけると一直線で飛んできた。

キノ婆が横から杖を投げた。鞠雄は腹をへこませて避ける。鈍い音が飛行機の見える窓から鳴った。


鈿音は頼るようにキノ婆を見る。

キノ婆は日本土産のところから日本酒の瓶を勝手に取ってきて、ラッパ飲みしている。

そしてアイコンを押した。


鈿音はとにかく、美琴を探して逃げようとしたが、肩を掴まれた。


「やっと見つけた……。話を…聞かせてください。その、素良さんと類さんが、鞠雄さんとおばあさんの戦いに巻き込まれたのは、あなたの仕業ですか!」

楢紅は必死な顔を鈿音に近づけた。


「……ほら!私も今、戦いに巻き込まれているのよ。その私が、2人を鞠雄くんに襲わせるような真似を出来るとおもうの?」


「じゃあ、鞠雄さんに何と声をかけたんです。鞠雄さんに聞かせた音声の内容からは、あなたたちが巻き込まれる要素はなかった!」


楢紅は、素良と類の死体を見てしまったショックが大きい。たとえ、戦いが終われば生き返ると分かっていてもショックなものはショックだ。


「ちょっと、走りながら話さない?」

不自然に笑いながら、鈿音は鞠雄から離れることを切に考えていた。


「あ!鈿音だ!」


鈿音はキャプテンまで駆け寄ってくることを悟ると、楢紅を押しのけて、脇目も振らずに走りだした。


鈿音が少し走ると、玖波氏と玖波jrが、空港の責任者と歩くところに合流した。


「……では、手筈通り、滑走路沿いの一部関係者のみが許される、特殊なプライベートジェット用のエリアにご案内させて頂きます。」


鈿音はとにかく安全そうな場所に駆け込みたかったので、着いていくことにした。


楢紅とキャプテンは、斧とカツ丼男と合流、一緒に追いかける形になった。

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