第四十二話
「…というわけでの。わしが桃姫の祖母じゃ。そしてお前さんのことをまだ認める訳にはいかんのよ。」
「……ン…ゾうでしたか」
ほとんど無意識の鞠雄が意識を半分戻しながらとった行動。それは正座だった。
「お主はこの状況で戦えるか。このまま戦えば確実にわしを倒して現実に帰れるぞ。」
「……出来ません。」
キャプテンと楢紅が鞠雄に寄ってきた。
「どうなっているんですか?素良さんは?美琴さんは?鈿音さんは?類さんは?」
「キツネは出来たのか!」
カツ丼男がぷるウォのアイコンをタップしながら2人を押しのけた。
「俺たちの質問が先だ。おい!根戸鞠雄だな。
どうやったらお前を倒せる?」
「……想像がつかない。無意識のうちの自分は記憶に残る。弱点は人間より強い生き物とかなんじゃないか?」
「都会には人間しかいねえよ!お前の弱点は?」
「僕の…弱点…退屈だ。僕は刺激のために他人と関わる。刺激のためにゲームをする。」
「どう聞けばいい?」
「お主にとって気絶に至る物事はあるか?」
キノ婆が杖でカツ丼男をつつきながら何気ないように聞いた。
「そうだな。スターに会うことだ。僕にとっては刺激が強すぎて倒れてしまうだろう。」
「お主にとってのスタァとは?」
「それは……」
鞠雄は急に頭を抱え出した。
「今の状況。退屈だ。僕の無意識がそう思ってしまったんだ。早く『終了』を!」
鞠雄もキノ婆も終了を押したが、戦いは続行されるようだ。
「戦いは終わらぬか。鈿音が今、何をしているかによるわ。」
「そうだぜ。俺を呼んだのにいないのだからな!」
カツ丼男は怒りながら辺りを歩き回った。
「残りのみんながどうなったのか知れない。ロビーにいた鈿音さんと美琴さんはともかく、類さんに素良さんはまだ地下なんじゃ?」
「でも!俺たちは何があっても戦っていない限り無傷だぞ!」
「…だとして、火事でコンピュータのサーバーもダウンしているのに外に出てこないのは変でしょう?」
「!助けに行くぞ!」
キャプテンがキャッスル社に向かって駆け出す。
止める隊員はいなかった。まだ轢かれたショックで気絶しているのだから。
キャプテンは鞠雄とキノ婆の作ったロビーの穴から地下に降りてスーパーコンピュータに駆け寄る。
沢山の血が流れた2人の死体を見つける。
「大丈夫か!」
キャプテンが2人を抱えるとロビーに続く穴から2人を投げた。
楢紅がナイフを投げて死体に刺し、能力を使い、死体を上へ引き上げた。
「駄目だ。生気を感じる色じゃない。」
「婆さん!どうにか出来ないか?」
「無理じゃ。この状況見てみよ。」
鞠雄のキレのあるパンチがキノ婆の頬をかする。
キノ婆はかする拳のエネルギーを利用し、回転してそのまま鞠雄の首に蹴りを入れた。
「銃痕がある。えーと。銃を地下で持っていたのは……鞠雄さんだけだ。単にあのおばあさんと敵対しているから戦っているのではないんだ。どうして2人を撃ったんだろう……。」
「楢紅!2人は戦闘中になっているらしい。この戦闘で時間は変動しないけど。」
「……うん。おばあさんに話を聞かないと。」
「おい!出前のおっさん!借りを返してくれ!」
定食屋に戻ろうとしたカツ丼男が振り向く
「なんだ!君たちに協力しろってことか?」
「あの男を止めて欲しい!おばあさんと話すんだ!」
「あのヤロウの無意識の時にな俺の能力は使えないんだ。」
「楢紅!鞠雄の動揺すること…知らないか?」
「……!そうだ。鞠雄さん!『ゲームオーバー』」
ジャンプしようと踏ん張る鞠雄の動きが止まる。両手を振り上げてひっくり返る仕草をしながらその場に倒れた。
「おばあさん!鞠雄さんはどうしてあの状態になったんですか。」
「そりゃモチロン、わしと戦うためじゃ。鈿音のスマホでな、わしの孫そっくりに改造した声を流してわしと戦うように仕向けたのよ。」
「その内容って?」
「チンケなもんじゃ。孫が誘拐されたことにして犯人をわしじゃと伝えるように出来とった。」
楢紅とキャプテンは顔を見合わせる。
「この2人は関係ないんだな!」
「そのはずじゃ。」
「そして、鈿音さんが音声を鞠雄さんに伝えた……。」
「そうじゃ。」
「つまり……?」
「鈿音がドッペルゲンガー作戦を裏切った!」
「それだけじゃなくて、おばあさんも裏切っている?」
「なんと!」
「ヴヴヴん……ゴンディヌゥ〜〜」
鞠雄が立ち上がる。
「コンティニューだって!おばあさん…とりあえず私たちは鈿音さんのやろうとしていることを知りたいんです。協力してくれますか?」
「出来たらやるぞ。その辺の若者と違って、わしのこの言葉はおおいに期待してくれてよろしい。」
「お前は!どうする!」
「俺たちの作戦は成功して終わっているんだ。今更あの裏切り者にいちいち気を配ってやる必要ないぜ。」
そう言うと、カツ丼男は消防車に乗り込んでその場を離れ、今度こそ定食屋に向かった。
「警察やめて♪結婚生活やめて♪やっと店をはじめれるぅぅルールールー」
時は遡る。
鈿音と美琴は行動でタクシーを拾い、タクシーの運転手にオッチョチョのくれた地図を見せて定食屋に最速で向かった。
定食屋のドアを開ける。斧から渡された合鍵だ。
「いい?この上の照珊って女の子に今から話をつけに行くから、大人しく座っててね。」
「はい。」
鈿音は銃を手に2階に上がる。
1番手前の部屋。照珊の部屋のドアを開ける。
そこにはオッチョチョと照珊がロシアンルーレットを楽しげにやる姿をがあった。
「何してんの?」
「だってぇこの体じゃないと出来ないことじゃないですかぁ?」
オッチョチョは酒を一滴も飲んでいないにも関わらず、酔っ払いを真似たような口調で鈿音と話す。
「私たちはここからなのよ。楽しまなきゃ損でしよ。」
「分からないわ。何が?」
「下に美琴ちゃんはいますね。」
「えーと。そうね。……!あなたに美琴の名前を出した覚えはないわよ。なのに何故?」
「これを見てください。」
ぷるウォ内のSNS。そのキツネのアカウントに"WANTED"の文字。下には……美琴の顔写真。
「今。明かします。私はキツネ卿の崇拝者です。絶望しかない浮世からこの素晴らしい世界に連れてきてくれたんですから。あなた。これからのキツネ卿の描く筋書きを知っていますか?」
「そういうこと……能力でキツネの未来をみたのね。そこであなたはキツネの信奉者に。」
「キツネ様の未来だけは回数制限なく見れるのですぅ!」
鈿音は素早く、オッチョチョと戦おうとした。
しかし、オッチョチョの「助けて〜」
という叫びに、階段を上がる音がしたので体を怯ませる。
「来ちゃダメよ!」
鈿音の言葉は無視された。ドアが開く。
「ふふ。こんにちは。」
オッチョチョが宗教勧誘の見せる笑顔そっくりの顔で美琴に挨拶した。
「頭が高けぇよ。テメェ!」
美琴はオッチョチョの頭を蹴飛ばした。
「あたしがここに来たのは鈿ねぇ(姐)に教えてもらったこの女に会うためだよ。」
鈿音は目ん玉が飛び出そうだった。




