■一〇月七日② 真の最終決戦 第一ラウンド
ボクの名前は、儚内薄荷。
ロールがいっぱい増えちゃって、自分が何者か、よく分らなくなっちゃってる。
一年生である學園第一〇〇期生の大物語『服飾の呪い』における『セーラー服魔法少女』。
二年生である學園第九九期生の大物語『令嬢の転生』における『メタヒロイン』。
三年生である學園第九八期生の大物語『勇者の召喚』における『転生勇者』。
學園第九六期生の大物語『科学の鉄槌』後日談におけるシン『お色気ピンク』。
それから、来年の一年生である學園第一〇一期生の大物語『混沌の浸蝕』にも、何かしら配役されているみたいだけど、その詳細は不明だ。
ボクは、たぶん、どの物語からも、悲劇のヒロインとして死ぬことを期待されている。
ボクが、物語のターニングポイントで、弄ばれて、凄絶な死を遂げる。
それが各物語のクライマックスに繋がり、カタルシスを齎すんだ。
ボクは、かつて、トラウマイニシエーションを刻み込まれたときに、生き長らえることを諦めた。
だから、潔く散るつもりで、學園にやってきた。
だけど、ボクは、學園で、様々なことに巻き込まれ、得がたい体験を重ねることができた。
物語のなかで、出逢った多く人々が、ボクが生きることを望んでくれた。
何より、ボクを生かすために死んでいった人たちがいる。
だからボクは、そんな人たちのためにも、生き残るために足掻いてみようと思い始めている。
生き残るにあたって重要なのは、九月三〇日に、またしても、物語が『変革』されたことだ。
ボクは、五月一九日に一度、この世界を『変革』させている。
だから、これが、ボクが経験する、二回目の『変革』だ。
『変革』は、『物語』において、しばしば起こるものらしい。
『新章』、『新展開』、『新局面』、『新基軸』、『パラダイムシフト』、等々。
状況によって呼び方も様々だという。
一回目の『変革』により、ボクがかかわっている複数の物語は、ひとつの時間軸のなかで、同時展開するようになった。
複数の物語が、相互に矛盾したとしても、お構いなしに、進行していく。
そして、二回目『変革』により、更にメチャクチャなことになっている。
九月三〇日に、白金王水第二皇女様――というか、『転生魔王』様――から、そう宣告された。
『転生魔王』様は、九月三〇日に結末に向っていた物語を、ゲーム一周目のエンディングとして、強引にぶった切った。
そして、ゲーム二周目のエンディングである、『真の最終決戦』を、四分割し、一〇月に開催される文化祭に割り込ませるという。
ハチャメチャだね。
本来あるべき物語進行なんて、お構いなしだね。
各物語を掻き乱して、ぐしゃぐしゃにする気だ。
なんにしても、『真の最終決戦』なるものが、現在開催されている本来の文化祭の、特別イベントとして、週一回割り込んでくるってことだ。
あらかじめ日付けまで公にされていて、一〇月七日、一四日、二一日、そして、二八日だ。
頭の中で、前世のボクの、声が聞こえた。
「ほら、週一で放送されてたアニメの続編が、劇場版四部作になって公開されるみたいな……」
なに言ってんの、コイツ。
ホント、わけ分かんない。
そもそも、どこで、どうやって決戦に至るんだろう。
ボクがいるのは、鹿鳴館學園平民女子寮。
龍神様がいるのは、龍神沼の祠の中。
そして、召喚勇者北斗拳斗は、皇都トリスの神殿にいるはずだ。
昨夜は、『明日、目覚めたら、何が起こっていても、おかしくない』と覚悟を決めて、ベッドに入った。
服は、『体育服』のノースリーブ・ワンピ・セーラー服にして、『勇者の剣リバ』を鞘ごと抱き抱え、行儀は悪いけど靴まで履いたまま、眠った。
☆
×××ゲーム二周目 真の最終決戦
×××――世紀末なので全滅エンドで精算します――
×××全四ラウンド中 第一ラウンド
眠っていたら、いきなり、何者かが、のしかかってきて、目が覚めた。
悲鳴をあげる前に、口を塞がれた。
あぐあぐと抗いながら、目を見開いた。
眼前、数センチメートルのところに、いやらしく歪んだ顔があった。
召喚勇者の北斗拳斗だ。
そして、ボクの口は……拳斗の口で、塞がれていた。
ボクの両手両脚は、拳斗の両手両脚で組み敷かれて、身動きできない。
左手に『勇者の剣リバ』を握りしめているんだけど、まったく動かせない。
そもそも、『体育服』を着ているのに、身体に魔力が籠らない。
『どうして?』と、自分の身体を見おろしたら、原因が分かった。
ボクは、いつの間にか、ピンクのカーディガンを羽織らされていた。
このカーディガンのこと、覚えてるかな?
ほら、五月二四日の『科學戦隊プロモーション会議』のときに、皇國軍造兵廠の女性研究官からいただいたものだよ。
女學生が、よくセーラー服の上から羽織っている既製品なんだけど、カワイイから、ボクのお気に入りなんだ。
ただ、『呪われた服飾』って、他の衣服を重ね着すると、力が失われる。
だから、ボクは、魔力を抑制する必要があるときに、このカーディガンを羽織っていた。
拳斗は、そのことを知っているから、ボクを襲うにあたり、眠っているボクに、先にこのカーディガンを羽織らせたんだ。
ボクが、最後に拳斗を見たのは、九月三〇日、王水皇女離宮で催された御茶会のときだ。
あのとき、拳斗は、右腕と左脚を失い、半死半生で、茫然自失状態だった。
ところが、たった一週間で、拳斗の右腕と左脚は修復され、その表情は、不遜さを取り戻している。
ボク以外で、瀕死だった者を治癒し、欠損部位をここまで再生できるのって、聖女天壇伽羅による『聖女の癒やし』だけだ。
ボクは、唸り声で抗議し、首を左右に振って逃れようと、暴れる。
でも、拳斗は、力尽くで、ボクの唇に吸い付き、かつ、頭部を抑え込んでくる。
なにも抵抗できなくて、悔しい。
ボク、オトコなのに――。
涙が溢れてきた。
拳斗が、唇を離し……その唇で、ボクの涙を舐め取った。
全身に、悪寒が走った。
拳斗に憎悪の目を向けたら……その、拳斗が、傷ついた表情になっていた。
「そこまで、俺っちが、イヤかよ」
――襲われて、キズモノにされそうになってるのは、ボクの方なのに!
……いや、ボク、トラウマイニシエーションのときに、
とっくに、キズモノにされて、壊されちゃってるんだけどね。
「俺っちが持っていた、肉体関係を持った相手を支配する権能は、『諂上欺下』って言うんだけど、それが本当に失われたのか、試してみた。以前なら、どんなにイヤがって抗ってたヤツでも、オレが組み伏せてキスしたら、もうそれだけで、トロンとした表情に変わってた。そして、肉体関係さえ持っちまえば、絶対服従しかできねぇんだ。女だけじゃねぇ。男だってそうなることは、査問丹間で実証済だ」
「ボ、ボクで、肉体関係まで、試すつもりなの?」
ボクは、がくがくと震える。
それは、ボクにとって、トラウマを呼び覚ます、最悪の恐怖だ。
「それができるんなら、有無を言わせず、とっくにそうしてるぜ。俺っちは、もう、ヤリたくてもできないんだ」
ボクは、拳斗の言ってることの意味が分からなくて、首を傾げた。
「触ってみろよ」
拳斗が、ボクの片手をとって、自分の股間に導いた。
そこには、突起物が無かった。
縫いぐるみの股間みたいに、すっきりしてた。
――聖女ですら、再生できなかったってこと?
拳斗は、それ以上説明する気がないみたい。
「俺っちは、もう、男を失った。『諂上欺下』も失った」
ボクは、『ふっ』と息を吐く。
全身から、力が抜けた。
……それなら……もう、恐くない。
拳斗が、激昂した。
頬を張り飛ばされた。
「なに、安心しきってんだよ。襲われてることに変わりはねぇだろ。恐がれよ」
ボクは、反発して、ぷいと横を向く。
ついでに、頬を膨らませて魔力を込め、自己治癒を試みる。
だけど、やっぱり、カーディガンを羽織った状態では、打撲を否定することもできない。
頬が、腫れ上がってきて、ヒリヒリしてる。
それでも、これくらい、へいちゃらだ。
「ボク、いまさら、怪我するのも、死ぬのも恐くないの。恐いのは、犯され、辱められることたげだよ」
「俺っちは人非人だが、テメエも大概だな。そうとう、ぶっ壊れてるぜ。だいたい『いまさら』ってなんだよ。いったい、テメエは、いつから壊れててんだ」
「前世からだよ。だって、ボクのこと犯して、壊して……殺したの、拳斗じゃないか」
「テメエ、『犯して、壊して、殺した』って……なんの……」
拳斗が、カッと目を見開いた。
「テメエ、まさか、漣水面なのか? いや、あり得ねぇ。俺っちが『あの世界』で殺した水面とは、顔形から違うし、そもそも、あいつは、女だった」
拳斗が、ハッとした表情になって、ボクのミニスカの中に手を突っこんできた。
「……そうだよな。オトコだよな」
悔しいけど、四肢をガッチリ押え込まれているボクには、抵抗できなかった。
拳斗は、涙目のボクを放置して、考え込んでいる。
「……いや、あり得るのか、召喚者は、『あっちの世界』の姿のまま、『こっち』に呼ばれる。だが、転生者は、新たな身体と名前を得るから……。おい、儚内薄荷、転生者なら、『あの世界』の記憶があるだろ。テメエ、あの世界で、なんて名前だった?」
ボクは、泣きそうな声で、答える。
「ん~と、ボクね、転生前のことが、ぜんぜん思い出せないの。自分や他の誰かの名前とかも思い出せない。転生手続きに何か不具合があったんじゃないかって、こっちで生まれてから、ずっと思ってた。けど、最近、思い直すに、転生前のボクって、普通でないほど、ぼんやりした子だった気がする。それに加えて、死ぬとき、もうゼッタイに思い出したくない体験をした気がする。あっ、いま思い出したけど、ボクが死ぬ間際に見たのって、拳斗が、アヘってる顔だった」
「ってことは、薄荷、テメエ、揺蕩のことも、覚えていないのか?」
「誰、それ?」
「『あっちの世界』での、テメエの兄じゃねぇか!」
そういえば、いつも、ボクのことを見守って、優しく面倒を見てくれてた人が、居た気がする。
ちょっと歳上で、オトコの人で、同じ家に住んでて……。
ボク、いつでも、どこでも、あの人……オニイチャンに、ついて回ってた。
あっ、ボク、あの人のこと、揺蕩オニイチャンって呼んでたよ!
☆
薄荷、俺っちが、今日ここにやって来たのは、『召喚勇者』であるテメエを、先手を打って殺そうと決めたからだ。
『聖女親衛隊』所属の女性騎士の手引きで、この平民女子寮に忍び込んだ。
そして、俺っちは、たったいま、もうひとつ決めた。
『この世界』の儚内薄荷と同時に、『あの世界』から転生したきた漣水面を、もう一度、ちゃんと殺すって、な。
で、水面を、二回殺す理由を、ちゃんと説明してやるから、聞け。
揺蕩はな、水面の兄で、俺っちの、唯一の親友だった男だ。
俺っちが、どんなにワルサをしても、アイツだけは親友でいてくれた。
いや……正直に言おう……俺っち、男として揺蕩に惚れていた。
俺っちが、ワルサを重ねていたのは、優等生の揺蕩に、叱って欲しかったからだ。
なのに、揺蕩が、心を砕いて世話しているのは、妹である水面、つまりテメエだけだった。
水面は、理解力や計算能力はあるのに、自分と他者の境目が把握できなくて、自分の名前さえ覚えきれない欠陥品だ。
衣服については、なぜだか、スカートを拒否し、一着しかない男児用の半ズボンを履き続けていた。
今になって思うに、水面にとって、あの半ズボンこそが、自己と他者の境目だったんじゃねぇかな。
揺蕩はさ、そんな水面のことを、カワイソウだと抱き寄せては、涙ぐんでいた。
情愛を注ぎ、慈しんでいた。
俺っちはというと、何がなんでも、自分が揺蕩のイチバンになりたいって、思ってた。
そして、揺蕩の情愛を、わがもの顔で独占している水面に、嫉妬していた。
俺っちは、自分の中にある腐った醜い感情を、ぐしゃぐしゃに潰してして、無かったことにしようとした。
だから、水面を凌辱して殺したときに、全部消し去れたと思った。
なのに、まさか、俺っちが自分の醜さを注ぎ込んだ、恥部そのものである水面が、『こっちの世界』に逃げ出して、新たな肉体を得てるなんて、な……。
だから、俺っち、さっき、理解したんだ。
俺っちが、『こっち』に召喚されたのは、『こっち』に逃げた、テメエを、今度こそ、ちゃんと穢して、メチャクチャにして、殺すためだったんだ、てな。
だから、ここで、ちゃんとヤれたら、俺っちは、使命を果して、『あっち』に帰れるはずだ。
そしたら、やっと、俺っちは、『あっちの世界』で待ってくれている、揺蕩のイチバンになれるはずだ。
☆
拳斗は、ボクは、ボクの身体を組み伏せたまま、とろんとした目つきで、好き放題語っている。
ボクは、拳斗を睨んだ。
「なに、それ! 理屈にもなんにも、なってないよ。その話し通りなら、揺蕩オニイチャンが、拳斗を許すはずない。イチバン愛されるどころか、イチバン憎まれるに決まってるじゃんか」
「それで、いいんだよ。揺蕩はきっと、俺っちのことを、はじめてちゃんと見て、憎しみを込めて殺してくれるさ。俺っちは、そのために、『あっち』へ帰るんだからな。今度こそ、きっと揺蕩のイチバンになれるって多幸感で、震えてくるぜ」
「拳斗は、さっき、『俺っちは人非人だが、テメエも、ぶっ壊れてるぜ』って言ったよね。確かに、ボクは壊れてる。だけど、間違いなく拳斗の方が、人間の範疇を外れてるよ。それに、拳斗は、男じゃなくなったんだから、もうボクを穢すことなんてできないよ。できるのは、せいぜい、ボクを殺すことだけだ。そして、ボクは、殺されることなんて、恐くない。さあ、殺すなら、殺せよ」
拳斗は、鬼の形相になり、上半身を起こして、ボクの身体に馬乗りになる。
そして、右手を振りあげた。
そこに、切っ先が七本に分かれた、異様な剣が顕現した。
「こいつを見ろ! 水面として俺っちに殺されたときの記憶が僅かでも残ってれば、思い出せるはずだ。これは、テメエを襲う際、俺っちが実家から持ち出した七支刀だ。俺っちの実家の家宝、神器草薙君だ。この七本の枝を、まるごとテメエの身体にブチ込んで、中身を掻き出してやる。そして、脳髄まで切り刻んでやる。いくら、テメエに傷を再生する力があろうと、神器で掻き回されたら、死んじまうぜ。さあ、痛みにのたうちまわって、泣き喚きながら死んじまえ!」
☆
そのとき、視界が、大きく揺れた。
いや、視界じゃなくて、世界が揺れてる。
ゴゴゴゴゴという地響きが、後から追い掛けてくる。
そして、ボクと拳斗が載っているベッドが、ズドーーーンと、真下にむかって落ちた。
平衡感覚がおかしい。
平民女子寮の地階にある、ボクの部屋の床が抜けたのだと、なんとか認識できた。
だけど、寮の建物の下って、地面のはずだよね。
なのに、その地面がなくなってて、ボクと拳斗は、瓦礫とともに、開いた奈落の、真っ暗闇へ落ちていく。
拳斗は、突然の落下に慌てふためき、全く対応できずにいる。
ボクは、一瞬のスキをついて、羽織らされていたピンクのカーディガンを引き破る。
続けて、寝入る前から左手に握り込んでいた『勇者の剣リバ』に力を込める。
☆
こんなときだけど、『勇者の剣リバ』の力について、まだちゃんと話してなかったよね。
拳斗が持っていた『召喚勇者の剣タチ』は、膨大な聖力を召喚勇者に齎す剣だった。
ボクが持っていた『転生勇者の剣ネコ』は、膨大な魔力を召喚勇者に齎す剣だった。
そして、その二つが統合された、『勇者の剣リバ』は、主であるボクに、神力を齎してくれる。
ただ、比較対象がないので、齎される神力が、膨大なのか、僅かなのかよく分からない。
『勇者の剣リバ』を手にした直後なんて、力の扱い方すら分からなかった。
最近になって、どうにかこうにか操れるようになったところだ。
どうして、こんなことになるのか、神力と聖力と魔力について、以前、神学の授業で、教皇に教えてもらったことを、おさらい。
神々が創りたもうた万物は、神力によって象創られ、生々流転している。
そして、魔力と聖力は、神力の発現形態に過ぎないって教わった。
魔力と聖力の関係性は、しばしば、表裏を白黒に塗り分けられたゲームの駒に例えられる。
神力によって象創られた『この世界』というゲームボードは、表裏を白黒に塗り分けられた駒によって構成されていてる。
その黒い側が魔力で、白い側が聖力という考え方だ。
聖力使いは駒の白い側を使って、魔力使いは駒の黒い側を使って、自分なりの文様を象創り、ゲームを戦う。
『勇者の剣リバ』を使うと、なんというか、白黒両面を使って、リバーシブルな文様を描いている感じだ。
だから、この力を本当は何と呼べばいいのか分からない。
だけど、他に呼びようがないので、神力と呼ぶしかない……って感じかな。
☆
話しを戻して、ボクと拳斗が真っ暗闇へ落ちていくところから――。
ボクは、寝入る前から左手に握り込んでいた『勇者の剣リバ』に力を込めた。
すると、握りしめている『勇者の剣リバ』が、ふわりと宙に浮く。
拳斗が、浮いているボクの横を、落ちていく。
ボクは、慌てず、騒がず、剣起動の呪文を唱える。
「男の娘のひみつ、見せてあげる♥」
剣は、鞘ごと半回転して、ボクの股下に挟まった。
剣に働いている揚力で、ボクの身体が、ふわりと浮きあがる。
だけど、真っ暗で、辺りの状況が分からない。
『困ったな』っと思ったら、ピカッと光が点滅し、ピ~ンと、点灯した。
『ナニ、この灯り?』と思ったら、自分の髪が発光していた。
腰までのストレートロングに、前髪パッツンとなったボクの髪が、ピンクのネオンサインみたいに光ってる。
実は、ボクの髪って、一昨日までは、勝手に点滅していたんだよ。
それでは、寝るとき不便なので、色々試した。
そしたら、点滅だけでなく、消灯と、常時点灯に、切り替えられるようになった。
これって、消灯すると、ちゃんと黒髪に戻るんだよね。
ピンクの髪が放つ光で、そこが、信じられないほど、だだっ広い空洞だと分かった。
そして、巨大洞窟の底で、戦っている者たちがいる。
あれっ、飛び交ってるのって、『科學戦隊レオタン』の戦闘車両だ。
R=レッド、B=ブルー、Y=イエロー、G=グリーン。
四台の戦闘車両が、宙を舞い、空洞の底で蠢くものたちと戦っている。
――うげっ。
『科學戦隊レオタン』の四人が戦っている相手って、七月にジャングル風呂地帯で戦った、地底人たちと、ストーンゴーレムたちだ。
しかも、あのときと違って、うじゃうじゃ、とんでもない数がいる。
空洞の底だけでなく、壁面にも貼り付いている。
あっ、ピンク色のP戦闘車両が、宙空にホバリングしている。
ボクが視認すると同時に、P戦闘車両が、自分の制御下に入ったことが分かった。
P戦闘車両を呼び寄せる。
戦闘車両って、ボクが最後に見たときは、五台とも、満身創痍で、ボコボコのポンコツ状態だった。
それが、この一カ月ちょっとで、オーバーホールされて、ピッカピカになってる。
表面のカラーリングも改変されている。
P戦闘車両については、以前のカラーリングって、色彩はピンクでも、直線的で、カッコ良かった。
それが、曲線的で、ハートや星が散りばめられ、キラキラでラブリーなものに一新されている。
おまけに、白鼠様をマンガキャラクター化した『SHIRONEZU―CYAMA』まで描き込まれている。
――なんだよ、コレ。
P戦闘車両が一新されたのは嬉しいけど、
このカラーリングは恥ずかし過ぎるよ。
P戦闘車両が、ボクの真下に上がってきて、背中のハッチが開く。
そこに、コクピットがあるんだ。
――ボクが搭乗すれば、戦闘車両が五機揃う。
よし、ここからは、科學戦隊ものの王道展開だ!
変形合体させて、巨大ロボット『レオ・ターボ』で殲滅してやる!
ボクは、剣を背中に戻し、自分を浮揚させていた魔力を切る。
そのまま落下して、P戦闘車両のコクピットへ飛び込――めなかった。
地上から、シュッと伸びてきた何かに、左足首をからめ取られた。
次々と、何かが伸びてくる。
左脹ら脛、左太股、左二の腕、左手首、そしてついには、腰まで絡め捕られる。
それは、粘液まみれで、ヌメヌメ、テラテラしている。
直径三~五センチ程度で、強靱でありながら、伸縮する。
――しょ、触手?
きっ、きしょいんですけど!
その触手らしきものが、一斉にギュンと縮んで、ボクは地上へと引き寄せられる。
ボクが、「ウギャーーーッ」と悲鳴をあげたところで……視界いっぱいに、テロップが表示された。
×××ゲーム二周目 真の最終決戦 第一ラウンド終幕
×××次回、一〇月一四日の第二ラウンドを、心して待て!
――ちょっ、いくらなんでも、
ここで一週間待ちって、どういうこと!!
ボク、一週間後、第二ラウンドの冒頭シーンで、
地面に叩きつけられて、
いきなり死んじゃいそうなんですけど!!
~~~ 薄荷ちゃんの、ひとこと次回予告 ~~~
■一〇月八~九日 鹿鳴館學園平民女子寮
オトコノコとして勇ましく戦おうって決意して臨んだ最終決戦だった。
なのに、第一ラウンドの初っぱなから、唇を奪われて、あんなこと聞かされるなんて……。
ボク、もう、ダメかもしれない。
立ち直れそうにないや……。




