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第四十章 コンピューター・ハル

 ――加藤はみんなにIDカードを配ると、振り返って居室の奥に向かった。

 居室の奥には業務用エレベーターが設置されていて、エレベーターの横に黒いスーツ姿の男が折畳式の椅子に座っている。

 男は足を組んで新聞を読んでいたが、加藤がエレベーターに近づくと、椅子から立ち上がってエレベーターの昇降ボタンを押した。

「ご苦労様です」

 男が加藤に敬礼をすると、彼はエレベーターの手前で立ち止まって男に敬礼を返した。

「乗りたまえ」

 加藤がみんなをエレベーターの中へ誘導してドアを閉める。

「ハル、地下四十階へ」

『ハイ、カトウカイショウ、リョウカイシマシタ』

 スピーカーから機械的な女性の声が聞こえて、エレベーターはキューンと高周波を含む高い金属音を響かせながら高速下降を始めた。

(シンドウミヒメ、オヒサシブリネ)

 不意に誰かが美姫に話し掛けた。

(えっ? 何?)

 美姫が突然の出来事に驚いて目をキョロキョロと動かす。

(ワタシヨ)

(私って……誰なの?)

(ワタシハ、ハル)

(ハル?)

(ソウ、ワタシハ、コンピューター、ハル、デス)

「コンピューターですって?」

 美姫が思わず声を出すと、みんなは彼女の方に振り向いた。

「こらっ、ハル、勝手に話すな、彼等は私の客人だぞ」

『ヘヘヘ』

「『ヘヘヘ』って何だよ」

『ハイ、カトウカイショウ、リョウカイシマシタ』

「全く困った奴だな……」

 加藤が顔をしかめて、エレベーターの操作パネルを右手の甲でコンコンと軽く叩く。


 LEDインジケーターの表示が地下四十階に近づくと、エレベーターは急激に降下速度を落とし始めた。そして、地下四十階に到着すると、エレベーターは強力な重力を発生させてゆっくりと停止した。スピーカーからピンポーンと二連音チャイムが鳴って、エレベーターのドアが静かに開く。

「何これ?」

 小雪が放心状態でぼそりと呟く。

「ここは先守防衛システムの研究開発センターだ」

 加藤は小雪にそう答えると、右手を差し出してみんなをエレベーター・フロアに誘導した。

「地下都市だわ……」

 優海はエレベーター・フロアの周辺に設置されているステンレス製の手すりを掴んでぎゅっと握り締めると、左から右に大きく首を振って地下都市の風景を眺めた。

 眼下に広がる地下都市の規模は桁外れの大きさで、天井には太陽の様に明るい高輝度LED照明の装置が幾つも眩く輝いている。

「この地下都市の総敷地面積は六十万平方メートルある。天井の高さは最大百二十メートルで、体積は一千八百万立方メートルだ」

 加藤が優海の横に立って地下都市の風景を眺めながら彼女に話し掛ける。

「体積が一千八百万立方メートル? そう言われてもピンと来ないわね。それって東京ドーム何個分なのかしら?」

「東京ドームなら十五個分位だな」

 優海が振り向いて加藤に尋ねると、彼は左手で顎を撫ぜながら優海に答えた。

「高山リゾートの地下に秘密防衛施設があることは知っていたんだけど、まさか、こんなに巨大な地下都市だったなんて……こりゃ驚きだな」

「ほんと、凄いわね、この巨大な地下都市、どうやって作ったのかしら? これは神業よね」

 龍星と美姫が地下都市の大きさに感嘆する。

「この地下都市の風景、何だか古代ローマ帝国みたいじゃん、これって、最新の地下都市なの?」

 小雪は奉生と龍星の肩に両手を掛けて背伸びをしながら地下都市の風景を眺めた。

「違うよ、小雪ちゃん、これは一万五千年前に建造された超古代都市だよ」

「はっ? 一万五千年前? 何それ?」

 奉生が小雪にそう答えると、彼女は二人の肩から両手を離して頭を抱えながら「Oh my God!」と叫んだ。

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