第四十一章 シャンバラ
「加藤さん、ここはシャンバラですね?」
奉生が地下都市を眺めながら加藤に尋ねると、加藤は「そうだ」と奉生に答えた。
「えっ、シャンバラ? あの伝説の地下都市の事?」
「さすが、優海ちゃん、よく知っているね」
「だって、シャンバラはヒンドゥー教の経典や仏教のタントラに出てくる有名な理想郷の名前じゃない」
「その通りだね」
奉生が優海の言葉に頷く。
「雅君はシャンバラについて、リズ・グリーンからどの程度の知識を得ているのかね」
「シャンバラは地球の古代都市に点在している地下都市だとリズから聞いています。そして、占星術の真の発祥地は古代メソポタミアではなく、日本のシャンバラだとも」
「その解釈は正しいな、リズは君に本当の事を教えたんだ」
加藤が振り返って、両手の肘をステンレス製の手すりに掛けながら奉生に答える。
「最近、XXXX教徒のカリスマ伝道師が地球空洞説を唱えて、二十一世紀の人類終末論を説いているが、あれは真っ赤な嘘だ。彼の話では北極や南極に地球の内部に通じる巨大な穴があって、その穴から頻繁に未確認飛行物体が出入りしているとか、地底には地底人や恐竜がいるとか、ナチスの残党がいるとか言っているが、地球の内部に巨大な空洞なんて存在しない。ただし、シャンバラと呼ばれる人工の地下都市は現実に多数存在しているんだ。そして、太古の昔、地球上で最初に天体観測が始まったのは、確かに日本のシャンバラなんだよ」
「一万五千年前、八百万神が日本に降り立って、この地に最初のシャンバラを建造した。その後、彼等は他の古代都市に拠点を作ったと言う話ですね」
「ほう、雅君は、シャンバラの事を結構知っているじゃないか。君のその記憶は封印されていたはずなんだがね」
奉生がシャンバラの情報を話すと、加藤は興味深そうに奉生の顔を覗き込んだ。
「ええ、この記憶は催眠による強力な暗示で長い間封印されていました。僕が記憶を取り戻したのは十八歳の時です。ただし、全ての記憶を取り戻した訳じゃありません。ほんの一部の記憶だけです」
奉生が振り向いて加藤の瞳に視線を合わせる。
「加藤さん、僕達の記憶を封印したのは一体誰なんですか?」
「君達の記憶を封印したのは立川重工業の真藤祐一だ」
「えっ! 何ですって!」
美姫が加藤の言葉に驚いて思わず声を上げる。
「どうして、私の父が、みんなの記憶を封印したんですか?」
「それは君達を守る為だよ」
「私達を守る為? 誰からですか?」
「この世界を裏で支配している“闇の勢力”からだ」
「闇の勢力!?」
「君達の能力は強力過ぎたんだ……」
加藤は美姫にそう答えると、彼等の記憶が封印された理由を語り始めた。
つづく。




