表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/42

第三十九章 加藤海将

 ――突然、美姫の背後から声が聞こえた。

「その話の続きは、別の場所で、お願い出来ないかね」

 みんなが振り返ると、制服姿の自衛官が腕を組んでこちらを眺めていた。

 男の年齢は五十歳位だろうか、眉毛が濃く、目は切れ長で、頭髪は白髪まじりだ。

 龍星が制服の階級章とバッチに視線を向ける。

(階級章は海自の三つ星……将官クラスか……このバッチは技術部だ)

「君は陸自第十二旅団普通科連隊の大地士長だね」

 男が右手を上げて敬礼をすると、龍星は条件反射で男に敬礼を返した。

「はっ、そうであります」

(この男は、なぜ、俺の事を知っているんだろう?)

「私は海自技術研究本部長の加藤だ。よろしく大地士長」

 加藤が右手を差し出して龍星に握手を求める。

(海自技研の加藤本部長……噂で聞いたことがある……この男は先守防衛システムの開発責任者だ)

「あっ、どうも」

 龍星はあわてて彼と握手を交わした。

「それじゃあ、行こうか」

「えっ? 何処へですか?」

 龍星が加藤に行き先を尋ねる。

「もちろん地下室さ、そうだろう、雅奉生君」

「ええ、そうですね」

 奉生が加藤に返事をすると、彼は奉生の肩を軽く叩いて通路を歩き始めた。

「行こう、みんな」

 奉生が首を小さく振ってみんなに合図を出す。

「行こうって、奉ちゃん何処に行くの?」

 小雪が奉生に行き先を尋ねると、奉生は加藤を真似て「もちろん地下室さ」と答えた。


 ――加藤は会場の出入口を通り抜けて通路に出ると、エスカレーターで一階のエントランスに降りて、セキュリティルームに向かった。

 みんなが加藤の後について一階のエントランスを歩くと、美姫は心のカーテンを開いて、みんなの意識にコンタクトした。

(背が高くて足が長い)(肩の骨格が発達している)(胸が厚い)(腕の筋肉)(財布の中に札束が入っている)(金持ちだわ)(セックスは上手かしら?)(この男なら抱かれてもいいかもしれない……)

 小雪が加藤の後ろ姿を眺めて彼の体を透視をする。

 小雪の関心は精力的な肉体と財布の中身にあるようで、彼を店の客に出来ないかと思案していた。

(あら、あら、小雪さんは何を考えているのかしら……)

 美姫が小雪の横顔をチラッと覗く。


 ――突然、美姫の頭の中に映像が浮かんだ。

 航空母艦の戦闘指揮室。

 制服姿の自衛官と背広姿の男。 

 高輝度で発光する大型スクリーンに表示されたプロトタイプのロケットエンジン。

 レーザーポインターを手に持って大型スクリーンの前に立つ背広姿の男。

 航空母艦から発進する小型の無人戦闘機。

 水陸両用の特殊装甲車両から島に上陸する多足型機動歩兵。

 軍事衛星に装備された大量の重金属棒。


 美姫の頭の中で映像がフラッシュバックを繰り返す。

(これは、優海さんの回想映像だわ……)

 美姫が振り向いて優海の横顔をチラッと覗く。


 ――突然、美姫の頭の中に別の映像が浮かんだ。

 制服姿の自衛官。

 高速エレベーター。

 地下都市。

 まばゆい照明装置。

 オリジナルの古代遺産。

 古代遺産を見つめる女。

 プラットホーム。

 海底を走る高速鉄道。

 大規模なエネルギープラント。

 海底ピラミッドと前方後円墳。

 巨人の化石。

 石板に刻まれた古代文字。


 美姫の頭の中で映像がフラッシュバックを繰り返す。

(これは、奉生さんの予知夢だわ……)

 美姫がまた振り向いて奉生の横顔をチラッと覗く。

「美姫ちゃん、何か見えるのかい?」

(ええ、奉生さんの予知夢と優海さんの回想映像が見えているのよ)

 龍星が背後から美姫に小さな声で尋ねると、美姫はキョロリと目を動かして心の中で龍星に話し掛けた。

(どんな映像なんだい? 俺にも見せてくれない?)

(OK、映像を転送するわね)

 美姫がテレパシーを使って、龍星の頭の中に二人の映像情報を同時転送する。

(うわっ!)(何だこれ?)(二つの映像が同時に見えるぞ!)

 龍星は美姫のテレパシーで転送された映像を見て思わず両手で頭を抱えた。


 一階のセキュリティルームに辿り着くと、加藤は制服のポケットからネックストラップ付きのIDカードを取り出してキーボックスにかざした。

 ※IDカードは身分証明書。

 チェック音が鳴ってキーボックスの照合サインがグリーンに点灯する。

 自動ドアが開くと、加藤は振り返って、みんなをセキュリティルームに手招いた。

「彼らに来客用のIDカードを発行してやってくれ。セキュリティの情報ランクはSだ」

「えっ、加藤海将、情報ランクSですか?」

「そうだ」

「情報ランクSは国賓用の臨時IDカードですが……」

「彼らは国賓クラス以上の特別待遇だ」

「了解しました」

 保安事務員は加藤に敬礼をすると、ネックストラップ付きのIDカードを五枚用意して、それを加藤に手渡した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ