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第三十八章 能力の限界

「優海ちゃん、新聞記事の事を覚えているかい?」

「新聞記事? ああ、あれね、覚えているわよ、桃源郷で見た新聞記事の事ね」

「あの時、僕は店で、『僕達は子供の頃、この建物の中で一緒に過ごした時期がある』って話しただろう」

「ええ、そうね」

「この高山リゾートが、新聞記事に掲載されていた建物なんだよ」

 奉生は優海にそう言うと、建屋の床を指差した。

「じゃあ、ここが火事で消失した建屋の跡地なのね」

「そう、それでね、子供の頃、君はここで、この骨董品の謎を次々に解明したんだ。そして、僕達にそれを教えてくれたんだよ」

「えっ、えっ、ちょっと待って、なぜ、私が、この場所で、この骨董品の謎を解明したの? 奉生君の話は突拍子過ぎてわけが分からないわ」

「それはね……龍星君に説明してもらおうか」

 奉生が龍星に視線を向けると、龍星は胸のポケットから四つ折りの用紙を取り出して優海に手渡した。

「何なのこれ?」

 優海が四つ折りの用紙を広げて龍星に尋ねると、龍星は「自衛隊の防衛機密文書」と優海に答えた。

「防衛機密文書? 龍星君、これ、民間人が見てもいいの?」

「ダメだよ」

「はっ?」

 優海が龍星の顔を見て首を捻る。

「その防衛機密文書を漏洩させると、俺は懲戒処分になるからね」

「わけが分からないわ、じゃあ、私が見ちゃダメじゃん」

「優海ちゃんは例外なのさ、君自身が最高の防衛機密なんだ」

「何それ? 余計にわけが分からないわね」

「まあ、黙って、それを読んで見ろよ」

 優海は龍星の言葉に促されて、防衛機密文書を読み始めた。

《報告日:XXXX年XX月XX日》

《報告書ナンバー:AE0357H》

《報告書タイトル:第三回 新潟沖海底調査報告書》

《報告者:二等海尉 長嶺剛士》

《XXXX年XX月XX日、佐渡島・柏崎間の海底で、ピラミッド、及び、前方後円墳と思われる巨大な古代遺跡を発見。又、上越沖海底より、土器、土偶、銅鐸、青銅鏡等の古代遺産を二千個以上発見し、これを回収した。――etc――》


「ピラミッド? 前方後円墳?」

 優海は防衛機密文書を途中まで読むと、眉間にしわを寄せて固まった。

「すべてはここから始まったんだ」

「始まったって……何が始まったの?」

「スターゲイザー計画、つまり、先守防衛システムの開発計画が始動したんだ」

「んんっ……? 意味不明、さっぱり分からないわ」

 優海が奉生と龍星の顔を交互に眺める。

「あっ、分かった、先守防衛システムと古代遺産は何か関係があるのね」

 美姫が両手をパチンと合わせて、右手の人差し指を立てる。

「優海さんは、子供の頃、回想能力を使って古代遺産の謎を解いた……そして、その紐解かれた古代のエイリアンテクノロジーを使って、先守防衛システムは開発されたって事じゃないのかしら」

「美姫ちゃん、残念だけど、それは絶対に無理な話よ、私の回想能力は、どう頑張っても一年が限界なの、だから一万二千年も前の事を残留思念で回想するのは不可能だわ」

「なぜ不可能だと思うんだい?」

「自分の能力は自分が一番よく分かっているからよ。それは、奉生君も同じでしょう。だって、あなたは予知能力者なんだから……」

「君は自分の能力の限界を知らないんだよ」

「自分の能力の限界?」

「僕達は自分の能力に心理的な規制をかけられているんだ。本当の君は数億年前の過去でも回想出来る能力があるんだよ。実はみんなそうなんだ。僕は数億年先の未来まで予知出来る能力を持っているし、美姫ちゃんは数万キロ離れた宇宙飛行士の心を読むことが出来る。龍星君は惑星さえも動かせるし、小雪ちゃんは月の裏側まで透視出来る能力をもっているんだよ」

「えっ――!!」

 みんなが一斉に声を上げて驚く。

「奉ちゃん、それは、さすがに冗談よね?」

 小雪は奉生の右腕をギュッと掴んでまた胸を押し付けると、肩に顎を乗せて人差し指で彼の脇腹をツンツンと突いた。すると、奉生は「うっ!」と呻いて体を縮めた。

「小雪ちゃん、脇腹は、ちょっと勘弁してよ」

(胸は気持ちいいんだけどね……)

「あら、ごめんなさい。私、興奮すると、つい、手が出ちゃうの。これ悪い癖よね」

 小雪がニコッと微笑むと、奉生は顔をしかめて、うんうんと頷いた。

「小雪ちゃん、この話は冗談じゃないよ」

「そうなの? じゃあ、龍ちゃん、ピラミッドが日本海の海底にあるって話も本当なの?」

 龍星が横から小雪に声を掛けると、小雪は奉生の肩に顎を乗せたまま、視線を龍星に向けた。

「本当だよ、小雪ちゃん、今、ここで、その証拠を見せてあげようか」

「えっ、マジ? ピラミッドの写真とかあるの?」

「マジマジ、ただし、写真じゃなくて、ナビゲーション画像だけどね」

 龍星は小雪にそう答えると、ズボンのポケットからスマートホンを取り出して、モバイル用のナビゲーションソフトを立ち上げた。そして、画面を何度かタップすると、佐渡島の海底をズームアップしてみんなに見せた。

「これだよ」

 小雪が奉生の肩から顔を離して、龍星のスマートホンを覗き込む。

「うわっ! これマジね! 本当にピラミッドが映っているわ!」

「これがピラミッドで、これが前方後円墳、そして、これが古代都市で、この規則正しく並んだ直線は古代のエネルギー資源採掘跡だよ。最近のナビゲーションソフトは高解像度になっているから、海底まで綺麗に見えるんだ」

「えっ――!!」

 みんなが一斉に声を上げてまた驚く。


 ――突然、美姫の頭の中に映像が浮かんだ。

 制服姿の自衛官。

 高速エレベーター。

 地下都市。

 眩い照明装置。

 オリジナルの古代遺産。

 古代遺産を見つめる女。


 美姫の頭の中で映像がフラッシュバックを繰り返す。

(これは、奉生さんの予知夢だわ……いったい、何が起こるのかしら……)

 美姫は奉生の予知夢に気づくと、振り向いて彼の横顔を見つめた。

 私もそろそろ執筆能力の限界です。これ、ほんまに完結出来るのか……。(苦笑い&汗)

 佐渡島の海底にピラミッドがあるかどうか、信じるか信じないかはあなた次第です。(笑)

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