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第三十二章 防衛システム開発企画書

 瀬川が資料のページを捲ると、ファイルの右上に赤色の表示が見えた。

 ファイルの右上には《厳秘/開示先限定・防衛ドメイン》と記された朱印が押されている。


《防衛システム開発企画書》

《新規開発事業》

《開発テーマ:統合防衛システム技術開発》

《プロジェクトネーム:STARGAZER》

《開発コードネーム:先守防衛システム開発》

《開発コード管理ナンバー:SDM―8823―777》

《開発投資金額:十五兆二千億円》


(十五兆二千億円って……なんだよ……)

「これ凄いですね! 投資金額が十五兆二千億円もありますよ!」

 瀬川が資料を見つめて眉間にしわを寄せると、島崎は興奮して投資金額の項目を指差した。

「日本の年間国防予算の三倍強ってところか……確かに、この数字は桁外れだな……」

「瀬川主任、これはどんな開発企画なんですか?」

「開発企画の骨子は次のページに記載されているんだ」

 瀬川は島崎に返答して資料のページをまた捲った。


《開発企画検討概要》

《開発目的》

《SA防衛システムの構築》

 ※SAは『Second attack』の略。攻撃目標発見時から瞬時にミサイル攻撃が出来る防衛システムの事。

《開発概要》

《日本周辺海空域の警戒監視に二十四時間態勢で対応出来る無人防衛システムを構築し、有事に際して瞬時に攻撃出来る無人兵器を開発する。又、離島が占領された場合に備えて、水陸両用の無人兵器を同時開発する》

《検討事項》

《一・統合防衛システムの開発について》

《二・瞬時攻撃システムの開発について》

《三・システム搭載兵器の詳細について》

《開発ロードマップ》

《XXXX年『FS』調査検討》

《XXXX年『TS』実験評価》

《XXXX年『ES』機能評価》

《XXXX年『CS』品質確認》

《XXXX年『MP』量産導入》


「無人兵器……」

「えっ、何ですか? 無人兵器?」

「そうだ、島崎、これは無人兵器の開発企画だよ。開発ロードマップによれば、今年はXXXX年だから、CSの段階に入っていることになるな」

「CSって、『ほとんど完成している』ってことですよね?」

「その通りだ。CSは量産前の品質確認だからシステムの機能は既に完成しているんだよ」

「マジですか……」

「ただし、この高額な開発企画が『予定通り進行していれば』の話だけどね」

 瀬川はデスクで腕を組むと、左手の爪を噛みながら資料を見つめた。

(ここから先の内容は、情報セキュリティの規定上、俺には閲覧する権限が無い……しかし、どうしても確認したい事がある……この資料は亡くなった真藤先輩の開発企画資料だからな……)

「また爪を噛んでいますよ。もう、悪いクセなんだから」

「えっ? あっ、ああ……」

 島崎が手を伸ばして瀬川の口元から左手を引き離すと、瀬川は彼女の行為に驚いて声を上げた。

「資料の続き、読まないんですか?」

「島崎、ここから先は情報セキュリティの規定上だな……」

「分かりました。瀬川主任、二人だけの秘密と言うことでOKですよね」

 島崎は瀬川の言葉に即答すると、彼の顔を見つめて微笑んだ。

「あのな、島崎、……まあ、いいか」

 瀬川は島崎に何か言おうとしたが言葉が出なかった。


 二人はデスクの椅子に座ると、肩を並べて資料の閲覧を始めた。

「島崎、この開発企画書の作成者なんだけどさ」

 瀬川が資料のページを捲り直して、作成者の記載項目を指差す。

「『真藤裕一』って記載されているだろう。この人は俺の元上司なんだよ。昔、随分とお世話になった人でね。凄く親切でいい人だったんだ」

 瀬川は島崎にそう言うと、資料を見つめて目を細めた。

「『いい人だった』って、もしかして……その人は、亡くなったんですか?」

「ああ、真藤先輩は二年前に亡くなったんだ。ある事件に巻き込まれてね」

「ある事件って?」

「銃撃テロだよ」

「銃撃テロ!? 日本で銃撃テロですか!?」

 島崎は瀬川の言葉に驚いて、自分の耳を疑った。

「私、そんなの初耳ですよ!」

「二年前の話だから君が事件の事を知らないのは当然だ。それに、あの事件は情報隠蔽されているからね」

「それで、その事件はどうなったんですか?」

 島崎がデスクに身を乗り出して瀬川に尋ねる。

「分からないんだ」

「分からない? どういうことですか?」 

「事件は政府によって極秘裏に処理されているから、事件のその後については誰も知らないんだよ」

「マジですか……」

 島崎はデスクに肘をついて瀬川の顔を見上げた。

「ただし、事件当日の状況は人事部に記録が残っているから幾分かは分かるんだ。会社は亡くなった人達を何故か労災認定しているからね」

「そうなんですか? 瀬川主任はその記録を見たんですか?」

「見たよ。当時、俺は組合の執行役員をしていてね、労災に関わる情報は会社と組合の両方に入って来るから、事件の記録を偶然見る事が出来たんだ」

「それで、事件の状況はどうだったんですか?」

「あの事件で亡くなったのは、真藤先輩だけじゃなくて、先輩の奥さんと、研究所の技術者達も四人亡くなっているんだ。そして、不思議なことにテロの犯人達も全員死亡しているんだよ」

「えっ! テロの犯人達も死んだの?」

「理由は分からないんだが、テロの犯人達は目や耳から血を流して死んでいたらしい。たぶん、脳をやられて死んだんだな」

「なんですか? それって、意味不明ですね」

「そう、あの事件は謎だらけなんだよ」

「誰か生存者はいなかったんですか?」

「いるよ、一人だけね」

「じゃあ、その人に聞けば、事件の真相が分かるんじゃないんですか?」

「いや、ダメなんだ」

「どうして?」

「あの事件で生き残ったのは、真藤先輩の一人娘なんだけれど、事件当時、彼女は気絶して意識を失っていたんだ。それに、彼女はテロのショックで記憶障害になっていてね、事件の事は全く思い出せなかったんだよ」

「そうなんですか……じゃあ、その事件は迷宮入りですね」

「そういう事だな」

(そう言えば、彼女はどうしているんだろう……確か、名前は真藤美姫だったかな……)

 瀬川は美姫の事をふと思い出した。

いやぁ、書けませんなぁ。

二週間かけて二四〇〇文字ですわ。^^;

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