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第二十三章 メタンハイドレート

「Mr,YUJI」

「…………? Yes! Yes!」

 裕二はリズの言葉に少し遅れて返事をすると、慌ててノートPCの画面を覗き込んだ。

「フォッサマグナがとても重要なの」

「えっ? フォッサマグナがどうしたって?」

「フォッサマグナが日本の未来の鍵を握っているのよ」

「未来の鍵?」

「東北地方太平洋沖地震の影響で、隣接する北米プレートの地盤が隆起するの。隆起する場所は、関東西部、甲信越、青森県北部、北海道南部ね。ちょうど震源地から円を描くように隆起するわ」

 リズがフォッサマグナの位置を下から上に向かって指でなぞる。

「あれっ、それじゃあ、日本海の海底も隆起するね」

「そうなのよ、あなた、感がいいわね!」

「…………?」

「Mr,YUJI」

「Yes」

「日本海の海底に何があるか知ってる?」

「日本海の海底? 蟹とかいるんじゃないの?」

「あはは、そうね、確かに蟹もいるわね」

「リズ、何が可笑しいんだい?」

「ごめんなさいね。Mr,YUJI、生き物じゃないのよ」

「生き物じゃない?」

「ヒントは、この辺りにあるわ」

 リズが指を動かして佐渡ヶ島の周辺をなぞる。

「そこは新潟の佐渡ヶ島じゃないか……あっ、分かったぞ! 鉱物資源だな!」

「ビンゴよ! 答えは天然ガスと石油ね。それに希少金属もあるわ」

「えっ、マジかい?」

「もちろん、マジよ。未来の日本は世界最大のエネルギー資源大国になるのよ」

「そうか、他国からの輸入に頼る必要が無くなって、自国でエネルギー資源の調達が出来る様になるんだ、だから日本はアジアナンバーワンの経済大国として帰り咲く事が出来るのか」

 裕二はリズの言葉の意味をようやく理解した。

「そして、その資源の中で最も注目されるのは“燃える氷”なの」

「“燃える氷”? それは何だい?」

「メタンハイドレートと呼ばれる物質よ」

「メタンハイドレート?」

「海底の地層に封じ込められたメタンガスが水と結合して出来た固体結晶の事よ。天然ガスの一種ね。火を近づけると燃える性質があって、これは“燃える氷”と呼ばれているの。この物質の燃焼後には、水しか残らないのよ」

「なんだって、それは究極のクリーンエネルギーじゃないか!」

 リズの説明に驚いて裕二が声を上げる。

「ただし、この究極のクリーンエネルギーを取り出すには高度な技術が必要で、メタンハイドレートは氷状の固体結晶だから、常温で取り出すと直ぐに蒸発してしまうの。だから貯蔵する事が出来ないのよ」

「そうか、メタンハイドレートって厄介な代物なんだな……」

「でもね、XXXX年に、日本の技術者達は最先端技術を駆使してメタンハイドレートの採取技術と輸送技術を確立させるの。それはまるで魔法の様な技術よ。海底から採取されたメタンハイドレートは海上の高圧容器で球状のペレットになって低温輸送されるわ。そして、日本はメタンハイドレートの輸出国にもなるのよ」

「それは凄いな、海外の輸入エネルギーに頼っていた日本が、今度はエネルギーの輸出国になるわけか」

「近い将来、日本は、このクリーンエネルギーを利用した火力発電所を全国に建設するの。特に首都の新潟は海岸線沿いに広大な火力発電所と大送電線網を建設してその電力を全国に送る大電力基地になるわ。そして、新潟は超耐震性高層ビルが立ち並ぶアジアナンバーワンの大都会へと変身するのよ」

「マジかよ……」

 裕二はリズの話を聞いて言葉を失った。

「日本海に眠る石油と天然ガスの埋蔵量は膨大よ」

 リズはそう言うと、ノートPCの画面から指を離して裕二の方に振り向いた。

「でも待てよ……もしかしたら、大陸側の国も天然ガスや石油を掘り始めるんじゃないのか」

「そうね」

「それじゃあ、どうなるんだい?」

「天然ガスや石油は出ないわ」

 リズが左手の人差し指を左右に小さく振って裕二に答える。

「それはおかしい話だな、日本海は大陸と繋がっているじゃないか」

「正確に言えば、日本海の上に掘削基地を作って深海をボーリングすれば天然ガスや石油の掘削は可能よ。でもそれには膨大なコストと最新の掘削技術が要求されるの。そして、ボーリングする場所を少しでも誤れば何も出てこないわ。それに天然ガスや石油が集中する場所は海溝プレートの近傍なのよ」

「なるほど、そういう事か、じゃあ、その資源を利用出来るのは日本だけなんだね」

「その通り、その事が分かり始めると、近隣のアジア諸国は日本に嫉妬するの。XXXX年になると、近隣のアジア諸国とロシアが日本海の利権争いを始めるわ」

 リズはそう言うと、振り戻ってノートPCの画面を見つめた。

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