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第十九章 追憶

 リズは両手を広げて水晶玉を覆う様に掌を近づけると、眉間にしわを寄せて水晶玉を見つめた。

「Mr,YUJI」

「Yes」

「今から、このパワーストーンを使って、あなたの過去を回想するわよ」

「この水晶玉に俺の過去が映るのかい?」

 裕二がリズにそう尋ねると、彼女は水晶玉に意識を集中しながら「No」と答えた。

「No……?」

 裕二がリズの返答に困惑して首を傾げる。

 しばらくの間、沈黙が続く。


 ――突然、裕二の頭の中に映像が浮かんだ。

 産声を上げる赤ちゃん。

 赤ちゃんを抱き上げて嬉しそうに微笑む母親。

 母親の横で赤ちゃんを見つめる父親と幼児。


「あっ!」

 裕二が驚いて思わず声を上げる。

(これは俺の両親と兄貴だ!)(そうか! そうなのか!)(水晶玉に映像が映るんじゃなくて、俺の頭の中に映像が映るのか!)

 裕二は脳の前頭葉に投影された映像を呆然と眺めた。


 病院。消毒用のアルコール。注射の針。

 高熱に苦しむ幼児。隔離病棟。

 手術台。マスクをした医者と看護婦。

 神社。寺。両手を合わせて祈り続ける母親。

 野球、サッカー、ドッチボール、縄跳び、鬼ごっこ、隠れんぼ。

 日が暮れても友達と遊んでいる児童。

 オールCの通信簿。成績を見て嘆く父親。

 鉄棒。跳び箱。運動会で表彰台に上がる少年。

 バスケットボール。背番号4の赤いユニホーム。

 ハードな体力トレーニング。鍛えられた肉体。

 潮らしい少女。手紙。初恋。キス。

 エレキギター。煙草。不良。

 バイク。自動車。峠のラリー。ドッグファイト。

 急な斜面を滑走するスキーヤー。海辺のサーフィン。

 スタイル抜群の若い娘。ホテル。セックス。

 機械図面。自動車工学の専門書。溶接。旋盤。

 工場。一級整備士免許証。

 映画館でスクリーンを見つめる青年。

 映画俳優養成学校。オーディションの合格通知。

 若い映画俳優達。悪役の子分を演じる男。


 その映像はフラッシュバックを繰り返しながら、裕二の過去を誕生の瞬間からコマ送りで映し出した。


 裕二の過去を回想し終えると、リズはふっと小さく息を吐いて水晶玉から静かに両手を離した。すると、映像は、フェードアウトしてゆっくりと消えた。そして、彼女は水晶玉から目を離して、裕二の瞳を見つめた。

「あなたは幼少の頃、体がとても弱かった。風邪をひくと直ぐに高熱が出る体質で、熱を押さえる為に病院で何本も注射を打ったわね。伝染病に感染して隔離病棟で過ごした時期があるし、手術を何回か経験している。あなたの母親は、あなたの無事を祈って、神社や寺院で何度も何度も祈りを捧げた。少年期になると、あなたは病から開放されて丈夫な体になった。スポーツは万能で特にバスケットボールの才能はプロ並み、でも勉強の方は全然出来なくて親を困らせた。思春期になったあなたは――etc――、そして、映画のオーディションに合格して俳優の道を歩き始めた」

 リズが裕二の過去をズバリと言い当てる。

「凄い……」

 裕二はリズの過去回想能力に驚いて一瞬言葉を失った。

「それじゃあ、次は未来を観るわよ。奉生君、トランジット進行経過の時期表とサビアンの時期表を印刷して頂だい。進行経過時期は二十八歳から八十歳まで観ましょうか。アスペクトはコンジャンクション、オポジション、トラインでお願い。進行させるプラネットは、太陽、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星」

 リズが奉生に未来予知の指示を出す。

 ※コンジャンクションはアスペクト〇度。

 ※オポジションはアスペクト百八十度。

 ※トラインはアスペクト百二十度。

 ※サビアンはサビアン占星術のこと。マーク・エドモンド・ジョーンズにより提唱され、ディーン・ルディアによって多彩に展開された十二星座サインの細密化技術。

「Yes,ma’am」

 奉生はリズに敬礼をすると、机の引き出しから小型のインクジェットプリンターを取り出して、プリンターケーブルをノートPCのコネクタに差し込んだ。そして、キーボードをカチャカチャと叩き始めた。すると、プリンターからA4サイズの用紙が高速で吐き出された。

「Mr,YUJI」

「Yes」

「あなたに言っておきたいことがあるの」

「んっ? 何だい?」

「未来を知るには覚悟が必要よ。そして責任が伴うわ」

「リズ、それは、どう言う意味?」

 裕二は首を捻ってリズに尋ねた。

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