北東部ハルキウ戦
首都キーフ付近にある滑走路にまで、青いズミー29は、弾薬&燃料を補給するため帰還した。
「ノーマン、燃料補給したら直ぐに防空任務に向かうわよ」
「了解だ、補給を早々に済ませないとな」
ヤナ伍長とノーマン二等兵たちは、戦場から踵を返して飛び去っていったが。
「トゥマン2、燃料補給のため帰還した…………トゥマン1は撃墜された」
ペトロ軍曹の乗った、青いジラント29は、滑走路に機体を降下させようとする。
『ペトロ軍曹? それは、本当ですかっ!』
『ニキータ隊長は? 殺られたと?』
『ズメイ35系の機体に殺られたんだ、だが、泣いている暇はないっ!!』
ヤナ伍長は帰還してきた、青いジラント29を眺めながら、驚きの余り叫ぶ。
ノーマン二等兵も、狼狽えながら未帰還である隊長を気にする。
二人の質問に、ペトロ軍曹は答えながら、整備班員が待機する格納庫に機体を走らせる。
首都キーウから戦場へと、多数のパイロット達が飛び去っていった。
その何人かは、数的不利を技量と勇気で埋め合わせ、ルシャ航空部隊を押し返した。
この内、誰かは分からないが、数多くルシャ航空宇宙軍機を撃ち落とした人物が存在した。
彼は、西側主要メディアでは、キーウのゴーストと呼ばれている。
しかし、戦いで多くのパイロット達が、命を落としたため、誰がゴーストかは不明だ。
また、ブルティース王国では、キーフのゴーストは反ルシャ側が作った宣伝だったと後に認めた。
ハリキウ攻防。
一方、北東部ハリキウでも、両軍による壮絶な砲撃戦が繰り広げられていた。
多連装ロケット砲を、背中に装備する。緑と多少一の黒を基調とした、自走多連装ロケット砲ボルグ。
ウラガーン・バッファローが、何台も並べられて、面制圧砲撃を行う。
その後に、緑色に塗装された、重火炎放射器にして、自走多連装ロケット砲ボルグ。
カエル型のブラチーノ・リャグーシュカが、背中に搭載している焼夷弾を大量発射する。
主力戦車である、虎型ボルグ、ティーグル90部隊が、援護を受けながら突撃する。
しかし、フセニツィガ3を中心の防衛隊に、ミサイルで迎撃される。
防衛陣地には、ソビイト時代の旧式火砲Dー30が配備されており、これも敵を迎え撃つ。
また、戦場には、防衛用に多数の対戦車地雷が埋められている。
このため、突撃してくる、大型ボルグ&中型ボルグは、脚を吹き飛ばされてしまう。
虎型・歩兵機動車ボルグ、灰色のノーシ・ティーグル部隊も、突撃しながら大爆発を起こす。
ルシャ連邦軍は、それでも進軍しながら工業都市ハルキウを目指す。
また、大規模な砲撃により、都市部を形成する住居を破壊していく。
だが、ウクラーダ軍もハルキウ防衛のために、民兵隊まで戦闘に参加させている。
しかも、旧式の軽機関銃や水冷式機関銃を装備させてだ。
しかし、ハリキュス防衛隊は、比較的に新しい軽装甲車ボルグ、オンシラを前に出した。
灰緑色の山猫型である車体は、自動機関砲を搭載しており、四つ足で市街地を走る。
その他、フセニツィガ3部隊&フセニツィガ4部隊で、塹壕線を構築している。
背後からは、フセニツィガ4-OMP部隊が、背部から、迫撃砲による弾幕射撃を行っている。
また、複数の旧式野砲や重迫撃砲からも絶えず、反撃で砲弾が大量に放たれている。
ルシャ連邦軍は、砲撃の隙間から奇襲を仕掛けようと、部隊を投入してくる。
ティーグル90、ティーグル80からなる主力戦車隊だ。
また、スペツナズ部隊や国家親衛隊による浸透戦術も駆使してきた。
ウクラーダ軍兵士と郷土防衛隊の民兵が、塹壕線や街中で、激しい銃撃戦を繰り広げる。
「今だっ! 仕留めたっ!」
「次弾装填っ!」
ウクラーダ側の砲撃を掻い潜った、ルシャ軍機動部隊は、旧式野砲を真正面から浴びてしまう。
市街地や起伏に隠された、砲兵陣地に砲撃を避けるため、飛び込んだからだ。
「うおおおおっ! 敵襲っ!?」
「撃ちまくれっ!」
民間人の格好をした民兵は、旧大戦で使用された軽機関銃DP28を土嚢に載せている。
それで、路上の隅に設置された検問所から、敵に向かって、機銃掃射しまくる。
カーキ色のマルチカム迷彩服をきた、ウクラーダ軍兵士は、自動小銃を撃ちまくる。
一方、ルシャ側のスペツナズ部隊も、物陰に身を隠しながら市街地を進んでくる。
双方が激しい銃撃戦を展開しながら市街地を、ボロボロにしていく。
ハルキウは、第一次世界大戦&第二次世界大戦の頃に大規模な戦火に呑まれている。
この時期、コサックやウクラーダ独立派が、ソビイト連邦に対する反乱を起こしているからだ。
第一次世界大戦と、ルシャ内戦では、ドルフ帝国軍やフロース共和国軍から軍事顧問が派遣された。
第二次世界大戦でも、ソビイト連邦に対するテロ攻撃と反乱で、大規模な挙兵を行った。
ルシャ側は、ウクラーダ共和国を、ルシャを構成する一地域と見なしている。
しかし、ウクラーダ側は、自分たちを独立した民族であるのだと考える。
そして、彼等は、常に支配者だった、ルシャ側を憎んでいる。
幾度となく、戦禍に巻き込まれたり、作物の収奪が強制的に行われた。
さらに、反抗すれば秘密警察が辺境へと、ウクラーダ人を強制労働に連れて行ったからだ。
こう言った過去が、兵士たちを、ウクラーダ側を、アムリサ合衆国が率いる軍事同盟NOTOに近づけた。
その結果が、これである。
ハルキウ奥部にある複数の病院だが、ここでは医師や看護師たちが、てんやわんやで走り回る。
次々と、衛生兵により運ばれてくる重傷者たちを看なければならないからだ。
ウクラーダ軍兵士、民間人、それに加え、ルシャ軍兵士までもが担架で運ばれてくる。
この様子は、SNSやテレビを通じて、世界中に放映されている。
「急げっ! 急げっ!」
「先生、負傷者ですっ!」
男性看護師と女性看護師たちが、車輪付きの担架を押して、廊下を走り抜ける。
そこに載せられた、子供は白いTシャツを真っ赤に染め、ぐったりと眠っている。
二人が、両ドアを開ければ、医師たちが、ウクラーダ軍兵士の治療に専念している姿が見えた。
「よし、こっちの端に連れてきてくれっ!」
現場の医師たちは、敵味方なく、一人でも命を救おうとメスを握り、包帯を手に取る。
また、この報道がなされた理由は、病院がルシャ軍側から攻撃されないためである。
ルシャ軍兵士も、治療されているとなれば、爆撃や砲撃から、病院を守れると思ったからだ。
これを見た、ネットユーザーは歓喜した。
『ルシャ兵も治療しているなら、的にされないで済む』
『これは、ナイスなアイデアだっ!』
「味方兵士も治療されているなら爆撃されないだろう」
ウクラーダ側の策略を称賛するネットユーザー達は、SNSやネット記事で、コメントを連投した。
こうして、病院は中立地帯のようになり、比較的に安全な場所になるかと思われた。
だが、不幸な事に、ウクラーダ側の思惑は外れてしまう。
「ぐわああっ!」
「きゃああっ!?」
突如、病院に砲弾の雨が降り注ぎ、建物を丸ごと破壊してしまった。
それも、そのはず、ルシャ軍では、捕虜や人質は裏切り者と見なす風潮がある。
テロリストが占拠した、劇場立て籠り事件でも、致死性の毒ガスを使ったくらいだ。
さらに、ルシャ軍の蛮行は続く。
併設されていた、病棟は民間人の避難所として使われていた。
しかし、ここにも大量のサーモバリック弾が降り注ぎ、辺り一帯を焼け跡にしてしまった。
これらの虐殺行為は、各マスメディア媒体を通じて、世界中から非難される事となる。
『ルシャ軍の行為は違法だ、恥を知れ』
『ブロークの奴を、断頭台に送れ』
『一般人まで殺害するルシャ兵は、盗賊と変わらない』
『おぞましい…………まるで、ゴブリンの行為だ』
ネットや新聞などを通じて、この虐殺行為は世界中に配信&拡散された。
世界各地では、ルシャ大使館に対する抗議デモや、小型アニムスによる突撃も試みられた。
葦島では、ルシャ大使館の正門に、右翼が操縦する芋虫型アニムスが突っ込んできた。
ポロラードでは、ルシャ連邦大使の顔に、左派系デモ隊が、トマトをぶつけた。
さらに、EUを含む、NOTO加盟国は、ウクラーダ軍に対する支援を決定した。
また、世界中から様々な人種による義勇兵が集まってくるのだった。




