首都キーウ防空戦 ウクラーダ首都、キーウ北部上空
地対空ミサイル、S300や携帯式対空ミサイルなどが、地上から続々と発射される。
それ等は、ルシャ航空宇宙軍の空中艦隊に向かっていき、幾つかは航空機ボルグを撃ち落とす。
大型輸送機、灰色のワシ型ボルグ、ノチュージ・ チュリパンは爆発しながら破片を撒き散らす。
飛行翼に備えてある黒いプロペラが、この機体が、そう呼ばれる由縁である。
最後尾の翼下には、23ミリ、二連装機関砲を備えるが、対空ミサイルを撃墜する事はできない。
当然だが、これの変わりに機体を守ろうとする装備は、胴体から落とされる、フレアだけである。
『敵航空機を撃墜っ! トゥマーン1、次の目標を追尾する』
『OK、トゥマーン2は援護に回る』
灰色のズメイ35が、いきなり真っ赤な爆炎とともに弾けて、粉々に砕ける。
その後、ニキータ・シェレスト少討は、青いユラント29を急旋回させる。
ベトロ・ビャタコフ軍曹も、同機体の機関砲で、 グラーチュを撃墜する。
そして、今度は敵機である灰色のジラント31を撃破していく。
『敵機の動きがヤバい、青い連中に気をつけろっ!』
『我々の新型機と同等の性能を有しているだと?』
『フレアを射出するっ! ダメだっ! 脱出するっ!』
『ミサイル接近、回避が…………間に合うか?』
グラーチュが、青いズメイ27に追い回されて、 ミサイルで撃墜される。
そうかと思ったら、青いユラント29が、カトラーガを機関砲で攻撃する。
灰色のジラント31&ズメイ27達は、援軍が到着するまで、攻撃を避け続ける。
機体数で勝るはずである、ルシャ側の機体は、逃げ回るだけて精一杯だ。
『こちら、トゥマン3っ! レーダーに機影っ! シンカーの大部隊を確認しましたっ!』
ヤナ・プロコフィエワ伍長は、北部から現れた、 グラーチュと、クリロキートの大艦隊を視認した。
また、それには、ズメイの30型や34型などが混じっている。
青いズミー27を操る彼女は、長距離から、ミサイルによる先制攻撃を実施する。
これにより、二機のグラーチュが地上へと黒煙を上げながら墜落していく。
『ヴォストイ・トゥマンより連絡だ、各部隊は首都キーフまで後退しろっ! ここは敵の数が多い、味方防空網の所で有利に戦うぞっ!』
空中管制機から伝達された命令を、各機のパイロット達は聞いた。
ルシャ側の航空宇宙軍部隊は、制空権を握るべく、圧倒的な戦力を動かしている。
そのため、比較的に新しい改修型ズメイだけではなく、新型ボルグまで投入するかも知れない。
また、キーフ近辺防空部隊と連携すれば、地上から地対空ミサイルを発射できる。
これで、数の差を埋められる算段だ。
現在、ルシャ航空宇宙軍は、何の策もなく、ただ首都キーフを目指しているだけだ。
ゆえに、ユクルース側は、防衛体制を立て直しつつ、迎撃任務を続行しようとしたのだ。
『トゥマン4、ズメイ35から追われているっ! 援護してくれっ!』
『こちら、トゥマン1っ! ノーマンッ! 今、助けに行くっ! 心配するなっ!』
ノーマン・トゥクマコフ二等兵の乗った、青いズメイ27は、窮地に陥った。
敵の放った誘導ミサイル&機関砲が、彼が乗る機体を狩らんと迫る。
だが、彼は機体を急回転させながら、フレアを放ち、ミサイルを回避する。
機関砲弾も、何発か左翼に喰らったが、まだ機体自体が損傷してなく、飛び続ける事ができる。
だが、再びズメイ35が、彼の前方から誘導ミサイルを放たんとした。
しかし、ニキータ少尉のユラント29が、すかさず敵機背後に回り込む。
『敵機撃墜、トゥマン3と4は後退しろっ! 俺と2が殿を務めるっ!』
『少し、敵の航空戦力を減らしてから合流するっ!』
『隊長たちは、大丈夫なんでしょうか?』
『我々だけで、先に帰ってもいいんですか…………』
ニキータ少尉とペトロ軍曹の乗った、青いユラント29は、航空戦を継続しようとする。
その間にも、ルシャ側は、次から次へと、新型機を飛ばしてくる。
しかも、中には、ズメイ37型やジラント31型などの高性能機まで揃っていた。
これ等は、フラース製システムを搭載した、ウクラーダ空軍機でも、性能面と数で勝てないだろう。
ヤナ伍長とノーマン二等兵達は、敵機に挑む二人を心配するが。
『心配するなっ! 少ししたら、我々も合流する っ! さあ、行けっ!』
『隊長命令だぞっ! キーウ方面に撤退するんだっ!』
『了解っ! トゥマン3は、後退します』
『トゥマン4も続きますっ!! 二人とも、どうか御無事で帰還して下さい』
ニキータ少尉とペトロ二等兵の乗った、青いジラント29は、真っ直ぐ大部隊に向かっていく。
ヤナ伍長とノーマン二等兵たちは、彼等の支援により、戦場から退散するべくUターンする。
『ぐっ! 味方機が落とされた、ぐわあっ!』
『殺られた…………脱出するっ!』
ユクルース空軍のズメイ27は、空中を回転しながら爆散する。
ルシャ航空宇宙軍のジラント31は、真っ黒い煙を上げながら、地上に落下していく。
ヤナ伍長とノーマン二等兵たちのズメイ27は、 戦場から踵を返して飛びさっていった。
互いの空軍機が、落ちていき、ミサイルが発射される様を眺めながら機体速度を加速させる。
こうして、ウクラーダ空軍部隊は、首都キーフにまで、何とか後退した。
対する、ルシャ航空宇宙軍も、かなりの損害を出してしまい、侵攻を一時停止する事となった。
「ご覧下さい、首都上空から近辺にかけて、ミサイルと爆弾が絶えず、投下されていますっ! また、 時おり、機体が落下してくる事もあり?』
『きゃああああっ!』
『負傷者だっ! だ、誰かっ!』
「酷いな? 首都まで、後どのくらいだ?」
「ルキヤン、もう直ぐだ? スマホばかり見るなよ」
ルキヤンは、スマホの画面に映るニュース中継を見ていたが、そこには苛烈な戦いが見える。
しかし、歩兵部隊を率いる年輩の隊長から、それを止めろと注意される。
彼は、フセニツィガ4の車内で、後部ドア左側にある座席に座っている。
マルチカム迷彩服を着ている志願兵たちとともに、首都キーウ方面へと向かっているのだ。
「済みません、故郷が首都に近いもので…………」
「気持ちは、分かるが? 車内では静かにするんだな、故郷を守るためにも、ボケッとしてられないからな」
ルキヤンが謝罪すると、彼の向かい側に座る、隊長は厳しい表情で、注意した。
彼等は、隊長以外は、住民の救出と領土防衛のために志願した若者たちで、構成された部隊だ。
「着いたぜ、イルピン市内の一歩手前だっ! さあ、新兵たちっ! 行ってくるんだ」
「聞いたな? 全員後者、装備を整えたら、それぞれ配置に着けっ!!」
フセニツィガ4の運転手が、車体を停車させると、怒鳴るような大声で、到着を告げる。
隊長も命令を出して、後部ハッチが開くと、他の兵士達とともに、外へと飛び出る。
「ここは? 野戦陣地か? さて、歩兵として、銃を取らないと」
「ルキャン、貴様は他の部隊に行けっ! キーウでは、トラック運転手として、働いていたそうだな? なら、ボルグの運転を任せるそうだ」
ルキヤンも、他の兵士達とともに、銃を取るべく、仮設テントに向かっていく。
だが、背後から隊長が、彼を呼び止めて、いきなり妙な命令を出した。
「砲撃で、コザックホース2の運転手が負傷したっ! その代わりを務めろっ!」
「りょ、了解ですっ! ただちに車両部隊に向かいますっ!」
隊長の命令を聞いて、ルキヤンは、並べられた装甲車の場所へと、直ぐに走り出した。
しかし、彼を含め、これから行く先が地獄であることは、誰も想像が出来なかった。




