ドンバス地域での戦闘 2014年
クリミア半島から離れた、ドンバス地域では、バイカー・コーテ部隊が、奇襲攻撃を仕掛けていた。
彼等は、普段ルシャ領内で、猫型ボルグに乗って活動する愛国者バイカー集団だ。
要は、親ルシャ民兵を支援するため、ルシャ本国から派遣された非正規の民兵部隊である。
その支援を受けて、迷彩服を着て、黒いバラクラバを被る民兵部隊は勢いづく。
こうして、彼等は両手に握る、AK74による銃撃を激しくさせる。
「ヒャッハーー!!」
「航空支援だっ!」
「ウラル・ティーグルも来ているぞっ!」
超小型で、馬ほどの大きさしかない、バイカー・ コーテだが、奇襲作戦や偵察では活躍する。
さらに、上空には爆弾やロケットポッドを両翼下に抱えた、カトラーガが飛翔する。
民兵とバイカー達は、ティーグル72と言われる、虎型戦車ボルグの砲撃を目にする。
走行しながら、背中に搭載された、砲塔の滑降砲から発射される砲弾は、防衛線に降り注ぐ。
緑色の機体が放つ、攻撃は凄まじく、敵が立て籠もる建物を次々と破壊していく。
このボルグは、四つ足に取り付けた、キャタピラで走り、街中を突撃する。
「敵ボルグを視認、撃ち返せ」
「警察隊を避難させろっ! 武装が違い過ぎるっ!」
対するウクラーダ軍は、緑色の芋虫型ボルグ、フセニツィガ3、フセニツィガ4で抵抗する。
これらは、機甲部隊などで運用される、小型の装甲車ボルグである。
フセニツィガ3は、背面上部の機関砲塔に、左右合計三器ずつ配置された発煙弾発射機を装備する。
さらに、対戦車ミサイル発射器を右側に、上下二器搭載している。
フセニツィガ4は、背面上部の機関砲塔に、左右合計三器ずつ配置された発煙弾発射機を装備する。
さらに、対戦車ミサイル発射器を左右両側に、上下二器搭載しており、防弾窓が大きくなっている。
しかし、敵の数と重兵器を前にして、ミサイルや機関砲をいくら発射しても、大した効果がない。
また、歩兵部隊も、フセニツィガや建物に隠れながら応戦しているが、敵に押され続けている。
自動小銃AK74や、分隊支援火器RPKによる銃撃も、それ以上の機銃掃射に負けてしまう。
「退避、退避しろーー!!」
「我々では、太刀打ちできないっ! ダメだっ!」
「アレは? 旧式兵器? ぎゃ…………」
「第二次世界大戦のだぞっ? うぐあ」
警察組織には、トヨダ・カローラウルフ、シュカダ・スペルヴタイガーなどが配備されている。
しかし、これらは非武装の白青黄に塗装された、 パトカーであり、パトロールにしか利用できない。
武装警官や治安維持部隊は、他の場所で戦っているため、彼等は機甲部隊に頼るしかない。
フセニツィガは、カトラーガを狙い撃ちできず、 対空射撃に失敗して、爆撃で破壊される。
カローラウルフ&スペルヴタイガーは、ティーグル72の砲撃で蹴散らされてしまう。
戦乱の最中、親ルシャ武装勢力は、博物館から骨董品とも言える兵器を略奪した。
第二次世界大戦で使われた、虎型戦車ボルグであるISティーグル2を、一台だけ接収した。
虎型自走砲ボルグ、ISUー122ティーグルまでも、二台押収して、戦場に投入した。
黒い制服の警官隊は、建物や破壊された、ボルグに隠れて、拳銃フォルト17を発砲する。
だが、彼等に対して、ボルグ部隊の砲撃や民兵とバイカー達によるAK74から銃撃が飛んでくる。
そして、ウクラーダ軍部隊や警官隊は、強力な猛攻を前に、撤退するしかない。
「撤退しろっ! 軍の増援部隊が来たぞっ!」
「警官隊と防衛隊は、町の西側まで下がれっ!」
「援軍だっ! 撤退しろっ!」
「フセニツィガに乗れっ! 素早く撤収するっ!」
二台の虎型ボルグである中型戦車ティーグル64BVが、背中にある砲塔から滑降砲が火を放つ。
ウクラーダ軍の増援部隊も到着して、味方を援護するため、AK74を乱射しながら叫ぶ。
警察官たちは、シュカダ・スペルヴタイガーの側面ドアを開いて、乗り込むと、すぐに逃走した。
同様に、フセニツィガ4にも、多数の歩兵たちが、後部から入り込み、撤収準備にかかる。
「敵が撤退しているっ! 勝ったぞっ!」
「うおおっ! 勝利だああああっ!」
親ルシャ民兵とバイカー達は、歓声を上げながら、空に向かって、AK74を撃ちまくる。
ルシャ連邦軍やPМC部隊を、味方に着けた親ルシャ勢力は、圧倒的な力で、戦闘に完全勝利した。
「防衛線まで、後退するぞ、あっちは本格的な部隊が展開している」
部隊長は、フセニツィガ4の助手席で命令しながら、正面で対峙する親ルシャ勢力を睨む。
しかし、それでも甚大な被害を出しながら、ウクラーダ側は、防衛線を維持する事ができた。
それは、ルシャ連邦側が小規模であり、尚且つ不正規部隊しか、殆ど戦場に投入しなかったからだ。
ルシャ連邦の目的は、親ルシャ地域とクリミア半島を、実効支配することだった。
このため、大規模な兵力を展開させず、目標を達成した後、衝突を控えたワケである。
また、世界中の軍事ブロガーや学者などは、アムリサ合衆国から、何か支援があった。
それ故、ウクラーダ共和国軍には、PМCや特殊部隊の援護で戦線を維持できたと考えられている。
こうして、一時的に、クリミア危機から戦争の気配は無くなり、それから時は経った。
だが、以降も、ウクラーダ側勢力・ルシャ側勢力の紛争は、延々と続いた。
親ルシャ派には、ルシャ連邦から傭兵部隊や民兵部隊が参加した。
ウクラーダ側には、ウクラーダ郷土防衛隊&親ドルフ派の極右勢力が、戦列に加わった。
終わりが見えぬ戦いが続く中、世界は比較的に安定していた。
しかし、中東の動乱による難民危機や各テロ組織が、ヨーロッパ各国で台頭した。
また、巨大化した犯罪組織の重武装化や、世界中で民族紛争が頻発していた。
それに加え、流行病による混乱で、世界中が経済的な苦境による惨禍に見舞われた。
2021年。
この結果、ルシャ連邦は、第二次世界大戦以来と言われる大規模な軍を動員した。
これは、表向き大規模な訓練を実行して、ウクラーダ共和国に対する示威行為を行うのではないか。
戦争や経済の専門家たちは、そう推察していた。
だが、アムリサ合衆国諜報部は、輸送されていた大量の輸血パックを衛星写真で発見していた。
これにより、ウクラーダ共和国に警告を発したが、この情報は慢心により放置された。
それで、ルシャ連邦軍は予備役や各種、準軍事組織を含む、百万人規模の軍隊を動員した。
これが、ルシャ・ウクラーダ戦争と、後に呼ばれる戦いの始まりであった。
戦いは熾烈を極め、ウクラーダ共和国&ルシャ連邦だけではなく、世界中を巻き込んでいく。
東アジアでは、魏漢人民共和国&雷仙民主主義人民共和国が、軍事力を増大させている。
それに対抗する形で、葦島&大麗民国&台美などが、アムリサ合衆国から支援を受けている。
アフレサ大陸では、過激派やテロ組織の台頭により、紛争が激化している。
中東では、ジュライル国とペリシテア国を中心とする宗教戦争が長く続いていた。
こうして、後世に語られる第三次世界大戦が展開されようとしていた。
『ルシャ連邦は、ウクラーダ国境に大規模な機甲師団を集結させており、シベリアや極東方面からも旧式火砲や兵力を…………』
「戦争に成らないと言いが?」
「成るわけないわ、同じスラヴ民族だもの…………」
テレビでは、報道特派員が、ルシャ連邦軍に関する情報を流し、それをルキヤンは見ていた。
オリハも、画面を眺めていたが、いくら紛争中とは言え、それが戦争化するとは思いたくなかった。




