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アニムスVSボルグ ルシャ・ウクラーダ戦争  作者: ◣₤▧₪▣◢◤◆◥◤₡でぶにゃーちゃん


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イルピン市街戦3 3月2日


 ルキヤンとオレーナ達は、ホテルの中で立ったままテレビを見ていた。


 そこには、マルチカム迷彩服を着ている大勢のウクラーダ兵たちも居た。



『今日、ルシャ軍のグラーチュ戦闘機二機がイルピン空爆を行い、発射された二発のミサイルが住宅に命中し、児童一人が死亡、女性一人が負傷しました』


 金髪ロングヘアーの女性アナウンサーは、悲痛なニュースを全国に届ける。



『その後、グラーチュの一機がウクラーダ軍の対空ミサイルにより撃墜されました』


「一機、逃したか…………子供が死ぬなんてな」


「本当にね…………やりきれないわ…………」


 女性アナウンサーは、淡々と事実を伝え続けているが、きっと平静さを保つので精一杯だろう。


 そう考えて、ルキヤンは思わず、長い溜め息を吐きそうになる。



 眉間を険しくさせながら、げっそりした表情で、オレーナも淡く光るテレビを睨む。


 二人は、他地域の芳しくない戦況を見ていられなくなり、コザックホース2へと向かった。



「急げ、出動だ、ホストーメリに向かう」


「ブチャ方面から敵の援軍が来ている」


 駐車場のアチコチで、整備兵や運転手たちが、せっせと走り回る。


 装甲車ボルグ、フセニツィガ3、フセニツィガ4などが、そこには並ぶ。



 コザックホース2、ティーフルBMブラートなども多数駐機していた。


 ソ連時代の装甲車ボルグ、グニセツィガ80、虎型戦車ボルグ、ティーグル80BVもあった。



 ウクラーダ軍では、自国生産品とソ連・ルシャ生産品で、同じ兵器でも名前が違う。



「ティーグル、ティーフル…………フセニツィガ、グニセツィガ…………か? 元は同じ兵器、同じ民族だったのに…………」


「ええ…………でも、私達はウクラーダ人、コサックを先祖に持つ民、野蛮なルシャ人とは違うわ」


 並び立つ兵器の群れを見て、ルキヤンは不意に呟いていた。


 その背後では、オレーナが憎しみを込めた表情で、悪態を吐いていた。



「オレーナ、気持ちは分かるが? 僕らにだって、ルシャ人の血は流れているんだ」


「はっ! ごめんなさい…………ルキヤン、もしかして?」


 ルキヤンの一言に、オレーナは我にかえったように、驚いた顔で謝罪する。



「いや、オレーナ…………良いんだ? でも、ルシャ系ウクラーダ人も一緒に戦っている事は忘れないでくれ? まあ命令があるまで、コザックホースの整備をしよう」


「そ、そうよね? 悪いのは、ウラジミール・ブローク…………ルシャ系・ウクラーダ系は関係ないわね…………」


 ルキヤンとオレーナ達は、コザックホース2のタイヤやエンジン等を調べる。


 ほかに、重機関銃に弾丸を装填したり、銃身を長い棒で掃除したりした。



「ルキヤン、オレーナ? 出撃命令が出た、イルピン病院に行けとよ」


 整備兵が、現れて伝令を通達すると、そのまま彼は、足早に去っていった。



「もう、そんな時間か? はあ、モーニングコーヒーくらいは飲みたかったな」


「まあね? でも、命令には従わないと成らないわ」


 落胆しながら愚痴るルキヤンの右肩を叩き、オレーナは、コザックホース2に向かっていく。


 彼らが車体に乗り込むと、ほかの兵士が乗ったボルグ達も、次々と駐車場から道路に出ていく。



 ティーフル80BVは隊列を成し、グニセツィガ3は、散会する。


 そして、市街地を大部隊が進軍する中、民兵や民間人たちが、青と黄色の旗を振るう。



 彼らは、ウクラーダ軍がイルピン周辺を解放してくれると信じているのだ。



「ウクラーダ、ウクラーダッ! スラーヴァ、ウクラーダ」


「ルシスト達を蹴散らせっ!」

 

 アパートの出窓やベランダ等から、民兵たちはウクラーダ国旗を力強く振るう。



「歓迎されているな? 彼らの期待には答えなくちゃな」


 ルキヤンは、独り言を呟き、オレーナと多数の兵士たちを乗せた、コザックホース2を走らせる。


 こうして、彼らを含む大部隊は市中央に向けて、道路を進軍した。



 大隊は、病院に近づいていくが、空からはミサイルが飛び交い、砲撃音が遠くから鳴り響く。


 ビルやアパートは、焼け焦げた跡があり、中では民兵や避難民たちが、忙しなく走っている。



「間もなく病院だ、敵の攻撃が始まるから気をつけてくれ」


 そう呟きながら、ルキヤンはハンドルを握る手に強く力を入れる。


 病院付近では、味方歩兵たちが対戦車用武器ジャベリンを撃つようすが見えた。 



 ビルの屋上から、ミサイルが飛んでいき、遥か遠くで爆音がなる。


 その度に、敵が走らせるグニセツィガ80とノーシ・ティーグル部隊が燃え上がる。



 しかし、ルシャ軍側も殺られてばかりではなく、奇襲部隊を侵入させてくる。


 歩兵部隊による一斉射撃が、病院の前で始まり、タタタタと乾いた発砲音が鳴った。

 


「全員、降車しろっ!」


 コザックホース2が病院の陰に来ると、歩兵部隊はドアを開けて飛び出ていく。


 部隊長は、部下たちを集めて、病院の中へと入っていこうとする。



「ルキヤン、オレーナ、援護は任せたぞっ!」


「了解っ!」


「了解しましたっ!」


 それだけ言うと部隊長は、病院の玄関へと、部下を連れながら、急いで向かっていった。


 ルキヤンとオレーナ達も、病院の北側にあるビルへと向かう。



 そこからは、RPGー7の弾頭が、アチコチから放たれ、味方部隊に被害を出す。


 フセニツィガ3は爆散し、ティーグル80BVは爆炎に包まれる。



 こうして、市街戦が始まり、激しい機銃掃射と砲撃を双方が放つ。



「うわ、危な…………!?」


「きゃああっ!」


 偶然、敵が放ったRPG弾が、ルキヤンとオレーナ達が乗った、コザックホース2に当たった。


 左足と車輪が吹き飛び、車体は道路の真ん中に止まってしまった。



 幸いなことに、二人は無事であり、急いで車外に脱出して、病院へと走っていく。


 AK74Uを抱える彼らは、すぐに割れた窓から中に飛び込む。



「ぐ…………! 少し刺さったか…………」


「大丈夫? よね?」


 病院の割れた窓から、中に飛び込んだ瞬間、ルキヤンは床に転がって体勢を立て直した。

 

 ガラスの破片が服に食い込み、腕に浅い傷が走ったが、痛みなど今は感じない。



 オレーナもすぐ後ろから続き、二人は息を整えながら廊下を見渡した。

 

 廊下は静かであり、蛍光灯が点滅し、どこか遠くと非常に近い場所で、銃声が微かに響いている。



「ここは、何故か静かだな…………」


「妙ね? ヤバい雰囲気だわ…………」


 壁には血の跡が残っており、床には散らばった医療用具が転がっていた。


 誰もいない、スタッフも患者も、すでに避難したか、あるいは。



 そして、廊下の奥や二階などには、味方兵士が応戦しているはずだ。


 しかし、病院内に敵の奇襲部隊が侵入している可能性も拭えない。



 後ろを頼めるかと、ルキヤンが左手を振りながら、前を進んでいく


 オレーナは頷き、AK74Uのセレクターを確認したあと、忍び足で歩いていった。



「敵を近づけるなーーーー!!」


「味方の声がする…………でも、ここに長居はできない? 外は、まだ敵がいるっ! それに、前方に何かが見えた」


「ええ、スペツナズが見えたら教えて…………」


 ルキヤンとオレーナ達は、背中を合わせるようにして、廊下を慎重に進んだ。


 病院の中は迷路みたいに複雑で、案内板もほとんど剥がされている。



 救急処置室を探すつもりだったが、まずは上の階から響く足音を確認しなければならなかった。


 二階の階段を上がりかけたとき、上から足音が近づいてきた。



 複数人だ、重いブーツが床を踏む音と、武器の金属音が混じっている。


 二人は、同時に壁際へと身を寄せ、ひたすらに息を殺して待った。



 足音は止まらず、階段を降りてくるが、それが敵か味方か、判断する時間はほとんどなかった。



「俺が先に出る」


 ルキヤンが小さく囁き、AK74Uを振るい、階段の方へ向けた。


 オレーナは、彼の肩越しに視線を送ったあと、わずかに頷いた。



 二人は、わずかな隙間から階段の曲がり角を伺い、息を合わせる。


 次の瞬間、角から黒い影が現れたと同時に、武器を振り上げた。



 彼らは、じっと引き金に指をかけたまま、わずかに息を止めた。

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