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最恐教師の最高傑作 ~「ゴミ」と罵倒してくる鬼教師、脳内AIによれば【期待値MAXの英才教育】が本音らしい。スパルタ課題を淡々とこなし学園無双~   作者: 凪白 黎
第5章:終わらない日常と、まぐれの完全否定

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第27話:認識崩壊するエリートと、平穏へのフラグ

「な、なぜ動けない……!」


長兄の情けない悲鳴が、焦げた石畳の上に転がった。


(……何が起きたんだ、これ)


石段の上で、俺は呆然と立ち尽くしていた。

たった一言の指示を出しただけだ。それなのに、ボロボロだったFクラスの連携が嘘のように噛み合った。


誰かが動けば、別の誰かが隙間を埋める。アリアが危険を感知すれば、全員が迷いなく位置を変える。

逃げようとするエリートたちの足元へ刃が跳ね上がり、放たれた魔法は盾で弾かれて同士討ちを誘う。


瞬く間に、Fクラスの面々は隙間なく包囲網を敷き、倒れた精鋭たちの喉元へ一斉に杖を突きつけていた。


俺の顔はパニックで氷のように凍りついているため、傍目には冷徹に戦場を見下ろしているように見えるだろう。


「そうか……そうだったのか……」


尻餅をついた長兄が、煤だらけの顔で俺を見上げた。

その唇が、ぶるぶると震えている。


「あの愚かな逃走も……弟たちが追い詰められたのも……すべて、計算の内だったのか……!」


(いえ、疲労困憊だったんです……)


『あら、セド君のお兄様、目の付け所が素敵ですね♪』


マリア、感心するな。頼むから否定してくれ。


長兄は頭を抱え、ガクガクと首を振った。


「不在の間の弱さすら、彼の統率力の証明だった。あえて極限まで追い詰め、最後の一手で盤面をひっくり返す……! 俺は、まぐれだと……環境に便乗しただけだと……何を見ていたんだ、俺は……!」


違う。ご褒美の消滅と疲労で、心も体も力尽きただけだ。

そう叫びたいのに、顔の筋肉が少しも動かない。

結果として俺は、無言のまま、絶望する男を静かに見下ろす形になってしまった。


長兄の喉が、ひゅっと鳴る。


「その目……。すべてを見透かしているというのか。俺の浅はかな嘲笑も、焦りも、最初から……俺は、いったい誰に喧嘩を売っていたんだ……っ!」


見ていない。目が乾いて、瞬きを忘れているだけだ。


包囲網の中で、セドリックが涙をこぼしながら拳を握っていた。


「兄上……ようやくお分かりになりましたか。これが、我らの絶対者たるリオ様です」


アリアは焦げたノートの切れ端に、感動に打ち震えながら必死で何かを書きつけている。


誰か、この異様な流れを止めてくれ。

セドリックを説得し狂信をとく唯一の希望の光が消えようとしている。


完全に現実逃避の理屈を砕かれた長兄は、認識崩壊を起こしたように力なく両手をついてうなだれた。


◆ ◆ ◆


「ふん……極上の砥石としては、まあまあの働きだったな」


演習場の遥か上部。監視用の暗がりに立つ私――ヴァルター・グレイヴは、へたり込む長兄を見下ろして冷たく吐き捨てた。


S級査察官などと偉ぶる男が、盤上の絶対者の手のひらで完全に踊らされていたことにも気づかなかったのだ。

己の魔法を己の部隊へ向けさせられ、弟たちには完膚なきまでに制圧された。


最も愚かな敗北を演出していた少年が、最後にはたった一言で最も鮮烈な勝利だけを残す。


「まさに至高の美。私には、とても届かない境地だ」


戦慄と共に、私の頬の肉が歓喜でヒクヒクと痙攣する。

怒りでも苛立ちでもない。極上の才能を目にした歓喜を押し殺すのに、これほど骨が折れるのは初めてだった。


◆ ◆ ◆


「……俺の、完敗だ。すまなかった、リオ殿」


戦意を完全に喪失した長兄が、フラフラと立ち上がり、絞り出すような声で呟いた。

彼は煤だらけの外套を引きずり、虚ろな目で円陣の中心に立つセドリックを見る。


「セドリック。一つだけ忠告しておく。リオ殿を『様』付けで崇拝するのはやめろ。……それは、彼の試練に対する侮辱だ」


(試練とは?? 目立つからやめてほしいだけです)


長兄はふらりと俺を見上げ、自嘲するように笑った。

俺の顔は、相変わらず恐怖で凍りついて動かない。


「盲目的に付き従うだけの駒が欲しいなら、もっと早い段階でお前たちを細かく操っていたはずだ。だが、あの方は自ら死地を作り出し、お前たち自身の足で立たせた。より高みに立てるように」


(ご褒美の消滅と疲労で気力が保てなかっただけです)


「ただの従者など、彼は必要としていない。隣に立ち続けたいなら……対等な友となれ。甘えるな! 研鑽を怠るな! リオ殿は、きっとそれを望んでおられる」


(ちょっと違うけど……この際、それでいい! もっと言ってくれ!)


『お兄様が説得力のある建前を代弁してくださいました♪ ラッキーですね♪』


マリアの能天気な声に同意するように、俺は心の中で激しく頷いた。


長兄は力なく頭を下げると、ボロボロになった精鋭たちを引きずるようにして、逃げるように出口へ歩き出した。

その背中が、大扉の向こうへ消えていく。


重たい扉が閉まる音が、演習場に響いた。


(……終わった。やっと、朝練が終わった)


肺の底から、長い息が漏れる。

朝からの胃の痛みが、ほんの少しだけ和らいだ気がした。


嵐のような殺気とトラップの音が消え、静寂が戻ってくる。

あとは、去り際のあの兄の言葉を最大限に利用するだけだ。


この忌まわしい『様』付けさえ消えてくれれば、目立ちすぎる俺の学園生活に、平穏が戻ってくるはずだ。

★★★ 全知の聖母あとがきシステム ★★★

読んでいただき、ありがとうございます♪


セド君のお兄様のおかげで、坊っちゃんの「平穏な学園生活」の希望が見えましたね♪

坊っちゃんの素敵な青春ストーリーが長続きするように……坊っちゃんと作者の【やる気:限界突破】になるよう、


ページ下部の【ブックマークに追加】と、

その下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】になるようポチッとしていただけると、私もルンルン気分になれます♪


第2部からは【月・水・金 20:20】の週3回でお届けです♪

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