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最恐教師の最高傑作 ~「ゴミ」と罵倒してくる鬼教師、脳内AIによれば【期待値MAXの英才教育】が本音らしい。スパルタ課題を淡々とこなし学園無双~   作者: 凪白 黎
第5章:終わらない日常と、まぐれの完全否定

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第26話:教官の勘違いと、盤面を覆す一言

「……なんという、恐ろしくも美しい男だ」


演習場の遥か上部。監視用の暗がりに立つ私――ヴァルター・グレイヴは、歓喜に震える右手を必死に押さえつけていた。


眼下では、セドリックの長兄が環境制御盤を暴走させ、S級トラップの全てを最大レベルで解放している。

地の底から無数の刃がせり出し、可燃性のガスが吹き荒れる真のデスマッチ空間。


だが、あのリオ・アスターは、顔色一つ変えることなく、演習場の隅にある石段へと歩いていった。

あそこは、全トラップの軌道が唯一交差しない、盤上でたった1箇所だけの『絶対安全圏』だ。それを瞬き一つする間に見抜き、寸分の狂いもなく辿り着いたというのか。


そして彼はあろうことか、無防備に膝を抱え、静かに目を閉じた。


「……素晴らしい。私には、とても真似できない」


戦慄と共に、私の頬の肉が歓喜でヒクヒクと痙攣する。

あれは逃亡ではない。指揮の放棄でもない。


自らの教え子を極限の死地へ放り込み、あえて一切の助け舟を出さないという絶対的な『試練』。

そして、彼らが必ず生き残ると信じ抜く、揺るぎない『信頼』の証明なのだ。


「はははっ、逃げたぞ! 指揮すらできずに逃げ出した! 見ろ、やはりあいつは環境に便乗しただけの無能だ!」


長兄の高笑いが、戦場に響き渡る。

それを見下ろしながら、私は深い呆れと侮蔑の息を吐いた。


S級査察官などと偉ぶっているが、所詮はその程度の眼力か。

己が『極上の砥石』として利用され、盤上の絶対者の手のひらで踊らされていることすら気づかず、無能と吠えるとは。哀れな道化だ。


「リオ様が、俺たちを信じて背中を預けてくださったのだ! 意地でもここを死守しろ!」


激しいトラップの爆撃の中、ヴァレリウスの三男が血を吐くような声で絶叫した。


「ええ……! 昨日はリオ君に助けられた……今日は私たちが助ける番よ!」


平民のアリア・ノックスも、恐怖に足の震えを隠せないまま、必死に感知魔法を展開して仲間を庇っている。


落ちこぼれの烏合の衆だったFクラスの面々が、彼の無言の信頼に応えようと、死に物狂いで限界を超えようとしていた。

だが、悲しいかな。いかに精神が奮起しようと、個々の魔力と技術の差は歴然だ。


迫り来る刃と、エリートたちの苛烈な魔法の前に、彼らの魔力障壁は次々と砕かれていく。

防戦一方となり、全滅の瞬間は刻一刻と迫っていた。


「さあ、見せてみろ……」


私は杖を握りしめ、眼下の光景を食い入るように見つめた。

あの絶対者が課した、極限の死闘。これを、いかにして覆すというのか……!


◆ ◆ ◆


『ピヨヨヨヨヨヨ! お友達がピンチです!』


脳内に直接響くマリアの能天気だが爆音なアラームで、俺はハッと目を覚ました。


「え……?」


視界に飛び込んできたのは、無惨な地獄絵図だった。

S級トラップと精鋭たちの波状攻撃を受け、セドリックやアリアたちFクラスの面々が、全身を土気色にして血を流している。


(なんでこんな事に!? どうして全滅寸前に!? 俺はどれだけ寝てたんだ!?)


『ほんの数分なんですけど……イケメンお兄様、弟のセド君相手に本気出されちゃってるみたいで……』


珍しくマリアが真面目に回答をくれた。

魔力障壁は完全に砕け散り、彼らはあと数歩で完全に包囲される。

赤黒く光る無数の砲口が、一斉に彼らへ向けて死の光を膨らませていた。


「ははははっ! さっさとその烏合の衆を消し炭にしろ!」


長兄の高笑いが響き、戦場に焦げた匂いが充満する。

俺の全身から、サァッと血の気が引いた。


(危ない! ……どうにかしないと!)


恐怖と焦燥が限界を突破した瞬間、俺の顔の筋肉は氷のように硬直した。

呼吸が止まり、一切の感情が顔から消え失せる。


『坊っちゃん、安全圏があります! お友達をそちらに導きましょう♪』

(わかった! 早く教えてくれ!)


マリアの声と共に、演習場の盤面に幾筋もの光のルートが浮かび上がった。

俺は胃がひっくり返るような恐怖を必死に押し殺し、石段の上から戦場へ向かって叫んだ。


「セド、右へ3歩。アリア、炎の左端を揺らせ。……急いでっ!」


喉が張り付き、自分でも驚くほど低く、かすれた声が出た。

恐怖で絞り出したその悲鳴は、皮肉にも、一切の動揺を持たない絶対者の冷酷な号令となって戦場に響き渡る。


「……はいっ!」


瀕死の重傷だったはずのセドリックが、俺の声を聞いた瞬間に信じられない反射速度で右へ3歩だけ跳んだ。

同時に、アリアの震える指先から放たれた微弱な風魔法が、迫り来る炎の罠の「左端」をピンポイントで揺らす。


直後、盤面が恐ろしい精度で噛み合った。


砲口から放たれた閃光が、セドリックのいた空間を虚しく貫く。

さらに、アリアが揺らした魔力が隣の砲台の照準を数センチだけ狂わせ、狂った熱線が演習場の壁――S級トラップの『可燃性ガス噴射口』を的確に撃ち抜いたのだ。


ドゴォォォォンッ!!


「なっ……ばか、な……!」


長兄の間の抜けた声は、連鎖する大爆発の轟音に完全に掻き消された。

誘爆したガスの熱風が、敵の前列と長兄たちだけを綺麗になぎ払っていく。


たった一言の指示。

それだけで、死に体だったFクラスは長兄の猛攻を完璧に凌ぎ切った。


ぱちり、と何かが噛み合う音がした。

土煙が晴れた後、崩れかけていたFクラスの面々が、俺の呼吸に合わせるように自然と並び、互いの隙間を埋めるように動き出している。


誰も、号令なんてかけていないのに。


「……全員、リオ様の御前だ! 構えろ!」


セドリックの叫びに応えるように、一糸乱れぬ足音が演習場に響き渡った。

彼らは烏合の衆から、一瞬にして【無敵の軍隊】へと変貌を遂げていた。


「ば、ばかな……たった一言で、あのデスマッチを……!?」


へたり込んだ長兄の絶望の声が響く中。

俺は石段の上で、ただ呆然と、無表情のまま立ち尽くしていた。

★★★ 全知の聖母あとがきシステム ★★★

読んでいただき、ありがとうございます♪


ヴァルター先生、坊ちゃんの体力のなさをポジティブに捉えちゃいましたね。

それはさておき、ここから怒涛の反撃を繰り広げるのかワクワクドキドキな方は、坊っちゃんと作者の【やる気:限界突破】になるよう、


ページ下部の【ブックマークに追加】と、

その下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】になるようポチッとしていただけると、私もルンルン気分になれます♪


第2部からは【月・水・金 20:20】の週3回でお届けです♪

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